くるり主催『京都音博2026』2日目にアジカン、奥田民生、角野隼斗、羊文学、miletらが熱演、愛とリスペクトに満ちた過去最大の宴
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『京都音楽博覧会』 写真=『京都音楽博覧会』提供(撮影:井上嘉和)、会場風景 (撮影:ハヤシマコ)
『京都音楽博覧会2026 in 梅小路公園』2026.10.11(SUN)京都・梅小路公園 芝生広場
くるりが主催する音楽イベント『京都音楽博覧会2026 in 梅小路公園』が10月10日・11日、京都・梅小路公園 芝生広場で開催された。
『京都音楽博覧会』は、くるりが出身地である京都の梅小路公園で2007年より行ってきたイベントで、今年は通算20回目の開催とバンドの結成30周年が重なったメモリアルイヤーに。2日間にわたり国内外のさまざまなアーティストが集い、両日トリを務めたくるりに加え、初日の10日にはindigo la End、Suchmos、Homecomings、マカロニえんぴつ、宮本浩次、Rimba、2日目の11日にはASIAN KUNG-FU GENERATION、奥田民生、James Macaulay and The Ancient Highballs、角野隼斗 Solo & Trio、羊文学、miletが出演した。
長年、“環境・文化・音楽”をコンセプトに地域振興に貢献してきた『音博』は、これまでもクラウドファンディングにより梅小路公園の芝生の整備や食べ残しを堆肥に変える活動を実現。ごみの削減・分別のためにリユース食器の使用にも積極的に取り組み、マイボトル・マイ食器の持参での割引や、食器洗浄場も設置するなど、至るところで環境保全への配慮がされているのも特徴だ。
飲食エリアには、本家 第一旭、小川珈琲といった京都の老舗をはじめ選び抜かれた16店が軒を連ね、長丁場の合間の休息の場として終始にぎわいを見せていた(実際フェス飯の中でもかなりレベル高!)。
『音博』と言えば、ちょうちんで装飾されたやぐらや入場ゲートも印象的だが、漫画『きょうの猫村さん』でおなじみのほしよりこがイラストレーションを担当するグッズの数々も、今や『音博』ブランドを確立するほどにアイコン化。さらには、結成30周年を記念したアニバーサリープロジェクト『くるりの30回転』グッズに、ZUCCaとのコラボTシャツetc……豊富なアイテム群を求めて、早くから長蛇の列ができていた。
そして、開演直前にはFM COCOLOのDJ野村雅夫がくるりの岸田繁(Vo.Gt)と佐藤征史(Ba.Vo)を呼び込み、まるで10月とは思えない猛暑に客席を気遣いつつ、「それでは『京都音楽博覧会2026』2日目、開催いたします!」と佐藤が宣言。2日目がいよいよ幕を開けた。
James Macaulay and The Ancient Highballs
東京を拠点に活動する総勢10名の多国籍ジャズポップバンドJames Macaulay and The Ancient Highballsは、1曲目の「長い電車」から、オーストラリア出身のJames Macaulay(Tb.Vo)が日本語詞で歌う独特の語感と、Taikimen(Perc)、Marty Holoubek(Ba)、石若駿(Dr)ら百戦錬磨の面々による縦横無尽のグルーヴのとりこに。各アーティストの演奏前に流される、くるりからの紹介ムービーで佐藤が「歌詞が刺さる」とうなっていたのを猛烈に理解する。
『京都音楽博覧会』たる醍醐味を早々に感じたところで、続く「Happy Sad」ではermhoi(Vo.Harp)にボーカルをスイッチ。James、中島朱葉(As)、西口明宏(Ts)、佐瀬悠輔(Tp)らホーンセクションの艶やかな音色も相まった、妖艶でプリミティヴなサウンドに瞬く間に魅了されてしまう。「Chibi/Plastic Drastic」では予測不可能のカオティックな曲展開と、Jamesの英語詞でも新たな横顔を見せ、「Godzilla」はついには和洋折衷のリリックで、ermhoiの神聖で芯のある歌声が梅小路公園いっぱいに響き渡る。
