「心同士が触れ合う感覚になる」スーパー登山部、3度目の長野・白馬山荘へ――音楽と山と人をつないだ、忘れがたい登頂&ライブレポート
『スーパー登山部 1st Album「スーパー登山部」Release Traverse Final.』@長野・白馬山荘 撮影=fil, inc.
『スーパー登山部 1st Album「スーパー登山部」Release Traverse Final.』2026.9.2(WED)@長野・白馬山荘
2026年9月1日(火)〜9月3日(木)の3日間、長野・白馬山荘で『スーパー登山部 1st Album「スーパー登山部」Release Traverse Final.』が開催された。2023年に愛知県で結成されたスーパー登山部は、音楽と登山を軸に活動を行う5人組ネイチャーポップバンド。標高2,832mに位置する白馬山荘でのライブは、今年で3年目となる。自分たちで何十キロもある楽器を背負い、片道何時間もかけて山に登り、演奏する。そんな唯一無二の活動スタイルと、大自然の空気や景色、心情を解像度高く落とし込む上質でハイスキルなサウンドで注目を集めている。
筆者も下界でのライブには何度も足を運んできたが、やはり彼らが真価を発揮する山でのライブを一度は観てみたかった。そこで開催2ヶ月前に突如思い立った。「行こう。今が一番若い!」。
スーパー登山部をキッカケに登山を始めた人も多いと聞くし、これから恒例になりそうな白馬山荘ライブに行ってみたい、という人も増えてくるだろう。今回は9月2日のライブレポートと終演後のメンバーインタビューに加え、登山初心者の筆者が大阪からソロで挑んだ登山体験も併せてお届けする。少しでも参考になれば幸いだ。
雲上のステージを目指し、栂池ルートで白馬岳へアタック
白馬山荘のある白馬岳は、長野県と富山県にまたがる北アルプスの後立山連峰に位置する、標高2,932mの日本百名山だ。夏でも雪が残る大雪渓ルート、高山植物や稜線歩きが人気の栂池ルート、山中の秘湯から縦走する蓮華温泉ルートなどのモデルコースがある。本格的な登山を楽しめるが、高山ゆえのリスクも伴う。
筆者の登山歴は、小学生の時に家族で登った木曽駒ヶ岳と、20年前に若さで登った富士山のみ。そんな圧倒的初心者がソロでたどり着くため、まずはリサーチを開始した。スーパー登山部の公式YouTubeやYAMAPの活動日記をはじめ、山メディア、ブログ、スポーツ用品店の店員さんの体験談など、実際に白馬岳に登った人のリアルな情報を収集。
そうして徐々に見えてきた登山計画。当初は比較的なだらかな蓮華温泉ルートで登ろうと思っていたが、平日は登山口行きのバスがないため断念。そこで、岩場や急登があるが稜線が美しい栂池ルートを選択した。なお大雪渓ルートは融雪が早く進んだため、8月31日に通行止めになっていた。
栂池自然園から望む北アルプス 撮影=久保田瑛理
栂池からの標準コースタイムは、およそ7〜8時間。山荘のチェックインは遅くとも16時までに済ませなければいけない。初心者の足なら9〜10時間はかかるとみて、とにかく早出早着を目指すことに。装備は、登山靴やアンダーウェアは自前で揃えつつ、ザックやレインウェアなどの高額なギアは山道具レンタルショップを活用。そして登山届の提出、山岳保険加入、地図アプリで地図のダウンロードと、当日までに必要な準備を完了した。
