<スペシャル・トーク>ホフェッシュ・シェクター×上田竜也 7年ぶりの再会で蘇る「あの舞台」の記憶、そして再来日への期待【前編】
2026年10月23日(金)~25日(日)彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演されるホフェッシュ・シェクター・カンパニー『Theatre of Dreams』(愛知公演あり)。カンパニー主宰のホフェッシュ・シェクターと、公演アンバサダーを務める上田竜也のスペシャル対談が到着した。
振付家・音楽家として世界的に活動するホフェッシュ・シェクターと、ホフェッシュ・シェクター・カンパニー『Theatre of Dreams』の公演アンバサダーを務める上田竜也。
今年10月の来日に先駆け、二人がカンパニーの魅力や作品の見どころについて語りました。
二人は、2019年に上演されたPARCO presents『HOFESH SHECHTER’S ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』で協働した間柄。『ポリティカル・マザー』での協働を振り返るとともに、『Theatre of Dreams』の魅力や日本公演への期待について語り合いました。7年ぶりにオンラインでの再会を果たした二人の対話から浮かび上がる、それぞれの舞台芸術観や表現への思い。貴重なスペシャル・トークを2回にわたりお届けします。
強い信頼関係が生まれた『ポリティカル・マザー』での協働
――2019年に日本で上演された『ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』(以下『ポリティカル・マザー』)では、ホフェッシュさんのラブコールで上田竜也さんのご出演が実現したそうですね。上田さんのどんな姿がホフェッシュさんの記憶に残っていますか?
ホフェッシュ・シェクター:竜也さんにオファーしたのは、全方位的に才能があるパフォーマーだと感じたからです。『ポリティカル・マザー』で竜也さんが演じた役柄はステージ上でカリスマ性を発揮することが1つのチャレンジでしたが、竜也さんはそれを見事にこなしてくださいました。非常にエネルギッシュでパワフルで、生命力のようなものを表現するのが上手な方だと感じました。
――上田さんは『ポリティカル・マザー』に対して、どのような印象が残っていますか?
上田竜也:海外のカンパニーとご一緒するのは初めてだったので、バンドの皆さんが日本に集まってきて、リハーサルが始まったらどうなるんだろうと、最初はすごく緊張していました。でもホフェッシュさんがいろいろとアドバイスしてくださり、空気をなごませてくれたので、リラックスできましたね。
ステージ上ではすっかり緊張を忘れて暴れ回ったんですが(笑)、特に覚えていることが2つあって。1つはスタンドマイクを振り回していたらステージのどこかに突き刺さってしまい、身体の大きなミュージシャンの方が俺にビビっていたこと(笑)。もう1つは音響か何かのトラブルがあった回があり、そのときは地声で歌った記憶があります。
同作品は2010年に彩の国さいたま芸術劇場でも上演された、ホフェッシュ・シェクター日本デビュー作。 『ポリティカル・マザー』(2010年・彩の国さいたま芸術劇場) Photo. 池上直哉
――それは強烈な体験でしたね。上田さんはこれまでさまざまな演出家とお仕事されていますが、演出家・振付家・音楽家としてのホフェッシュさんにどんな魅力を感じましたか?
上田:まずとにかく優しいんです。でもしっかり言うべきところは言ってくれて、俺が困っていたら「大丈夫、僕は信じているからできるよ!」と言葉を投げかけてくれる。日本ではあまりストレートに「信じてるよ」と伝えてくれる人はいないので、ホフェッシュさんのそういったところが好きだなと思いました。またホフェッシュさんが作る音楽はとても個性的で、何度も聴きたくなるような音楽だなと感じました。
――ホフェッシュさんの作品では観客との共鳴が重要だと感じます。
ホフェッシュ:(頷きながら)私は作品を通して、魂のレベルで人といかにつながれるかということを常に目指しています。ダンスであれ音楽であれ形はなんでも良くて、ただ作品をご覧になった方が自分の人生を振り返るきっかけになったり、その人の人生経験につながるものがあればいいなと思っています。
『ポリティカル・マザー』(2010年・彩の国さいたま芸術劇場) Photo. 池上直哉
――そのうえで、日本の観客に対してホフェッシュさんはどのような印象をお持ちですか?
ホフェッシュ:日本の観客の皆さんはとても情熱に溢れていて、作品をしっかりとフルに感じてくださっている印象があります。でもそれが必ずしもあからさまに表れるわけではなくて──それは文化的な違いなのかなと思いますが──「今日はお客さん、全然反応しないな」と思っていても、後から感想をいただくと、実は作品をすごく楽しんで、ハマって観てくれていたことがわかる、ということもあります。ただ、竜也さんが出演された『ポリティカル・マザー』に関しては、皆さん非常に盛り上がってくださいました(笑)。
――確かに『ポリティカル・マザー』はライブのような盛り上がりでした。ステージ上で上田さんは、ライブに近い感覚だったのか、舞台に近い感覚だったのか、どんな体感だったのでしょうか?
