「私達を信じてついてきてほしい」chef’s、即完の初ワンマンライブで観客と交わした熱烈な想い、固く結ばれた絆
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撮影=中山涼平
『chef’s 1st ONE MAN SHOW「Neubiss」』2025.8.26(TUE)東京・Shibuya eggman
「こんなにぱんぱんになったeggman見たことないです! うれしい。しあわせです!」
最初のMCで開口一番に言ったヨシダアヤナ(Vo.Gt)をはじめ、この日、chef’sのメンバー達は自分達の目の前に広がる光景を目の当たりにした感動を異口同音に口にしたのだった。
“おいしいおんがく”をコンセプトに掲げ、2021年8月から活動を続けてきた4ピースバンド、chef’sが8月26日(火)、東京・Shibuya eggmanで開催した初ワンマンライブ『chef’s 1st ONE MAN SHOW「Neubiss」』。その
誰もがこの日を心待ちにしていたことは明らかだった。メンバー達の感激も大いに頷ける。こんなにも歓迎されるワンマンライブは、そんなにあるもんじゃない。きっとこの熱気はこれからますます大きなものになっていくに違いない。
遅ればせながら、そんなchef’sの勢いを目の当たりにできたことも今回のワンマンライブの収穫の1つだったと思うが、このワンマンを観ることができて一番良かったのは、ディレイを掛けた単音リフとチョーキングで泣かせたリードフレーズを巧みに使い分けたフルギヤ(Gt)のギタープレイに、まず驚かされた1曲目の「ブランニュース」から2時間たっぷりとchef’sのユニークさを味わえたことだった。
「初めてのワンマンライブでもあるし、4周年の記念すべき日でもあります。この4年間、どこかで出会えたあなたに、この4年間たくさん作り上げてきた“おいしいおんがく”を余すことなく届けたい」(ヨシダ)
その言葉通り、この日、彼らが演奏したのは、「始まりの曲を!」と紹介した「スピンオフヒロイン」からワンマンライブの3日前に配信した最新シングル「メイブルー」まで、4年間の集大成と言える全22曲。
どの曲も体に染みこんでいることを想像させるように冒頭から熱烈なリアクションを返す観客を「もっと声出せる!?」とヨシダが鼓舞しながら、「ブランニュース」から、全曲の作詞・作曲を手掛ける高田真路(Ba)がグリッサンドでベースをずーんと鳴らして、「チャップリン」「Hamlet」「huit」とアップテンポのポップロック・ナンバーをたたみかけるように繋げていった序盤。ジャジーになるパートも含め、大胆なテンポチェンジを交える演奏が、彼らの掲げる“おいしいおんがく”の“おいしい”はただ口当たりの良さだけを意味しているわけではないことを物語る。
「1年前(の8月26日)に、このeggmanでmurffin discs所属を発表して、その1年後に同じeggmanで開催したワンマンがみんなのおかげで即ソールドアウトしました。ありがとうございます! バンドの結成日にホームであるeggmanでワンマンができてうれしいです」(高田)
そこから場面を変えるようにバラードの「Garden Variety」とエモいロックナンバーの「デクノボウ」を組曲として聴かせると、ファンキーなポップスの「メイブルー」も交え、4人が奏でる“おいしいおんがく”は、さらに複雑な味わいに。その「メイブルー」はイントロを聴いただけで早速、沸いた歓声をはじめ、観客の反応も上々だ。とても3日前に配信したばかりとは思えない曲の浸透具合にちょっとびっくりさせられる。ヨシダが真っ直ぐな声で歌うサビの裏でフルギヤが音色をハモらせながら奏でるカウンターメロディーも印象的だった「メトロ」を挟んで、吉島伊吹(Dr)のドラムで繋げた「だって、金星」も「メイブルー」同様、ファンキーなポップナンバーだが、R&Bに寄りすぎない、あくまでもロックなアレンジが聴きどころ。
続く「エイプリル」はミッドテンポのポップスを思わせ、変拍子がchef’sのプログレセンスを物語る。曲の終盤、フルギヤが奏でるエキセントリックなギターソロとともに白熱していくバンドの演奏にフロアから声が上がった。
