全方位にチャレンジングだった神はサイコロを振らないの初アリーナ公演『Special Live for Double Anniversary Year 2026 “T.W.-Traversable Wormhole- 』
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神はサイコロを振らない
神はサイコロを振らない『Special Live for Double Anniversary Year 2026 “T.W. -Traversable Wormhole-” at Pia Arena MM』2026.6.14(SUN)ぴあアリーナMM
ジャンルに拘泥しない音楽性、シリアスもユーモラスもどちらにも振り切る演出、アルバムなど音源にとどまらずライブでも曲ごとの音像を突き詰める姿勢など、「やりたいことは全部やるバンドこと、神はサイコロを振らない」と快哉を上げたくなるライブだった。2025年6月9日に結成10周年、7月17日にメジャーデビュー5周年のダブルアニバーサリーを迎え、“10の叶えたいこと”を着実に実現してきた神サイが、その一つであるハンド初のアリーナ単独公演で見せたのはチャレンジングでもあり、まさにこのバンドの核心であるスタンスを現実のものとして見せることだったのだ。『Special Live for Double Anniversary Year 2026 “T.W. -Traversable Wormhole-” at Pia Arena MM』とタイトルされたアリーナ公演は、タイトルにもあるようにニューアルバム『EINSTEIN=ROSEN BRIDGE』とも、もちろん繋がっているが、この10年の神サイの不変と変化をワームホールで繋ぐような意味合いも存分に含み、4人がいかにこの日のライブを緻密に、そして自由に計画してきたかが理解できた。
神はサイコロを振らない
周波数を拾うようなノイズ混じりのエレクトロサウンド。まるで見えない何かと出会うようなSEと、幾何学模様が刷られた揺れる布の背景のステージにブラックスーツの4人が登場。オープナーは2ndミニアルバム『subim』収録の「白に融ける」。意外な選曲だが、繊細な出音に現在のバンドの音像のこだわりを感じる。エンディングで背景に白色がせり上がり、モノクロのメンバーのシルエットが浮かび上がる演出はむしろ演奏の動きが手に取るようにわかり、初っ端から鳥肌が立った。シンプルでスタイリッシュな演出は昨年の日本武道館公演でも際立っていたが、さらにそれを突き詰めてきた印象だ。続く「白昼夢」では吉田喜一(Gt)と桐木岳貢(Ba)がシンセサイザーにスイッチし、柳田周作(Vo.Gt)がギター&ボーカルという新鮮なスタイルをとり、オリジナル以上にアトモスフェリックな音像を作り出す。その上、真っ白な背景に歌詞が縦書きで投影され、演奏する4人を含め詩集の見開きのような美しさを見せる。さらに新作から輝度の高い吉田のリフから「Smoke」へと、シンプルだが音を選び抜いたアンサンブルで聴かせた。
曲中、柳田がフロアに「歌える?」と投げかけ、オーディエンスに向けて「ラララ」のシンガロングを促した。スタンド近くまで伸びる花道を悠々とギターを弾きながら歩み寄る吉田も開放感に溢れるプレイを聴かせる。そして神サイといえば星や宇宙テーマの楽曲もそのムードに自然に繋がる。「夜間飛行」では柳田が星型のタンバリンを振りながら花道を歩き、フロアをジャンプさせるなど、広いアリーナで存分に遊んでいる印象だ。シューゲイザーのニュアンスもファンクの腰の強さも共存するアンサンブルも彼ららしい。
神はサイコロを振らない
澄み渡る夜空のような音像は続く「クロノグラフ彗星」にバトンが渡り、ステージに設置されたミラーボールが光を反射してアリーナ全体にその粒を放っていく。明快なビート感の疾走する楽曲の登場で歓声が上がり、サビで思い切り開放されるオーディエンス。その歓喜をまるでアリーナをプラネタリウムのように彩る星たちが祝うようだ。しかもその光量は星が爆発したような明るさ。中途半端な演出は不要とばかりにバンドを後押しする演出が痛快で思わず笑ってしまう。チーム全体が豪快なのだ。そこに精緻なハイハットワーク、海外アーティストのライブで感じるようなスケール感のタム使いに黒川亮介(Dr)の進化を感じ、ここまでの楽曲より俄然音が前に出た桐木の図太いベースラインに体が反応する「タイムファクター」。コロナ明けに思い切りシンガロングする景色を思い描いていたこの曲は今も生き物のように育っているのだった。
一つひとつのセクション、1曲1曲の世界観を伝える構成は煽ることや繋ぎの映像に頼ることがないのも潔い。一転して夜のムードを纏ったステージで代表曲「夜永唄」をバンドアレンジバージョンで披露。何度歌っても感情を込めるというより、永遠に凍結されたこの曲の瞬間にいるような解像度で歌う柳田に圧倒される。アリーナを彼の部屋に変質させるほどパーソナルな空気を作り得るのも彼の歌の温度あってこそだ。巨大な背景がここで再び鳥肌モノの効果を見せるのだが、黒い背景のごく少ない下の部分で炎が揺らぐ様は感情をメタ的に表現しているのだろうか。音楽と映像のこの上ないリンクはアートですらあった。
自分の内側を覗き込むような瞬間は続く「凪」でのポストロック的でありつつ、柔らかな音像、桐木から柳田へと渡されていくピアノの旋律でも増幅され、「静寂の空を裂いて」ではニューエイジ/アンビエント寄りのバンドアレンジから、終盤にかけて吉田のシューゲイズギターが空間を拡張していく。凄まじい集中力で演奏する4人そのものが強力に伝播する。そこから柳田のギターだろうか、チューニングも演奏の一部に感じられる生々しさから、新作の中でも速さやビートの複雑さとは違う瞬発力を感じる「藤雨」へ。夥しい量の藤の花の映像も迫力満点だが、何よりも柳田と吉田の音階としてギリギリ聴き取れるトレブリーなギターの重なりが、言葉以上のリアリティで鳴らされる。こちらも言葉にできない感情が揺り動かされ、ギターの音色とフレーズで落涙しそうになるという不思議な経験をしてしまった。この4曲からなるセクションは個人的にこの日の白眉だった。
