山﨑晶吾×丸尾丸一郎×高橋戦車インタビュー 「まだまだ役者としてやっていく」10周年の節目に刻む一人芝居『Nobody knows me』
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『Nobody knows me』で山﨑晶吾が演じる4役うちのひとり・楠瀬共生(くすせともいき)ビジュアル
俳優活動10周年を迎えた山﨑晶吾が、節目の舞台として挑戦する一人芝居『Nobody knows me』。劇団鹿殺しの丸尾丸一郎が脚本・演出を手がけ、4つの時代を生きる男たちの物語を一人で演じ分ける意欲作だ。
山﨑晶吾は2024年のOFFICE SHIKA PRODUCE『9階団地のスーパースター』で主演を務め、同劇団の制作である高橋戦車のプロデュース公演、TANK PLAN #2 舞台『死んだ山田と教室』では、フルキャストオーディションの中で唯一オファーを受けた経緯がある。今回の『Nobody knows me』はどのような作品になるのか。丸尾と高橋から見た「俳優・山﨑晶吾」の魅力、そして3人それぞれに創作への期待を語ってもらった。
ダサいってかっこいいなと思えた瞬間、役者として殻を破れた
『Nobody knows me』キービジュアル
――今回、俳優活動10周年という節目に一人芝居を行うことになった経緯を教えてください。
山﨑:自分のイベントで、「10周年なので、10個くらい企画やれたらいいね」と参加者の方に話を振ったところ、「一人芝居を見てみたい」という声が上がりました。最初は「無理無理」と言っていたんですけど、次第に「ちょっとやってみようかな」という気持ちになって。少し端折りますが、そのことを戦車さんに相談したら快諾してくれました。ちょうどそれが『死んだ山田と教室』の時期で、丸さん(丸尾)が稽古場に来てくれたとき、一緒にやろうという話になりました。
丸尾:「一人芝居をやろうと思っている」という話を聞いてすごくワクワクしました。晶吾が自ら動き出したことに驚くとともに、嬉しさを感じたのを覚えています。
――山﨑さんと丸尾さんの最初の出会い、『9階団地のスーパースター』でご一緒することになったきっかけと、当時からの印象について教えてください。
丸尾:晶吾と出会えたのは本当に奇跡です。物語の舞台が大阪だったので、大阪出身の若手俳優をネットで調べていたんです。そうしたら襟足が金髪で長い、晶吾の写真が出てきて、ビビビッて来たんですよ。会ったことも、演技を見たこともなかったのですが、公演に参加することが決まって稽古場で台本の読み合わせをしたときに、僕が好きな俳優像をすごく持っているなと感じました。
――その好きな俳優像とは、山﨑さんのどのような部分でしょうか?
丸尾:人間らしい偏りや整っていない部分を持ちながら、舞台上でしっかりとドラマを背負い、真ん中に立てる力があると思います。晶吾がそこに立っているだけで、いろんな物語や人物の背景が見えてくるんです。歌も身体的なスキルもまだまだ伸びしろがあり、ここからもっと大きくなっていく可能性を強く感じています。『9階団地のスーパースター』の稽古中も、「台本にとらわれない演技をしてくれるんだ」とか、「自分の体で怒れて、泣けるんだ」とか、言い出せばキリがないんですけど、そういうところにすごく感銘を受けて、公演が終わる頃には大好きな俳優になっていましたね。
丸尾丸一郎
――『9階団地のスーパースター』では制作として、そしてTANK PLANではプロデューサーとして関わっていた高橋さんは、山﨑さんのお芝居にどんな印象を持っていますか。
高橋:『9階団地のスーパースター』で演じたピカイチも、『死んだ山田と教室』の和久津も、何かしらコンプレックスを抱えた人物で、葛藤したり悩んだりしながらも、それを打開しようと懸命に足掻いている人物です。その姿が、僕の中では晶吾くんの演技としてとても印象に残っています。見ていると演劇的に心をつかまれる瞬間があって、自然と感情移入してしまうし、背中を押してもらえるような気持ちにもなる。丸さんの書く脚本と晶吾くんの相性も、きっと良いのだろうなと思います。
――山﨑さんは丸尾さんと出会って、どのような刺激を受けましたか。
山﨑:2.5次元舞台を中心に活動しているというのもあって、それまでわりとキラキラした舞台に立っていたので、『9階団地のスーパースター』というストレートの芝居でご一緒したとき、大勢の前で恥をかくというか、全力でさらけ出すことって、こんなにかっこいいんだなと思えました。丸さんも「ダサいってかっこいいよな」と言っていて、本当にその通りだな、と。ダサい奴ってかっこいいなと思えた瞬間が、ほんまにあって。それが、今の役者としての殻を破るきっかけになっている気がしています。
4人の登場人物を縦に重ね、血筋を頼りに各時代を生き抜く
1987年、「東京ロッカーズ」として生きた共生の父・共一(きょういち)ビジュアル
――主人公の楠瀬共生(くすせともいき)と、その父、祖父、高祖父をめぐる『Nobody knows me』。アーティスティックなキービジュアルと、個性的な4人の登場人物のソロビジュアルもすでに発表されています。今回公演はどのようなイメージを起点に描いていったのでしょうか。
丸尾:一人芝居をやろうと決まってから、晶吾と一度だけ新宿で会って、どんな作品にするか話したんです。僕の中にはいくつか漠然としたプランがあって、大きく分けると二つの方向性がありました。一つは、晶吾が持っているサブカルチャーやパンクな雰囲気を活かした作品。もうひとつは、舞台的なイマジネーションをフルに使い、表現にこだわった作品。『Nobody knows me』は晶吾と話した後に書いたプロットで、当時の会話から得た言葉がインスピレーションの元になっている部分もあります。
――タイトルの『Nobody knows me』は、どのような意味を込めて付けたのでしょうか?
