スピッツ恒例『ロックロックこんにちは!Ver.27』2日目レポート――OKAMOTO'S、ハラミちゃん、礼賛とつないだ熱狂のひととき「まだまだ続けていきます。音楽が好きでよかった」と再会を約束
『ロックロックこんにちは!Ver.27 ~Two-Na-Go!~』2025.9.19(FRI)大阪・Zepp Namb(OSAKA)
9月18日・19日、大阪・Zepp Namba(OSAKA)で『ロックロックこんにちは!Ver.27 ~Two-Na-Go!~』が開催された。2日目である19日は、スピッツをはじめ、初登場の礼賛とハラミちゃん、数々のイベントを共にした若き盟友のOKAMOTO'Sが参戦。『ロックロック』の名のもと、個性豊かなパフォーマンスが交わった最終日のレポートをお届けしよう。
前日に続き、スクリーンへFM802 DJ加藤真樹子と中島ヒロト、スピッツの4人がお目見え。『ロックロック』ファンから事前に募集した「こんにち話」(『ロックロック』の思い出や、つながった縁などのエピソード)を紹介しながら、今回の宣伝隊長「ツナイダー」、そして27回目にちなんだ「ふなっしー」へとバトンタッチし、タイトルコールへ! 『ロックロックこんにちは!Ver.27 ~Two-Na-Go!~』2日目が幕を開けた。
礼賛
ラランドのサーヤがボーカルと作詞作曲を手掛け、話題沸騰中の5ピース・礼賛が今宵のトップを飾る! ド頭「鏡に恋して」からソウルフルに熱唱したかと思えば、軽快にライムを刻むサーヤ。ギターの簸(ひられる)こと木下哲も、グルーヴィーに弾き倒し、観衆を圧倒していく。
「呼んでいただいたスピッツさんに感謝を込めて」(サーヤ、以下同)とここで、スピッツの「ローテク・ロマンティカ」のカバーへ。選曲にも礼賛らしさがにじみ出ており、彼女たちにしか出せないオフビートな質感と、卓越したアプローチによってオーディエンスを瞬時に楽曲の世界へと引き込んでいく。
「もっと盛り上がっていただけますか? カオスになっていきましょう!」と投げ掛けるは、もちろん「Chaos」! foot vinegar(Dr)ことGOTOと、春日山(Ba)こと休日課長による極太のファンクネスで体はオートマティックに揺れ出し、オーディエンスとの結束は一気に加速。「好きなようにダンスしてください!」と、「TRUMAN」ではお立ち台に立ち、サーヤがコンダクターのように場内を扇動していく。晩餐(G)こと川谷絵音と簸のツインギターが増幅させた混沌に、どこまでも沈んでいけそうだ。
ブルージーな「バイバイ」では、サーヤのセンチメンタルな声色がじんわりと胸に溶けていくよう。全員で手を振る幸福な絶景が生み出され、サポートのえつこ(Key)の叙情的な音色が曲のドラマ性をさらに彩っていく。
「最後に、まだレコーディングもしていない出来たてほやほやの曲を。礼賛の活動を続けていたら、やっと明るい恋の曲も書けるようになりました。スピッツさんの恋の歌に支えられていた私のように、皆さんにとってそういう歌が書けるように頑張っていきたいです」
そうラストにぶちかましたのは、「ホレタハレタ」。新曲とは思えない沸騰ぶりで、オープニングの大役をさらりと完遂した礼賛だった。
転換トーク#1
パフォーマンス直後の礼賛を迎えたトークコーナーでは、草野マサムネ(Vo)の親戚がサーヤのファンだという話題に、サーヤがいたずらっぽく笑いを誘う。17歳から『ロックロック』に通っているというファンからの「こんにち話」も飛び出し、﨑山龍男(Dr)もこれまでを振り返り「27回目ですし、いろいろあったなと思いましたね」としみじみ。また、かつてindigo la Endやゲスの極み乙女。としても出演してきた川谷には、「他では断りますが、スピッツさんのためなら」と、再びのコスプレ姿を約束させる(笑)一幕もあり、会場を大いに沸かせた。
ハラミちゃん
「スピッツさんに呼んでいただけた〜! その愛と感謝を込めて14曲スペシャルメドレーを行います!」と喜びを爆発させたのは、ストリートピアノをキッカケに飛躍を遂げたポップスピアニスト・ハラミちゃんだ。スピッツのデビュー曲「ヒバリのこころ」(1991年)に始まり、「優しいあの子」(2019年)まで一気に駆け抜けていく彼女。リハーサルを見守った草野に、「俺の人生の走馬灯みたいだね。まだ死なないけど(笑)」と言わしめたほどのメドレーを経て、スピッツとの出会いを語ってくれた。
「幼少期からピアニストを目指していたんですが、音大に進むと周囲との実力差に打ちのめされてしまって。そんな時、母がファンクラブに入っていたスピッツさんのコンサートに誘われて行ったんです。そこで聴いた「楓」の<君の声を抱いて歩いて行く>という言葉にすごく励まされて……。私は夢にさよならしたけど、それを抱きしめて歩いて行けばいいんだって」
