二代目帝劇を未来へ。企画担当者が一挙紹介!帝劇LoverによるLoversのためのグッズたち『帝劇プレミアムリメイク』制作裏話
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<帝劇 Legacy Collection>帝劇プレミアムリメイク
老朽化に伴う建替えのため、2025年2月、惜しまれつつ一時休館した二代目帝国劇場。1966年に開場して以降、日本における演劇の殿堂として君臨し続けてきたこの劇場は、ここで上演された数々の作品と同様に、こだわりの意匠や重厚感ある建材を使った劇場建築自体もまた、多くの演劇人と演劇ファンに愛された。何を隠そう筆者も帝劇作品の、そして帝劇という劇場自体のファンであり、建替えが決まってからは行くたびに劇場内外で撮影可能な場所の写真を撮りまくったものである(最終公演のCONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』ではイープラスの当日引換券販売に大変お世話になりました)。
三代目帝国劇場のオープンは2030年頃と言われているが、それまでの期間「歴史ある帝劇の灯を、お客様のお手元でともし続けていただきたい」、そして「三代目帝劇にも足を運んでほしい」という思いで、現在、劇場資材を活用する商品開発プロジェクト<帝劇 Legacy Collection>が展開中である。
このプロジェクトのキーパーソンが東宝演劇部 IP戦略室の畑野秀明さん。「帝国劇場は、私自身『SHOCK』が好きで学生時代から通っていた劇場であり、新卒として入社した1年目に配属された場所でもあります。思い入れのある劇場です」という畑野さんだからこそのラインナップが揃っている。
二代目帝劇59年の歴史をどう商品化し、どんなところにこだわったのか。畑野さんにこだわりポイントや、商品開発秘話を伺った。
※以下「」内は畑野さんのコメント。
自身も通い詰めた思い入れある劇場。
「やれることは全部やる」コンセプトに走り出した
畑野秀明さん
昨年春から始まった<帝劇 Legacy Collection>は、すでに《席番プレート記念商品》、《帝劇プレミアム備品販売》、《帝劇オリジナルギター》の3つの企画が好評を博していたが、2026年1月には、その集大成といえる《帝劇プレミアムリメイク》が発売開始となった。これは、帝国劇場内で使用されていた建材や劇場備品を活用して商品を開発・販売、プレミアムな全30アイテムに生まれ変わらせたもの。そこには、本来なら廃棄される予定だったものを生まれ変わらせるアップサイクルとしての視点もある。
活用資材は大きく分けて(1)客席モケット生地、(2)ロビー照明、(3)ロビーの手摺りの木、(4)ロビー階段手摺り下の突板アクリル材、(5)ロビー柱の自然石、(6)ロビー壁のレンガと入口のガラス扉、(7)喫茶照明・その他 の7種類。
それぞれの素材、商品についての話を伺う前に、まずは本プロジェクトの成り立ちや企画への思いを畑野さんに教えていただこう。
「私は演劇部内のIP戦略室というところにおりまして、ここはグッズや配信などの演劇作品の二次利用や、ライブエンタテインメントを軸とした新規事業を担当する部門です。その中で私は主に新規事業の企画を担当していまして、もともとは別の案件でZOZOTOWNさんと一緒に何かできないかと相談をしていました。そんな中、帝劇が休館、建替えになることが決まり、SDGsなどの時代の流れもあり、帝劇の建材、資材でアップサイクルの文脈で何かできないかという企画が生まれました。そこにカリモク家具さんやデザイナーさんが乗ってくださり、今の形へとなりました。