登山前日は朝6時に大阪を出発し、昼前に栂池高原に到着。ゴンドラとロープウェイを乗り継ぎ、標高1,860mの栂池ヒュッテに前泊した。同室の2人組もスーパー登山部のライブを観に行くと言っていて、山荘での再会を約束し、9月2日の朝5時、まだあたりが暗い中、いよいよ登山を開始した。
登山道で朝陽をあびる 撮影=久保田瑛理
白馬乗鞍岳 撮影=久保田瑛理
天気は良好。栂池登山道〜天狗原〜白馬乗鞍岳〜白馬大池までは、大岩がゴロゴロ転がっていたり、傾斜の強い箇所が多かったりと、正直かなり体力を削られた。こまめに塩分、水分、糖分を摂取しつつ歩みを進める。白馬大池で休憩を取り、クロオオサンショウウオの姿も拝んでホッとひと息。
白馬大池 撮影=久保田瑛理
そこからの小蓮華山〜白馬岳は、何度もやってくる偽ピークの洗礼を受けつつも、荘厳な山々や大パノラマに圧倒され、どこまでも続く稜線や可憐な花々、進むごとに姿形を変える岩に魅了された。幸運なことに雷鳥の親子にも出会え、山の醍醐味を存分に味わうことができた。
可愛らしい高山植物がそこかしこに 撮影=久保田瑛理
これぞ稜線。「頂き」のMVにも出てくる景色 撮影=久保田瑛理
雷鳥の親子に遭遇 撮影=久保田瑛理
折れずに歩き続けられたのは、ペースを同じくする人たちの存在だった。山には挨拶文化があり、会話が生まれやすい。この日はやはり白馬山荘ライブを目的に登る人が多く、初日のライブを観て下山する人ともよくすれ違った。そのたびに「スーパー登山部どうでしたか?」「めっちゃ良かったですよ!」というやり取りが、道中のあちこちで生まれていた。
白馬岳山頂に到着! 撮影=久保田瑛理
白馬山荘が見えてきた 撮影=久保田瑛理
そんな交流を通じて、登山者同士の間でも自然と仲間意識が芽生え始める。偶然の出会いながら、山荘までご一緒した登山部ファンの方の存在はとても心強かった。お互い励まし合いながら歩き続け、14時すぎに白馬岳山頂へ到着。登り始めた時は初対面だった人たちが、山頂で「イエーイ!」と喜びのハイタッチをする光景には、思わず込み上げるものがあった。
白馬山荘から望む北アルプスの山々 撮影=久保田瑛理
標高2,832mで鳴らされる至高の歌声とアンサンブル、山、そして観客との絆
前置きが長くなった。ここからは白馬山荘ライブの模様をレポートする。白馬岳山頂から100m下った先にある、真っ赤な屋根の白馬山荘。約800名を収容できる、日本最大にして営業小屋として日本最古(1906年開業)の歴史ある山小屋だ。今年は山小屋開業120周年、かつ午年という特別な機会のトラバース(=ツアー)ファイナル公演となった。
会場の「雲上レストラン スカイプラザ」は、立派な木造建築のレストラン。木のぬくもりを感じる内装と高い天井が心地良い空間で、大きな窓越しには剱岳や杓子岳、白馬鑓ヶ岳といった北アルプスの山々が一望できる。西側の壁には、白馬山荘ライブ初年度である2024年からのスーパー登山部の歴代手拭いが、メンバーのサイン入りで飾られていた。
開場時間になり、山荘へのチェックインを済ませた観客が続々と会場に吸い込まれていく。当日券も出ていたが、後方の立ち見席までパンパンの大盛況。やがてHina(Vo)、小田智之(Key.Vo)、いしはまゆう(Gt.Vo)、梶祥太郎(Ba)、深谷雄一(Dr)が登場し、17時45分、山上でのライブが幕を開けた。
撮影=fil, inc.