とりわけインパクト大だったのは後半の2曲で、Jamesが「業務スーパーが好きな人は手を上げなさい! ディズニーランドより好きなところ」と言い始まった昭和歌謡風情な「Gyoumu」は、<珍しいスーパー>、<もやし19円>など一瞬耳を疑うワードの数々が飛び交うも、いつの間にやら病みつきになる中毒性。最新曲「ハンディファンのうた」では、近年夏によく目にする小型扇風機についてつづった曲で大観衆が手を振るというシュールな風景を作り出す。出番を終えたJamesは「これからじっくり飲みたいです」とポツリ(笑)。2日目の開幕から未体験の刺激をもたらしたJames Macaulay and The Ancient Highballsに大きな拍手を送りたい。
milet
くるり岸田が紹介ムービーでコメントした通り、まさに待望の登場。『音博』グッズの鮮やかな黄色のタオルを掲げて現れたmiletは、当初は2024年に出演する予定が体調不良で急きょキャンセルに。満を持しての初『音博』に、2年越しの思いを全て詰め込むようにじっくりと、ゆっくりと、一節一節をかみ締めるように歌い上げた「inside you」は圧巻だ。「私も学生の頃から何度も何度も『音博』に来ていて、皆さんと同じファンが歌っていると思ってください。まだまだ声を出していきましょう!」と呼び掛けた「Hurricane」では、衣装同様真っ白なフライングVをワイルドにかき鳴らし、コール&レスポンスを発生させるmilet。
「私はくるりさんとは学生時代に出会ったんですけど、友達のたっちゃんに「絶対にくるりを聴いた方がいいよ」とZepp DiverCity(TOKYO)のライブに連れて行かれ……それから本当にハマってしまい、その友達&家族と私という謎の組み合わせで、毎年『音博』に来ることになりました。くるりさんが大好きで語り始めると止まらないので」と披露した「レッドネオン」は、そんな親友にささげた一曲。ここまで明確に『音博』を意識して作られた曲がかつてあっただろうか? そんなアーティストが、楽曲が生まれたのも、『音博』が積み重ねた歴史をまざまざと感じさせる。晴天の下、大きく手を広げ歌った「Anytime Anywhere」が大空に広がっていく光景もすがすがしい限りだ。
今年は親友が仕事で海外におり、家族しか『音博』に来られなかったということだったが、今一度当時を振り返り「学生時代に東京の小さいライブハウスで一回だけライブをしたことがあって、そのときにカバーした曲を今日は歌わせてください」と歌い出した途端、感極まって涙をこらえるmilet。こんなにも愛情たっぷりにくるりの「BIRTHDAY」を歌われた日には、『音博』民もクラップで支えずにはいられない。
「私にとって大切な大切な、ここに来ないと一年が始まらないし終わらないという場所。これからも『音博』を、くるりを、愛し続けたいと思います。今度は私が客席にいたら声を掛けてください(笑)。愛してます、miletでした」と、ラストは「Christmas Eve」を。ミステリアスなアーティスト像からいつになく生身の彼女がのぞいたのは、『音博』ならではの素敵なマジックだったのかもしれない。
角野隼斗 Solo & Trio
3年ぶりの『音博』の大舞台にいるのは、たった一人のピアニスト。「かてぃん」こと角野隼斗が静かに奏で始めた「Human Universe」が、徐々に力強さと激しさを増していく。彼の横顔の先には熱い視線を送る1万2,000人がいるにもかかわらず、何ら己を揺るがされることなく、鍵盤と真っ向対峙で超絶技巧を連発。その神々しさに息をのむ。聴きなじみのあるJ.S.バッハの「主よ、人の望みの喜びよ(カンタータBWV147より)」では、強烈な暑さも和らぐような優しいしらべが、つかの間の癒やしの空間を作り出す。
「3年ぶりの『音博』、うれしいです。皆さん元気でしたか? 3年前はソロでしたが、今年はトリオでもやります!」と、トップバッターのJames Macaulay and The Ancient HighballsからMarty Holoubekと石若駿を招き入れる。ここからはスーパージャズトリオ編成で、スリルの絶頂とも言える壮絶なJ.S.バッハの「前奏曲 ハ短調 BWV847」を皮切りに、Marty作曲の「Alas I Hear No Giant」ではくるりの「ばらの花」のリフをさらりと織り交ぜたかと思えば、これまた耳慣れたショパンの「ワルツ 第6番 変二長調 作品64-1「子犬」」へとなだれ込むなど、音楽でとことん遊び尽くす至高のアンサンブルには拍手喝采!