丸尾:このタイトルは、実は僕の晶吾に対する印象なんです。晶吾って、本当にわからないんですよ。ひょうひょうとしているけれど、野心がありそうな気もする。本当の晶吾は一体どこにあるんだろう、もしかしたら、晶吾自身も自分のことがわからないのかもしれない。こんなふうに、誰しも自分のことってわからないというか、ブレるところがあると思うんです。『Nobody knows me』では、そんな自分をより知っていくことをテーマにしたい、と思いました。
――現代から戊辰戦争の年代まで、長い時間の流れが折り重なる本作。それぞれの時代を生きる人物たちに、どのような印象を持っていますか。
山﨑:元美容師という設定など、リアルな自分とリンクする部分が多いんです。もちろん、台本に出てくる話はフィクションですが(笑)。稽古を重ねると変わってくるかもしれませんが、今回の4役は血で縦に繋がっている人たちで、どの人も本当に糸が切れるギリギリのところで生きてるんだな、という印象がすごくあります。いつ切れるかはわからないし、それが自分きっかけなのか、他の人きっかけなのかもわからないんですけど、世の中にも「もうすぐ切れそうだな、この人の糸」という人が結構いると思うんです。あとは、大胆だけどすごく繊細な部分もあるよね、みたいな人間味を4役に共通して感じています。
太平洋戦争、裏切者と人殺しのレッテルを張られた文筆家の祖父、共吾(きょうご)
戊辰戦争、生き延びてしまった若き侍の祖祖父、暁共(あきとも)
丸尾:たくさんの人物を演じ分けて「横に広げる」のではなくて、「縦に掘っていく」一人芝居もあるよね、という話をしたんです。晶吾は役者として人物を深く掘ってくれるから、器用にいろんなことをこなすより、一つ一つを縦に重ねていったほうがいい、そういうパターンもあるよって。そうしたら晶吾が、「面白い」「それだったら何役かを演じるのはできそうな気がする」と言ってくれたんですよね。だから人物を縦に縦に、どんどん掘っていこう——そういう流れから、この『Nobody knows me』という物語が生まれていきました。
山﨑:今回演じる4つの役はそれぞれ時代背景が違っていて、一つの作品の中でこんなに時代を行き来できるんだな、というのがまず不思議な感覚でした。あと、台本を読むにつれて、同じ舞台で4作品くらいを一気にやるような感覚になってきて。最初は「セリフ量が多いけど覚えられるかな」と思っていたんですが、それよりも早く体に馴染ませて、いろいろ試していけたらいいな、と考えています。
――今回はエンディングが2パターンあるということですが、その経緯を教えてください。
丸尾:僕が想定していたラストシーンに対して、ある打ち合わせで晶吾から「いや、こうなってたまるか」「いい意味でお客さんを裏切りたい」といった言葉があって。これを受けて、いわゆる“胸糞悪い”エンディングもやってほしいと思ったんです。それで、2パターン用意することを僕が提案しました。
山﨑:情報解禁で知りました。公演の星取りを見てみたら、なんか書いてあると思って。
一同:(笑)
信頼できる間柄だからこそ、「なんとかなる」
高橋戦車プロデューサー (撮影:奥野倫)
――初の一人芝居という部分も含めて、今までないチャレンジがふんだんに盛り込まれているという今作。どんな公演にしていきたいか、今の気持ちを聞かせていただけますか。
山﨑:今回、一人芝居をするにあたって、脚本・演出は丸さんがいいなと最初から思っていました。自分から頼もうと思えるくらい親しい脚本家・演出家が丸さんだったということもありますが、丸さんと一緒なら、自分発信でありつつも、いろんな引き出しを開けてもらえるんだろうなと期待もあって。僕は一日一日、目の前のことに全力で向き合って、いつも通りの「なんとかなる」精神で過ごしていきたいです。初日から千秋楽まで、稽古も含めて、「生きてるな」と思えるように頑張れたらと思っています。
――数日後に稽古開始を控えた『Nobody knows me』は今、脚本執筆を含めた準備期間とのこと。これからどんなふうに創作を深めていくことになりそうでしょうか。