ライブハウスでの配置とは違い、ほぼ横一列にスタンバイした5人。いつもは上手にいるいしはまが下手にいる。小田の指先が軽やかに鍵盤を撫で、聴こえてきたのは「風を辿る」。「今日はよろしくお願いします、スーパー登山部です」というHinaの挨拶とともに、爽やかなサウンドと柔らかく透明感のある歌声が会場を満たしていく。約9時間半の登山を終えて浴びる、極上の音楽。それだけで感動が押し寄せ、全てが報われた気持ちになって、早くも感極まってしまった。<どこまでも好きをやめない!><ソラの夕映え 煌めき握って進め>という希望にあふれたサウンドと言葉が、細胞レベルに染み渡り、全身の疲れをじわじわと解かしていく。
続き、1stフルアルバム『スーパー登山部』の冒頭を飾る「Departure」から「Breathe」のイントロへしっとりと突入。「『スーパー登山部 1st Album「スーパー登山部」Release Traverse Final.』、白馬山荘へようこそお越しくださいました。まずはみなさんお疲れ様でした! ここまで長い道のりを歩いてきたと思うんですけど、まだまだいけますか?ここからみなさんと登っていきたいと思います! それでは出発します!」という小田の言葉から、一気にみずみずしいアンサンブルが放たれる。
同じ空間で音楽を共有するのがライブの醍醐味だが、ここには「全員が山を登り切った」という共通体験がある。達成感も相まってか、音楽体験への感度が劇的に引き上がった。年齢も属性も、山やライブへの思い入れも異なる観客が、何時間もかけて辿り着いた場所で「ようこそ!」と迎えられ、全身で音楽の波に身を委ねる。<あなたとこのまま 広がるアルプスを跨ごう>のフレーズが刺さったのは、集まった見ず知らずの私たちが、この場所からスーパー登山部と音楽の旅を始めるのだということを、理屈抜きで実感したからだ。
「みなさん、山登ってきましたかー!?」という小田の問いかけに、観客は割れんばかりの大喝采で応える。「見てください、この景色!」と促されて窓の外に目をやると、山々の間に一面の雲海が広がっていた。やがてメンバーの背後から、ぱあっとオレンジ色の夕陽が差し込んだ。天然の照明の中で歌われる「ハイライト」のなんと輝かしいことか。続いて披露された「燕」では、Hinaのエバーグリーンな歌声が宙を舞う。流れる風、明ける空、緑のにおい。道中に五感で触れた自然の恵みが脳裏に浮かび、地上で聴くのとはまた違う実感を伴って響いてくる。
撮影=fil, inc.
しみじみ「気持ち良いですねえ」と笑顔を見せる小田に、「気持ち良いし、そっち(客席)側からこの景色が見たい」と、朝日岳の向こうに沈みゆく夕陽を眺めるいしはま。小田は自身が初めて白馬岳に登頂した時は鑓温泉ルートだったと回顧しつつ、オーディエンスにどのルートから登ったか、どのエリアから来たかを尋ねていく。日本全国各地の地名が挙がる中、なんとアメリカはカリフォルニアからやって来たという猛者の姿も。
さらに小田は、今回アップデートしたという自身の相棒のキーボード「Nord Stage 4」を嬉しそうに紹介。「音が良くなって、総重量も35kgにアップしました!」との声には客席からどよめきが上がる。小田がキーボードを自ら歩荷で運んだ分、プライベートな荷物はスタッフが手分けして運んだという裏話も明かしつつ、Hinaと小田のツインボーカルが美しい「意志拾い」へ。恒例の小田と観客とのクラップ合戦「意志拾いチャレンジ」も大盛り上がりで、みんなで作る空間がまたひとつ特別な記憶に刻まれていった。
すっかり陽が落ち、群青色に染まる雲海をバックに紡がれたバラード「火花」では、Hinaの透き通る歌声が、どこか神秘的な響きを帯びて届いてくる。大切な人を守るため、最後まで命を燃やした人への手紙をイメージして小田が書いたというこの曲。生命を循環させる山、そして星空に近いこの場所だからこそ立ち上がるサウンドスケープに、オーディエンスは静かに聴き入っていた。
MCでHinaは、白馬山荘への想いを口にする。「私たちにとっても、1年に1回の白馬山荘のライブは本当に特別なもの。毎年この景色を見ると、今年1年こんなことがあったなと思い出す、ゆっくりできる時間。みなさんもいろんな想いを持って登ってきてくれたと思う。来年も再来年もずっと続けられたらいいなと思いつつ、ここで出会えた特別な空気とご縁を大事にして、今後も登山部を続けていきたいと思います」と感謝を述べた。
そして「毎年、陽が落ちてからやっているカバー曲があって。今回もやってもいいですか」と言葉を添えて、「遠き山に日は落ちて」(交響曲第9番『新世界より』第2楽章/作曲:ドヴォルザーク、作詞:堀内敬三)を丁寧に演奏した。小田の重厚なピアノとHinaの澄み切った高音が息を呑むようなコントラストをみせ、いしはまのあたたかなギター、深谷と梶のオーガニックなビートが重なると、まるで童心に返るような、優しく心をほどかれていくような不思議な感覚に包まれた。山の大きな懐に抱かれて聴く旋律は、筆舌に尽くしがたいほど素晴らしかった。
撮影=fil, inc.