因みにこの日のセットリストは、高田が語ったところによると、「朝昼夜、chef’sの“おいしいおんがく”が1日中、朝から夜までどんな時でも――悲しい時だけじゃなくて、うれしい時も、さびしい時だけじゃなくて、楽しい時もみんなの中で寄り添ってくれるような音楽になったらいい」という理由から、朝、昼、夜、そして再び訪れる朝の4部構成になっていたのだそうだが、「エイプリル」の喧騒から再び場面を変えるように「クラム」のピアノの弾き語りから始まった後半戦へ。
ゴスペルの影響が滲む「プルミエール」からアーバンなポップスをトリッキーなバンドアンサンブルに落とし込んだように聴こえる「ヒッチコック」まで一気にたたみかけるように繋げながら、ダンスポップあり、ファンクあり、ロックンロールありという1曲1曲の振り幅とともに前半戦以上に“おいしいおんがく”の深い味わいを楽しませていく。
中でも、「appe'Ci(n)der era」と「Ci(n)der era」は組曲と言える流れの中でボサノバ、マスロックの要素をスパイスとしてきかせた、あまりにもユニークなバンドアンサンブルを印象づけたという意味で、この日のハイライトの1つだったと言ってもいい。
「この景色を見ることができてしあわせです。改めて、みんな今日来てくれてありがとうございます。自分達だけのお客さんだけでぱんぱんになる景色は想像していたけど、今、めちゃめちゃ実感できてしあわせです。みんなのしあわせが私達4人のしあわせです。これからもみんなが笑って、自分らしく生きられるように“おいしいおんがく”を届けます!」(ヨシダ)
掛け合いのシンガロングで一体感を作り上げた「Comedy」から、ヨシダの「せーの!」に応え、観客が「1-2!」と声を上げて演奏になだれ込んだ、本編最後の曲は「スピンオフヒロイン」。メンバーが求める前に観客が始めた手拍子とシンガロングは、これまでバンドとファンがライブハウスでお互いに向き合いながら結んできた絆を連想させた。
「めっちゃ聴こえた。うれしい。またワンマンやります!」(高田)
そして、ライブのクライマックスにふさわしいアンセムを締めくくったのは、ヨシダの「今日一番の声を! せーの!」に応え、観客が再び声を上げた「1-2!」のシンガロングと、それに対する「音楽続けてよかった!」という心の奥底から溢れ出てきたヨシダの歓喜の声だった。そんな一言に表れた初ワンマンの手応えは、chef’sをさらに逞しくさせるに違いない。
「みなさん、おなかいっぱいですか? 今日だけでおなかいっぱいにはさせません。これからも“おいしいおんがく”をたくさん作っていくので、私達を信じてついてきてほしい。そして、(またライブに)帰ってきてほしい」(ヨシダ)
今回のワンマンライブがさらなる飛躍のステップであることを物語るように『東京晩餐会』と題して、11月~12月に東名阪を回る対バンツアーを開催することを発表した4人はライブで演奏すると、<あなたとならどこへだって行けるの>という歌詞がファンに向けて、歌っているようにも聴こえるアンセミックでストレートな「ヒールマニュフェスト」でアンコールに応え、観客のシンガロングとともに初ワンマンは終わるはずだった……のだが、しかし、さらにアンコールを求める観客の熱烈な思いに応え、もう1曲、モータウンビートが跳ねる「いとをかし」を披露。観客のシンガンロングをフロアに響かせ、chef’sの歴史に残る最高のエンディングを、観客とともに作り上げたのだった。
取材・文=山口智男 撮影=中山涼平
ライブ情報
【朝餐 大阪公演】
11月24日(月祝)Yogibo HOLY MOUNTAIN
OPEN 18:00 / STRT 18:30
ACT:chef's / Sundae May Club
11月25日(火)新栄シャングリラ
OPEN 18:30 / STRT 19:00
ACT:chef's / スーパー登山部
12月2日(火)東京キネマ倶楽部
OPEN 18:00 / STRT 18:30
ACT:chef's / ハク。
オフィシャル2次先行
受付期間:発売中~9/15(月祝)23:59