そう柔らかな表情で語る彼女は、ストリートピアノに出合い、今、そのスピッツと同じ舞台に立っている。「いや、座らせていただいていますね(笑)」なんておどけて続けた「楓」は、何ともリリカルな響きに満ちていて、涙をぬぐう人々の姿も見られ、静かで美しい景色が広がっていた。
ここからは、ハラミちゃんのライブでおなじみの即興メドレーのコーナーへ。その場でリクエストを募り、TWICEの「TT」とBUMP OF CHICKENの「天体観測」、そして「初めて聴くので、今から耳コピしますね(しかも2倍速!)」と宣言したサカナクションの「怪獣」を即座にミックス。リアルタイムで組み立てられていく驚異のパフォーマンスに、全員が思わず息をのむ。どんな曲も一度耳にすれば即座に弾きこなす神業と、ピアノと向き合ってきた膨大な時間が確かにそこにあった。
すっかり観衆の心をつかんだところで、オリジナル曲の「虹」へ。色彩豊かなみずみずしい音像は、『ロックロック』というバンド主体のイベントにも軽やかにフィットし、ハラミちゃんの希有な音楽性を存分に知らしめていく。
「早いもので最後の曲になります。(エ〜!?という歓声に)日頃から鍛えられている皆さんありがとうございます(笑)。『ロックロック』ということで、ロックなナンバーを!」と、マイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」を華麗にプレイ! ピアノ1台で笑いも涙も引き出し、生粋のショーマンシップで魅了したハラミちゃん、お見事です!
転換トーク#2
「スピッツさんとの思い出とかいろんなものを凝縮できた時間で、感無量でした!」と全て出し切った表情のハラミちゃんを迎えた幕間。即興する際の頭の中が知りたいという話題では、「全自動な感覚」というハラミちゃんの答えに、一同驚嘆! 三輪テツヤ(Gt)が、最後の「ビリー・ジーン」に合わせて踊っていたという草野のタレコミも(笑)。「こんにち話」では、デリバリーサービスを利用する際、届け先に草野の名前を拝借していると、配達員さんの対応がよくなったというエピソードでも大いに盛り上がった。
OKAMOTO'S
Bay City Rollersの「Saturday Night」をバックに、『ロックロック』の常連・OKAMOTO'Sがトリ前をブチ上げる! 「青い天国」からクラップが自然発生し、Zepp Namba(OSAKA)は早くも彼らの手のひらの中。「今日はまだ俺たちと踊れる?」とオカモトショウ(Vo)がいざなった「Dance With You」では、オカモトコウキ(Gt)がドライヴ感たっぷりに魅せ、ハマ・オカモト(Ba)のベースソロも躍動しながら場をけん引。これぞロックバンドの真骨頂、貫禄と勢いが共存する堂々たるステージングだ。
「我々、2015年にこのイベントに呼んでいただいたんですが、その時は何と演奏なし、MCのみという。でもスピッツのためなら何でもします!ということで、当時24歳のつたない子ども4人が司会をし。その後2016、2017年と2年連続出場。以降もスピッツの皆さんとは関わることは多かったんですが、『ロックロック』は久しぶりですね。今日もありがとうございます!」(ハマ)
礼賛とハラミちゃんが、スピッツのカバーを行ったことにも触れ、
「別に言い訳ではないのですが……そんなことは聞いていないなと」(ハマ)
「2倍速で(聴いても)カバーできないしね(笑)」(ショウ)
「できない! ただこの後、本物(のスピッツ)が出ますから。我々は我々なりにやって帰ろうかと思います」(ハマ)
軽妙なやり取りを後に、「カーニバル」ではショウもアコギをかき鳴らし、幽玄な音の旅へと突入。70年代風情のあるフォーキーな質感が新鮮で、4人の底知れぬ音楽愛を垣間見る心地だ。オカモトレイジ(Dr)のカウントをトリガーにした「ありがとう」では、甘酸っぱいアンサンブルが炸裂。今宵の出会いへの感謝を高らかに歌い上げていく。
「『ロックロック』楽しんでますか? もう終わっちゃいますね。スピッツの皆さんにバトンを渡すにあたって最後、もう一発ブチ上げていきましょう!」と、ショウのシャウトから突入した「BROTHER」は、一層の高揚感でたくさんの拳が突き上がる! コウキの繰り出すサイケデリックなギターに、タフなドラミングで支えるレイジ、ファンキーに踊らせるハマ。サポートのブライアン新世界(Key)も極彩色のメロディを重ね、フロアは熱狂でいっぱいに!
ラストは「俺たちの歌を歌います!」と導いた「90'S TOKYO BOYS」へ。ライブバンドとしての強靭な存在感で、一人残らず骨抜きにしたOKAMOTO'S。『ロックロック』はいよいよ残すところあと1組です!
