「自分で見て感じて、納得していただく。それしかない」鈴木敏夫・石田ゆり子が登壇ーースタジオジブリ熱望の『禅とジブリ』京都展、開幕中

レポート
アート
2026.10.21
『禅とジブリ』京都展 開会式 撮影=ハヤシマコ (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

『禅とジブリ』京都展 開会式 撮影=ハヤシマコ (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

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『禅とジブリ』京都展が2026年12月6日(日)まで京都市京セラ美術館 新館 東山キューブにて開催中だ。スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫と3名の禅僧との対談をまとめた著書『禅とジブリ』(2018年出版)を原点に構築される本展覧会は、スタジオジブリの映画『君たちはどう生きるか』(2023年公開)を通して禅の世界を知るもの。

我々日本人の精神世界や日本文化に深く根ざした禅宗の一端に触れて、そこから何を持ち帰るか。ジブリが手がけるワクワクと禅の思想の奥深さに没入できる体験型の本展覧会は、とにかく百聞は一見に如かずの一言に尽きる。ジブリ好きはもちろん楽しめるが、禅についてわからなくても大丈夫。なぜなら「禅はわからない」ものだと、展覧会冒頭の挨拶にも書いてある。今の自分が何を感じるのか、そこに目を向けてほしい。

本記事では、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと本展の応援団長をつとめる俳優・石田ゆり子が登壇した開会式と記者内覧会の模様をレポートする。

「入口をくぐった瞬間、楽しい気持ちになる」鈴木敏夫と石田ゆり子が開幕宣言

10月2日(金)に行われた開会式には鈴木プロデューサーが登壇、本展応援団長の俳優・石田ゆり子もお祝いに駆けつけた。

読売テレビ放送株式会社 大橋善光取締役会長 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

読売テレビ放送株式会社 大橋善光取締役会長 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

主催者である読売テレビ放送株式会社 取締役会長 大橋善光氏から「何が待っているかわからない、でも期待ができるという珍しい展覧会。広くて奥の深い禅の世界とジブリの世界を、どうやって見せてくれるんだろう」という挨拶を受け、鈴木は「何よりもそれを思っていたのは僕の方でありました」と、本展の仕掛け人について話し始めた。

その人は京都の出版社・淡交社の編集者である磯田渉氏。彼から鈴木に「禅のお坊さんと話をしてほしい」という手紙が届いたことが全ての始まりだった。それから7年、月刊誌『なごみ』での連載が1冊の本にまとまり『禅とジブリ』として出版された。連載時のタイトルは「半径2メートルの禅問答 喫茶去(きっさこ)」。「喫茶去」は「ちょっとお茶でも飲んでいきませんか」という意味。鈴木はこのタイトルが非常に気に入っていたそうだが、磯田氏が本を売るためにタイトルを変えると言い出し、なかなか決まらぬ状況に「自分から『禅とジブリ』にしなよ」と提案した、とタイトルの由来を明かした。

鈴木敏夫プロデューサー (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

鈴木敏夫プロデューサー (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

出版後、スタジオジブリの橋田真氏が「『禅とジブリ』で展示会をやりたい」と発案。そんな折、『禅とジブリ』の世界各国での出版の話が続々と舞い込んだ。鈴木は「海外も含めると1番売れた本になる可能性ができてきた。僕は磯田くんに感謝しております」と笑みを浮かべた。

石田は報道陣の多さに圧倒されつつも「このような素晴らしい機会をいただいて。応援団長という立場は鈴木さんが命名してくださったんですけれども、私も禅についてはまだまだ勉強が足りないところもたくさんありますが、皆様と共に学んでいきたいと思っております」と挨拶。日頃いたる所で禅という言葉を耳にするが、いざ「禅とは何か」と問われると自分ではなかなか答えが出ない一方で、心の底では説明しなくてもわかっている気持ちもどこかにあったと話す。

石田ゆり子 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

石田ゆり子 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

東京・世田谷区の龍雲寺で初めて坐禅経験をした石田は、10分間何も考えず、呼吸だけで「今、ここ」に集中する経験をして「本当に気持ちが良かった」と回想。「本当に一瞬に集中すると、この一瞬が永遠になるんですよね。それが禅の心だと教えていただいた」と禅の教えを実感した様子だ。

さらに本展を鑑賞した石田は「本当に心が。入口をくぐった時から楽しい気持ちになる。禅というものを学ぼうという気持ちだったんですけど、青サギが迎えてくれた瞬間にワクワクしました」と声を弾ませた。鈴木は「展覧会を観て、それぞれの人が自分の欲しいものを見つける。自分で見て感じて納得していただく。僕はそれしかないと思っています」と口にした。

開会式 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

開会式 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

ここで10月3日に誕生日を迎える石田のため、そして『禅とジブリ』京都展開幕のお祝いのために数々のサプライズが飛び出した。まずは石田自身も魅了されたというフランスのギタリスト、ティボー・ガルシア氏が『もののけ姫』の主題歌を生演奏。鈴木から石田には、鈴木の書が入ったスタジオジブリとルー・デュモンコラボのオレンジワインを、主催者から石田には、京都の老舗洋菓子店メゾン・ド・ガトーの谷水正人パティシエ作の『禅とジブリ』特製ケーキが贈られた。そして鈴木と石田が声を合わせて「『禅とジブリ』京都展、開幕です!」と開幕宣言を行った。

