「ひとりでは生まれないエネルギーがある」山崎育三郎の次なる挑戦『OK! Diamonds』〜ミュージカル×ボーイズグループが切り拓く新時代
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山崎育三郎
ひとりでは生まれないエネルギーがある——。
山崎育三郎が立ち上げたミュージカル×ボーイズグループオーディション『OK! Diamonds』は、そんな実感から始まったプロジェクトだ。ミュージカルにとどまらず、ジャンルを横断して活躍するグループの誕生を目指す。
20代でミュージカル俳優として実績を重ね、30代で映像の世界へ飛び出し、今や全国区の存在となった山崎。ミュージカルへの愛を胸に第一線を走り続けてきた彼が、40歳という節目に新たな挑戦へと踏み出す。『OK! Diamonds』に挑む覚悟と、今の日本のミュージカル界への想いを聞いた。
グループだから生まれる、爆発的なエネルギー
ーーいつから「ボーイズグループを作りたい」と思うようになったのでしょうか?
日本のミュージカル界から全国で活躍するグループを作ることができたら、今までの日本の音楽シーンにはない、全く新しい何かが生まれるんじゃないか。そういう想いは、結構前から漠然と自分の中にあったんです。僕自身、若い頃からいろいろなユニット活動を経験してきました。例えば、StarS(井上芳雄、浦井健治、山崎育三郎の3人で結成)のようなミュージカル俳優によるユニット活動では、ひとりだったら決して生まれない爆発的なエネルギーがあると感じたんです。
ーー今回のプロジェクトに対する周りの反応は?
「自分もボーイズグループに入りたい!」という連絡をたくさんいただきました。みんなこの企画をすごく楽しみにしてくれているんだなあと感じて、嬉しかったです。
山崎育三郎
ーーオーディションの応募条件に、事務所に所属・契約していないことを挙げている理由は?
同じ事務所でマネージメントをしたいというのが大きな理由です。自分は29歳から映像の世界にひとりで飛び込みましたが、グループとして入っていたらもっと大きな広がりが生まれていたかもしれません。ただ、それには高い壁がありました。ミュージカル俳優個人からなるユニットの場合、所属事務所が異なることが多く、活動方針もそれぞれ違います。だったら、研音とソニー・ミュージックレーベルズの専属アーティストになってもらって、一貫してメンバー全員のマネージメントを行うことで、活動の広がりを作っていきたいと考えました。
否定しないことで、人は自由になれるーー“全肯定型”の原点
ーー“全肯定型オーディション”と銘打っていますが、これは山崎さん自身の経験から生まれたものですか?
そうですね。僕は厳しい言葉をかけられたり、否定されたりする中で、歯を食いしばってやってきた世代です。どうしても体育会系な部分があり、それに耐えられる人しか残れないような時代だったかもしれません。オーディションや稽古場では、表現をする以前の戦いが常にありました。まず緊張感や威圧感と戦って、その先でようやく自分の表現ができるんです。そこに至るまでの時間がすごく苦しくて、自分は将来こういう空気を絶対に作らないぞと誓っていました。
そんなとき、何をしても全部肯定してくれる演出家に出会ったんです。オーディションで「表現に正解はないんだよ。僕が求めている今回の形にハマるかどうかだけの話であって、あなたがNoということではない。だから自由に好きなように表現してみて」と。実際にやってみると「OK! 素晴らしいね。じゃあ今度はこういう気持ちでやってみてもらえる? あ、それもいいね」と、決して否定せずに受け止めながら、彼が求めるスタイルに導いてくれるような人でした。僕もどんどん楽しくなって、自由に表現できるようになったんです。自分がずっと求めていた形がそこにはありました。
表現をするときに一番大切なのはメンタルです。誰だって急に大勢の前でスピーチしてくださいと言われたら、緊張しますよね。ミュージカルの公演では、何百、何千の人の前でステージに立ちます。その精神状態を作るのはとても大変で苦しいことなのだと、理解してくれている演出家でした。
山崎育三郎
ーー山崎さんが信頼を寄せる、その演出家のお名前を伺ってもいいですか?