神はサイコロを振らない
和を感じるSEから重くねっとりしたグルーヴに移行すると「火花」の覚悟の決まったニュアンスが柳田のボーカルのみならず、ワウカッティングも吉田の“やさぐれ”と表現したくなるリフも、以前より明快になった音像。苛烈な生き様が音になって飛んでくるのだ。さらに五感を揺さぶる演奏はレイドバックぎみの黒川のドラミングがすでにセンシュアルなムードをぷんぷんさせる「The Ssyba+The Abyss」という1曲を2分し、再び再構成したライブバージョンで極みを見せる。声の表現はもちろんギターソロでも官能を迸らせる柳田のテンションにたるや。
狂気を感じさせる真っ赤な照明も感情を揺さぶった。立て続けにハイライトが繰り出されるライブで、続いてはゲストにRin音を迎えた「六畳の電波塔」では横浜公演に合わせるように現在の横浜の光景と荒廃した架空の光景が並列する絵が投影され、どちらの未来を作るのか?は私たち自身に委ねられていることを再認識させてくれた。それにしても改めての紹介を言葉を割いて行うでもなく、あくまでも歌とラップでこの曲を完成するために登場したRin音、という潔さも神サイのこだわりだったのかもしれない。
神はサイコロを振らない
張り詰めたセクションのあと、メンバーがステージを一旦去り、なんとLEDビジョンには銀色の全身スーツに着替えるメンバーの映像が。吉田、桐木、黒川はステージに再登場し、電子音のSEが流れると「ちょっとだけかゆい」がスタート。恭しくセンターステージに現れたトロッコに、銀色の全身スーツに羽根まで背負った柳田が移動するトロッコ上でポーズをとりながら歌い、ステージでは火柱が上がる様子はシュール以外の何物でもないのだが、演奏はゴキゲンなポップファンクという、およそ同世代のバンドで神サイしかやらないであろう演出で大いに沸かせた。そうなるとセンターステージはなんのために?という疑問は再び元の衣装でステージに戻り、フロアに降りて歩いたところで展開が見えた。センターステージに車座になった4人はこの日初めてじっくり話し始めた。
「さっき変なヤツいたね。インフルエンザの時に見る悪夢みたいな」と柳田が笑わせた後、神サイが先日6月9日に11年目を迎えたことに謝辞を述べる。曰く、吉田の家に集まり、今回の演出の映像を見て号泣したのだという。黒川は「11年っていうと学生だった人は結婚したり子供がいたり。そんな時間に神サイを置いてくれてありがとうございます」と話し、吉田は「20代全部を神サイで、俺らだけで過ごせてありがとうございます」、桐木は色々考えていたが忘れてしまったとシンプルに感謝を伝える。そして柳田は「世界が全て敵に回ってもこの4人ならいけると思います。拙いところもありますが、4人が表現したライブです」と言い、なぜこの4人なのか?を素直に綴った「スケッチ」をこの上ない流れでスタート……したが、柳田が歌に詰まり「ごめん!やり直させて」とリスタート。すでに感極まっていたであろう彼は彼らの幼少期を表現したような4人の子どもたちを迎えた「Balloon of Shooting Star」でも少し涙声だったのでは?と、同時に牧歌的なこの曲の意味が演出とライブアレンジでより理解できた。
神はサイコロを振らない
一人の少年から受け取ったゴーグルをつけた柳田をはじめ、再びメインステージに戻った彼らはワイシャツと黒いズボンが部活帰りの高校生のように見える。先ほど、MCで吉田が「孤独を感じやすい4人だけど応援してくれる人がいるから」という発言もしたのだが、その思いも繋がる「ソユーズに乗って」が伸びやかに奏でられ、銀河を思わせる紙吹雪の演出も。全方位に音楽性の翼を伸ばしてきた初アリーナも終盤は肩の力が抜けた笑顔が見られ、柳田渾身の「ラストー!」の叫びから、神サイがファンに向けたラブソング「Baby Baby」がこの日一番シンプルな8ビートに乗せて放たれる。ドラムセットに集まる、というか登る勢いで集まってジャンプした柳田と吉田はバンドを始めたばかりのティーンエイジャーみたいだ。煽るMCもこけおどしの音圧もない。どこまでも音楽が好きでたまらない4人がアイデアを注ぎ込んだ結果としてのライブが何よりの説得力だったのだ。やり切ったメンバーの表情をとらえた映像にスタッフクレジットが重なるエンディングも清々しい余韻を残した。
終演後、ビジョンには11月からスタートする全国5ヶ所のZeppツアーが投影され、未来の約束にアリーナは再び大きく湧いたーー。
神はサイコロを振らない
取材・文=石角友香 撮影=toyaオフィシャル写真提供
ツアー情報
11月14日(土)【北海道】Zepp Sapporo
OPEN17:30 / START18:30
(問)WESS info@wess.co.jp
OPEN17:00 / START18:00
(問)BEA 092-712-4221(平日 12:00〜16:00)
OPEN17:00 / START18:00
(問)GREENS 06-6882-1224(平日 12:00~18:00) https://www.greens-corp.co.jp/
OPEN17:00 / START18:00
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(平日12:00~18:00) https://www.sundayfolk.com/
OPEN17:00 / START18:00
(問)DISK GARAGE https://info.diskgarage.com/