くるり主催『京都音博2026』「もう20年!」メモリアルイヤーに宮本浩次、Suchmosら初登場組を交え、マカえん、indigo la End、ホムカミらが再び
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『京都音楽博覧会』 写真=『京都音楽博覧会』提供(撮影:井上嘉和)、会場風景 (撮影:ハヤシマコ)
『京都音楽博覧会』2026.10.10(SAT)京都・京都梅小路公園 芝生広場
くるりが主催する音楽イベント『京都音楽博覧会2026 in 梅小路公園』が10月10日・11日、京都梅小路公園 芝生広場で開催された。
『京都音楽博覧会』は、くるりのホームタウンである京都・梅小路公園で2007年より行ってきたイベントで、今年は通算20回目の開催とバンドの結成30周年が重なった祝宴に。2日間にわたり国内外の多彩なアーティストが顔をそろえ、両日トリを務めたくるりに加え、初日の10日にはindigo la End、Suchmos、Homecomings、マカロニえんぴつ、宮本浩次、Rimba、2日目の11日にはASIAN KUNG-FU GENERATION、奥田民生、James Macaulay and The Ancient Highballs、角野隼斗 Solo & Trio、羊文学、miletが出演した。
2007年の初開催から、実に今年で20回目の節目を迎えた『京都音楽博覧会』、通称『音博』。京都・立命館大学に在学中だった折、音楽サークル「ロックコミューン」で結成されたくるりが、その10周年を機に、地元・京都への恩返しとしてスタートしたのが『京都音楽博覧会』だ。バンド主導のフェスとしては今ほど数は多くなく、しかもくるりらしい個性あふれるラインナップに音楽ファンが常に注目し続けてきた同イベント。くるりが教えてくれる海外の知られざるアーティストにはじまり、先輩後輩はもちろんジャンルも越境する意外なコラボレーション……etc。中でも、初代ドラマーの森信行や元メンバーの大村達身らとのセッションに沸いた2010年、2017年に初めて行われた京都音博フィルハーモニー管弦楽団との「生 歌謡ショー」など、名シーンを挙げればキリがない。2026年もそんな数々のアクトを塗り替える2日間となった。
来場者に配布された音博シート
開演前には、FM COCOLOのDJ野村雅夫がくるりの岸田繁(Vo.Gt)と佐藤征史(Ba.Vo)を呼び込み、この20年の思いを聞く。
「2007年のこと、本当によく覚えています。皆さまのおかげ。これからも続けていけるように」(佐藤)
「20年もやったんか、という感じで。毎年さっき『音博』やったのに!っていう(笑)。楽しい2日間を過ごしていただけたらと思います」(岸田)
月日が経つ早さに驚きながらも、「2026年の『京都音楽博覧会』開催いたします」と、岸田による開幕宣言で今年もスタート!
Homecomings
各アクトの直前にはモニターにくるりからの紹介ムービーが流れ、くるり佐藤が「日本のアーティストの良心」と称するHomecomingsが、この2日間のトップバッターに。「朝イチなので、みんなで歌える曲からやっていきます」と畳野彩加(Vo.Gt)がいざなったのは、くるりの「THANK YOU MY GIRL」のカバーだ。くるりのツアーではコーラスを務め、彼らの音世界の深奥にも触れてきた畳野が歌えば、視界が開けるような手触り。福富優樹(Gt)とのツインギターでも観衆を一つにさせ、The Novembersの吉木諒祐(Dr)が打ち鳴らすリズムに心まで躍る「US / アス」では、畳野が「『音博』!」と軽やかに牽引。その姿には頼もしささえ感じられる。
「2019年から7年ぶりに『音博』へ来られて、本当にうれしく思います!」(福富)
Homecomingsは今年デビュー5周年、来年で結成15周年を迎える。今や海外にもファンがいる一方で、昨年には二人体制へ移行するなどさまざまな変化を経て臨んだこの日。くるりへの、そして『京都音博』への敬愛をにじませる福富の姿が印象的だ。