ライブは早くも終盤へ。東名阪クアトロツアー『2027年 登山の旅』の開催を発表したメンバーは、笑顔でガッツポーズを繰り出す。そして8月11日の山の日に配信リリースされた新曲「道草」をプレイした。ギターを持ち替えたいしはまのロックなリフ、梶のスラップ、深谷のグルーヴィなビートが会場を揺らし、<進もう>という前向きな歌詞が駆け巡る。スーパー登山部の楽曲の歌詞は、山だけでなく人生とも重ね合わせることができる。悲しく辛いことがあっても、迷っても落ち込んでも私たちは道を進めるし、歩いた道は軌跡になる。そんなふうに寄り添って、そっと背中を押してくれる。これからのバンドの未来と決意を示すような歌詞が心地良く、アーバンでグッドなメロディーが耳と心を潤していった。
最後は「頂き」。小田が白馬岳で見た景色を元に生まれたこの楽曲は、この山を登る人たちのテーマソングになっていた。<頂きと思って近づくと 道まだ続くと 気付いて嫌になる>と歌ったHinaが「嫌になりましたよね?」と言って会場を笑わせたように、この場所において、「頂き」ほど実感をもって響く楽曲はないだろう。登山中はずっとこの歌詞が頭の中をリフレインしていたし、稜線では時折、誰かが流す「頂き」のメロディーが聴こえてきた。みんなこの曲をお守りのように聴きながら、一緒に山を登ってきたのだ。オーディエンスは待ってましたとばかりに、顔を輝かせてシンガロング。メンバーの熱量も高まり、力を込めるようにオルタナティブなアレンジを叩き込んでフィニッシュした。大歓声と大拍手に包まれたメンバーは、感無量といった表情を浮かべてステージを後にした。
終わってしまうのがあまりにも寂しい。すぐさま起こったアンコールに応え、ステージに戻った5人は、改めて白馬山荘とスタッフに感謝を述べる。アンコールは、チームの一員でもあり、スーパー登山部から派生したパラレルプロジェクトバンド・登山部Experimentのメンバーでもある森藤悠斗(Per)と弓立翔哉(Mar.&Fl.&Per)を交え、ライブを締め括る定番曲「スーパー銭湯もある」を披露した。
全員でシンガロングする<タラッタラッタッタ〜>の気持ち良さたるや。森藤はマラカスを、弓立はタンバリンを持ち、小田の無茶振りに応えてソロプレイの応酬から深谷とのセッションへ。小田も渾身のソロプレイをお見舞いし、ラストはサンバのリズムでとびきり華やかにライブを終了した。登山部チームの雰囲気の良さも垣間見える、笑顔あふれる時間だった。
撮影=fil, inc.
小田は最後に「白馬山荘ライブを持続可能なものにするために山文化を大切に考えていきたいですし、これをもっと開けたものにしていきたい」と述べ、「北アルプストレイルプログラム」への募金を呼びかけた。このプログラムは、登山者にとって安全な登山道を維持するための新たな取り組み。これまで山小屋などが担ってきた登山道の維持管理を、近年の社会情勢や環境の変化により、維持の継続が難しくなっているという。そこで、山の利用者や地域関係者と協力し合って山を守ろうという取り組みだ。
筆者も暗闇の中でヘッドランプを点けて道を探す時、岩に書かれた「⚪︎」のルートマークを見つけてものすごくホッとした。道迷いを防ぐために張られたロープやピンクテープも、整備された木道や丸太の階段も、誰かが取り付け、維持してくれているからこそ、安心安全に山を登ることができる。そのありがたみを噛み締めて登山道を歩いた。山と音楽と人、そして社会をつなぐスーパー登山部の活動。ただ「白馬山荘でライブをやります」というのではなく、山を愛する仲間として地域と関係を結び、山と登山者を守ろうと心を砕くメンバーの姿勢が伝わってきた。支援はインターネットでも1口500円から可能なので、ぜひチェックしてみてほしい。
ここからは終演後、メンバーに会うことができたので感想を訊いたインタビューをお届け。
「大変だけど、それでも白馬山荘でやりたい理由がある」
山と音楽と人が溶け合った、忘れられない3日間
撮影=fil, inc.