上田:面白いことに、どちらでもある感じだったんですよね。『ポリティカル・マザー』で演じた役柄としてライブをしている感覚もあれば、「こういうことを伝えたい」と意図して動いている部分もあって、一概にライブや舞台、どちらかの感覚とは言えず、いろいろなものが複合していた感覚があります。
『ポリティカル・マザー』(2010年・彩の国さいたま芸術劇場) Photo. 池上直哉
――それは面白いですね。また上田さんは「ホフェッシュさんの音作りが好き」とおっしゃっていましたが、どういった部分に惹かれるのでしょうか?
上田:感覚的なことなので言葉にするのは難しいのですが、『ポリティカル・マザー』の公演が終わったあともしばらくずっと、自分が歌っていた曲を聴いていたんです。ダークなところもありつつ中毒性がある感覚がとても好きで、それこそ「次のライブで歌いたいな」と思うくらい、とにかくハマっていた時期がありました。
人生や脳内の多層性に迫る『Theatre of Dreams』
――『ポリティカル・マザー』から7年、2024年初演作『Theatre of Dreams』が10月に日本で上演されます。まずはどのようなコンセプトから生まれた作品なのか教えてください。
ホフェッシュ:ダンスの創り方というのは、非常にいろいろなところからアイデアが湧いてきて、それをまとめていくようなプロセスで説明が難しいのですが……まずはじめに、ファンタジー、つまり想像上の世界と現実のズレや緊張感といった関係性を扱いたいと考えました。さらに現実の人生も実は物語がたくさん連なって構成されているのではないか、であれば劇場の幕が上がると新しい物語が始まるように、幕を用いて人生という物語の連なりを描くことはできないか、という思いが『Theatre of Dreams』のビジュアル的なアイデアにつながっていきました。
もう1つは、舞台って脳の中を覗いているようなイメージがあって……脳の中では、いろいろな階層でさまざまなことが起こっていて、無意識のレベルに深いところへ行けば行くほど、断片的で意味を成さない物語のようなものが生まれたり、どんどんクレイジーなものになっていくと思うんです。そこにはファンタジーと現実のあいだにある何かがあるのです。そういった、脳の中で起こるいろいろなものが見え隠れするような状態を、舞台で表現できないかと思いました。
ホフェッシュ・シェクター・カンパニー『Theatre of Dreams』 Photo. Tom Visser
そんなコンセプトをベースに、音楽や振付を同時に創っていきました。思い浮かんだアイデアはノートに書き留めつつ、ビジュアルイメージや動きを思いついたらすぐにスケッチしたり、ダンサーに伝えたり。別々のレイヤーですべてが同時進行していき、最後に1つの形になっていったのです。ですから「音楽ができて、次にダンスを創って」というようなステップを踏んでいるわけではなく、イメージとしては大きい庭にいろいろな植物を好きに植えて、それらがそれぞれに大きくなって最終的に1つの庭園を構成するようなイメージです。
――それは『Theatre of Dreams』に限らず、どの作品でも同じなのでしょうか?
ホフェッシュ はい。最初は常にカオスで、カオスから秩序を立ち上げていくというようなイメージですね。
――大変な作業ですね。上田さんは今年5月に上海で『Theatre of Dreams』をご覧になったそうですが印象的だったシーンはありますか?
上田:今ホフェッシュさんが言った、幕が開いたり閉まったりするところは確かに印象的で、今お話を聞いてなるほどと思いました。改めてもう一度観たいですね。あとはやっぱりダンサーの、繊細かつダイナミックな動きですね。本当に食い入るように観てしまうステージで、特にお客さんを巻き込む、ある場面が衝撃的でした。上海のお客さんはすごく盛り上がっていて、立ち上がって前方で踊っている人もいて「上海の人ってこんな感じなんだ!」と驚きました。本当に劇場がクラブ化していましたね。
『Theatre of Dreams』上海公演会場の上海国際舞蹈中心にて。 Photo. Tomomi Ito
――上田さんも踊られたのでしょうか?
上田:いえ、俺は“観る”ことに徹しました(笑)。あと静けさから一気に音が大きくなって激しくなるところが好きですね。『ポリティカル・マザー』でも感じたのですが、音圧なのか、あの音に圧倒される感じが好きです。
『Theatre of Dreams』上海公演では本番前のリハーサルを客席で特別に見学させてもらった。Photo. Tomomi Ito
――『ポリティカル・マザー』と『Theatre of Dreams』の2作に対して、上田さんが共通して感じたことはありますか?
上田:『ポリティカル・マザー』のようにメッセージ性が強い作品も好きですが、『Theatre of Dreams』はダンサーたちの動きなど、繊細なことを覗かせてもらっている感覚で、本当に瞬きせずに観たくなるようなところがとても魅力的だと感じました。共通して感じたのは音楽との融合性。やっぱりそこがすごく好きです。
『Theatre of Dreams』上海公演会場の上海国際舞蹈中心にて。 Photo. Tomomi Ito
ヘアメイク(上田竜也):豊福浩一
スタイリング(上田竜也):野友健二 (UM)
公演情報
10月24日(土)14:00開演
10月25日(日)14:00開演
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
公演詳細:https://www.saf.or.jp/stages/detail/107729/
日程:2026年10月16日(金)・17日(土)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
公演詳細:https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/20261016hofesh.html