岐阜・中津川で開催の『中津川 WILD WOOD 2026』2日間を振り返る総括レポートが到着

レポート
音楽
2026.10.16
聖飢魔II 撮影=TAWARA(magNese)

聖飢魔II 撮影=TAWARA(magNese)

画像を全て表示(18件)


中津川 WILD WOOD 2026
2026.9.19-20 岐阜県中津川公園内特設ステージ

古今東西2ndアルバムには名盤が多いじゃないですか。オアシス『モーニング・グローリー』、レディオヘッド『ザ・ベンズ』、BLANKEY JET CITY『BANG!』とか。裏を返せば、2ndアルバムが素晴らしかったことでいわゆる一発屋ルートを回避して、自身の評価を確固たるものにした、ということかもしれない。そう考えると、イベントやフェスにおいても2年目の開催というのはとても重要なんだろう。2年目があるという時点で初回に一定以上の評価を得ているわけだから、そこで期待を超える内容を提示できればその後も「根付く」可能性が高まる。本稿では、そんな2年目の開催を9月19日(土)20日(日)に迎えたフェス『中津川 WILD WOOD 2026』について書いていく。

最初に触れておきたいのは天候面について。記録的に雨の多い今年の9月、会場からそう遠くない名古屋で少し前に冠水被害が出たり、太平洋上にはリアルタイムで台風が迫ってきていたりとかなり気を揉んでいたのだが、結果的に2日目の終盤を除けば曇りと晴れを行き来して暑いくらいであった。以前に別のフェスが行われていた頃から、なぜか天候に恵まれまくるのだ、中津川という地は。元来スピリチュアルなタイプではないけれど、国内野外フェス発祥という聖地だけあって、何かに護られているのでは?という気さえしてくる。そんな自然の力も手伝って、解放的な空間でゆとりをもって思い思いにライブを楽しめるという、このフェス最大の魅力は今年もしっかり発揮されることになった。

撮影=KAORE

撮影=KAORE

撮影=Yasunari Akita

撮影=Yasunari Akita

動員の方も1日目はソールドアウト、2日目も大トリの聖飢魔IIまで相当な人数が残って大盛り上がり(急に雨が降ったのすら何かの演出かのようだった)するなど、かなりの賑わいを見せていた。これに関しては暦的に5連休となったシルバーウィーク最初の2日間に開催したことで、遠方から参加できた人も多かったことも要因のひとつだけれど、裏を返せば人流そのものが多くなり、おまけに名古屋でのアジア大会開催も重なったことで、いつになく交通手段確保に苦戦を強いられることにもなった。特に名古屋↔︎中津川間を結ぶ「特急しなの」が厳しく、筆者はなんとか「立席特急券」なる「それはもう席じゃないのでは」という謎のをなんとか確保して会場に辿り着くことに。現地に着いてからも、もともと交通インフラがそこまで充実していない地方都市であるためタクシーに関しても過信は禁物で、特に1日目はタイミングによって配車自体が不可。運営が用意するシャトルバスの活用や、駐車場券を確保した上でのマイカー利用など、来年以降に参加する方は検討しておくべきポイントだろう。

続いてはフェスそのものの造りの面。FOOLS GOLD、WONDER WALL、PARK LIFEというUKロックの名盤にあやかった3ステージに加え、ミニライブやDJが行われるフードエリアのステージが設置されるマップ構成は昨年通りだったが、ステージ設営角度の微調整や音量面の改善などがしっかり施されており、音を楽しむという面でのストレスは皆無に。むしろ、もともと国内フェスでもトップクラスを誇る音質の良さを、ステージ間の干渉や観る位置や風の有無によるブレがないように届け切ったオペレーションこそMVP級の活躍だったと思う。このあたりは昨年に続き出演したHEY-SMITHの猪狩秀平が自身のYouTubeで動画にしていたように、アーティスト側からも好意的に受け止められていた。

撮影=KAORE

撮影=KAORE

撮影=Yasunari Akita

撮影=Yasunari Akita

丸々2日間を通しての過ごしやすさという観点から見ると、ライブ以外のコンテンツも案外重要なもの。必須事項のフードエリアに関しては2箇所に確保され、地元名産の栗きんとんや地酒の飲み比べ、ご当地グルメなんかも楽しめるブースがあったりと、2日間ずっといたとしても食のバリエーションに苦慮しないようになっていたのはまず素晴らしい。加えて、1日目の夜にはキャンプ参加組に向けた限定エリアもオープンするため、その点も酒好きにとっては嬉しい内容と言える。筆者が気に入ったのはジャック・ダニエルのブースで飲んだアップルテイストのウィスキーを割ったハイボール。あれはゴクゴクいけすぎてもはや危険だ。

撮影=KAORE

撮影=KAORE

撮影=風間大洋

撮影=風間大洋

他にもギブソンによるギターの展示と試奏コーナーがあって記念品をゲットできたり、屋内の休憩スペースを確保すれば疲れた時にゴロンとできたり、ホスピタリティはかなり高めなフェスである。ということはガチでライブ浸りするぞ!!という層以外も過ごしやすいということであり、そういう特性がちゃんと浸透していることでファミリー層の割合がかなり高めなことは、既に確立された特色となっていた。筆者も前年時点でそのあたりを確信できたため、今年は妻(音楽への興味はそこそこレベル)と娘(6歳)を連れて参加。会場に元々ある遊具で遊んでみたり、キッズエリアで物作り系のワークショップに参加したり、ニジマスを手掴みして焼いて食べたり──。「ライブを観る」以外でもどのくらい楽しめるか?という、我々音楽ライターには実践しようのない検証を身をもって行ってくれた結果、やはり子どものフェス体験への適性は極めて高かった。アニメ主題歌で知っていたPenthouseのライブではしゃいでいた以外は、現地でできた友達とローラー滑り台やら何やらで遊んでいただけだったような気がする我が娘だったが、終わってみれば「ドラムをやってみたい」なんて言い出したんだから、良い感じのロック英才教育になっていたわけだ。