ーーライブ、本当に感動しました。登ってくる途中でスーパー登山部のファンの方々の交流や強い結束力を目の当たりにして、胸が熱くなりました。
小田:僕らも同じです。普段ライブハウスに来てくれるお客さんが山の上に来てくれた、その姿を見るだけで本当に胸が熱くなって。「これだけのお客さんが僕らの音楽を楽しみに集まっている」って、普通じゃないなって。
いしはま:我々が見られていない光景だよね。下山するお客さんと登ってくるお客さんが「登山部のライブですよね」と会話する稜線。会場までの道のりが登山道になってるの、すごい不思議だよね。
ーー2日目のライブはいかがでしたか?
深谷:2日目という感じのライブでした。ちょっと慣れも出て、1日目とも全然違う感じになって。「こうしよう」と決めてたわけでもないし、その場のノリでアレンジがどんどん変わったり。お客さんの空気も音も、音の感じ方も外の景色も全然違う。「これぞ白馬だな」という感じです。
撮影=fil, inc.
ーー昨年は5日間、今年は3日間のライブでしたね。
小田:本当に同じ日は一切なかったね。
深谷:お客さんも初めての人から3回目の人まで、いろんな感想をくれるんですよ。その感想を聞いて「こういうライブだったんだ」と実感する。道中の出会いも聞かないとわからないので、実感して想像して「いいな」って、後で噛み締めてる感じがありますね。
梶:まさに2日目の良さもありつつ、毎日お客さんの新鮮な顔が見られて、我々も毎回違う気持ちでできて。「ここでやるのは本当に特別なライブだな」と感じながら演奏してましたね。
ーースーパー登山部の初ライブが白馬山荘だという人も多かったですね。
小田:「地上のライブが売り切れて買えないから来ました」という人もいましたね。
いしはま:あとは登山から入ってくれて、ライブハウスに行くよりも山の方が来やすい、とかあったりするのかもしれない。
撮影=fil, inc.
ーー登ってくる途中で、スーパー登山部のことを何も知らずに登っていた山好きの方が、周りがみんな「スーパー登山部、スーパー登山部」と言うから気になって「当日券買ってみます」とおっしゃっている場面にも遭遇しましたよ。
Hina:それぞれがいろんな想いで登ってきてくれてることに変わりないと思うので、そういう想いを知った上で、自分たちが体現できるものも変わる気がします。「実は今日こういう理由があって登ってきました」と言ってもらえるとすごく嬉しいし、背負うわけじゃないですけど、それも実にして歌うことができるのかなと思いますね。
ーーHinaさんの声量の素晴らしさにも圧倒されました。
Hina:3年目というのもありますけど、今年の夏は野外フェスに出るようになって、少し過酷な環境で歌うことに慣れてきたのかも。標高が高いところもそうだし、雨が降っても風が吹いても、砂が入ってきても大丈夫なコンディションが作れたのかなと、今思いました。
Hina:間違いなく1日目より2日目の方が声が出てました。
いしはま:初日とは思えない声量だったよ。
小田:なんなら山頂に着く直前にアカペラで歌ってた時から「めっちゃ声出てるな」と思ってた。
Hina:そうだね。「標高が高い」と思いすぎない。「あくまで今からただのライブをするんだ」という気持ちでいけば、何とかなることがわかった(笑)。今までインタビューで言ってた「酸素缶を吸って〜」みたいなのは、気で負けてたんだろうなって。
小田:実際、酸素は薄いはずだけど(笑)、メンタルが強くなってきたのかな。
Hina:緊張すると息を吸う量も減るんですけど、トラバースを経て「Breathe」や「火花」のような歌始まりの曲の呼吸を大事にできるようになりました。
いしはま:今回はワンマンに近い形だから、やる側としても安心感とリラックスがあったかもしれないね。「聴きに来てくれているんだ」という体制でやれるのは、去年とは全然違う。
