井上芳雄インタビュー 「韓国からすごいミュージカルが出てきた!自信を持っておすすめしたい」 ミュージカル『長い長い夜』

17:30
インタビュー
舞台

井上芳雄 撮影=池上夢貢

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2027年6月、日比谷シアタークリエにて、ミュージカル『長い長い夜』の上演が決定した。

原作は、韓国で第21回文学トンネ子ども文学賞大賞を受賞し、「子どもに読んでほしい児童書NO.1」となった『長い長い夜』(著作:ルリ)。児童向けの文庫として異例の累計販売数50万部越えを記録した。

教科書にも掲載されるなど、国民的な児童書の一つとなった作品が、韓国で2024年に待望のミュージカル化。開幕するや否や話題を呼び、第9回ミュージカルアワードの大賞および作品賞にノミネートされる快挙を成し遂げ、初演から約2カ月でリバイバル公演の上演が決定した。

命、愛、友情、人生、アイデンティティなどをテーマとし、誰もが共感でき、涙する名作ミュージカルを、演出家・小沢道成がオリジナル演出で上演。シロサイのノードン役に井上芳雄、ペンギン役に葵わかな、その他、山田健登、坂口涼太郎の出演が決定した。

このたびシロサイのノードンを演じる井上芳雄にインタビューすることが叶った。シロサイをイメージしたようなヘアスタイルと衣装で登場した井上。自身も韓国で観劇し、感動したという本作を日本初演するにあたり、意気込みを語ってくださった。


■韓国発の感動作!種を超えた愛とシロサイ役に挑む

――本作にご出演が決まり、まずは意気込みをお聞かせください。

ここ2~3年、歌のレッスンを受ける目的でよく韓国へ行くようになり、その際に大劇場から小劇場までいろいろな作品を観劇をしています。韓国へ行き始めてすぐぐらいに、小劇場が集まるソウルの大学路(テハンノ)で面白い作品をやっているから、ぜひ観た方がいいと言われたのが『長い長い夜』でした。原作の絵本が日本で出版されていたので、読んでから観劇し、とても感動しました。

『長い長い夜』がいい作品だと話をしてたら、あれよあれよという間に日本で上演できることになりました。今回、日本のスタッフ、キャストも素晴らしい方々が集まってくださっているので、楽しみしかないです。

――原作と台本のどちらも読まれていると思いますが、感想をお聞かせください。

ネタバレになるので全部は話せないのですが、この作品は動物が主役の物語です。動物が出てくる作品は『キャッツ』や『ライオンキング』などがありますが、それとはまた違う描き方をしています。

人間と同じ世界で生きている動物が登場し、実際に物語の中で、人間は動物にいろいろな影響を及ぼします。作品としてのテーマはたくさんありますが、動物の種を超えた愛情を描いているところに、まずびっくりしました。しかも児童文学として作られたことに驚きます。

さらに韓国の若いクリエイターたちが、大学の卒業制作のような感じでミュージカルにしました。その評判が良くてロングランになっているという、ブロードウェイやウエストエンドみたいな状況にも興奮しました。

ミュージカル版は、僕が演じるノードンがペンギンと出会うストーリーから始まるなど、原作とは違う時系列で進んでいきます。小劇場で想像力を使い、この物語を舞台化しているところもいいなと共感しました。

――井上さんが演じられるシロサイのノードンの魅力を教えてください。

まずサイを演じたことがないので(笑)、すごく楽しみです。

ノードンはいろいろな過去を背負っています。幼い頃は象の群れの中で育てられ、途中で自分が象ではなくサイだと気付き、そこから出会いや別れを経験します。

希望と絶望を繰り返すのですが、そこに人間が深く関わってきます。ものすごく大変な経験をし続けているので心を閉じてしまうのですが、彼の置かれている状況や生涯にすごく興味を持ちました。ペンギンと出会ったことで、彼が変わっていく姿、もともとノードンが持っていた愛の深さは、演じがいのある役だと思います。

僕も家族がいて子どももいるので、そういう意味で共感できますし、種の違いを超えたノードンの愛情に学ぶところがあると思います。

■日本版の新たな演出と多彩な楽曲、共演者への期待

――原作は、韓国で子どもに読ませたい本として有名です。今回初めて日本で上演するにあたって大切にしたいことは何でしょうか?