撮影=KAORE

撮影=KAORE

さて、肝心のライブと出演アーティストの部分はどうだったのか。当然一番フェスのカラーが出やすいポイントとなるわけだが、ここは前年からの傾向がよりはっきりした感がある。若いリスナーに支持される存在、激し目のパフォーマンスを行う存在などいわゆる「フェス常連」もしっかり押さえつつ、各ステージとも世代を超えて知られる/愛されるアーティストが軸を担っていたのだ。ヘッドライナーのユニコーン&聖飢魔IIを筆頭に、ジュンスカ、スカパラ、KREVA、スガ シカオなどなど昭和~平成までを網羅することで、ファミリーのお父さんお母さんからしたら青春の、でも若い世代からしても「よく知らないからいいや」とはならず、むしろ「この機会に観ておきたい」と思わせるようなブッキングがとにかく絶妙。加えて、岐阜や名古屋にゆかりがあることもあって黒夢や浅井健一など、当時から尖った層に支持されていたアーティストの出演も実現させ、彼らがキレッキレのライブを見せてくれたのも嬉しい。筆者はモロに直撃した世代なのでバッチリ楽しめたし、見るからに「モッシュピットの住人です」と言わんばかりの現役バリバリなお兄さんが浅井健一のライブを食い入るように観続けているのを発見したりして、ロックの歴史が継承されていくってこういうことなのかもな、なんて思ったりもした。

例年書いているこの総括テキストではお馴染みのこととして、今年も詳細なライブの様子についてはBARKSで公開中のレポート記事に譲る。以下は参考までに、44才音楽ライターが個人的好みと興味に従って観て回った記録である。

【1日目】
レトロリロン→礼賛→Omoinotake(前半)→JUN SKY WALKER(S)(後半)→黒夢→Penthouse→10-FEET→GLIM SPANKY→CADEHO(撮影)→BAD TRIP SUMMER(撮影)
【2日目】
ヤバイTシャツ屋さん→THE CHERRY COKE$→OKAMOTO'S→浅井健一→Nothing's Carved In Stone→HEY-SMITH→w.o.d.→ストレイテナー→聖飢魔II

参加者目線で楽しんでみても、先に触れた通りとにかく音が良かったこと、比較的ポップス寄りな1日目とロック寄りな2日目という棲み分けが適度になされていたことで、快適度は間違いなく上がった。裏被りや客層とのミスマッチによって本来のポテンシャルより集客が寂しくなってしまうケースが、僕が観た限りほぼなかったのも嬉しい点だ。比較的のんびり観たいタイプのアーティストが芝生&斜面のPARK LIFEステージに登場する中、バッチバチのオルタナ/インディロックをぶちかまし、背後に絶景の夕焼けを背負ったw.o.d.が個人的ハイライト。他にも、リアルタイムではV系の文脈で捉えていた黒夢が思いっきりパンクなライブで殴ってきたこと、我が青春を捧げたBLANKEY JET CITYの楽曲を浅井健一がふんだんにやってくれたこと(「小さな恋のメロディ」とかもう泣いちゃう)、思い返せばキリがないほど名シーンがたくさん生まれた。そしてなんといっても、棺桶から降臨なさったデーモン閣下を肉眼で捉えられたのは、一生の思い出になると思う。

ユニコーン 撮影=AZUSA TAKADA

ユニコーン 撮影=AZUSA TAKADA


聖飢魔II 撮影=TAWARA(magNese)

聖飢魔II 撮影=TAWARA(magNese)


JUN SKY WALKER(S) 撮影=TAWARA(magNese)

JUN SKY WALKER(S) 撮影=TAWARA(magNese)


東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=AZUSA TAKADA

東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=AZUSA TAKADA


KREVA 撮影=ハタサトシ

KREVA 撮影=ハタサトシ


黒夢 撮影=木下マリ

黒夢 撮影=木下マリ


浅井健一 撮影=TAWARA(magNese)

浅井健一 撮影=TAWARA(magNese)


w.o.d. 撮影=TAWARA(magNese)

w.o.d. 撮影=TAWARA(magNese)

(あ、そういえば。かつて体を張って体験したこともあるスナックなど夜のコンテンツレポについては、今年は撮影班の手伝いをしていたためありません。でも、プロレスの試合を撮るの、楽しかったです)

撮影=風間大洋

撮影=風間大洋

以上、『中津川 WILD WOOD 2026』の体感記。総じて初年度の強みを増幅させ、改善すべき点にしっかり手を打ってきた、正統進化の2年目ということになるだろう。冒頭で触れた2ndアルバムの話で言うならば、例えばレディオヘッドなんかは3rdでガラッと装いを変え、4枚目でもう別の次元に吹っ飛んでいくことで別角度の評価を得るわけだが、たぶんこのフェスに関してはそういうルートにはならないと思う。どちらかと言えばオアシスタイプ(WONDER WALLなんてステージもあるし)として、難解にはならずに万人へ届く作品を届け続け、でもしっかりクセも出しながら愛され続ける存在になっていくはず。もう10年通い続けてる秋の中津川だが、これからも末長くお世話になりたいな。そんな気持ちをいっそう強くする2日間だった。

撮影=KAORE

撮影=KAORE


文=風間大洋

シェア / 保存先を選択