「Blue Hour」では畳野の柔らかな歌声が情感たっぷりに響き、Base Ball Bearの関根史織(Ba)が繰り出すベースラインが楽曲に推進力を与える。人気ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』の主題歌で、ホムカミをさらなるステップへと押し上げた「knit」では、ひときわハートウォーミングな耳心地に。ゆっくりと肩を揺らすオーディエンスの後ろ姿からは、会場を包むハピネスがじんわり伝わってくる。
「素敵な2日間の1番目、大事な役目を任せてもらえて、ありがとうございました」(福富)
「いい音博にしてください」(畳野)
きらめく旋律が音のシャワーのごとく降り注ぐ「angel near you」で、エンドマークを打ったHomecomings。ベストアクトとの声も高かった前回出演時。それを軽やかに飛び越えた至福のひとときに、満場の拍手が送られていた。
indigo la End
「新曲も聴き倒している、素晴らしいバンド!」と岸田が絶賛したのは、二番手・indigo la Endだ。ド頭「夏目」から流麗なメロディとは対照的に、スリリングなビートで空間を掌握していく彼ら。佐藤栄太郎(Dr)が軽快なドラミングで魅せる「陽炎」では、どこか少年性を残した透明感あるボーカルから、低音をも自在に操る川谷絵音(Vo.Gt)の圧倒的なたたずまいから目が離せない。長田カーティス(Gt)の哀愁を帯びたアルペジオが晴々とした梅小路公園に溶け合い、indigo la End×野外の清涼感を感じさせてくれる。後鳥亮介(Ba)と佐藤が支える重厚ながらもたゆたうグルーヴが心地よい「さざなみ様」を経てのMCでは、11年ぶりの『音博』出演について、その間も岸田と交流を深めていたと語ってくれた川谷。
「金沢でジビエを一緒に食べたりしましたね。呼んでもらって何ですけど、ご飯だけのお誘いじゃなかったんだ!と(笑)。うれしいです。くるりには多大な影響を受けていて。そんな曲をやりたいと思います」
そう喜びを隠さない中で続けた「できやしない」では、川谷が入りを間違えるというハプニングに、全員がほっこりする場面も。「煙恋」のどこか気だるいフレージングがセンチメンタルさを加速させ、リリカルな音像の「Midnight indigo love story」にいたる頃には、すっかりindigo la Endの音の渦から抜け出せない。
乾いたドラミングが快走する「夜光虫」、川谷がハンドマイクで場を操るかのごとく牽引した「夏夜のマジック」まで全8曲。「素晴らしいイベント。また出られるように頑張ります」とさらりと告げた川谷と、その言葉に沸くオーディエンスは間違いなく両思いだ。夢と現実の狭間を漂うようなindigo la Endのひとときだけは、暑さを忘れさせてくれるものだった。
Rimba
この日ほとんどの人々にとって初見だったろうRimba。インドネシア・南ジャカルタ出身の4ピースバンドで、2018年に結成し、今年3月にデビューアルバムを発売したばかりの彼ら。岸田が担当するJ-WAVEの番組『THE UNIVERSE』でもオンエアされ、満を持しての『音博』出演だ。前方エリアはどこか様子見状態の中、荘厳な「Technicolor Meeting (Overture)」をバックにまずは楽器隊が姿を現す。Vari(Gt.Cho)がギターを爪弾きながら、「いきましょう!」と日本語で呼び掛けるフレンドシップを発揮したかと思えば、Tasya(Vo)が大きく手を振りハッピーな空気いっぱいにオンステージ! 「Kampiun」では徐々に絡み合っていくバンドサウンドにふつふつとしたエナジーが湧出し、音源以上のダイナミズムを展開していく。デイドリーミンな「Connexion」では、Variの先導でたくさんのクラップが生まれ、オーディエンスの熱視線を集めていることがひしひし伝わる。
「私たち、インドネシア・ジャカルタから来たRimbaです。ショーを楽しんでくださいね」(Vari)
「こんにちは京都!」(Tasya)
和やかな雰囲気であいさつする彼らが次に放ったのが「SYMD」。Marvin(Ba.Cho)がウクレレベースから放つ、サイケデリックなグルーヴに身を委ねる心地よさたるや! 80年代ディスコムードをまとった「Siasat Disko Fuga」では歌謡曲の面影も感じられ、さらに聴衆の耳をくぎ付けに。Ivando(Dr)の小気味良いドラミングと歌うように流麗なギターソロも、そして何といってもパワフルに歌声を聴かせてくれるTasyaの華やかさは特筆モノ。きらめく音階にムーディーなバンドサウンドが映える「Rimba Raya」で最上の盛り上がりかと思いきやスローテンポな「Good Hands」でも徐々に高まるアンサンブルにもはや昇天……! MCではカンペを手にしながらVariが口を開いた。
