室龍太、錦織一清が公演の魅力を語るインタビュー&稽古場レポートが公開 “Le gai mariage”『ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚』Vol.4
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“Le gai mariage”『ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚』Vol.4
2025年9月12日(金)~9月28日(日)まで、東京・六本木トリコロールシアターで上演される “Le gai mariage”『ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚』Vol.4。この度、稽古場レポート&室龍太・錦織一清へのインタビューが公開された。
ジェラール・ビトン et ミシェル・マンズ作“Le gai mariage” 『ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚』は、2011年にモリエール最優秀コメディ賞にノミネートされるなどした人気作。日本では2023年より六本木トリコロールシアターで上演されてきた。4回目となる今回は演出を錦織一清が務め、主演・室龍太、共演に世古口凌、山本涼介、中村萌子・木内ひろみ(Wキャスト)、福井貴一、錦織一清と個性豊かなキャストが顔を揃えている。
稽古場レポート
この日行われていたのは、ラスト付近の稽古。アンリとエリザの会話劇が面白い場面から、アンリの父や友人たちも勢揃いしたコミカルな場面を見ることができた。
まだ台本を持った状態ながら、錦織がセリフのタイミングやトーンを丁寧に指導していたこの日の稽古。「日本人はこっちの方が面白いと思う」といった言葉や「時代背景的にこんなメッセージも込められているのかも」という解釈を聞き、キャスト陣も次々に演技を変えていく。感覚的な部分は錦織が実際に演じて見せることでニュアンスを伝えており、すでにキャラクター同士の会話やすれ違いの面白みが十分に感じられた。
短い時間ではあったものの、登場人物一人ひとりのユーモアやキャストの芝居心が見えた稽古場取材。キャストの芝居を見ながら錦織が楽しそうに笑っているシーンも多く、ここから本番までの間にどこまで練り上げられるのかも楽しみになる。
室龍太・錦織一清 インタビュー
ーー現時点で、お稽古の手応えはいかがですか?
室:手応えはまだないですね。稽古終わりに錦織さんが仰った通り、今は地図を書いていただいているところです。それを確認しながら進んでいるところなので、次の稽古からは地図を体に入れてちゃんと動けたらと思っています。
錦織:こういう作品って大変なんです。すごいテンポで進まないといけないので、逆にすっと通り過ぎちゃうところがある。楽しいコメディを取りこぼさないように、まずは普通の芝居よりもゆっくり入念に把握しています。今日やっと最後まで一通り当たってみました。グルメマップや名所巡りのように、まずはみんなで歩いてみた。ここからどんどん進めていこうと思っています。多分、自ずとテンポは早くなるんですよ。本当にじっくり取り組めたので、また改めて進めていくのが楽しみになりましたね。
ーーお二人が感じるこの作品の面白さ、魅力はいかがでしょう。
室:もちろん戯曲そのものも面白いですが、それを錦織さんに演出していただく面白さに注目してほしいです。今回が4回目の上演で、キャストが変われば違う作品だと思いますが、そこにプラスして錦織さん節を感じてほしいし、僕らも表現できるようになりたい。錦織さんが演出する意味と面白さを見てほしいですね。
錦織:フランスの作家が描いた面白い戯曲を、岩切(正一郎)先生が日本語に訳してくださっています。自分で作る舞台だとセリフ変更などもしますが、こういう戯曲はすでに面白さがものすごく詰まっている。何も手を加えなくても、これをやれば絶対面白いわけです。そこに龍太が言ってくれた錦織節というか、僕の解釈やタッチが加わる。僕はこれまでにニール・サイモンもちょっと演出したことがあるんですが、面白いのは「これはこういう台本なんだ」という制約があるうえで作っていくこと。 どう料理するかを考えるのが元々好きなんです。先日まで手掛けていた『あゝ同期の桜』とはまた違った作品に挑戦できるのも嬉しくて、楽しませてもらっています。紐解けば紐解くほど面白いし、龍太やみんなの芝居を見て「あ、ここはこういうことなんだ」「もしかしたらこれは嘘で、こっちが本音なんじゃないか」という発見がある作品なので、本当にやりがいがあります。
ーー今のお話と重なるところがあるかもしれませんが、錦織さんが今回の演出でポイントとしている部分について教えてください。
錦織:今回のキャストは、(福井)貴一さんと龍太以外ほとんど初めましての方ばかり。初めてご一緒する人は、まず稽古をやって、どんな人か見せてもらうのが好きなんです。僕のモットーとして、「素材を絶対にいじらない」ことがあります。例えば今回なら「瀬古口くんが演じるのがドドなんだ」という形に持っていく。いろいろな素材がひとつの鍋に入っていて、でもけっして煮崩れない。上手い具合に高め合える状態に持っていくのが楽しいです。その人が持つ資質が出てきた方が面白いと思うので、どんな出演者とやるときでも個性を大事にしたいと思っています。