帝劇は、50年以上通ってくださっているお客様もいらっしゃるほど多くの方々に長く愛していただいた劇場です。「帝劇」というブランドを残せるような上質なものを作りたい。そして二代目帝劇をお客様に還元したい、できれば日常使いできる形で……。さらにせっかくZOZOさん、カリモク家具さんとご一緒するので、小物から家具まで色々なアイテムを作りたいなと考えました。軸にしたコンセプトは『やれることは全部やる』です(笑)。帝劇は広い劇場ですし、活用できるものがたくさんある。プロジェクトを進める上で出たアイデアは出来る限り全部やっていこうと取り組みました」
……ということで、《帝劇プレミアムリメイク》の各商品を、さっそく紹介してもらおう。
(1)客席モケット生地を使った商品
客席の椅子に使われていた“古代紫色”のモケット生地。劇場では、例えば観客が何かを座面にこぼしたりした際に張替えできるよう、予備の生地を用意していたそうで、その生地を使っている。
客席への“リスペクト椅子”「帝劇コンフォートチェア “Encore”」
《帝劇プレミアムリメイク》の商品の中でも、その豪華さでひときわ目を惹くのがこの椅子だ。紫の生地、分厚いクッションは見慣れた“あの椅子”なのだが、劇場客席にあった機能的なものとはひと味違う、ラグジュアリーな雰囲気になっている。
「《帝劇プレミアム備品販売》で販売したものとは違い、こちらは予備として保管していた新品のモケット生地を使っています。ただ背面に板とクッションがある構造、背もたれのセンターラインは実際の客席を踏襲していて、いわば“リスペクト椅子”。また、席番プレートは実際に使われていたものです。ちなみに<Legacy Collection>ということで、基本的に<L>列と<C>列のプレートを使用しています(笑)。受注販売ですので、受注数によっては違う列番号が使われる可能性もありますが、ランダムでのお届けとなります」
帝劇コンフォートチェア “Encore”
実際の生地を使用した一点もの「帝劇コンテイナー “Restructured Purple”」
「コンフォートチェア同様、モケット生地を使った商品は、基本的には予備にとっておいた新品の生地を使っていますが、このコンテイナー(小箱)だけは、唯一お客様が座っていた実際の客席の生地を使用しています。一時休館に入った翌日から2日間かけ、私が客席のモケット生地を剥がし、それをNUNOUSという最新の布再生技術を使ってリメイクし、蓋面に貼り付けています。元の風合いを残しつつも、布を一度圧縮することで出来る積層をスライスすることによって一個ずつ柄が変わるので、すべて一点ものです。布の再生としては、究極のアップサイクルだと思います。木部分はヒノキを採用し白の塗装を施していますし、再生した布部分は表面にアクリルコーティングしていますので、高級感も耐久性もあるものになっています」
帝劇コンテイナー “Restructured Purple”
ほかにモケット生地を使った商品は、帝劇ペンケース、帝劇ポーチ、帝劇ブックカバー、帝劇トレイ(サークル)、帝劇トレイ(ワイド)、帝劇ジグソーパズル “1階平面図/帝劇特製巾着付き”、帝劇ジグソーパズル “客席/帝劇特製巾着付き”がある。
(2)ロビー照明を使った商品
1・2階の上手・下手ロビーを照らしていた筒型の照明は、3サイズの照明家具に。
ちょっとニッチなアノ場所!?「帝劇アッパーライト(L)(M)(S)」
「1階だと、皆さんがお化粧室に並ばれていたロビー突き当りを右に曲がった通路、あの上にこのライトはありました。ちょっとニッチな素材かもしれません(笑)。劇場では下向きに明かりを灯していましたが、上を照らすアッパーライトになりました。リモコン式で、調光・調色も可能です。土台の木はカリモク家具さんの木です」
実は畑野さんのお話を聞きながら、自分のスマホ内の帝劇写真コレクションを探し「あそこにあったアレがコレに……!」と編集担当さんと盛り上がっていたのだが、この照明は唯一、畑野さんに「なかなか撮ってる人はいないと思いますよ」と言われたもの。しかし帝劇ファンの筆者、ちゃんと撮ってました!(何の自慢?)