「おおきに皆さん! くるりの結成30周年、そして『京都音楽博覧会』の20周年も、おめでとうございます! みんな大好きだよ」
あふれるくるりへの、『音博』への親愛に、会場の熱も最高潮に到達! 腹の底から揺らされる強靭なロッカバラード「Crave Me, Superstar」、ポップ極まるパーティーチューン「Diego Superego」では集った人々が一人残らずジャンプするシーンが何よりのハイライトに。演奏後、全員でセンターに集まり、肩を組んでお辞儀するRimba。気が付けば辺りは黒山の人だかりと、まるでワンマンライブの盛況ぶりだ。いい音楽にただただ踊る、これぞ音楽の博覧会。Tasyaが言い残した「See you soon!」にも、たくさんの声援が返されていた。
『資源が“くるり”プロジェクト』をはじめ、多彩なブースもチェック
会場内外にさまざまなブースが設けられ、ステージ以外にもお楽しみが詰まっている『京都音博』。転換の合間に、『資源が“くるり”プロジェクト』と掲げられたブースを訪れてみた。こちらでは、前回開催時にフードエリアで出た食べ残しや食材の端材を回収し、たい肥を作る取り組みを実施。ブースの正面ではそのたい肥を活用した発電によって明かりが灯る様子を見ることができ、微生物の豊穣な力を感じさせてくれる。
そもそもこのプロジェクトは、梅小路公園を「開演前以上にきれいな状態で返したい」というくるり岸田の思いをくみ取って始まった取り組みだという。しかも、昨年はイベント終了後に、ステージエリアの電源車と楽屋周辺の発電機に伴うCO2の排出量(約4トン)の相殺を達成。そんなくるりの京都愛を感じられる施策が梅小路公園の至るところに散りばめられている。
また、ステージ横すぐに設けられた「京都市都市緑化協会」のブースにも注目。梅小路公園内にある「朱雀の庭」で育てられた草花を使い、押し花缶バッチやにおい袋を販売しているのだ。地域と二人三脚で歩んできた梅小路公園の魅力を伝えるブースには、多くの観客が足を運んでいた。
梅小路公園「朱雀の庭」
マカロニえんぴつ
日差しも強まってきた午後。今回で通算4回の出演を誇るのがマカロニえんぴつだ。くるり佐藤から「(人気者ゆえ)誘っていいのかなと思ってたら、出演がなかった年は悔しかった!と思ってくれてたとか」というエピソードが飛び出すぐらい、『音博』への思いも強かった様子の彼ら。オーディエンスも、サウンドチェックで披露された初期からの人気曲「洗濯機と君とラヂオ」に沸き立つなど、定刻前から期待感でいっぱいだ。長谷川大喜(Key.Cho)が時折ピアニカを交えたドリーミーな「愛の波」を皮切りに、おもちゃ箱をひっくり返したようなロックンロールをフルスロットルでかき鳴らす。高野賢也(Ba.Cho)とサポートの高浦“suzzy”充孝(Dr)が生み出すリズムにズシリと体を支配される「レモンパイ」では、「もっともっと!」とあおるはっとり(Vo.Gt)に、観客もすかさず拳を突き上げる!
『音博』出演時はたいてい雨模様だったという彼らにとって、この日は快晴。強過ぎるほどの光がステージへこれでもかと降り注ぐさまに、はっとりも「夏フェスみたいな気がして、ちょっと戸惑ってます(笑)。晴れた『音博』、より思い出に残りそうです」と語るほど。時折まぶしそうにする様子もうかがえるが、それでもさすがのライブ巧者ぶりで、「知ってる人も知らない人も、みんなで歌ってもらうバンドなのでよろしくお願いします。いけるか『音博』!」と高らかに声を上げ、「ルート16」でもたくさんの笑顔を生み出していく。
切なき「リンジュー・ラヴ」では、田辺由明(Gt.Cho)が愛機・フライングVをエモーショナルに弾き倒し、真っすぐなはっとりの声がどこまでも胸の奥を貫いていく。かと思えば、初期衝動に満ちた「グッドラック・マイラバー」から、くるり「ばらの花」へマッシュアップする粋な一幕も! その後も「悲しみはバスに乗って」では、さらに前方へ駆けるオーディエンスの姿が見てとれ、はっとりが段差にギターの弦を当ててとどろかせるハードロックなパフォーマンスでも沸かせた「星が泳ぐ」と、見せ場は尽きない。