ダレン・ヤップさんです。
ーーでは、『ミス・サイゴン』(2012〜2013年)に出演されたときに出会ったんですね。
そうなんです。例えばキムとクリスの「サン・アンド・ムーン」のような繊細なシーンは、まずこの会議室くらいの広さの空間で、役者2人とダレンだけで作っていきました。そこで丁寧に積み上げて心を通わせ、役者本人が納得してはじめて、みんながいる稽古場で稽古をするんです。そうやってみんなの気持ちを汲みながら紡いでくれたダレンに、僕は救われました。
ダレンは「リーダーとは、みんなが自分らしく自由にいられる場所を作る人だ」という話もしてくれました。僕も彼のようなリーダーになりたいんです。今回の企画タイトルの「OK!」には、そんな想いを込めています。「Diamonds」というワードにしたのは、みんなそれぞれが輝きを持っていて、その輝きが今回のグループのピースにハマるかどうかを見させていただくという意味。僕は絶対にみなさんの表現を否定したくありません。参加してくださった方々の一番いいところを引き出したいですし、誰もが参加して良かったと思えるオーディションにしたいと思っています。
山崎育三郎が考える、スターの条件
ーー山崎さんは、19歳で受けた『レ・ミゼラブル』(以下、『レミゼ』)のオーディションでマリウス役に合格してデビューされました。もし当時の山崎さんだったら、今回のオーディションを受けますか?
受けたいかも。
ーー受けるとしたら、どうやって自分らしさをアピールしますか?
当時の僕は、日本全国の19歳男子の中でダントツ1位で『レミゼ』が好きだし、ダントツ1位でマリウスをやりたいと思っていました。もし『レミゼ』のクイズ番組があったら優勝するくらい“レミゼ愛”があったんです。だからオーディションでもきっとそこで勝負しますね。「1人『レミゼ』をします!」とか、「全シーン全役できるので、どのシーンからでも言ってください」みたいな(笑)。
今回の一次審査の歌唱パフォーマンス動画は、ジャンルを問わず自由です。自分が熱狂できるものや自分自身を発揮できる表現をしてもらって、「自分はこういう人間なんだ」という姿を見せてほしいですね。
ーーオーディションでたくさんの才能に出会うことになると思いますが、山崎さんが思うスター性とは?
僕が思うのは、たとえ人に何を言われようと「自分はこういう人間です」「自分はこれが好きなんだ」という“何か”を持っている人です。そこには覚悟があって、決して簡単には変わらない強い信念を持っている人。そういう人が、大勢の中にいても輝いて見えるんじゃないでしょうか。もちろん舞台はみんなで作るものですから、協調性も大切です。ただ、その中でもどこか自我を持っていなきゃいけないと思うんですよね。
ーー今までに出会った人の中で、「この人はスターだな」と思った方を1人挙げるとしたら?
主演を務めている方はみなさんスターだと思いますが、1人挙げるならば(古川)雄大ですね。若手の頃の彼を見た瞬間、「あ、この子はスターだな」と直感しました。歌がずば抜けて上手いとか、ビジュアルがいいとかそういうことではなくて、何か彼にしかないものを曲げずに持ち続けている感じがしたんです。
昔、自分の次にミュージカル『モーツァルト!』のタイトルロールを演じるのは雄大だろうなと思って、本人に伝えたことがありました。でも雄大は「いや、自分なんて絶対できないですよ」とか言っていたんですけど、実現したでしょう。自分、結構見る目はあると思うんです。
山崎育三郎
なぜ今、日本のミュージカル界にスターが必要なのか
ーー日本のミュージカル界には、今後もスターは必要だと思いますか?