2階上手ロビーにあった照明(写真提供:平野祥恵)
帝劇アッパーライト(右)/左は喫茶照明を使った「帝劇テーブルライト“Café IMPERIAL”」
(3)ロビーの手摺りの木を使った商品
帝劇の階段から、そのまま2階の吹き抜けをぐるりと囲んでいた手摺り。「帝劇は思った以上に手摺りが多かったので、かなりの長さが取れました」と畑野さんが語るこの素材は、バラエティ豊かな商品に生まれ変わった。
コラボだからこそ生まれた一品「帝劇ロングタイムベンチ」
「座面と底面は手摺りをそのまま使い、支えの部分をカリモク家具さんの木で作っています。まさにカリモク家具さんとコラボした《帝劇プレミアムリメイク》を体現した商品と言えます」
帝劇ロングタイムベンチ
本物とほぼ同サイズ!「帝劇着到板キーホルダー」
多くの帝劇ファンがきっとロマンを感じるであろう「着到板」という響き。そこを外さないところも、帝劇愛のある畑野さんだ。
「これは帝劇の建材である手摺りを削り、着到板とほぼ同サイズに加工して、着到板風のキーホルダーにしたものです。「ほぼ」と言うのは、実は着到板ってワンサイズではなく、時期によってまちまちなんですよ。商品はおそらく最近のものに近いサイズなんじゃないかな」
帝劇着到板キーホルダー
ほかに手摺りを使った商品は、帝劇ボールペンがある。
帝劇ボールペンは、国内メーカー4C規格の替芯に対応。インクがなくなっても安心!
(4)ロビー階段手摺り下の突板アクリル材を使った商品
ロビー階段手摺りの下にあった、トチとマホガニーの木を薄くスライスしてアクリル材で挟んだ突板は、ほぼそのままの形を生かした商品に。
ロビー階段の手摺り。装飾の木目は、表面と裏面で色が違う(写真提供:平野祥恵)
劇場風景を完全再現!「帝劇突板アクリル照明(マホガニー/トチ)」
「ロビーの光景を覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、手摺りの壁面の印象的な木目は、本物の木を薄く切ってアクリル材で挟んだものでした。それをリメイクした商品です。特に照明の方は、劇場同様、下方からLEDライトを当てているので、ほぼ完全再現。ちなみに、ロビー階段の内側と外側で色が違っていたのはお気づきでしたでしょうか。外側が濃い茶色のマホガニー、内側が明るい色味のトチが使われていました。商品もそれぞれ2種ご用意しています」
ちなみに帝劇がまだ稼働していた時から動き出していた当プロジェクト、さまざまな建材や備品を活用する商品案が持ち上がっていた中で「実際に取り出してみないと、使えるかどうかわからない」というものも多かったとのこと。この資材などは確かに、光を通すほど薄い木の板、取り出したら脆くなっていたという可能性もありそう。無事商品になって良かった!
帝劇突板アクリル照明(マホガニー/トチ)
想い出の保管にも「帝劇突板アクリルBOX(マホガニー/トチ)」
「照明と似た形、ほぼ同サイズのBOXですが、実際に手に取っていただくと重厚感あることがわかっていただけるかと思います。平置きで、ネクタイや大切な小物を入れるのにも良いかと。あと、A4のチラシがちょうど入るサイズなので、おうちで帝劇のチラシを保管されている方にもいいかもしれません」
帝劇突板アクリルBOX(マホガニー/トチ)
しっかり重厚感のあるつくり!
A4サイズがぴったり入ります
(5)ロビー柱の自然石を使った商品
柱を飾っていたのは、黒い“ブラックスェード”と、赤茶色の“インペリアルレッド”という石。今は産出されなくなった貴重な自然石が贅沢に使われていたのも、帝劇建築の特徴だ。これもユニークな商品に生まれ変わった。また、この石を使った商品のデザインを担当したのは矢橋大理石。矢橋大理石は1966年の開場時に、建築用石材を調達・施工した会社であり、その会社が自分たちで作ったものを解体し、これらのアイテムを作ったというところにもドラマがある。
2階喫茶室前。写真右下にあるのがインペリアルレッド、その後ろにあるのがブラックスェード(写真提供:平野祥恵)
三代目に繋がる想いを込めて「帝劇箸置き(“Butterfly”/“Chair”/“Original”)」
