『私をドルシネアと呼んだ男』稽古場オフィシャルレポート!声が描き出す情景 鳳蘭×尾上右近が魅せる“もう一つのドン・キホーテ”

19:00
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撮影:渡邊康平

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1月30日(金)に兵庫・西神中央ホールにて開催される朗読劇『私をドルシネアと呼んだ男』の稽古場オフィシャルレポートが到着した。

半世紀以上舞台の第一線で輝き続ける鳳蘭と、歌舞伎界の若き恒星・尾上右近が並び立つ新作朗読劇『私をドルシネアと呼んだ男』の読み合わせ稽古が、都内某所で行われた。構成・演出は戸部和久。物語は、戸部がこの舞台のために紡いだオリジナルだ。上演は2026年1月30日、西神中央ホールにて。奇跡的とも言える顔合わせが生む熱が、静かな稽古場の空気を確かに震わせていた。

戸部は稽古冒頭、「原作となるセルバンテスの『ドン・キホーテ』を今あらためて正面から見据えたい」と語り出す。セルバンテスその人こそ“ドン・キホーテ”であり、ドルシネアは現実ではなく“夢の像”だという確信から、発想は跳ねる。右近が演じる現代に生まれ変わったセルバンテスがミュージカル『ラ・マンチャの男』を観て予期せぬ衝撃に打たれ、「自分が描いたものは何だったのか」を問い直す。一方で鳳が演じる「或る女」は、セルバンテスによる『ドン・キホーテ』やその派生作の想像力が生み落とした“ドルシネア=アルドンサの魂”。二つの存在が出逢ってしまうところから、物語は動き始める。

幕開けの情景は繁華街の喧騒から一歩入った軒先。戸部は、新宿の街角で見つけた「新しく整えられた店並みに、一軒だけ息づいている昔ながらのタバコ屋」に感じた“生命感”をもとに、冒頭のイメージを掬い上げたという。

撮影:渡邊康平

読み合わせは休憩なしで約二時間。鳳と右近は『ドン・キホーテ』に登場するさまざまなキャラクターを二人で自在に演じ分けた。もちろん、あの“サンチョ・パンサ”も顔を出す。言葉が空間を形づくり、息づかいが光となって陰影を落とす。鳳のすべてを包み込むような声と、右近の鋭い応答が響き合い、見えない風景が明瞭な場面となって、観る者の脳裏に浮かび上がった。

稽古は終始、言葉を頼りに進んでいく。戸部は身振りなどで示すことなく、「いま見せたい心の揺れ」を丁寧に手渡し、ときに提案を促す。次の読みで同じ行が別の意味を帯びて聴こえるのは、その瞬間ごとに必然が上書きされていくからだ。音楽面でも重要な瞬間があった。フラメンコギターのICCOUには、この日、稽古場で初めて具体的な指示が与えられ、その場で音の設計図が立ち上がっていく。メロディが情景の“地面”をつくり、和音の陰影が“人物の輪郭”を深くする。 『ラ・マンチャの男』で培われた彼の経験が、『ドン・キホーテ』にまつわる新作の血流を、その場で脈打たせはじめたのがわかった。

鳳蘭は、理想の像=ドルシネアに血を通わせ続けてきた矜持で“夢”を生身へ引き戻す。右近は、歌舞伎とミュージカルで鍛えた可変性を武器に、役から役へ軽やかに渡り歩き、台詞の余白に歌舞伎と現代の速度を巧みに忍び込ませる。二人の“声だけ”の寄り添いと闘いは、朗読劇の枠を超えて、観客の想像の中に鮮明な遠近法を描いた。

撮影:渡邊康平

鳳蘭、尾上右近、ICCOU、戸部和久の四者が再び顔を合わせるのは、本番の西神中央ホールだ。ミュージカル、演劇、歌舞伎、フラメンコギターとジャンルの垣根を越え、ここでしか生まれない“もう一つのドン・キホーテ”に出会ってほしい。上演は1月30日。豪華キャストが贈る一回限りの新作朗読劇を、どうぞお見逃しなく。

取材・文・撮影:渡邊康平

朗読劇情報

朗読劇『私をドルシネアと呼んだ男』

公演日程:2026年1月30日(金)16:00開演
会場:兵庫・西神中央ホール

原作:ミゲル・デ・セルバンテス
構成・演出:戸部和久
出演:鳳蘭、尾上右近、ICCOU(フラメンコギター)

:全席指定 一般:5,500円 神戸市民特別割引:4,500円
https://eplus.jp/sf/detail/4445540001-P0030001

企画:株式会社シアターワークショップ
主催:西神中央ホール

公演HP:https://seishin-hall.jp/event/260130hl/
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