ひとひら、2マンライブツアーのファイナルは圧倒的な音響体験で見るものの五感を刺激する
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ひとひら
『hitohira en tour 2025-2026』2026.03.28(sat) WWW X
2025年11月30日(日)・神奈川・F.A.D YOKOHAMA公演を皮切りにスタートした『hitohira en tour 2025-2026』。ひとひらが各地で2マンライブを繰り広げたこのツアーのファイナル公演、3月28日(土)東京・WWW Xでゲストアクトに迎えたのはcinema staff。両バンドの間で交わされたリスペクトが、美しいサウンドと化して観客を包んでいた。ひとひらの初ワンマンライブ『hitohira one man show』が10月25日(日)東京・恵比寿リキッドルームで開催されることも発表されたこの公演の模様をレポートする。
ひとひら
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cinema staffのライブの後、ステージに登場したひとひら。1曲目「十二月-Departure」によって、ステージは彼らの色で染め上げられた。山北せな(Vo・G)、古宮康平(G)、吉田悠人(B)、梅畑洋介(Dr)が互いに呼吸を合わせ、演奏のキメとタメを共有しながら響かせるサウンドを受け止める行為に対しては、「聴く」という表現ももちろん当てはまるが、「体験する」「包まれる」「身を置く」「没入する」なども併記したくなる。「See off」「安全な航海」「繭」「塔は白い」……昨年11月にリリースされた『円』の順番通りに届けられた他の曲たちも、クリーントーンのアルペジオ、爆音のベールの揺らめき、多彩な表情を浮かべるビートなどを通じて、聴覚だけでは受け止めきれない質感、ムード、気配を伝えてくれた。
山北せな(Vo・G)
古宮康平(G)
「Evacuate/Undertake」が届けられた後に迎えた小休止。山北は観客に語りかけた。「全国8箇所を巡ってきて、今日がツアーファイナル。『円』というアルバムを持って回ってきて、充実したライブをたくさんできたので、その成果みたいなものをここに持ってこられたらいいなと思ってます」――
吉田悠人(B)
梅畑洋介(Dr)
「国」「Seamless」「風船」……『つくる』の曲たちを噛み締めたひと時を経て、再び迎えた小休止。「このツアーはどの箇所も観たいバンド、一緒にやりたいバンドとやらせていただいて、いつもギリギリまで観ていて、準備が追いつかなくて怒られたりしたんですけど(笑)。それくらい楽しく回れたなと思っていますし、今日もすごく楽しくやれてます」――各地でdownt、said、österreich、yonige、ルサンチマン、elephant、Cuckoo、KOTORIを迎えたツアーを振り返った山北の表情は、充実した日々を過ごしてきたことを物語っていた。そして、「アルバムにはいろんなタイプの曲があって。わりとうるさめな曲が多かったりしたんですけど、静かな曲も作りたくて。試行錯誤しながら作った曲があるので、聴いてください」という言葉が添えられて、「その景色」がスタート。温かなトーンのサウンドに耳を傾けている観客の幸福感が、周囲のムードから伝わってくる。この曲で再開されたアルバム『円』の世界は、その後も続いた。「小さな亡霊」「ひのめ」「夏至」「フェリス」……連なりながら響く各曲を受け止めるのは、至福の体験だった。音色、音の質感、音の揺らぎ、残響、フィードバックなどでも、このバンドは多くを物語る。ステージから放たれる音を全身で受け止めるのは、とても心地よい体験だった。
ひとひら
ひとひら
「『円』というこのアルバムは、“継承”みたいなのを意識したアルバムになっていて。音楽的な“継承”も込めているんです。自分たちがやっているようなジャンルは、cinema staffの存在なくして語れないというか。cinema staffは、ずっとかっこいい存在としてやり続けています。『OOPARTS』という地元でずっと続けているイベントもあったり。そういうスタンスも含めてかっこいいと思います」――cinema staffへのリスペクトを語り、6月28日(日)Spotify O-EAST/duo MUSIC EXCHANGEで開催される『All Our Tomorrows — Curated by cinema staff"』について触れた山北。cinema staff主催のこのイベントには、ひとひらを含めた様々な若手バンドも出演する。「自分たちはcinema staffから音楽的な影響も受けています。どのバンドも何らかのバンドに影響されて音楽をやっていて、そういう一瞬一瞬が連なって音楽シーンが生まれていると思うんです」――会場にいた我々は、継承の連鎖で形作られているものとまさしく向き合っていた。
山北せな(Vo・G)
古宮康平(G)
「cinema staffがあり、我々があり、もしかしたら今、このフロアにいる誰かが自分たちの音楽を受け取って、また次に受け継いでいくという流れもあるかもしれないなと思うと、本当に奇跡みたいな瞬間だなと思います」という言葉も届けられた後、本編ラストを飾った「円」。ゆらめくギターサウンドがドリーミーな浮遊感を醸し出しながら幕開けた4人の演奏は、起伏に富んだ展開を遂げながら次々表情を変え、轟音と化していった。音圧は高いが、肌触りは温かで優しい。五感の全てを刺激されるかのような圧倒的な音響体験だった。
吉田悠人(B)
梅畑洋介(Dr)
観客の手拍子と歓声に応えたアンコール。初のワンマンライブ『hitohira one man show』が、10月25日(日)東京・恵比寿リキッドルームで開催される旨が発表された。「ひとひらが作品として出してるのはミニアルバムが1枚、EPが1枚、フルアルバムが2枚。作品も出揃ってきたので、面白いセットリスト、オールタイムベストじゃないですけど、いろんな曲を演奏できたらいいなと思っています」――新たな一歩となるステージへの意欲を山北が語った後、「誰かの季節に」がこのライブを締めくくった。爆音が高鳴れば高鳴るほど、どこか切なさも滲んでいくのを、観客はうっとりしながら受け止めていた。幕切れを迎え、残響に包まれながら4人がステージを後にした時、フロアから届けられた大きな拍手。終演を迎えてから出口へ向かった人々が、興奮冷めやらぬ様子だったのが思い出される。音を通じて、膨大なエネルギー、感情、物語が届けられたライブであった。
取材・文=田中大 撮影=タカギタツヒト
ひとひら
セットリスト
2.See off
3.安全な航海
4.繭
5.塔は白い
6.Evacuate_Undertake
7.つくる
8.国
9.Seamless
10.風船
11.その景色
12.小さな亡霊
13.ひのめ
14.夏至
15.フェリス
16.円
EN1.誰かの季節に
ライブ情報
4月18日(土)東京・FEVER
5月16日(土)大阪・Live House ANIMA
10月25日(日)東京・LIQUIDROOM