山﨑:10年間、役者をやってきて、今まで自分がやってきたことも全力で出しつつ、新しいものに挑戦するのが自分でも楽しみです。僕は結構人見知りなのですが、良くしてくれる人たちの中にいると、自分でもよくわからないパワーが発揮される気がするんです。だから今回もそれを力に、本番の自分がいい表現をしてくれるんじゃないかな、という期待をうっすらと感じています。
丸尾:稽古が近づくと、普通は台本や演出を固めていかなきゃいけない時期なんですけど、不思議と今回は「こんな案も良かったな」「こんな空間でやっても良かったな」と、いろんな演出プランがどんどん出てきている状況で、自分でもすごく珍しいなと思うんです。あまり緊張せずに立ち向かえている気がしているからこそ、この自由な空気を忘れずに作品を作っていきたいです。
高橋:稽古期間は、実は2週間だけなんです。その2週間でやることが結構多いんですよね。でも、制作の立場から思うのは、「長ければいいってものでもない」ということです。創作期間も、クリエイティブなことを考える時間も、練習も、この2週間にしっかり束ねられている。これから二人は、すごく集中した密度の濃い時間を過ごすんじゃないかなと思っています。
“まだ誰も知らない”山﨑晶吾の魅力
――最後に、観客の皆さんへのメッセージをお願いします。
山﨑:丸さんはこちらが100%でぶつかれば、100%以上で受け止めてくれて、返してもくれる。だからこそ今は、自分にできる100%を稽古でぶつけていきたいです。悩むこともきっとあると思いますが、ここ数年で、僕自身がお芝居というものを本当に好きになっているのを感じていて、好きなことができる幸せも噛み締めつつ、楽しくやりたいという気持ちがあります。キャスト欄に僕の名前しかない状況も、自分のために書いてくれた脚本を読んだときも、すごくグッとくるものがあって。稽古に入る前から、この作品は自分の中で特別になる確信があります。この節目の年に、役者・山﨑晶吾はまだまだ新しいことに挑戦していくんやぞ、役者としてやっていくぞ、という覚悟を、見に来てくれた人たちに伝えられたらと思っています。
丸尾:僕は晶吾のことがすごく大好きで、役者として本当に信頼しています。もっともっと、僕の手の届かないくらいの役者になっていってほしい、という気持ちも強くありますね。だから『Nobody knows me』は、僕の大好きな晶吾に「こんなことをしてほしい」という思いを全部詰め込んだ作品になると思います。
高橋:丸さんはいろんな現場で、「ご一緒するからには、この作品でしか見られない姿を見せたい」「今まで長く姿を見ているファンの方にとっても、まだ見たことのない新しい魅力を伝えたい」とよく言っていて、今回はそれをより強く感じています。10年間ずっと応援している方はもちろん、今まさに応援している方々にも、まだ見たことのない山﨑晶吾さんのパフォーマンスをお楽しみいただけばと思います。
取材・文=さつま瑠璃
公演情報
日程:2026年5月27日(水)〜6月7日(日)
【脚本・演出】丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
【音楽】YOSHIZUMI
【振付】桜木涼介
【出演】 山﨑晶吾
【舞台美術】青木拓也
【照明】鶴田美鈴
【音響】高橋秀雄
【衣裳】車 杏里
【ヘアメイク】松本真由子
【宣伝写真】渡邉和弘
【宣伝美術】圓岡 淳
【WEBデザイン】ブラン・ニュー・トーン(かりぃーぷぁくぷぁく、阿波屋鮎美)
【制作】高橋戦車、MIMOZA
【主催】Nobody knows me製作委員会
前売当日
フォトブックパンフ付き 11,400円 / 台本付き 9,900円
フォトブックパンフ・台本付き 12,500円
当日引換券(立見)6,000円
6月6日(土)18:00 Meat ver.
6月7日(日)13:00 Meat ver.
6月7日(日)17:00 Blood ver.
公式X: @Shogotter0
OFFICE SHIKA X:@office_shika