漫画『陰陽師』の高画質原画×雅楽の生演奏。岡野玲子が語る、新たなアート施設「MoN Takanawa」での特別な一夜
漫画『陰陽師』を聴く -天地をむすぶ雅楽の宇宙- 岡野玲子
夢枕獏の同名の小説を原作とし、安倍晴明ブームの火付け役ともなった岡野玲子の漫画『陰陽師』。本作品に描かれた平安時代の美意識や宇宙観を、原画を用いた美しい映像と、雅楽やエレクトリックピアノの生演奏で体感するコンサート「漫画『陰陽師』を聴く -天地をむすぶ雅楽の宇宙-」が11月27日~28日に開催される。会場は10月から「Sound as Culture - その音は、ブンカだ」をテーマとする新シーズンがスタートした「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」の最新鋭のシアター空間、Box1000。監修を務め、トークと演奏で出演もする岡野に、新たな試み満載の本公演について聞いた。
漫画『陰陽師』を聴く -天地をむすぶ雅楽の宇宙-
■ 巨大LEDで甦る高解像度の原画。視覚と聴覚で没入する『陰陽師』の世界
――漫画『陰陽師』の様々なシーンを、ステージ背面いっぱいの特大LEDヴィジョンで堪能できる本公演。Box1000でテスト画像をご覧になって、いかがでしたか?
実は最初、電子書籍用の画像データを映せばいいのかなと思っていたんです。けれども、もっと高画質・高解像度のものが欲しいということで、原画を1枚1枚、印刷用よりもさらに高画質なデータにスキャンし直し、さらにLED大画面ではっきりと綺麗に見えるように、色や濃度を調整してお渡ししました。その作業がとても大変だったんですけれども、LEDヴィジョンに原画の紙の質感まで映し出されているのを見て、スキャンし直し、濃度調整もしてよかったなと思いましたね。それに、過去に描いたものと向き合うことで、当時の記憶も甦ってきました。
漫画『陰陽師』
――極上のサウンドスケープと相まって、『陰陽師』の世界に没入できそうです。ファンの方たちは、たまらないのではと思います。
はい、本当に。テスト画像も、原画の上にさらに別のシーンの絵や自然の画像、光が重ねられて、とても美しいものでした。公演本番では、そこに動きが加わり、雅楽や歌が生演奏されるわけですから、安倍晴明や源博雅の視線を通した平安時代や漫画の世界を、よりリアルに体感できそうです。ファンの皆さんにも、作品を知らない皆さんにも、たまらない体験になると思います。
――今回上演されるのは、2枚組アルバム『music for 陰陽師』のdisk1に収められた楽曲。岡野先生の絵と一緒に雅楽の生演奏を味わえるという贅沢な企画です。
雅楽の美しい音楽や、装束をまとった演奏姿はもちろん、雅楽の演奏とともに舞人(まいびと)が舞う舞楽を、生演奏の雅楽に触れたことがない方や、雅楽のことをよく知らない方にもぜひ味わって欲しいと思っています。漫画の中では、瞬間を切り取って描くことしかできなかった舞人の動きを、実際に見ていただけたらなと。舞楽の時には、集中して舞を見ていただけるような画像を出していただけるようにブルースさん(演出のBruce Ikeda)にお願いしているので、きっと素晴らしいものになると思います。
――ご自身で龍笛や和琴の演奏もなさっている岡野先生が雅楽に魅せられたきっかけは、やはり漫画『陰陽師』の連載ですか?
そうです。最初は私、源博雅さんが管絃の人だと知らなかったんです。夢枕獏さんの原作を読んだ時に、稀代の陰陽師・安倍晴明とその友・源博雅の会話が続いていく最初のシーンで、もう頭の中に映像が見えてきてしまったので、ぜひ漫画にしたいと知り合いの編集者に話していたら、驚いたことに1週間も経たないうちに、獏さんのほうから「僕の原作で漫画を描きませんか」というオファーをいただきまして。
それで『陰陽師』を描くことが決まってから、『今昔物語』といった古典作品や説話を読み出したら、源博雅は管絃の人だと書いてある。やはり雅楽の世界を知らないことには描けないなと思っていたところ、夫の手塚(ヴィジュアリスト・映画監督の手塚眞)が「これを聴いてみれば?」と、芝祐靖先生(雅楽師・作曲家)の『天竺からの音楽』というCDを貸してくれたんです。その中の「安摩乱声(あまらんじょう)」という曲を聴いた時、あまりにも力強く素晴らしい笛の音に、椅子から立ち上がるほどびっくりしてしまって。こんなにも人を惹きつける力を持った雅楽という音楽をもっと知りたい、そうでなければ、雅楽の神様といわれている源博雅を描くことはできない。笛の1本も吹けなくては、管絃の名人である博雅の気持ちはわからないだろう、と観念しました。
――それで龍笛を習い始めたのですね。
ちょうどその頃、手塚の友人が笙を習い始めたと聞きまして、その女性に龍笛を教えてくださる方を紹介してもらい、月に1度習いに行くようになりました。その龍笛を教えてくださった方は針仕事にも長けていて、自分で装束も縫っているんです。彼のところで衣冠束帯の取材もできて、とてもありがたかったですね。
■ 故・芝祐靖氏や伶楽舎との絆から生まれた名盤、待望の初コンサート化
――アルバム『music for 陰陽師』同様、今回のコンサートでも演奏される雅楽演奏団体・伶楽舎さんとは、いつ頃からのお付き合いなのでしょう?
