横山だいすけ、石田泰尚ら 親子で楽しむ”うた”から圧巻のコンチェルトまで! 多世代を音楽でつないだ『スタクラ 2026 in 横浜』2日目レポート

2026.8.4
レポート
クラシック

スタクラフィナーレを飾るのは
石田泰尚と田中祐子&神奈川フィルが贈る2つのコンチェルト

『石田泰尚コンチェルト with 田中祐子&神奈川フィル』
【日時】8月2日(日)17:30開演@大ホール
 【出演】
田中祐子(指揮)、神奈川フィルハーモニー管弦楽団(オーケストラ)
石田泰尚(ヴァイオリン)、菊池洋子(ピアノ)、實川風(ピアノ)

『スタクラ2026 in 横浜』の最後のコンサートは、8月2日(日)17時30分からの『石田泰尚コンチェルト with 田中祐子&神奈川フィル』。石田泰尚が、菊池洋子とメンデルスゾーンの「ヴァイオリンとピアノと弦楽のための協奏曲」を、實川風とカプースチンの「ヴァイオリンとピアノと弦楽のための協奏曲」を弾くというプログラム。つまり、時代様式の異なる(約180年の隔たりのある)2つの「ヴァイオリンとピアノと弦楽オーケストラのための二重協奏曲」が並べられた。共演は、石田が首席ソロ・コンサートマスターを務める神奈川フィルハーモニー管弦楽団。田中祐子が指揮を執った。神奈川フィルは、弦楽器だけの、第1ヴァイオリン8、第2ヴァイオリン6、ヴィオラ4、チェロ3、コントラバス2という小振りな編成。この日は、石田組の組員でもある、佐久間聡一がゲスト・コンサートマスターに招かれた。

メンデルスゾーンの「ヴァイオリンとピアノと弦楽のための協奏曲」は、作曲者がまだ14歳のときの作品。すでにメンデルスゾーンらしい抒情的な美しさが示されている、40分ほどの大作である。しかし、あまり演奏されることはなく、石田・菊池・田中の三者とも、初レパートリーだという。石田は、菊池とは2025年のリサイタルで共演したほか、オーケストラのソリストとコンサートマスターという関係で何度か演奏をともにしている。

まずは、田中の指揮のもと、オーケストラの引き締まった演奏で始まる。そして、菊池が重みのある第1音をはっきりと奏でる。石田が程良いヴィブラートのかかった美音で加わる。菊池は、豊かに楽器を鳴らし、石田は、メンデルスゾーンにふさわしい抒情的で澄んだ音色を披露。ソリスト二人の楽し気なやりとり。その後、石田がロマンティックな第2主題を艶やかな美音で歌う。また、ハッとするような甘い弱音表現もある。石田は、ときどきオーケストラにも目を配る(さすが神奈川フィルのコンサートマスター!)。田中はソリストたちに寄り添いながら、オーケストラを丁寧にリードする。カデンツァでは、石田と菊池とによるメンデルスゾーンらしい美しい二重奏が聴けた。

第2楽章は、ロマンティックな音作りによる穏やかで美しい弦楽合奏で始まる。菊池が、澄んだ音色で抒情性を湛えたソロを聴かせる。そして、菊池の伴奏にのって、石田がチャーミングに歌う。二人の繊細で美しい音楽性の魅力が示された楽章となった。

第3楽章では、石田の気品のあるヴァイオリンと菊池の古典美を感じさせるピアノによって格調の高い演奏が繰り広げられた。二人で速いパッセージも軽快に駆け抜ける。ヴァイオリンとピアノの美しいデュオを経て、最後は全員で力強く締め括られた。

石田と菊池によるアンコールは、クライスラーの「愛の悲しみ」。優美で、ロマンティックで、チャーミングな演奏だった。

後半は、カプースチンの「ヴァイオリンとピアノと弦楽のための協奏曲」。ニコライ・カプースチンは、ウクライナ出身の作曲家・ピアニスト。クラシック音楽にジャズの要素を取り入れた作風で知られる。このコンチェルトは2002年の作品で、石田と田中、神奈川フィルは、ピアニスト角野隼斗との共演で日本初演の2023年に演奏。石田と實川も、2025年11月にこのカプースチンの二重協奏曲をともに演奏している。

第1楽章から、二人の語らいのような音楽が聴けた。田中は、メリハリをきかせながらも、オーケストラをレガートに美しく鳴らす。シンコペーションのきいたリズムやチェロやコントラバスのピッツィカートなどが、ジャズ風。石田は、弾き飛ばさず、洗練された演奏を披露。これに対して實川は、自由度の高い、柔軟で多彩なプレイを披露。

緩やかな第2楽章では、石田が艶のある音色で歌い、二人で洒落たデュオを展開する。自在な対話。實川のクリスタルな高音が冴える。オーケストラも雰囲気のある音を奏でる。

リズミックな第3楽章は全員で躍動。石田と實川のコミュニケーションも楽しい。2人のソリスト、オーケストラの三者が一体となったジャズ的なノリで全曲を終えた。

石田と實川のアンコールは、コープランドの「ロデオ」より「ホウ・ダウン」。石田はフィドル的な表現で遊び心も示す。最後の「ダン、ダン、ダン」の3音ではオーケストラも加わり、石田泰尚と彼の仲間たちとによるコンチェルトの夕べが締め括られた。そして、『スタクラ2026 in 横浜』の幕が閉じられた。

取材・文=山田治生 撮影=福岡諒祠