「今日会えたあなたを、勝手に我々の運命に巻き込みたいと思います。会えてよかった」(はっとり)
そう温かな言葉を寄せ、ヒット曲「運命さがし」まで豪速球を投げ続けたマカロニえんぴつ。いつだってフルパワーの彼らが、さらに魂を込めたステージングに見えたのは、くるりへの、『京都音博』への愛の証だったに違いない。
Suchmos
紹介ムービーでは、くるり佐藤が「クールな感じなのかと思ったら……」と水を向ければ、岸田も「くるりと馴染みの良い!Shazamでエエやんってなったバンド。大好きです」と称賛。『音博』初登場を飾ったSuchmosのお出ましだ。前方エリアはすでに入場規制中と熱量みなぎる中、まずは「Pacific」からチルなモードでスタート。「秋かと思ったら夏でしたね。水飲んでますか? 何卒気を付けてください」と、10月とは思えない気候と観客の熱気に心を配るYONCE(Vo)。TAIKING(Gt)がメランコリックな旋律で余韻を引き立たせたかと思えば、Kaiki Ohara(DJ)のスクラッチを合図にした「YMM」では自然とクラップが起こり、否応なしに会場の温度は上昇していくばかりだ。TAIHEI(Key)のメロウなソロに合わせ、YONCEがユーモラスなエア鍵盤プレイで沸かせるなど、旺盛なショーマンシップも持ち合わせるなんて無敵でしかない。
「新しい曲、通称・新曲をやります」(YONCE、以下同)と告げて、続けては9月30日にリリースしたばかりの「Smile」へ。OK(Dr)のジャジーなドラミングとRen Yamamoto(Ba)の地をはうベースラインが重なり合い、自ずと踊らずにはいられない。MCでは、今年5月にくるりを招いた大阪での対バンツアーを思い返しながら、「我々は、大阪および神戸に偏って関西でのライブ活動を行ってきたことを深くお詫び申し上げます(笑)」と深々と謝罪するYONCE。くるりとの距離がより近づいたことでまた京都に来られたらと、うれしい言葉も飛び出した。
さらに「新曲を」と続けたのは、未発表の楽曲を披露。<イカスミ食ったら黒くて全部出ちゃった>なんて衝撃的な歌詞(!)とは裏腹にサニーなサウンドと、YONCEのソウルフルな歌唱が何とも心地良い。と、ローギアから加速していくお馴染みのイントロが流れたかと思いきや、またまた「新曲です!」とのたまうYONCEに笑いも加速した鉄壁の「STAY TUNE」へ! 時にコンダクターのように、また時に誰よりもこの場を楽しむようにダンスする彼に、フロアも混沌を極めていく。ラスト「GAGA」では<Kyotoなら五分で>と歌い変えたり、この上なくビッグなジャンプをYONCEがかます圧巻の終幕! 誰もが思い描くスタイリッシュなたたずまいとは反するほどに、踊らせ笑顔にさせたSuchmosへ、賛辞の喝采が止むことはなかった。
宮本浩次
岸田が紹介ムービーで「日本でも屈指の素晴らしいシンガーソングライターです」と紹介したのは、Suchmos同様初登場となった宮本浩次だ。初っぱなから大名曲「今宵の月のように」を弾き語りで歌い始め、悲鳴にも似た歓声が上がる。名越由貴夫(Gt)、キタダ マキ(Ba)、高野勲(Key)、玉田豊夢(Dr)という日本音楽界を代表する剛腕プレイヤー陣が合流し、観客全員でシンガロングする幸福。時折モニターには宮本側のアングルからの客席も映され、大観衆が等しく笑顔をたたえているさまが何とも美しいのだ。ステージに座り込んでの絶唱を見せた「I love 人生!」を経て、改めて客席へ語り掛ける宮本。
「『京都音博』20周年おめでとう! そしてエブリバディ、よく分からないけど、おめでとう!」
らしさ満点のMCに思わず笑いがこぼれるも、一節歌えば、もうその場の全員が、耳を、心を奪われる。続く「悲しみの果て」でも、初めて耳にした日の衝動がよみがえるほどで、たくさんの拳が突き上がる。舞台の端から端まで闊歩し、一人一人に向けて歌い掛けるような親密さに瞳が潤むオーディエンスも少なくない。宮本も思わず「いい顔してるぜ!」とおほめの言葉をもたらしてくれる。