転換トーク#3
「MCから始まった自負がある」というハマ・オカモトの言葉を受けての「こんにち話」。2016年に奥田民生を目当てに行った『ロックロック』でOKAMOTO'Sと出会い、ワンマンライブにも足を運ぶようになったという素敵エピソードが飛び出し、OKAMOTO'Sの面々も歓喜! まさにつないだ瞬間が見えたひとときだ。そこから「ふなっしー」が担当する出演者紹介の中継風パートでは、草野マサムネが現れ、最高のバトンタッチに!
スピッツ
大歓声を受けてトリのスピッツがステージへと登場し、Zepp全体の温度がグッと上がるのを感じるなか、「オケラ」でスタート。三輪テツヤのエモーショナルなフレーズが轟き、「見っけ」ではクジヒロコ(Key)の鍵盤が牧歌的なムードを彩り、胸の高鳴りは増すばかりだ。手拍子で満たされる「テイタム・オニール」では、﨑山龍男の心地良いビートが草野の真っすぐな歌声を何倍にも引き立てていく。ステージを縦横無尽に跳ねる田村明浩(Ba)のエネルギーは、まるで観る者の心を直接震わせるかのよう。彼の一挙手一投足が、全体の空気を生き生きと躍らせる。
『ロックロック』のお楽しみの一つである恒例のカバーは、米津玄師の「Lemon」だ。瞬時に自分たちの色に染め上げる馴染みっぷりでありながら、同時に米津の楽曲にもスピッツの血が息づいていることに気付かされる。
MCではこれまたお馴染み、バンドの年間ライブで唯一となるコール&レスポンス「ロックロック?」「こんにちは!」がバッチリ決まり、和やかな空気に。
「今日もすごい出演陣で。礼賛はイベントであいさつをしたのをキッカケに聴いて、すごい人たちだなと。サインももらえたし(笑)。ハラミちゃんは、スピッツのカバーをやってくださっていたのを知っていて、本当にいいものを見せてもらいました。感動しました」(草野)
さらに、OKAMOTO’Sについてはこれまで何度も共演している縁に触れ、
「OKAMOTO'Sは『ロックロック』に限らずいろいろと助けてくれるバンドで。今日もさらにパワーアップしてて、かっこよかったですよね。ツアー前日に出てくれて、本当に感謝! あとね、ふなっしー。リスペクトしている梨なので(笑)。昨年から次は27回目だから(27=ふな)、ふなっしーだなと思ってたんですよ」(草野)
そんなほほ笑ましいこぼれ話に続いては「初恋クレイジー」へとなだれ込む。うららかな温度感のなか、草野のブルースハープが冴え、エバーグリーンな輝きを放つ「運命の人」では、聴くたびに心ごとわしづかまれるほどだ。
「今日の出演者の皆さん、テレビで拝見することも多いじゃないですか。……スピッツが一番素人っぽくない?」(草野)
「まぁ、今に始まったことじゃないです(笑)」(三輪)
脱力ムードのやり取りから一気にラストスパートへ。「クリスピー」「8823」と畳み掛け、田村が三輪のギターピックを次々と客席へ投げるおちゃめなシーンも。﨑山が放つタイトなリズムが際立つ「美しい鰭」で本編は幕を閉じた。
すかさず沸き起こるアンコールに応え、メンバーが再び登場。それぞれが『ロックロック』への思いを語る。
「もう27回つないできたってことだよね。音楽を、バンドをやっていく限り、つながっていくものだよね。2日間本当に楽しかったです!」(田村)
「もう皆さんがギュッと詰まっているこの光景を見ると、『ロックロック』だなぁって思います」(クジ)
「『ロックロック』はいろんなバンドマンやミュージシャンとつながってきて、すごく充実しているよね。幕間の映像もおもしろくて、あっという間だった。すごく楽しかったです」(﨑山)
「ハラミちゃんの名前の由来って知ってる? ハラミが好きだからだって。俺は寿司が好きなので、今日の残り時間はマグロくんにします」(三輪)
「じゃあ俺は、固めプリンちゃんで(笑)」(草野)
と、自由過ぎるトークで和ませ、高まるクラップでの「胸に咲いた黄色い花」、晴れやかな「幻のドラゴン」でフィナーレを飾った。
「『ロックロック』、まだまだ続けていきます。またお会いしましょう」(草野)
そう約束し、いつまでも冷めることのない熱をもたらしてくれたスピッツのステージだった。
加えて、クロージングパートでは「楽しかったというしかないというか。音楽が好きでよかったなってすごく思いました」というシンプルな草野の一言が、全てを象徴していたと言えるだろう。また次回の『ロックロックこんにちは!』が今から楽しみでならない。
取材・文=後藤愛 撮影=オフィシャル提供(撮影:河上良/小川星奈)
>>初日のレポートはこちら!
スピッツ恒例『ロックロックこんにちは!Ver.27』初日レポート
――奥田民生、go!go!vanillas、Bialystocksがつないだ音楽と幸福「ここにいるのはスピッツにとって特別な人ですから」
イベント情報
【9/18】 奥田民生 / go!go!vanillas / スピッツ / Bialystocks
【9/19】 OKAMOTO’S / スピッツ / ハラミちゃん / 礼賛
ナビゲーター:FM802 DJ 加藤真樹子 / FM802 DJ 中島ヒロト