ハナレグミ　フォーマットにとらわれない表現の自由、繊細さとふくよかさを兼ね備えた豊かな音の響きが一体となった『THE MOMENT』初日公演レポート

THE MOMENT 2025
2025.12.10 NHKホール（東京）

ハナレグミが12月10日に東京・NHKホールにてプレミアムライブ『THE MOMENT 2025』の東京公演を行った。本公演はオーディエンスと音楽を通じた感動の“瞬間を共有”するべく、2020年に初開催されたライブシリーズ『THE MOMENT』第3回目の初日公演にあたるもの。バンドマスター/アレンジャーを務めるLITTLE CREATURESの鈴木正人が率いるバンドにホーンと美央ストリングスを迎えた特別編成が組まれ、スペシャルゲストとして内田也哉子が登場した。

このプレミアムなライブシリーズ『THE MOMENT』の大きな特徴は、フォーマットにとらわれない表現の自由を追求してきたハナレグミの音楽性に呼応し、ソウル・レビューや現代音楽アンサンブル、ビッグバンド、クラシカルな室内楽団など、楽曲に応じて表情を変える自由度の高いアレンジと演奏。繊細さとふくよかさを兼ね備えた豊かな音の響き。近年、ロバータ・フラックやジュリー・ロンドンらが歌うスタンダードナンバーに触発され、ボーカリストとしての表現の可能性を探求しているハナレグミのあたたかく深い歌声にある。その全てが一体となり、立ち現れてくる情景は聴き手の想像力を介してどこまでも広がる。

この日は、東京スカパラダイスオーケストラとのコラボ曲「追憶のライラック」をはじめ、チャールズ・チャップリンが作曲したスタンダードを日本語訳詞でじっくり歌った「Smile」、敬愛するポール・サイモンの名曲「Still Crazy After All These Years」といったカバー曲を披露。代表曲である「深呼吸」や「発光帯」、最新アルバム『GOOD DAY』収録の「雨上がりのGood Day」といった自身の楽曲もスペシャルなアレンジで演奏された。「家族の風景」ではスペシャルゲストの内田也哉子による朗読と深みへと誘うハナレグミの歌声が共鳴し、郷愁や過去の記憶を喚起させる特別な時間を紡ぎ出した。

12月25日にはグランキューブ大阪メインホールにて『THE MOMENT 2025』の大阪公演が控えているが、この日、NHKホールでの東京公演ソールドアウトを受け、2026年2月1日（日）東京国際フォーラム ホールAでの追加公演と、内田也哉子と中納良恵（EGO-WRAPPIN'）の特別出演がステージ上で発表された。

東京公演の同日には、自身の音楽的ルーツとなった楽曲のカバーとセルフカバーからなるEP『THE MOMENT』の配信がスタートしたばかりだが、フォーマットにとらわれないハナレグミの音楽は作品に“その瞬間”を映し出した後、刻々と変化してゆく。その移ろいゆく様を想像しながら、プレミアムライブ『THE MOMENT』の向かう先を楽しみにしていてほしい。

取材・文＝小野田雄　撮影＝横山マサト