滋賀で、琵琶湖で音楽が鳴り響くーー西川貴教主催『イナズマロック フェス 2025』初日にももクロ、ながのーず(長野博+井ノ原快彦)、ベガス、=LOVE、Novelbright、尾崎匠海&藤牧京介ら豪華集結
『イナズマロック フェス 2025』9.20(SAT)滋賀・烏丸半島芝生広場 特設ステージ
滋賀県出身のアーティストであり、滋賀ふるさと観光大使を務める西川貴教が、2025年9月20日(土)・21日(日)の2日間にわたり、滋賀県草津市で『イナズマロック フェス 2025』(以下『イナズマ』)を開催した。琵琶湖に隣接する烏丸半島芝生広場の特設ステージでは、2日間でアーティストやパフォーマー合わせて約100組が出演。全国各地から約8万人もの観客が集結し、『イナズマ』そして滋賀の魅力を、グルメやエンタメなどを通じて存分に楽しむ2日間の饗宴が繰り広げられた。
雷神ステージには、20日に=LOVE、尾崎匠海&藤牧京介(INI)、ながのーず(長野博+井ノ原快彦)、西川貴教、Novelbright、Fear,and Loathing in Las Vegas、ももいろクローバーZが出演。21日にはIMP.、IS:SUE、T.M.Revolution、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、FANTASTICS、FRUITS ZIPPER、YUTA(NCT)が登場した。
翠星チークダンス
各ステージの転換タイムには、愛凜冴、翠星チークダンス、セルライトスパ、ダブルアート、20世紀、もも、エルフ、オーサカクレオパトラ、ツートライブ、フースーヤ、丸亀じゃんご、ミサイルマンといった東西の人気芸人がネタを披露し、イベントを大いに盛り上げた。
「地元に音楽で恩返しがしたい」との思いから、西川は2008年に滋賀県の観光大使に就任。翌年の2009年から『イナズマ』をスタートさせ、今年で17回目の開催を迎えた。アーティスト主催の音楽フェスとしてだけでなく、琵琶湖の環境保全や地域振興を目的とした取り組みも行っている。今年は『大阪・関西万博』や、滋賀県で44年ぶりに開催される国スポ・障スポなど、注目イベントが続く中での開催となった。また、初の試みとして「ふるさと納税」を活用した販売や、琵琶湖の立地を活かしたシャトルバスならぬ「シャトル船」の導入など、他にはないユニークな取り組みも展開された。
なお、『イナズマロック フェス』という名称での開催は今年が最後。西川自身がSNSで告知していた通り、来年からはイベント名と内容を刷新し、新たな歴史を刻むことになる。17年の歴史を締めくくる『イナズマロック』の集大成となる2日間の模様を、ステージはもちろん、会場全体の雰囲気も併せてお届けしたい。
尾崎匠海&藤牧京介(INI)
初日となる9月20日、「雷神ステージ」のトップバッターを務めたのは、11人組グローバルボーイズグループ・INIから、ボーカルメンバーの尾崎匠海と藤牧京介の2人。まずは「HERO」をアカペラで披露し、初出演となる『イナズマ』にインパクトを残すべく、2人の歌声の魅力を存分に届けた。「最高に盛り上げて帰りたい!」と語り、「Don’t Worry」ではダンサーを引き連れ、心地よく鳴るビートの中、緩急をつけたダンス&ボーカルで互いの個性を際立たせた。
尾崎は学生時代、友人が西川貴教のファンだったことから『イナズマ』の存在を知っていたという。「まさか自分が出演する側になるなんて!」と驚きを語り、藤牧も「ずっとここにいたい!」と、初参加ながら居心地の良さにすっかり魅了された様子。その後も「プロポーズ」で多幸感あふれる歌声を響かせ、「Party Goes On」ではタオルを回してフェスらしい高揚感を演出し、観客のテンションを一気に引き上げた。
Novelbright
今年で3度目の出演となるNovelbrightは、“イナズマファミリー”としてもすっかりお馴染みの存在。ステージ出演は3度目だが、過去には風神ステージへの出演をかけたオーディションに応募した経験もあり、彼らの『イナズマ』への思い入れはひとしお。サウンドチェックからT.M.Revolutionのカバー曲を披露するなど、序盤からフィールドを盛り上げ、「Sunny drop」では曇天を晴らすようなアッパーなギターサウンドで心地よいスタートダッシュを決めた。
「最高の時間を作って、西川さんの誕生日をお祝いしたい。“最高”を共有して、最高の思い出を作っていこう!」と語り、「愛とか恋とか」「ツキミソウ」など上昇感たっぷりのキラーチューンを連発。新曲「Call me」では開放感あふれるロックサウンドで観客の心に、イナズマ“ロック”の真髄をしっかりと刻みつけた。
=LOVE
2018年に風神ステージで初出演してから、7年をかけて雷神ステージに登り詰めた=LOVE。ボリュームたっぷりのふわふわと軽やかに跳ねる色とりどりの衣装をまとい、「絶対アイドル辞めないで」では王道アイドルソングで観客を魅了。10人のメンバーそれぞれの表情やポーズは十人十色で、とにかく可愛らしい。