「ここでスペシャルゲストをお呼びしたいと思います。3年前が忘れられなくて、また最高に気持ち良くなれたら」とくるり岸田を招聘。紹介ムービーで佐藤が「あの「JUBILEE」は『音博』史上一番気持ち良かったんじゃないですか?」と岸田に問い掛けるほど前回のセッションも素晴らしかったが、30周年という節目にあの場面を何かと思い出すという岸田に、角野も「マジっすか!」と光栄極まりない様子。角野の伴奏で「奇跡」を歌う岸田はまたも何とも気持ち良さそうな表情で、岸田のエモーショナルなギターソロと角野の激情のピアノが絡み合うさまはこの上ない至福。
角野自身も「気持ちいい~!」と興奮冷めやらぬまま、再びトリオでデューク・エリントンの名曲「Caravan」の激ヤバ高速プレイで畳み掛け、『音博』に欠かせないアーティストの一人だと再確認させた角野隼斗だった。
羊文学
紹介ムービーで「ギターバンドとして唯一無二」とくるり岸田からも太鼓判をもらった羊文学は、2024年以来2年ぶりとなる出演。いつになくラフなたたずまいで鳴らした「1999」から、余裕と貫禄すら感じるミニマムな音像で、前方のスタンディングエリアには入場規制がかかる盛況ぶり。塩塚モエカ(Vo.Gt)が漆黒のジャガーをバキバキに弾き倒した「doll」、ドラマ主題歌としてバンドの知名度を拡大したミドルナンバー「声」、リリースしたばかりの「Keep Walking」と、冒頭から羊文学のうま味凝縮のセットリストで駆け抜けていく。
照り付ける日差しをまぶしそうに避けながら、塩塚が「めっちゃ晴れですね。次の曲は今日来てくれた人は待ってた曲じゃないかと思います。本当に最新、最新、最新の曲を、あの方々と一緒にやります。くるりのお2人よろしくお願いします!」とくるりを招き入れ、羊文学+くるり名義の話題のコラボ曲にして、TVアニメ『風を継ぐもの』のエンディングテーマ/劇場先行版主題歌「涙の河」を、リリース前日に初披露。世代を超えたオルタナの雄の共演で『音博』にヤマ場を作ってみせた。
イントロからじわじわアガる無敵の「more than words」で河西ゆりか(Ba)がぶちかますスラップも最高にクールで、トドメはヒリヒリするような轟音のサウンドウォールが押し寄せる、「Dogs」と、進化を止めないロックバンドの現在地にシビれた。
ASIAN KUNG-FU GENERATION
バンドとしては2年連続の出演。後藤正文(Vo.Gt)個人としては『音博』最多出演というASIAN KUNG-FU GENERATIONは、くるりと同じく結成30周年、共にシーンを生き抜いてきた盟友だ。バンド名さながらメンバー全員がカンフーシャツを身にまとい、伊地知潔(Dr)のビートに乗って聴こえてくるあのギターリフに、事を察した人々が歓喜の総立ち。いきなりの「君という花」に留まらず、立て続けに「リライト」をぶっ込む出し惜しみなしのアンセムの洪水にはたまらず歓声が上がり、「さっき羊文学がライブしてたときは京都水族館の方からたくさん人が見てたのに、アジカンになったら誰もいなくなっちゃった(笑)。でも、俺たちには皆さんがいますから!」と沸かせたGotch=後藤によるシンガロング指南により、少しずつ日が落ち始めた風そよぐ梅小路公園に大合唱が巻き起こる。
MCでは、後藤が出身の静岡にスタジオMUSIC inn Fujiedaを作ったこと、地元に根差すことに触れ、「そう言えば、ジョニーが飛び出していく歌(=くるりの「ハイウェイ」)がありますけど、飛び出したジョニーが故郷に帰る、アンサーソングを作りました」と切り出し、熟成するエモーションとオマージュが染みる「おかえりジョニー」へ。ポップに躍動する「スキンズ」も秀逸で、30周年にしてアジカンがキャリアの充実期にいるのが伝わってくる。
「京都の曲を2曲続けてやります」(後藤、以下同)と放った「荒野を歩け」でもギターの音色に宿るアジカン印にニヤリとさせられ、くるりの初期衝動をも丸ごとカバーしたようなまさかの「青い空」には熱狂不可避。「喉がちぎれるかと思いました(笑)。いつくるりの隣に立っても恥ずかしくないように、ASIAN KUNG-FU GENERATIONも進んでいきます」と届けた「MAKUAKE」まで、くるりに音楽でエールを送り続けたアジカンの愛とリスペクトに満ちた全7曲だった。
奥田民生