高野が奏でる旋律美を宿した「冬の花」では、生々しいまでの悲哀を浮き彫りにする、宮本の歌うたいとしてのパワーに圧倒されるばかり。玉田が怒涛のビートを刻みつけた「凡人 -散歩き-」、名越の鮮烈なギターリフとうねるキタダのベースラインが絡み合う「I AM HERO」と、最高峰のロックンロールサウンドを背負い、なお宮本の歌に込められたエナジーは大きくなるばかりだ。
「さすがになんて音楽のわかってる奴らだエブリバディ!かわいいぜ、かっこいいぜ!」と、この場に集う全ての聴衆へひときわ明るいメッセージを宿した「ハレルヤ」を送れば、高速クラップでレスポンスする会場。最後の「俺たちの明日」では、「愛してるぜ、人生を、お前を、音楽を! エブリバディ! がんばろうぜ!」と、朗々と叫んだ偉大なるロッカーの魂に触れた瞬間に、「さぁ、お待たせ。次はくるりだ!」とネクストコールまで担った宮本浩次の降臨は、『音博』の歴史に残る人間賛歌のオンパレードとなった。
くるり
いよいよ『京都音楽博覧会』初日の大トリを飾る、くるりの時間がやってきた。ブリティッシュなヴィンテージ感が漂う揃いの衣装に身を包んだメンバーたち。1曲目「watituti」では、三波春夫「世界の国からこんにちは」のごとく、こぶしを利かせて『音博』バージョンの歌詞を熱唱する岸田。そのまま「お祭りわっしょい」へとシームレスになだれ込み、今宵の舞台をサポートする松本大樹(Gt)、野崎泰弘(Key)、石若駿(Dr.Perc)、Senoo ricky(Dr.Perc)ら、バンドワゴンは、梅小路公園に集う1万2,000人を乗せてさらなる祝宴へと走り出す。「(It's only)R'n R workshop!」では湧き上がる音楽への熱情を込めてギターをかき鳴らす岸田。荒々しさと緊張感が同居した「Morning Paper」に続いては、イントロから熱気を一気に高める「ロックンロール」へ。気取らない岸田のボーカルは、この日、数々の名演を浴びてきたぜいたくな耳にも、たちまち染み込んでいく。
岸田の独唱から始まった「The Veranda」は、ステージ上のミュージシャンそれぞれの個性が共鳴しながらフォーキーな音像へと編み上げられていく過程に、聴きほれるばかり。こぼれるアコギの音色に、客席も水を打ったように聴き入った「瀬戸の内」もまた、秋の夜につかの間の魔法をかける。
ここからは上敷領藍子(Vl)、山田円香(Vl)、後藤彩子(Va)、佐藤響(Vc)ら、清廉な音色を描くストリングスに、Homecomingsの畳野もコーラスとして加わり、「JUBILEE」のバンドサウンドの輪郭を豊かに広げていく。「Remember me」にいたっては、日常のささやかなきらめきを歌う岸田の歌唱、くるりが鳴らすアンサンブルが、梅小路公園を飛び越え、京都の街全体へと溶け込んでいく。
「ありがとうございました。多くの皆さんのおかげでいい一日になりました。また明日お会いできたら」(岸田)
まるでいつもの日常のワンシーンかのごとく、締めのあいさつを口にした岸田。そんな何気ない言葉から一転、満開の花が開くような弾ける多幸感で「ブレーメン」を奏で、極上のフィナーレへ! 誰かの生活の中に音楽があり、音楽は誰かの生活を豊潤に満たす。20周年を迎え、改めて音楽が日々の延長上にある非日常なのだと教えてくれた『京都音楽博覧会』初日となった。
取材・文=後藤愛 写真=『京都音楽博覧会』提供(撮影:井上嘉和)、会場風景 (撮影:ハヤシマコ)
くるりの30回転 Teaser
くるりは、今年で結成30周年のアニバーサリーイヤーを記念して、『くるりの30回転 〜芳しきバンドマン〜』(ライブハウス編)・『くるりの30回転 〜芳しきアンサンブル〜』(ホール編)の開催が決定している。今年の結成30周年に続き、来年はインディーデビュー30周年、再来年はメジャーデビュー30周年を迎えるため、くるりにとっては3年にわたって周年が続くアニバーサリーイヤーの幕開けとなる。
ツアー『くるりの30回転 〜芳しきバンドマン〜』(ライブハウス編)、『くるりの30回転 〜芳しきアンサンブル〜』(ホール編)は、ライブハウス編13公演、ホール編17公演の全30公演。彼らの地元である京都・磔磔公演を皮切りに、久々に訪れる地域はもちろん、くるりとしては初となる会場まで全国各地をまわり、8月6日の東京ガーデンシアターまで約8ヶ月をかけて開催される。