原作の素晴らしさ、そしてミュージカルとしての素晴らしさは、お墨付きの作品だと思うんです。原作で描かれている大事なメッセージをそのまましっかりお届けしたいと思います。

今回、演出の小沢(道成)さんをはじめ、日本版を作るために集まってくださったクリエイターの皆さん、キャストの皆さんで自分たちの『長い長い夜』を作れたらと考えています。

大学路の劇場は小さい劇場でしたが、今回上演されるシアタークリエは中劇場になると思います。規模も違いますし演出も違うので、新しくクリエーションすることをおそれずに楽しんでやりたいです。

小沢さんは演出家として、とても面白い方だと思うので、小沢さんの作る世界を楽しみたいですし、このワクワク感を忘れずにいたいですね。

――ミュージカル作品ということで、楽曲の印象をお聞かせいただけますか?

音楽のタイプでいえば結構現代的で、どちらかというとポップス寄りなのかもしれません。コミカルなキャラクターの動物が登場するので、ナンバーもバラエティーに富んでいます。

韓国公演では、子役の方がペンギン役を演じていました。子どもが歌うことで説得力がありましたし、とても芸達者な子たちばかりで「さすが韓国ミュージカル。人材が豊富だな……」と思いました。

1回観劇した中で、ノードンが後半で歌うソロナンバーにすごく気持ちが動きました。それと同時に、そんなに派手すぎずドラマティックすぎない、心に寄り添うような優しいナンバーがたくさんあったので、すごく素敵だと思いました。

大学路のミュージカルらしいナンバーがいっぱいあるという記憶がありますが、実際に歌ってみたらまた違うかもしれないので、稽古で歌い込めるのを楽しみにしています。

――今回共演される葵わかなさん、山田健登さん、坂口涼太郎さんの印象についてお聞かせください。

葵さんは、共演したことがないのですが、あるワークショップで一緒になったことがあります。その時にいらっしゃった内野聖陽さんが「いい俳優さんなんだよ」とプッシュされていたのを覚えています。ミュージカルがお好きだというのが伝わってくるので、すごく楽しみです。

山田くんは舞台では初共演ですが、コンサートなどで共演はしていて、とにかく笑顔が素敵な若者です。歌も素晴らしいですけど、あの笑顔がこの作品の中にあるだけでもいいなと思いますし、それだけで何かが成立する俳優さんだと思います。

坂口くんは、最近いろいろなところで活躍されていますけど、ミュージカル愛がすごいです。あと小沢さんとの共演経験がたくさんあるので、小沢さんがやりたいことを僕たちに伝えてくれるのでは……とそういう役割も期待しています。

■シアタークリエで魅せる繊細な世界「ダメだったら僕の責任!」

――この作品がストレートプレイではなくミュージカルで上演されることによって、より良くなると実感されることはありますか?

ストレートプレイでできなくもないとは思いますが、この作品はシーンがどんどん変わっていきます。一瞬にして海になったり動物園になったりできるのが、ミュージカルとしてこの物語をやる強みかなと思います。

さらに動物を演じるといっても、着ぐるみで演じるわけではありません。観客の皆さんには想像力を使ってもらうことになりますが、観客の皆さんの想像力と僕たちの演技が上手く合わさり、舞台上に動物がいて、海があると感じられたら最高だと思います。

この作品に登場する動物たちが置かれている状況は過酷ですし、しっかりした思いがあります。それを表現するには、ミュージカルが合っていると思います。韓国で観た時、最後は観客の皆さんが泣いていて、僕も言葉は全部分からなかったけれども、最後のシーンで泣けるところがありました。

泣くことが全ていいとは思わないですけれど、最後、劇場が大変なことになるんじゃないかな……というタイプの作品ですね。気持ちがすごく動くというか、震えてしまうので、そういう意味でもミュージカルとして素晴らしいと思います。

――この作品をシアタークリエで上演する魅力は何だと思いますか?

