小南満佑子×手島章斗が紡ぐ愛と運命 ミュージカル『レイディ・ベス』ゲネプロレポート
ミュージカル『レイディ・ベス』舞台写真
ミュージカル『レイディ・ベス』が、2026年2月9日(月)に東京・日生劇場にて開幕。ミヒャエル・クンツェ、シルヴェスター・リーヴァイ、小池修一郎による歴史ロマン大作が、8年ぶりに東京の地に帰ってきた。
タイトルロールのレイディ・ベス役を奥田いろはと小南満佑子、ロビン・ブレイク役を有澤樟太郎と手島章斗がWキャストで務める。今回は、レイディ・ベス役を小南、ロビン役を手島、メアリー・チューダー役を有沙 瞳、フェリペ役を松島勇之介、ロジャー・アスカム役を石川 禅が演じたゲネプロの様子をレポートする。
新世代が紡ぐ、壮麗な歴史ロマン
キャスト発表時から「フレッシュ」と形容されてきたカンパニーは、その若々しいエネルギーを武器に、躍動感ある令和の時代の「レイディ・ベス」を作り上げた。
国王ヘンリー8世の娘ベス(小南満佑子)は、母アン・ブーリン(凪七瑠海)が反逆罪で処刑されたため、片田舎で家庭教師たちと共にひっそりと暮らしていた。ある日、偶然出会った吟遊詩人ロビン(手島章斗)に淡い恋心を抱き始めるが、姉メアリー(有沙 瞳)への反逆の疑いをかけられ、ガーディナー司教(津田英佑)やルナール(高橋健介)に陥れられてロンドン塔に投獄されてしまう。メアリーの圧政に不満を募らせた民衆が「ベスを女王に」と声を上げる中、ベスは国のための人生か、1人の女性としての幸せか、究極の選択を迫られる——。
ベスの歩む道だけでなく、彼女の異母姉であるメアリーも、実母であるアン・ブーリンも、それぞれが辿る道筋は決して華々しいものではなく、その肩に重く苦しい運命がのしかかる。それでも、懸命に自分の生きる道を全うする姿は美しく、ベス役の小南を筆頭に、若手キャストたちの内面からの輝きが、作品のエネルギーとして発露していたように感じる。
『レ・ミゼラブル』のアンサンブルからミュージカルキャリアをスタートさせた小南は、抜群の歌唱力に気品が宿っていたのが印象的。ロビンと出会い恋をして、自由に生きたいと願いながらも、その佇まいにはつねに品格が宿る。だからこそ、決して叶わぬ1人の自由な少女でありたいと歌うとき、色濃い影がくっきりと浮かび上がる。その陰影が、やがて女王となる彼女の半生を、切なく、そして美しく照らし出す。
責任感の強さを纏うベスの心を溶かしたロビン・ブレイクは、手島が軽やかさとともに好演。好きな人のために必死な姿が眩しく、彼がベスにどれだけの深い愛を抱いているのか、痛々しいほどに伝わってきた。全てを投げ打つ覚悟のロビンの姿は、手島の懸命な姿とも重なり、応援したくなるロビン像を立ち上げる。
ブラッディ・メアリーとして民衆に恐れられるメアリー・チューダーを演じるのは、元宝塚歌劇団星組の娘役スター・有沙。国王としての威厳を背負い、道化師やアンサンブルを従えての登場シーンは圧巻。ベスの柔らかな雰囲気との対比で、物語に不穏な空気を運ぶ。フェリペが登場してから、わずかに垣間見える乙女な表情とのギャップにも、思わず引き込まれた。
劇場の雰囲気をガラリと変えるという意味では、スペイン組の存在も大きい。フェリペの松島は、ちゃめっ気と華たっぷりに、色気を存分に振りまく。傲慢なのに、どこか爽やかという絶妙なバランス感で、唯一無二の存在感を放つ。
彼とともにスペインからやってくるシモン・ルナール役の高橋も、実に濃いキャラクター。近年、東宝ミュージカルに立て続けに出演。その度に歌唱力を磨き上げてきた高橋の進化を感じられる役柄といえる。端正な顔立ちが謀略に歪む瞬間が見事で、中でも舞台から立ち去る間際のニヒルな一瞥は必見だ。