「黒い柱は、覚えている方も多いかもしれません。赤茶色の方は実は数が少ないのですが、喫茶室の横などにありました。箸置きは3種ご用意していますが、それぞれ意味があります。“Butterfly”は愛された二代目帝劇が蝶のように羽ばたき、三代目の帝劇に進化していくという思いを込めました。“Chair”は客席をイメージしています。“Original”はノーマルな形の箸置きです」
帝劇箸置き “Butterfly”(手前)/“Chair”(右)/“Original”(左)
採れたままの“小さな帝劇”「帝劇レガシーストーン “Black Swede”」
「“ブラックスェード”に関しては矢橋大理石さんが上手に解体してくれて、かなりの量が採れたんです。2トンちょっとあったかな。それを採ったまま、裏面には接着用のモルタルもついた状態で台座に置き、レガシーストーンという形でお客様にお届けします。コンセプトは“小さな帝劇”。帝劇の外観も黒っぽかったので、見ようによっては帝劇に見えるね……というところから発想しました。本当に採れたままなので様々な形のものがありますが、出来る限り帝劇の外観に見えるものを選別して商品としてお届けします。30商品の中で唯一のアート作品です」
なお、採った資材は2階の貴賓室を仮置き場としていたそうで「最終的にブラックスェードの山で貴賓室が埋まった」というような裏話も。実際に手に取ってみると分厚く、これだけ贅沢に天然石を使っていたんだというところにも帝劇建築の豪華さを実感できる。
帝劇レガシーストーン “Black Swede”
ほかにロビー柱の自然石を使った商品は、帝劇コースター “Black Swede”がある。
帝劇コースター “Black Swede”には、座席表とIMPERIAL THEATREの刻印が。
(6)ロビー壁のレンガと入口のガラス扉を使った商品
(5)で使用した2種の天然石のほか、ロビー客席側の壁のレンガや、入口のガラス扉の欠片も余すことなく活用した。
帝劇のあらゆる場所がひとつに!「帝劇テラゾーテーブル(レガシーベージュ/レガシーオレンジ)」
「石材を砕いて砕石状にし、セメントに混ぜ固めた人造大理石を“テラゾー”と言うのですが、それを天板にしたテーブルも生まれました。ブラックスェード、インペリアルレッドの2種の天然石のほか、皆さんが通った正面入り口のガラス扉、そしてロビー客席側の壁一面にあったレンガを使っています。レンガは大量に採れて、何かに加工しようと様々な実験をしたのですが、すぐ欠けてしまって商品化が難しくて……。逆に細かく砕いて砂時計にしようというような案もあったのですが、そうするには粒子が大きすぎて、試行錯誤の末、結局テラゾーテーブルになりました」
ロビー客席側の壁のレンガも、ファンとしては慣れ親しんだ存在です。
ロビー客席側の壁のレンガ(写真提供:平野祥恵)
この透明なガラスが正面入り口のガラス扉だそう。
同じデザインのものはないので、どの素材がどこに使われていたものか思いを馳せるのも楽しそう!
(7)喫茶照明を使った商品・その他
366日帝劇と暮らす「帝劇日めくりカレンダー」
「ほかには、帝劇ファンの方にはカレンダーは見ごたえがあると思います。日めくりですが、劇場の様々な場所から日付の“数字”を採っています。これは、休演日に5~6日かけて、デザイナーと一緒に様々な場所の数字を探しました。お客様が見ることのできない舞台裏の写真も多数あります。実は西暦も曜日も入っていないので、どの年でもお使いいただける仕様になっています。2月29日もあります」
実際に中身を拝見しましたが、これ、かなり楽しいです! そして劇場ファンなら気になる表紙の“0番”はステージの……!? と思ったら、実は違うそうで。
「地下2階の奈落・盆まわりの床にあった「0号セリ」の位置を示すものです。帝劇内には、意外とこれ以外に0単体の数字がなく、劇場内の数字を集めたカレンダーにふさわしい「舞台機構の0番」を表紙に採用しました」
帝劇日めくりカレンダー
ほか、帝劇ジグゾーパズル“1階平面図”、帝劇ジグゾーパズル“客席”、2階の喫茶Cafe IMPERIALを照らしていた照明を使った帝劇テーブルライト“Café IMPERIAL”なども。
畑野さん自身「全商品、思い入れがある」と語る30品。関わる人の愛情もひしひしと伝わってきて、帝劇が大好きな筆者はまんまと「どれも欲しい!」という気持ちになってしまった。
あなたのお手元にも、帝劇の記憶が宿る商品をいかがだろうか。
取材・文=平野祥恵 撮影=SPICE編集部