ーー室さんが演じるのはモテモテのフランス人ということで、過去に出演した『ボーイング・ボーイング』と近いのかと思います。役作りなどはいかがでしょう。
室:見た目や雰囲気は似ていると感じるかもしれませんが、結構別物ですね。『ボーイング・ボーイング』のベルナールは大人な感じですけど、今回のアンリは結構子供っぽい。根本的な部分が大人と子供で全然違うと思います。役作りについては、良いか悪いかわかりませんが、僕の中に「役作り」っていう概念がないんです。もちろんすごく作り込んで来られる方のことは尊敬しますが、稽古場で変わるじゃないですか。 僕の場合、がっちり決めていったところに違うものが入るとノッキングが生じてしまうんです。一度その経験をしたので、自分で作りすぎないようにしていて。稽古に臨んだ中でできたものをお届けするようにしています。できるだけ自然体でいたいというか、不自然にならないようにというのがモットーです。
錦織:難しいほうを選んでると思うよ。僕は役者の個性を大事にする演出がしたいと言ったけど、役者って「誰かになれるのが好き」って理由でやっている人もいるんですよね。でも一番難しいのは、自分がどういう人間か知って、その個性をうまく使って演じること。だから僕は敢えて挑戦しているんです。龍太は随分難しい道を選んでいると思うけど、実は正解で、それがナチュラルに見えてくる。僕はよく「鴨の水かき」と表現するけど、優雅に泳ぐ下ではずっと水かきを動かしている。まさにそうですし、この作品もそういうものだと思います。フランスの軽演劇だと思うので、スナック菓子でも食べるみたいにみなさんに楽しんでほしいけど、実は作る側からしたら大変で、でも最高の娯楽。
比較対象としてよく挙げるんですが、フランスのスパイ映画の『ニキータ』がハリウッド映画でリメイクされると『アサシン』に変わる。ハリウッド映画は派手なアクションを大事にしていて、フランスでは内に秘めた心情を重視しているんですよね。日本のキネマはどちらかというと情緒的でフランス映画の作り方に近いのもあって、面白さの跳ね方やビート感が日本人の好みに合うんじゃないかと思っています。
ーーお話を聞いていると、錦織さんの演出と役者としての室さんのあり方は相性が良さそうですね。
錦織:いいと思いますね。もう何年も前から知っていますが、前回一緒にやったのは松竹座さんの『垣根の魔女』かな? その時も何年か経った時の室龍太の成長を見たし、そこから2、3年経った今回、また一皮剥けていて「こんな芝居もできるようになったか」と感じました。一緒にやるたびに成長を感じるのが、僕の中の楽しみや喜びの一つです。
ーー室さんは演出を受けていていかがですか?
室:日々発見というか、自分じゃ考え付かなかったことをアドバイスしてもらえる。「面白い」が最初に来ます。この作品のお話をいただいたとき、錦織さんが演出されると聞いてマネージャーさんに「絶対出たい」と言ったんです。錦織さんが演出する舞台を見に行くこともあるんですが、錦織節が本当に好きで。言葉を選ばずに言っちゃうとくだらない面白さ(笑)。
錦織:そうそう、それが一番の褒め言葉(笑)。
室:めちゃくちゃ面白くて、今回も錦織節が随所に散りばめられるのかなと楽しみにしています。今回ご一緒できるのも嬉しいですし、錦織さんにとって2年後3年後に会った時の楽しみだということを聞けてすごく嬉しかったので、頑張らなあかんなってふんどしを締め直しました!
ーー最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
室:4回目の上演ですが、キャストや演出が違うので、前回までの公演を見た方も絶対に楽しんでいただけると思います。「本当に同じ作品だった?」と感じるくらいの作品を必ずお届けします! 錦織さんがついているから。自信を持って届けますので、ぜひワクワクドキドキしながら劇場に来ていただけたら嬉しいです。
錦織:僕は初めてこの劇場に来た時、すごくおしゃれだし、六本木の歓楽的な場所から住宅地に入っていく街並みの雰囲気が作品にすごく合っていると感じました。なんとなくモンマルトルの路地みたいなイメージというか、お芝居自体はもちろん、帰り道もおしゃれ感に浸れる。ワクワクしながら劇場に来て、帰路につく時まで、トータルで心に響くような作品になればいいなと思っています。
演出の錦織一清もジルベール神父役で19ステージ出演! 本作は9月12日(金)より9月28日(日)まで、六本木トリコロールシアターで上演される。なお、
レポート・撮影:吉田沙奈
公演情報
会場:六本木トリコロールシアター
脚本:ジェラール・ビトン & ミシェル・マンズ
翻訳:岩切正一郎
演出:錦織一清
照明:斎藤茂男
ピアニスト:田中 研
ピアニスト:髙野 岳人
プロデューサー:白樹 栞
出演:
室龍太
世古口凌
山本涼介
中村萌子
木内ひろみ
福井貴一
SS席:12,800円/S席:11,800円/一般席:10,800円(当日は500円UP)
企画制作 一般社団法人Société Le ThéâtreElyse
問合わせ:六本木トリコロールシアター 03-3796-7771
公式サイト:http://tricolore-theater.com/