Hina:山荘の外に出れば、至るところにグッズを持った人たちがいる光景も去年一昨年とはちょっと違うなと思いました。白馬岳やスーパー登山部の良さを改めて知ってもらえる機会があることはありがたいですね。
ーー本当に愛されていますよ。
Hina:実は去年の白馬山荘を終えてから悔しいこともあって、上がったり下がったり、活動に波がありました。でも今年、たくさんの人が自分たちのためにここまで足を運んでくれて。「白馬山荘が自分たちにとってもすごく特別だよ」ということは毎年伝えていきたい。大変だけど、それでもやりたい理由がある。ライブの後のお客さんの笑顔、スタッフや白馬山荘の方々の反応を見ていると「もっと頑張りたいな」と思える。きついけど、だからこそ自分たちが得られている特別な気持ちもあって。ずっと好きでいてくれた人たちには感謝しかないですね。「愛してくれている」って、白馬に来た時に一番感じるかもしれないです。
小田:山って、本当に何かが開けるなと思っていて。境界がひとつ取り払われた状態でコミュニケーションするのは、心同士が触れ合う感覚があって。白馬山荘のライブでは、お客さんともそれを感じることができる。自分もHinaちゃんが言ったようなことを思うし、ここでしか感じられないものをみんなから受け取っていると思います。
撮影=fil, inc.
実際に白馬岳に登り、白馬山荘で音を浴びて感じたことがある。白馬山荘のライブは、目の前で鳴らされる音楽だけでなく、果てしない絶景や過酷な道のり、人との出会い、その全てが溶けあって成立する、稀有で特別な体験だった。観客それぞれに山を目指した理由があり、抱えている人生の背景がある。筆者にとっても、登頂したからこその喜びと、抗えない山の偉大さに心を揺さぶられ、裸の感情を引き出された生涯忘れられない思い出となった。
翌9月3日は胸いっぱいの感動と下山への不安を抱えながら、朝4時に白馬山荘を出発。途中で雨に降られ、転んでストックを折りながらも、何とか無事に下山することができた。麓の温泉で露天風呂に浸かり、八方尾根と白馬三山をぼんやり眺めながら静かに思った。スーパー登山部も私たちも、また1年それぞれの道を歩み、白馬山荘に戻ってくるのだろう。またあの白馬で、笑顔で再会できることを願っている。
取材・文・撮影=久保田瑛理 写真提供=スーパー登山部(撮影:fil, inc.)
セットリスト
2026.9.2(WED)@長野・白馬山荘
【セットリスト】
1.風を辿る
2.Departure
3.Breathe
4.ハイライト
5.燕
6.意志拾い
7.火花
8.遠き山に日は落ちて
9.道草
10.頂き
EN.スーパー銭湯もある
ツアー情報
■2027年1月22日 (金)福岡 INSA Fukuoka
OPEN 18:00 / START 19:00
■2027年1月23日 (土) 広島 広島Cave-Be
OPEN 17:30 / START 18:00
■2027年1月31日(日)宮城 誰も知らない劇場
OPEN 16:30 / START 17:00
■2027年2月5日(金)大阪・UMEDA CLUB QUATTRO ※SoldOut!
一般:前売 ¥5,700(税込)/当日 ¥6,500(税込)
U-25:前売 ¥3,500(税込)/当日 ¥4,000(税込)
※スタンディング/整理番号あり
※別途ドリンク代¥600
※U-25
2026年10月16日(金)18:00〜2026年10月26日(月)23:59
※
※購入時には
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制作協力:YUMEBANCHI
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