何と2013年以来13年ぶりの登場となったのが奥田民生だ。「西日よ! 西日がすごいのにあの照明いる? 同じ色だし」と、らしい一言から始まった「スルドクサイナラ」から、バックにMTR&Yのメンバー湊雅史(Dr)、小原礼(Ba)、斎藤有太(Key)を率いた、生々しいバンドサウンドを放出。分厚いコーラスワーク共々聴かせたアーシーな「解体ショー」といい、ソリッドでハードな「ライオンはトラより美しい」といい、奥田のひずんだギターの音が絶品で、湊のドラミングもとにかくエグい。もうずーっと淡々と、いとも簡単にものすごいライブを見せられている感覚。
「(日が)沈んだ! 引き続きよろしくお願いします」とギターを持ち替え、つい先ほどまでの炎天下から一気に過ごしやすくなった梅小路公園に、「何と言う」、「スピード」と次々放り込んでいくレジェンドは、斎藤の鍵盤が冴える「MTRY」でもご機嫌にロール。30周年のキャリアを誇るバンドや新進気鋭のアーティストが居並ぶ『音博』においても、有無を言わせぬライブでいまだに大きな背中を見せてくれる。
待ってましたの「さすらい」にはすぐさま拍手が巻き起こり、奥田も「京都~!」とダメ押しのシャウト。続いて、30年前にリリースされた「イージュー★ライダー」が今でも心を揺さぶり、より深く刺さる驚きと喜びよ。紛れもなく今年のトピックの一つと言える奥田民生の『音博』への帰還を、誰もが歓迎した幸福な時間だった。
くるり
ついに濃厚な2日間のオーラスを迎えた主宰のくるりは、ド頭の「Morning Paper」からロックバンドのダイナミズムを存分に感じさせるパフォーマンスで圧倒。松本大樹(Gt)、野崎泰弘(Key)、石若駿(Dr.Perc)、Senoo ricky(Dr.Perc)らを従えた鉄壁の布陣で魅せた変幻自在の「ブレーメン」、初日に出演したHomecomingsの畳野彩加(Cho)がジョインしたくるり流ヒップホップチューン「琥珀色の街、上海蟹の朝」、miletがフェイバリットソングに挙げる一曲で、岸田の弾き語りにオーディエンスの口ずさむ声が寄り添っていった「Baby I Love You」も感動的。見上げれば夜になっていた梅小路公園の頭上には星が瞬いている。
「『音博』、2日間楽しかったですか? 一歩ずつ一歩ずつみたいな感じでやってきて、進んだようで進んでなかったりもしましたけど、これからもよろしくお願いします。あんまりしんみりするのもあれなんで、自分たちで『音博』をお祝いしようと思います」
なんて岸田の言葉を合図にきらめいたギターに、何年経ってもどうしようもなく胸が高ぶる。暗闇にうごめく数え切れない手が彩った俺たちの「ロックンロール」、岸田が切々と熱唱した「The Veranda」、『音博』では何度も演奏されてきたドラマチックな「潮風のアリア」、「後藤くんがアンサーソングを書いてくれてうれしかったから、元の質問曲をやります」とアジカンの粋な選曲に応えた「ハイウェイ」……ああ、ため息が出るほどいい曲ばっかり、これがいわゆる神セトリ!
それを決定づけたのは、大胆なピアノアレンジで軽やかさとカントリー味が増した「リバー」に、これをやらなきゃ『音博』は終わらない、恒例の「宿はなし」。最後に佐藤が「感無量です、ありがとうございました」と述べれば、「気を付けて帰ってな、くるりでした」と岸田が締めくくる。2日間で合計2万4,000人が集まった過去最大の『京都音楽博覧会』は、こうして幕を閉じた。
取材・文=奥“ボウイ”昌史 写真=『京都音楽博覧会』提供(撮影:井上嘉和)、会場風景 (撮影:ハヤシマコ)
くるりの30回転 Teaser
くるりは、今年で結成30周年のアニバーサリーイヤーを記念して、『くるりの30回転 〜芳しきバンドマン〜』(ライブハウス編)・『くるりの30回転 〜芳しきアンサンブル〜』(ホール編)の開催が決定している。今年の結成30周年に続き、来年はインディーデビュー30周年、再来年はメジャーデビュー30周年を迎えるため、くるりにとっては3年にわたって周年が続くアニバーサリーイヤーの幕開けとなる。
ツアー『くるりの30回転 〜芳しきバンドマン〜』(ライブハウス編)、『くるりの30回転 〜芳しきアンサンブル〜』(ホール編)は、ライブハウス編13公演、ホール編17公演の全30公演。彼らの地元である京都・磔磔公演を皮切りに、久々に訪れる地域はもちろん、くるりとしては初となる会場まで全国各地をまわり、8月6日の東京ガーデンシアターまで約8ヶ月をかけて開催される。
>次のページでは本編では掲載しきれなかったアザーカットを公開!