時の回廊で「あっちの世界とこっちの世界」を行き来する

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

本展を手がけたスタジオジブリの橋田真氏は、本展を企画するにあたり鎌倉・円覚寺の横田南嶺管長に「禅とは何か」と相談。「難しいけれど、あっちの世界とこっちの世界の間のようなもの」との言葉をもらい、ジブリでも「あっちの世界とこっちの世界」を行き来する映画作品があることから、『君たちはどう生きるか』を中心に禅に触れる内容にしようと決めた。また、禅と鈴木プロデューサー、宮﨑駿監督の考え方には共通点があるとのことで、言葉に焦点を当てた。橋田氏は「言葉を見ていくことで、何かひとつでもふたつでも持ち帰ってほしい」と意欲を見せる。

青サギに迎えられて歩みを進めると、『君たちはどう生きるか』の最後に出てくる「時の回廊」が現れる。第1章「あっちの世界、こっちの世界」では、重厚な扉の向こうには『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』『千と千尋の神隠し』の「あっちの世界」が立体物で展示されている。展示内のとある扉を開くと、鈴木と石田のサインが隠れているかも……?

「ジブリ問答」に触れる秘密の部屋

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

続いて現れるのは「ジブリ前」のバス停、秋色に色づいた大きな木と一軒家。カウンターにはトトロとサギ男がいて、一緒にお茶を飲んでいる気持ちになれる。

第2章は「お茶をどうぞ」。開会式で鈴木が話していた「喫茶去」のことだ。鈴木プロデューサーと宮﨑監督は、日常的に禅問答のような会話を重ねているそう。「なぜ禅問答なのかというと、2人は過去の話をしない。遠い未来の話もしない。今、世界で日本でジブリで何が起こっているか、何を感じているかをお互いに話し合う」と橋田氏。鈴木曰く、宮﨑監督は「今、ここ」を地でいく性格。新聞もテレビも見ずに情報を遮断して、ある意味禅の修行のようなことをしながら「今」について話す。「ジブリ問答」の壁面には、そんな会話の一部がピックアップされている。耳をすませば聴こえてくる2人の声や、思わず笑ってしまうやり取りも楽しんでみよう。

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

他には、『君たちはどう生きるか』をどう作ったのか、どんなふうに考えていたのか、映画公開時には明かされていなかった情報を知れる資料が展示されている。

言葉が生まれる場所

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

第3章「生まれるところ」では、鈴木プロデューサーと3人の禅僧による対談から生まれた言葉をパネルで紹介。また鈴木プロデューサーの絵と龍雲寺・細川晋輔住職の禅語が書かれた「ジブリ禅画」が至る場所に展示されている。

石田ゆり子が演じた『もののけ姫』のサンに添えられたのは「両忘」。善悪、愛憎など相対するふたつのことを全て忘れてひとつになるという意味だ。細川住職は、サンとアシタカが敵なのか味方なのかわからないが「共に生きよう」と言ったところに繋がるこの言葉を選んだ。

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

キャラクターのイメージに合う禅語に加え、ジブリ映画の中で「このシーンは禅的だ」というシーンに細川住職が言葉をつけた軸装も展示。カオナシと巨神兵の起きあがりこぼしにも、禅語の意味合いが込められている。

それぞれの立場で実践される「禅」

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

主人公・眞人の部屋に続いて、宮﨑監督はエドガー・アラン・ポーの『大鴉』をモチーフに『君たちはどう生きるか』を書いたのではないかという鈴木の説から生まれた、両作品を紹介する部屋を経て、スロープを下るとそこは禅の世界。

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

第4章「それぞれの禅」では、英語で海外に禅を伝えた仏教哲学者・鈴木大拙、自身の経営哲学に禅の思想を取り入れた京セラの創業者・稲盛和夫、臨済宗の禅僧・白隠慧鶴の「禅」をパネルや書で紹介。修行僧の1日について詳しく知ることができたり、ディズニーとジブリがコラボした短編アニメ『禅 グローグーとマックロクロスケ』も鑑賞できる。

真っ直ぐに訴えかけてくる、書と画

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

第5章「この時代をどうやり過ごすのか?」には、鈴木プロデューサー直筆の書と画が展示されている。展示されているのは、鈴木が大事にしている言葉たち。力強い筆致とシンプルな言葉、ユーモアあふれる画は真っ直ぐに心に届いてくる。ぜひお気に入りの言葉を探してみよう。

展示風景 (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

展示風景 (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

なお、会場に設置された二次元コードを読み込めば、入場当日の23:59まで解説ページにアクセスすることができる(英語バージョンも用意されている)。10月中旬からは鈴木敏夫と石田ゆり子による音声ガイドが公開される予定。禅についてじっくり学ぶことができるだろう。

スタジオジブリが熱望したという京都での本展の開幕。その意味合いを現地で感じとってほしい。

ミュージアムショップ (C) Studio Ghibli  京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

ミュージアムショップ (C) Studio Ghibli 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

取材・文=久保田瑛理 撮影=ハヤシマコ

イベント情報

『禅とジブリ』京都展
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
会期:開催中〜2026年12月6日(日)
休館日 :月曜日(11月23日は開館)
開館時間:10:00〜18:00
※入場は閉館の30分前まで
料金:当日券
一般・大学生 1,900円/中高生:1,500円/小学生:1,100円
販売期間:販売中〜12月6日(日)16:00
主催:読売テレビ、読売新聞社、ぴあ、京都市
企画・制作:スタジオジブリ、日本テレビ
公式サイト:https://zen-ghibli.jp/kyoto/
公式YouTube:@zenandghibli
公式Instagram:zen_ghibli
公式X:@zen_ghibli
公式TikTok:@zen_Ghibli
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