日本発のオリジナルミュージカルを作っていくためには、まだまだスターの存在が必要だと思います。僕が20代前半の頃、韓国のオリジナルミュージカルで初めて世界に出た作品『サ・ビ・タ』(日本ではミュージカル『サ・ビ・タ~雨が運んだ愛~』)に出演させていただきました。当時、韓国のみなさんは「ブロードウェイやウエストエンドの作品も好きだけれど、いつかそれを超える韓国のオリジナルミュージカルを世界へ出したいんだ」と話していたんです。それがすごく衝撃的で、同時に悔しさもありました。
あれから20年近くが経ちました。日本では大きな変化が生まれにくい状況が続く中、韓国は多くの作品を世界に出し、トニー賞の受賞作品まで生み出しています。韓国では国策として世界を視野に入れてエンターテインメントを作っているので、国からの強力なバックアップがあるんですね。ところが日本では個々の企業が全てを背負い、赤字覚悟で作品を作っていくしかないという現状があります。昨年僕が企画から携わったミュージカル『昭和元禄落語心中』も、結果が出るかわからない中で、研音と梅田芸術劇場さんが背負ってくださってチャレンジできた作品です。国のバックアップがないなら、自分たちで動くしかないんです。
じゃあなぜ僕が行動できたのかと言えば、10年かけて映像の世界でいろんなチャンスをいただきながら、全国のみなさんに山崎育三郎を知っていただけたから。「育三郎がそこまで言うなら一緒にチャレンジしてみよう」と、応援していただけるようになったからなんです。つまり、日本でオリジナルミュージカルを作るには、周りを引っ張っていく力があり、大勢の人に協力してもらえるような存在が必要なんです。僕の後輩にはたくさんの素晴らしい俳優がいますが、全国で誰もが知っている存在かというと、まだ難しいところがあります。だったら自分が現役で動けるうちに、次の世代を引っ張っていけるような、全国のみなさんに応援してもらえるような、いろんな人を巻き込めるグループを作りたい。そう思ったのが、今回のプロジェクトのきっかけでもあるんです。
ーー日本のミュージカル界が抱える課題を踏まえた上で、どうやって未来に繋げていくかを考えた末のプロジェクトなんですね。
日本のミュージカル界では、お客様を動員できる海外発の人気作品をロングランしていくしかないという状況が続いています。もちろんそれも大事なことではあります。僕自身、長年そういう作品に出演してきましたし、成長させていただきました。ただ、ミュージカルに関わるスタッフ・キャストの生活や、日本の子どもたちが将来ミュージカル俳優になりたいと思えるかということを考えると、現状のままでは難しいと思うんです。だから日本が権利を持つ日本発の作品をどんどん作って、ビジネスとして成立させて、みんなにギャランティを払える仕組みを作っていく必要がある。それを実現させることは、これからの自分にとっての使命だと思っています。
山崎育三郎
何回打席に立つか、それが全て
ーー『OK!Diamonds』のステートメントに「いつか、日本発のミュージカルを世界へ羽ばたかせたい」とあります。そのためには何が必要だと思いますか?
これを作れば世界に行ける、と言い切れるものはありません。自分自身の今までの活動と同じように、“何回打席に立つか”だけだと思っています。僕が映像の世界に入ったときも、ドラマ・映画・バラエティ・歌番組と、とにかく全方位から打席に立ちました。1回でも多く打席に立って爪痕を残し、翌日のネットニュースに載ったらいいなあと。30代は自分を全国区にすることを目標にしていたので、ひたすらチャレンジする回数を増やすしかなかったんです。日本で全ての権利を確保できる仕組みを作り、いいと思える作品をどんどん生み出す。とにかくチャレンジしていくだけですね。
ーー最後に、オーディションを受けるか迷っている方に向けて、プロデューサー山崎育三郎としてメッセージをお願いします。
「よし、行けるぞ」と思えるタイミングは、永遠に来ないと思っています。たとえ準備ができていなくても、とにかく一歩踏み出すことが大事。僕自身、プロデューサーの仕事を勉強して準備ができたからこのプロジェクトをスタートさせたわけではありません。ただ「自分はこういうことをやりたいんだ」という想いだけで一歩踏み出したら、プロデューサーをやることになったというだけなんです。20人近い偉い人たちの前で、急遽プレゼンをしなきゃいけない状況になり、ドキドキするなんていうこともありました。目の前にある山をひとつずつ乗り越えて、少しずつ学びながらプロデューサーになっていくしかないんです。
「おしゃれクリップ」(日本テレビ系列のトークバラエティ番組)のMCに就任したときもそうでした。名司会者の方々の後を継いで、いきなり僕に同じ様にMCが務まるはずがないんです。それでもご指名をいただいたので、覚悟を決めて、頭をフル回転させながら必死でやってきました。気付いたら5年が経ち、ようやく形になってきたところです。
準備ができたからオーディションを受けるのではなく、まずはとにかく打席に立ってみてほしい。そこで何を感じるのか試してほしい。その結果、きっと新しい自分に出会えると思います。このプロジェクトに少しでも何かを感じたなら、一歩踏み出して挑戦してほしいです。待っています。
山崎育三郎
取材・文=松村蘭(らんねえ) 撮影=中田智章
オーディション概要
日本初のミュージカル×ボーイズグループオーディション
『OK!Diamonds』
応募フォーム:https://1936audition.com/form.html ※4月7日(火)23:59〆切
【TikTok】 https://www.tiktok.com/@1936_ok_diamond
【X】 https://x.com/1936okdiamond
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