Blue Mash、夢の街・東京へ咆えたロックバンドの決心と応援歌――「生きててくれてありがとう」

2026.7.3
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Blue Mash

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この街を出て -泣くな、東京-
2026.6.25 東京・渋谷 Spotify O-EAST

シンガロングはなかった。2026年6月25日(木)、Blue Mashが東京・渋谷 Spotify O-EASTにて開催したワンマンライブ『この街を出て -泣くな、東京-』。3月にリリースしたメジャー1stフルアルバム『泣くな、青春』を引っ提げ、全11ヵ所を旅したこのツアーの最終到着地点に存在していたのは、ロックバンドに対する憧憬と夢を追い続ける苦悩を歌う4人の漢と、彼らに共振するかのように各々の生を叫び、拳を握りしめるオーディエンスの姿だった。

「俺がこのライブを通じて言いたいのは、生きててくれてありがとうってことだけです」。

ライブ終盤、優斗(Vo,Gt)が言い放った通り、この日のど真ん中をぶち抜いていたメッセージは、「出会ってくれてありがとう」「生き抜いた先で、ライブハウスに辿り着いてくれてありがとう」という、今さら言葉にするのも照れくさいほどに切実な感謝であった。その思いは「セトリが良かったも要りません。演奏が良かったも要りません。ただ、生きてて良かっただけをくれ!」とドロップした3曲目「M19」からも、一切の淀みなく伝わってきたものである。彼らのホームグラウンドたる大阪・寝屋川のライブハウスで歌い重ねてきたナンバーで、《切ない思いは 今歌にする》とBlue Mashの変わらぬ源泉を4人の肉声で響かせれば、「俺らのことを見つけてくれて、ありがとうございます」と彼らの生まれ年を名に刻んだ「2002」へ爆走していく。ホイッスルの如く、高らかに天へ舞い上がっていくげんげん(Gt)のギター、切れた弦を垂らしたまま思いっきりかき鳴らしていく優斗の背中、手招きでフロアを煽る荒川ソラ(Ba)、フルスイングで振り下ろしたスティックで堂々たるサウンドを轟かせるマサヒロ(Dr)。不格好だって構わない。愚直で、泥臭くて、汗まみれで何が悪い。そう表明する演奏を重ねているからこそ、「お前ら、いくぞ!」という大船団のボスさながらのアジテーションにも、ファンは混沌した光景で応答していく。つまりは、「俺らはこう生きて、こう鳴らす。じゃあお前はどうする?」なんて生き様そのものへの問いかけを、堂々たるアンサンブルで投げまくる生命体こそがBlue Mashなのだろう。

そしてその宛先は、続く「平成時代」の最中に「俺らがやりたいのは、ロックンロールやろ。全員に歌いにきたわけじゃない。お前に歌いに来たんや!」と断言したように、紛れもなく君である。メンバーの年齢、あるいは「幸せになったら、こんな曲忘れてくれよ」と呟いた「恋人のすべて」を筆頭とする、膿んだ傷跡を見せるみたいなソングライティングゆえか、Blue Mashは「若者のままならないリアルや沸々とした衝動を大声で代弁するバンド」という文脈に落とし込まれてしまうことも少なくない。しかし、ここで言う「君」に地位や役割は関係ない。「僕はね、若者に歌を歌ってるんですよ。年齢が、見た目が若いとかじゃなくて、心が若いヤツに歌を歌ってるんすよ」と口にした通り、目の前で鳴っている爆音に心を解き放ち、リミッター知らずで戦いへ繰り出す人物を彼らは希求している。

それを象徴していた1曲が、折り返しにて「僕の決意の歌」と披露された新曲「若者白書」だ。ザクザクとしたストロークやバウンシーな8ビートが印象的なこの作品は、《大人になることが諦めることならば 大人になることを諦めてしまえばいい》と遮二無二に今日を過ごす様子を肯定していく。「一瞬で終わるから美しいって、令和じゃねぇ!」と咆えたのも、《いつまでも青い春》という最終ラインも、人生におけるたった数年間が輝かしいのではなく、もがいてあがいて希望をかき集めた日々こそが尊いのだと示している。そもそも『泣くな、青春』が瑞々しい一枚に仕上がったのも、ティーンエイジャーから今日に至るまでの手記たちを束ねたためではなく、今しか生み出し得ない楽曲たちと時々の感傷たちをダイレクトに封じ込めていったから。随所で話していた「青いアルバム」という理想像は、最大限に煌めこうと試みた120%の1秒を繋ぎ合わせた先に待ち受けているものである。「2002」の直前「どんなバンドになりたい? 令和で心踊るバンド!」と言い切った理由だって、「あなたが好きなバンドはだっさいです。でも、これが俺らの青春!」と「このまま僕らが大人になっても」をねじ込んだ訳だって、学ランに袖を通した日々を回顧するためではなく、確かな現在を打ち立てるためだ。

