泥臭くも美しい人間賛歌の傑作 松田元太単独初主演 舞台『俺節』ゲネプロ&取材会レポート
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舞台『俺節』
松田元太(Travis Japan)の単独初主演作となる舞台『俺節』が2026年6月10日(水)に東京建物 Brillia HALLで開幕した。東京公演は30日まで続き、その後福岡、大阪でも上演される。
舞台『俺節』
2017年の初演から9年ぶりとなる今回、新たなキャストたちが、土田世紀の同名漫画を原作とした泥臭い人間ドラマに再び命を吹き込む。青森から演歌歌手を目指して単身上京したコージ役に松田、コージの相棒でギター弾きのオキナワに稲葉友、コージが恋に落ちる外国人ストリッパーのテレサ役はキム・チャンミが演じる。益岡徹や、唯一前回から引き続き出演する六角精児がコージに「歌の心」を説く先輩として登場。
脚本・演出は前回に続き福原充則が担当。原作は1990年代前半に漫画誌に連載されたもので、福原によると連載当時すでに「時代遅れ」なものをあえて描いていたという。それを今、この令和の時代においてどのように蘇らせるのだろうか。
開幕日前日に行われたゲネプロ、そして松田、稲葉、キム・チャンミが登壇した取材会の模様をレポートする。
ゲネプロレポート
3時間35分もの大作だが、長尺を一瞬たりとも感じさせない傑作だった。
舞台はコージの故郷・青森津軽から幕を開ける。時は1990年。単身上京したコージは津軽弁を捨てず、故郷の婆ちゃんにもらった背広を一張羅に、演歌界の大御所・北野波平、相棒となるギター弾きのオキナワ、流しの大野、そして外国人ストリッパーのテレサと出会い、ぶつかって傷つきながらも「演歌の真髄」を学んでいく。
舞台『俺節』
舞台『俺節』
劇中に登場する、昭和を彩った演歌の名曲たち、そしてドヤ街やストリップ小屋などは、ある世代にとっては懐かしく、若い世代にとっては新鮮に映るだろう。いずれも当時の空気が生々しく伝わるリアリティと、フィクションとしてのきらびやかさが絶妙なバランスで表現されている。
舞台『俺節』
舞台『俺節』
舞台『俺節』
舞台『俺節』
生きていくためならなんでもするドヤ街の住民、ビザのない外国人を不当な条件で働かせる雇用主、契約をちらつかせてタレントに関係を迫る中小企業の社長なども描かれ、令和の時代の価値基準からすると眉をひそめたくなる人もいるかもしれない。しかし、そういった現実に翻弄されながら、それでも歌だけは捨てられない人々の姿には「それしかできない」からこその覚悟の美しさがにじむ。
舞台『俺節』
周囲との衝突や現実の壁にぶつかりながらコージは「演歌の真髄」に触れていくが、特に演歌歌手の北野波平と流しの大野が、それぞれコージに「歌の心」を説くシーンは白眉。
舞台『俺節』
北野がコージの肩を掴まんとする勢いでつばを飛ばしながら「今歌っている歌を否定されたら、君の全てが否定されるような、そんな歌を歌いたまえ!」と叱咤する場面には、こちらまで背中をぶっ叩かれたような衝撃が走った。
舞台『俺節』
さらにコージに相談を持ちかけられた大野の「歌には絶対正直でいろ。歌があればまっすぐ生きられる。逆に言えば、歌にすがるしかねぇんだよ、俺たちは」という言葉にも、流しを続けてきた彼ならではの重みがある。
舞台『俺節』
歌の世界の大先輩からの叱咤激励とともに、コージに「歌の心」を教えたのはテレサだ。日本語がわからない彼女にもコージの歌はまっすぐに伝わり、二人は次第に心を通わせていく。彼女に対する強い思いがコージに勇気を与え、歌が根源的に持つ力を呼び起こさせるのだ。特にラストに向けて、ふたりが歌にもならない声をあげる場面は見もので、それに連なるコージの歌唱シーンには終始圧倒された。演出効果も相まって、「歌の心」を全身で体現するその迫力に完全に気圧されてしまった。
舞台『俺節』
脇を固めるキャストたちも一人ひとりが素晴らしい。舞台上にいるすべてのキャストが、実際にその時代を生きていた人物かのようにいきいきと息づいており、物語に圧倒的な奥行きと深みを与えている。彼ら彼女らの確かな存在感によって、コージのまっすぐな人柄や不器用さが一層引き立っていた。
舞台『俺節』
舞台『俺節』
3時間35分という長編でありながら、テンポの良いストーリー展開、キャストたちの熱演、シリアスな場面にも笑いを忘れない演出、心に響く昭和の名曲、照明や舞台美術や映像にいたるまで、とにかく観客を飽きさせない見事な構成だった。
松田元太が堂々と新境地に立つ姿を、この傑作の中でたしかに「津軽出身のコージ」として生きる彼の魂の歌を、どうか同じ空間で浴びてほしい。
取材会レポート
(左から)キム・チャンミ 松田元太 稲葉 友
――いよいよ明日が初日です。
松田:楽しみでしょうがないですね。本当に良いカンパニーです。先輩方も、すべてのキャストの皆さんも、福ちゃんさん(脚本・演出の福原充則)も含めて。
――ちょっと声がハスキーに聞こえます。
松田:これはAlwaysです!
――稲葉さん、チャンミさんは?
稲葉:本当に素敵なスタッフ、キャストの皆さまとしっかり稽古をしてきてこの日を迎えられたので、あとはお客さまにしっかり届けるべく、みんなで一丸となって頑張りたいです。
チャンミ:素敵な先輩たちに囲まれて、素晴らしい稽古の時間でした。皆さまにも期待してもらえたらと思っています。
――(隣で韓国語がわかるかのように頷いていた松田に)わかりましたか?
松田:雰囲気は(笑)。一緒に稽古をやってきているので。
――今回テーマの演歌は?
松田:自分の中で新しい挑戦ではありますが、おじいちゃんといる時は演歌を歌っていたので馴染みはありました。『月の砂漠』をよく歌っていて、そのせいかこないだの稽古中に間違って歌っちゃって。おじいちゃんのせいです。今回の舞台も観にきてくれるので、その時に文句を言います(笑)。
――チャンミさんは日本語に挑戦しています。
チャンミ:日本語の先生と通話するアプリでめっちゃ頑張りました。日本語だと居酒屋で席について言う「とりあえず生で」が一番好きです(笑)。まだ使ったことはないです。
松田:皆さんと一緒に、居酒屋行けたらいいですよね。
――稲葉さんは舞台でギターを披露されますね。
稲葉:役が決まった時「僕でいいんですか?」と思ったけど、命をかけて頑張らせていただきました。稽古に入る半年前くらいから準備させていただいて。お芝居でありながら舞台上で楽曲を演奏するのは、これまでの創作とは違う感覚があって、怖い部分もあるけど、楽しみもすごく大きいですね。
――松田さんは津軽弁に初挑戦です。
松田:もともと興味があって、キャストで津軽出身の草野(とおる)さんに教わったり映像を見たりして。最近だと普段から津軽弁が出てしまうくらいで、逆に困っちゃってます。
――最後にみなさんにメッセージを。
松田:皆さんとたくさん熱を込め、命をかけて毎日稽古して、やっと本番が始まります。劇場でお会いできるのを心から楽しみにしております。とにかく『俺節』という作品を感じていただけたら嬉しいなと思います!
前売り
取材・文=碇雪恵 写真=オフィシャル提供
公演情報
公式サイト https://orebushi2026.jp/
公式X @orebushi2026