「超特急逃走中」では歌割りもダンスも個性を活かした構成で、フィールドのあちこちから「可愛い!!」と歓声が上がる。“イコラブ”“イナズマ”コールで盛り上がる会場に、「いらない ツインテール」では拡声器を使った煽りでロックフェスらしいハードな一面も披露。「Oh! Darling」ではタオルを振り回し、「この空がトリガー」ではライブアーティストとしての風格を感じさせる堂々としたパフォーマンスを展開。ラストの「とくベチュ、して」では、王道かつスイートなアイドルソングで最大級の“可愛い”を振りまき、観客を夢中にさせた。
Fear,and Loathing in Las Vegas
『イナズマ』の中でも“ロック”の最前線を走る彼らは、いつも通りのハイテンションなステージインから「イナズマ! 楽しんでいこうぜ!」と叫び、「Return to Zero」へ突入。ハードコア×トランスのエネルギッシュなサウンド、ハイ&ローのツインボーカルに魅了され、フィールドの最後方まで拳が突き上がる。
イナズマ常連の彼らのステージとあって、観客もお馴染みのパラパラダンスを披露。「キラキラしたアイドルの後で恐縮だけど、暴れ狂って変なヤツが出てくる。それこそがイナズマの真骨頂!」と、ジャンルレスに音楽を楽しめるフェスの魅力を叫ぶ。
「Let Me Hear」「Virtue and Vice」と、楽曲ごとに歓声が沸き起こるたび、彼らが『イナズマ』に愛されていることがよく分かる。「お待ちかねの兄貴ー!」と叫び、今年も西川とのコラボ曲「Be Affected」を披露。パワフルな西川の声に、クリーンボーカルとスクリームがぶつかり合い、観客は歓喜の声を上げる。「まだまだ暴れたってや〜♪」と西川が煽れば、So(Vo)は「全力でやるしかない! がむしゃらにやっていくんで! 今日一番のパーティをやるぞ!」と宣言。ラストの「Lucky Will Be There」まで、スパークしまくりのステージを駆け抜けた。
ながのーず(長野博+井ノ原快彦)
「去年から活動してない! ずっと充電してました!」と、ながのーずが登場するのは昨年の『イナズマ』以来。なぜなら、『イナズマ』限定のスペシャルユニットだから。今回も長野博と井ノ原快彦の2人に、ダミーの坂本昌行人形とバンドセットでのステージ構成。
まずは「Honey」でアイドルとしての姿をしっかりと誇示し、「俺たちの長野博」ではポップでファニーな演出に加え、井ノ原がドヤ顔たっぷりに“博愛”を見せつける。
『ウルトラマンティガ』の主題歌「TAKE ME HIGHER」では、ユニットの生みの親でもある西川とコラボ。さらに、本物のウルトラマンティガも登場し、西川ならぬ“ウルトラマン滋賀”とのミラクルな共演に観客は大興奮。「WAになっておどろう」ではウルトラマンティガも一緒に踊るというサプライズもあり、新曲「ながのーずのテーマ」も披露された。来年、また年に一度の再会があることを願うファンも多かっただろう。
Re:name
雷神ステージの熱気に負けじと、風神ステージにも全国からライブハウスの猛者たちが集結。伊東歌詞太郎、SG、キズ、kohamo、近藤利樹、BESPER、メリクレット、Re:name、LINKL PLANET、606号室、夕方と猫など、ジャンルレスなアーティストが次々と登場。無料エリアに位置する風神ステージには、世代を超えた観客が大勢集まり、初めて目にするアーティストとの出会いが、次のライブハウスへ、そしていつかのイナズマへと繋がっていく期待が高まった。
無料エリアはライブだけでなく、フードエリアの充実ぶりも目を見張るものがある。観客からは「『イナズマ』はフェス飯の概念がぶっ飛ぶほど美味しいグルメがそろっている」「滋賀の美味しいものが一度に味わえる!」と興奮気味の声も。近江牛、しじみ、サラダパンなど滋賀の名産に加え、毎年開催される『イナズマフードGP』では、全国から選りすぐりの飲食店が出店し、その味を競う。グランプリ店や歴代の人気店が軒並み出店し、焼き小籠包、ハンバーガー、牛タン、博多もつ焼きそばなどが並ぶ。
西川監修の『イナズマロックカレー』は毎年ブラッシュアップされ、今年は贅沢に近江牛を使ったカレーを600円という破格で提供。さらに、今年からはスイーツ部門も新設され、クレープやフルーツ飴など本格的なメニューがずらり。フードエリアを目的に来場する人も多く、その魅力は折り紙付きだ。
「KIDSエリア」には、子どもたちが思い切り遊べる芝生エリアにふわふわドームや遊具が設置され、充実ぶりも素晴らしい。「子どものフェス初めにぴったり。風神ステージのライブやご当地キャラと写真を撮ったり、家族で交代しながら楽しんでいます」「子どもが生まれるまでは夫婦で参加していたけど、今は無料エリアでフェスの雰囲気だけでも楽しめたら」と、ファミリーでの参加が多いのもイナズマならではの光景だ。
