梅田サイファー『RUSH BALL 2025』クイックレポートーー握ったマイクで実現したジャンルの超越「みんなと俺たちの間にある分厚い壁をちょっとでも薄くしたい」

『RUSH BALL 2025』2025.8.30（SAT）泉大津フェニックス

2025年8月30日（土）、大阪・泉大津フェニックスにて野外音楽イベント『RUSH BALL 2025』が開幕した。31日（日）と2日間にわたり、全41組のアーティストが出演する。SPICEでは、両日全出演者のライブレポートを即日公開していくので要チェックだ。

『RUSH BALL 2025』梅田サイファー

『RUSH BALL 2023』のライブレポートには、大きなステージが夢想ではなく、非常に現実的なものであるという旨が残されていた梅田サイファー。彼らはその一行を誠にするべく、オープニングアクトとして『RUSH BALL 2025』メインステージ朝一番の舞台を踏み締めていた。百戦錬磨のバンドたちが鎬を削るこの祝祭のオープナーを大阪のヒップホップグループが担う事実には、それだけでグッと込み上げてくるものがある。それだけでなく、ヘッズたちが矢継ぎ早にリリックを連ねていくそのスタイルからも読み取れる通り、梅田サイファーの命題のひとつには言葉の糸を脈々と紡ぎ、そこに織り交ぜられた想いと野望と音楽愛を繋いでいくことが掲げられている。そしてそれは、『RUSH BALL』が自由な遊び方で、あるいは世代を越境したブッキングで実現してきたボーダーフリーなロックイベントに託された想いと共通しており、それゆえに彼らはこの重役を託されたのだろう。

リハーサルから「初日一発目ですけど、この瞬間が最高に盛り上がったって言いたいんで。最高の幕開けにしましょう」「お互い100%、いや120%、いや200%でぶつかり合いましょう」と意気軒昂な姿を示すと、「マジでハイ」「BE THE MONSTER」でのっけからフルスイング。流麗に捲し立てるフローやドープな5つ打ちのトラックが内臓を揺らし、血流を加速させていく。

繰り返される“て”と“み”の2音が本能的な快楽を誘発し、タオルをぶん回すロックイベントらしい光景を描いた「てみ」、「ここを真夜中のクラブにしちゃってもいいですか。心の中にミラーボールを思い浮かべて、思い切り踊っちゃって」と音の鳴る場所であればどこだって友達になれると告ぐ「梅田ナイトフィーバー19'」を終え、彼らはこう語った。

「この26年の歴史の中で、HIP HOPのアーティストがこのステージに立ったことはほとんどないらしいので、呼んでいただいて光栄です。音楽を愛する気持ちは同じだと思うんですけど、それでも音楽に壁はあると思うんですよ。けど、今日はみんなと俺たちの間にある分厚い壁をちょっとでも薄くしたいんです。そのために何ができるかを考えた時、HIP HOPにはビートジャックっていう文化があって。だから、今日は尊敬するバンドであるRIZEのビートを拝借したいと思います」

HIP HOPの血を薄めることなく、ここで彼らのミュージックをぶっ刺すためにRIZEの「Why I'm Me」のビート上でメンバーたちの言の葉が舞う。RIZEが、そして2日間で火花を散らすアーティストたちがどデカいバンドサウンドで落とす雷を、それぞれが握るマイク一本で喰らわせた梅田サイファー。全員へ送られた歓声と両の手は、音楽を愛するという1点で集った全ての人が手を取り合った証左だった。

取材・文＝横堀つばさ　撮影＝田浦ボン

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