とはいえ、「今日で日本のロックンロールを変えるつもりなんですよ」「熱狂の時代を俺らで作るんすよ」なんて大胆不敵な宣誓や、あまりにも捻じれのない詞と音の充溢は、耳が痛い説教めいたものとなるリスクをも孕んでいるはず。にもかかわらず、彼らのひたむきな歌唱が美辞麗句にならないのは、頼もしさの背後から隠しきれない弱さが覗いているからであろう。先に記した「このまま僕らが大人になっても」に続くMCもそう、照明が明滅する中、「キモイよなぁ。……でも、いいねん。これしかできないから」と漏らした「春のまま」もそう。スキルフルな楽団とは程遠い事実に対する焦燥を、いつまでも忘れられない人を曲に変え続けている執着を、卑下する瞬間だってある。こうした剥き出しの不安が健在化したひとコマが、「自分を苦しめることでしか、自分を正当化できなかった」と語り出したこんな独白だった。

「もう、バンドは無理かなって思ってた。上京してから曲が書けなくて。書いても書いても誰かの歌みたいで、自分の歌じゃないし、君の歌じゃないし。何者になりたいと思う度に、自分にもなれない。そんな情けない日々が続きました」

少しうねったコンコースと小さな橋を抜けた先に見えるアーケードが出迎える京阪線のあの街から離れて、夢を食い破られそうになった毎日のこと。初めて買ったストラトキャスターと綴った歌詞、意気揚々と乗り込んだ下北沢でのライブ。このまま心中したっていいと思えるメンバーと巡り合うまで、衝突と別れを繰り返した8年間。音楽人生を、いや産声を上げてからの全てを振り返り、「泣くなよってのは、笑えって意味です。泣くなよってのは、走れってことです。泣くなよってのは、頑張れって意味です。今からガラガラの声で歌う5分間、この曲はお前と俺の応援歌です」と泣き叫ぶ。すると、優斗のアカペラが客席へ広がっていく。「泣くな東京」だ。僅かにつっかえたイントロが、寝転びながら空へぶつけた《聞こえるだろう》の祈りにも似たロングトーンが、いくつもの逆説の接続詞を重ねて《明日もどうせ変わらないけど 生きてかなきゃ》の最終行へ繋がれていく。

畳みかけた「ロックバンド症候群」の最中、「泣くな東京」の東京とは街そのものを指すわけではなく、ライブハウスを訪れるあなたの代名詞なのだとハッとする。「生きてて良かったって言ってくれよ! いくぞ、東京!」なんてアジテーションは、「2002」の最中「お前ら、いくぞ!」の一声とイコールだった。東京は君だ。集団と社会へ捧ぐ賛歌ではなく、お前のためのファイトソングだった。「お前のロックスターでありたい!」と「海岸線」を最後に叩き込む中、O-EASTを満たした「ワン、ツー!」の大歓声は「俺はここで生きている」という宣言にほかならない。アンコールを彩った「君がバンドを辞めた夜」で《アンコールはいらない 俺が歌うから》としたためている通り、Blue Mashのボーカルの全ては優斗にかかっている。バンドは永遠じゃないことを承知で、全責任を背負おうとしているからこそ、チャントは巻き起こらない。それでも、ポツンと喉を震わせた優斗へ1本の光が注ぐ中、柔らかなアルペジオを添えて4人が照らし出されていく様は、ロックバンド・Blue Mashへの拡大に思えて仕方なかった。

取材・文=横堀つばさ 撮影=タカギユウスケ

 

 

セットリスト

『この街を出て -泣くな、東京-』2026.6.25(FRI)東京・渋谷 Spotify O-EAST

01.ホワイトノイズ
02.セブンティーン
03.M19
04.2002
05.平成時代
06.このまま僕らが大人になっても
07.春のまま
08.死にたくなったら会いにきて
09.恋人のすべて
10.桜新町
11.若者白書
12.若者白書(2回目)
13.東名高速下り線
14.少女
15.泣くな東京
16.ロックバンド症候群
17.海岸線
<ENCORE>
18.君がバンドを辞めた夜

リリース情報

Digital Single 「若者白書」
2026年7月1日(水)配信
https://jvcmusic.lnk.to/BlueMash_WakamonoHakusho
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