重層的な人間ドラマを彩る、実力派の競演
贅沢なWキャストとなっているのが、ロジャー・アスカム役の石川だ。以前はガーディナー司教を演じていた石川が、逆の立場にあるアスカムを演じるというのが面白い。包容力と貫禄を兼ね備えた石川の歌唱は、ベスを教え導くアスカムとしての説得力抜群。
同じく前回から役柄を変えて出演するキャット・アシュリー役の吉沢梨絵とともに、ベテランとしての背中を示す。なかでも、教育係として長年ベスを支えてきたアシュリーの、母のような深い愛情が心に残る。優しさと厳しさを兼ね備えた眼差しが、ベスの成長を見守り続けていた。
一方、かつて石川が演じたガーディナー司教を今回受け継いだのは津田英佑。ベスを排除しようと暗躍するガーディナーだが、その姿には信念と覚悟が滲む。悪役として描かれながらも、彼が背負った使命の重さを感じさせる懸命さが胸に迫る。また、ルナールとのナンバー「ベスを消せ」は2026年版でも健在。津田の低音と高橋の高音が混ざり合うハーモニーは、何度も聴きたくなる個性を放つ。
最後に、アン・ブーリン役の凪七瑠海についても触れたい。2025年『1789 -バスティーユの恋人たち-』でのマリー・アントワネット役も記憶に新しい凪七。今作では、ベスを遺し処刑されたアン・ブーリンを演じる。ベスへの届かぬ思いを歌に乗せて届けるシーンが多く、その声に娘への母性と悲哀を乗せる。
運命に翻弄されながらも、ベスは自らの道を選び取る。自分らしく生きるとは何か。その問いは、時代を超えて私たちの胸に響くはずだ。彼女の選択が意味するものを、ぜひ劇場で目撃してほしい。
取材・文=双海しお
公演情報
演出/訳詞/修辞 小池修一郎(宝塚歌劇団)
レイディ・ベス(Wキャスト)奥田いろは(乃木坂46)/小南満佑子
ロビン・ブレイク(Wキャスト)有澤樟太郎/手島章斗
メアリー・チューダー(Wキャスト)丸山 礼/有沙 瞳
フェリペ(Wキャスト)内海啓貴/松島勇之介
シモン・ルナール 高橋健介
スティーブン・ガーディナー 津田英佑
キャット・アシュリー 吉沢梨絵
アン・ブーリン 凪七瑠海
ロジャー・アスカム(Wキャスト)山口祐一郎/石川 禅
須田遼太郎 加賀谷奏音 小林諒音
安部三博 飯塚萌木 伊宮理恵 大竹萌絵 風間駿太朗 黒沼 亮 相良飛鷹
澤田圭佑 柴田実奈 Taichi 寺岡拓海 畑中竜也 春乃ひめか 廣瀬孝輔
政本季美 松浪ゆの 丸山泰右 光由 宮内裕衣 山下麗奈 山田 元 山田定世
リトル・メアリー(Wキャスト)上條日菜/馬場音羽
(五十音順)
東京公演 2026年2月9日(月)~3月27日(金)日生劇場
料金(全席指定・税込):平日 S席 15,000円、A席 10,000円、B席 5,000円
土日祝日・千穐楽 S席 16,000円、A席 11,000円、B席 6,000円
日程:2026年3月7日(土)
会場:日生劇場
開演:13:00~
【手数料0円】一般発売
受付期間:2026/1/10(土)11:00~2026/3/7(土)13:00
出演
奥田いろは 有澤樟太郎 丸山礼 内海啓貴
高橋健介 津田英佑 吉沢梨絵 凪七瑠海 山口祐一郎 ほか
<e+貸切公演>
日程:2026年3月21日(土)
会場:日生劇場
開演:18:00~
【手数料0円】一般発売
受付期間:2026/1/10(土)11:00~2026/3/21(土)18:00
出演
小南満佑子 有澤樟太郎 丸山礼 内海啓貴
高橋健介 津田英佑 吉沢梨絵 凪七瑠海 石川禅 ほか
貸切公演の
福岡公演 2026年4月4日(土)~13日(月)博多座
愛知公演 2026年5月3日(日)~10日(日)御園座