シアタークリエは、ミュージカルをやる上で、細やかな感情が届く大きさだと思います。大きな劇場でも届くものはあると思いますが、ある程度小さい空間でないと伝わらないものは確実にあるので、とても繊細な作品をやるのに適していると思っています。また、声を張り上げるようなドラマティックなナンバーがなくてもお客さんに伝わって、それが客席に広がっていく劇場です。

先ほど小沢さんとお話して今回のステージプランを聞いたのですが、僕が今まで見たことがないシアタークリエの使い方になりそうです。聞いただけでワクワクしますし、僕の印象では、ミュージカルではあまりない感じになるのではないでしょうか。小沢さんは、今一番新しいストレートプレイをされる演出家だと思うので、それをシアタークリエでミュージカルとして観られるのは、新鮮だと思います。

――ノードンは、これまで井上さんが演じてきた役の中で、一味違うと感じました。一方で、今の井上さんだからこそ演じられる役であり、とても似合うと思いました。この役を演じられることで、井上さんの違う一面が見られると期待しているのですが、いかがでしょうか?

ノードンは、設定として今の自分に合うタイプの役だと思います。これまでいろいろな役をやらせていただきましたが、歳を重ねて今の自分の年齢に合った役をやりたいと思っていましたので、そういう役に出会えた喜びがあります。

シアタークリエの作品でいうと『ダディ・ロング・レッグズ』という二人芝居をずっとやらせてもらっていますが、この作品がダディみたいに長く愛される作品になったらいいなと思っています。僕自身、それぐらい良い作品だと思っているので、ノードン役を演じることは、責任重大だと感じています。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

僕が実際に韓国で観て感動した作品です。韓国には良い作品がたくさんありますが、個人的には去年トニー賞を取った韓国ミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』以来、すごいミュージカルが出てきたなという驚きがありました。この作品を今回のカンパニーで日本の皆さんにお届けできることを、とても嬉しく思ってます。

原作は韓国の児童文学なので、今までのミュージカルとは違う生まれ方をしています。もし少しでも興味があったら、日本でも原作が出版されていますので、見ていただけたらと思います。

初めての作品、新作、韓国のもの、内容もわからない……ということで躊躇する方もいらっしゃるでしょう。その気持ちはよくわかります! 僕も同じです。でも興味を持って一歩踏み出してもらうのに値する作品だと、自信を持ってお伝えしたいです。「もしダメだったら僕の責任です!」と言えるくらいの自信作なので、劇場でお待ちしております。

取材・文:咲田真菜 撮影=池上夢貢

公演情報

ミュージカル『長い長い夜』
 
出演者
ノードン:井上芳雄
ペンギン:葵わかな
アンガブー/ウィンボ:山田健登
チク:坂口涼太郎
 
江上万絢・髙橋慈生・BOW・吉﨑裕哉
 
スウィング
須田遼太郎・角川美紗

スタッフ
原作:ルリ
脚本・作詞:ヤン・ソヨン
音楽:パク・ボユン

上演台本・演出:小沢道成

翻訳:カン・バンファ
訳詞・音楽監督・編曲:和田俊輔
振付・ステージング:黒田育世

美術:小沢道成/小倉奈穂
照明:吉本有輝子
音響:秋山正大
衣裳:藤谷香子
ヘアメイク:笹川知香
造形小道具:篠川理湖

歌唱指導:新良エツ子
稽古ピアノ:西 寿菜
音楽コーディネート:東宝ミュージック

演出助手:西 祐子
舞台監督:弘中 勲

プロデューサー:橋本 薫
スーパーヴァイザー:齋藤安彦

ビジュアルデザイン:植田麗子(TOHOマーケティング) 写真:山岸和人 PVディレクション:鎌田浩平
 
オリジナル・プロダクション:Library Company
製作:東宝
 
公演スケジュール
【東京公演】
日程:2027年6月8日(火)~7月2日(金)
会場:シアタークリエ
【大阪公演】
日程:2027年7月
 
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