件の友人の笙のお師匠が、芝祐靖氏の伶楽舎創設を補佐された笙奏者の宮田まゆみさんで、友人も笙で伶楽舎に参加していました。その関係で、演奏会を観に来ませんか?と誘ってくれたんです。そこで初めて芝先生に紹介していただき、リハーサルから見学して雅楽器の写真も撮らせてもらったことが、お付き合いの始まりですね。私としては、雅楽への敬意を込めて、リアリティのある作品を描きたいと思っていたので、芝先生が伶楽舎のメンバーのために月に1度開いていた講座にも4年間毎月通いました。源博雅にも、琵琶の名手で大津に庵を結んでいた蝉丸法師のもとに3年間通い続け、琵琶の秘曲を伝授されたという逸話があるんですけれども、そうやって信頼関係を紡いでいったからこそ、私も1999年にビクターのディレクターさんから「陰陽五行の理に則った漫画『陰陽師』のための雅楽のアルバムを作りませんか」とオファーがあった時、すぐに芝先生にご相談して、伶楽舎の皆さんと一緒に形にすることができたのだと思います。
――アルバム『music for 陰陽師』の公演化は、2000年のリリース以来、今回が初めてだそうですね。
この内容で演奏会を行うのは初めてだと思います。伶楽舎さんは、CD発売当時よりさらに腕を磨かれて、今、本当に堂々として素晴らしい、美しくバランスのとれた楽団になっています。2019年に他界された芝先生もきっと聴きに来てくださるでしょうから、もしかすると、みんなアルバムの曲を改めて演奏しながら泣いてしまうかもしれませんね。とはいえ、雅楽は楽しむものです。CDを録音した際にも話したのですが、緊張せずに楽しんで演奏して欲しいなと思いますし、お客様も変にかしこまったりすることなく、リラックスして楽しんでいただけたら嬉しいです。
伶楽舎
■ 最新の立体音響と融合する、誰も体感したことのない『陰陽師』の宇宙へ
――伶楽舎さんのほかに、やはりアルバムに参加されたピアニスト・作曲家の橋本一子さんも出演なさる本公演。雅楽器の演奏体験付きもあり、他では絶対に味わえない特別なひとときを過ごすことができそうです。
最新の立体音響システムをフルに使ったサウンドスケープを考えてくださっている演出のブルースさんをはじめ、スタッフの皆さんも本当に素晴らしい方々が集まってくださっているので、きっと今まで誰も体感したことがない素敵な演奏会になると思います。たくさんの方に来ていただいて、芝先生はもちろん、いにしえの楽師の皆さんにも“令和を生きる人たちも雅楽を楽しんでいる”ことを喜んでもらえたら幸せですね。渦巻きの間から植物が覗き、そこここに漫画『陰陽師』と共通するシンボルが見え隠れするMoN Takanawaでお待ちしています。「漫画『陰陽師』を聴く -天地をむすぶ雅楽の宇宙-」に、皆様ぜひお越しください。
取材・文=岡﨑 香
公演情報
【会場】MoN Takanawa: The Museum of Narratives Box1000
【住所】〒108-0073 東京都港区三田3丁目16−1
【主催】MoN Takanawa: The Museum of Narratives
【協力】株式会社白泉社/FlyingDog, Inc.
【イマーシブオーディオ技術協力】ヤマハサウンドシステム株式会社
【公式サイト】https://montakanawa.jp/programs/onmyoji/
監修・出演:岡野玲子(おかの れいこ)
演出:Bruce Ikeda(ぶるーす いけだ)
出演・伶楽舎(れいがくしゃ)
出演・橋本一子(はしもと いちこ)
双調調子(そうじょうのちょうし) /春庭花(しゅんでいか)/黄鐘調調子(おうしきちょうのちょうし)/拾翠楽(じっすいらく)/琵琶秘曲 楊真操(ようしんそう)/舞楽 陵王一具(りょうおう いちぐ)/平調調子(ひょうじょうのちょうし)/ 和琴独奏 菅掻(すががき)/催馬楽 飛鳥井(あすかい)/盤渉調調子(ばんしきちょうのちょうし)/蘇合香 序一帖(そこう じょいちじょう)/舞楽 青海波(せいがいは)/太食調調子(たいしきちょうのちょうし)/長慶子(ちょうげいし)/朗詠 二星(じせい)/雲珠(うず)
※上演時間は約140分間予定
■雅楽器体験
笙(しょう)/篳篥(ひちりき)/龍笛(りゅうてき)/鞨鼓(かっこ)/楽太鼓(がくだいこ)/鉦鼓(しょうこ)
※体験時間は約40分間を予定
※雅楽体験付き
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販売開始:2026年10月3日(土)10:00
一般:1階席・雅楽器体験付 9,000円/1階席 6,500円/2階席 4,500円
U25:1階席・雅楽器体験付 7,000円/1階席 5,000円/2階席 3,500円
※表示価格は全て税込
公式インスタグラム:@montakanawa