ライブエリアの充実ぶりにも注目したい。会場はの種類ごとにエリアが区切られており、前方でガッツリ盛り上がる派も、後方でゆったり観る派も、それぞれのスタイルで楽しめるのが魅力だ。また、VIPエリアでは特別観覧席や最前列の特別立ち見エリアでライブを堪能できる。ドリンクやお手洗いなども専用エリアが用意されており、「毎年のようにイベントに参加している。『イナズマ』はいつもホスピタリティが充実しているけど、VIPの過ごしやすさを一度でも体験しちゃうと、もう戻れない……」という声も。17回目の開催ともなると、ライブの楽しみ方も人それぞれだ。
西川貴教
イベント後半には、『イナズマロック フェス』主催者である西川貴教が登場。「会いたかったぞ、イナズマ!! ここにすべてを捧げます!」と清々しい表情でこの日に懸けた思いを叫び、「Never Say Never」「BREACH」と続けて披露。タフなバンドサウンド以上に体に響く圧倒的な声量に、観客も負けじと大きな歓声で応えた。
「最高やないかーい!」とご機嫌な関西弁を飛ばしながら、イベントが無事開幕したことへの感謝を述べ、「愛している人が繋がってくれたらいい」とイベントへの想いを語る。そしてステージに迎え入れたのは、Novelbrightの沖聡次郎。『イナズマ』が人生の転機となった沖は、「2人並んで演奏がしたかった」と語り、西川が作詞、沖が作曲を手がけた「HEROES」を披露。“憧れのヒーロー”と共に、そしていつか自分が誰かのヒーローに——。互いに目を合わせ、ありったけの感情を昇華させる2人の姿が印象的だった。
「何の取り柄もなかった僕にできた初めての夢。(西川さんは)人の夢を動かせられる人。人生の夢を叶えてくれてありがとうございます!」と感極まり涙する沖に、西川も涙腺を刺激されるが、「あかんで〜。湿っぽい話はなしよ〜」とふざけてかわす姿も、ファンにとっては愛おしい光景だった。
ステージ後半では、自身が公式PR大使を務める「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」の非公式テーマソング「響ヶ喝采」を披露。何度も訪れる興奮のピークに、非公式ながら“主役は自分だ!”と言わんばかりのタフなバンドサウンドで、観客は歓喜の声を上げて応えた。
その後も「FREEDOM」「BEYOND THE TIME -メビウスの宇宙を超えて-」と、ガンダム作品の楽曲を続けて披露。ダイナミックな歌声とサウンドで濃厚な世界観を築き上げ、映画のクライマックスが何度も訪れるようなステージが続いた。ラストにはFear,and Loathing in Las VegasからSo、Minamiを呼び込み、「Energy Overflow」へ。西川のとてつもない声量で届けられる歌声が、ハイ&ローのツインボーカルとぶつかり合う圧巻のステージに。「やっぱ最高です!!!」——その言葉、まったくそのままお返ししたい!
ももいろクローバーZ
夜の帳が下り、琵琶湖から涼しい風が吹き込む中、初日の雷神ステージのトリを務めたのは“イナズマファミリー”のももいろクローバーZ。4年連続でのトリともなれば、ファンの反応もひと際大きい。GARLIC BOYSのカバー「あんた飛ばしすぎ!!」で観客の気持ちを代弁するようにスタートすると、「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」「The Diamond Four」とキラーチューンを連発。4人の歌とダンスはもちろん、オーディエンスも息ぴったりに応えていく。
「いつもここで会える安心感がある」と語る4人は、イナズマファミリーとしてこのステージで観客と再会できる喜びを伝える。「Event Horizon」など新曲2曲に加え、「ちょっと大人っぽい、夜空に似合いそうな曲」として披露された「Re:Story」では、4人の声の個性を存分に打ち出し、ライブアーティストとしての芯の強さを誇示した。
ライブ終盤では「走れ! -ZZ Ver.-」でステージを右へ左へと駆け回り、笑顔いっぱいのパフォーマンスで観客を魅了。ここでステージが終わるかと思いきや、やはりそこはイナズマ。毎年恒例の“茶番”がスタートする。
豪華メンバーによるバンドの生演奏をバックに、小芝居を長時間披露する高城れに。そこにT.M.Revolutionがしぶしぶ(!?)登場し、久しぶりの歌唱となる「LEVEL4」を熱唱。「なんでやねん!」のツッコミはもちろん、「モモクロをトリにするって、こういうことでしょ!」とドヤ顔を見せる4人。「トリはやっぱりモモクロちゃんしかいない!」というT.M.Revolutionの言葉で、エンタメたっぷりに初日の幕が閉じた。
取材・文=黒田奈保子 写真=『イナズマロック フェス 2025』実行委員会 提供