アートプラットフォーム『MODE』6月に東京・赤坂の草月ホールにて2つのパフォーマンスプログラムを開催
キービジュアル
実験的な芸術を通じた「交換・交流」のためのアートプラットフォーム「MODE」が、6月29日(月)・30日(火)の二日間にわたり、東京・赤坂に位置する草月ホールにて2つのパフォーマンスプログラムを開催する。
6月29日開催のプログラムについて
6月29日(月)に開催されるプログラムでは、二つの世界初演が披露される。日本を代表する前衛音楽家であり、2026年の「第70回ヴェネツィア国際現代音楽祭」にて最高栄誉である「生涯功労金獅子賞」を受賞する灰野敬二(Keiji Haino)と、元YUCK(ヤック)のフロントマン、元Cajun Dance Party(ケイジャン・ダンス・パーティ)のリードボーカルであり、『The Brutalist』の劇伴でアカデミー賞を受賞したDaniel Blumberg(ダニエル・ブランバーグ)によるコラボレーションが「MODE」の委嘱により世界初披露。
さらに、パイプオルガンやリードオルガンの持続音を用いたドローン作品で国際的に高く評価される作曲家Ellen Arkbro(エレン・アークブロ)が、リードオルガンと、雅楽において中心的な役割を担うダブルリード楽器である篳篥(ひちりき)のための最新作を世界初演として発表する。Arkbroがリードオルガンを担当し、雅楽演奏グループ伶楽舎(Reigakusha Gagaku Ensemble)に所属する中村仁美(Hitomi Nakamura)、國本淑恵(Yoshie Kunimoto)、鈴木絵理(Rie Suzuki)、田渕勝彦(Katsuhiko Tabuchi)が篳篥を演奏。
■Keiji Haino & Daniel Blumbergについて
Keiji Haino、Daniel Blumberg(Photography by Taylor Russell)
灰野敬二は50年以上にわたり、ノイズ、フリージャズ、ブルース、ロック、電子音響、フォーク、ドローンといった多様な領域を横断しながら活動を続けてきた日本の前衛音楽家。Antonin Artaud(アントナン・アルトー)に触発され演劇を志すも、The Doors(ザ・ドアーズ)に遭遇したことを契機に音楽へと転向。初期ブルースから中世音楽、歌謡曲に至るまで幅広い音楽を吸収し、1970年代より活動を開始した。 1978年にはロックバンド「不失者」を結成。ソロ活動と並行しながら、灰野を中心にしたプロジェクト「滲有無」、90年代後半に結成したカヴァー・バンド「哀秘謡」など複数のプロジェクトや名義を通じて様々な表現を展開してきた。
1980年代の活動休止を経て復帰以降も、即興演奏を軸に音を身体的な体験へと変容させる実践を深化させてきた。ギターやパーカッションにとどまらず、ハーディ・ガーディや各地の民間楽器、電子機器などを用い、それぞれの特性を極限まで引き出す独自の演奏で知られている。その革新性は国際的にも高く評価され、2026年にはヴェネツィアで開催される第70回国際現代音楽祭にて、生涯功労金獅子賞を受賞することが決定している。近年も精力的に作品発表を続け、国内外のアーティストとのコラボレーションを重ねている。
一方、ロンドンを拠点とする音楽家・作曲家Daniel Blumbergは、Cajun Dance PartyやYuckでの活動を経てソロへと移行し、即興音楽や映像、ドローイングなど様々な実践を展開した。映画音楽の分野でも評価を高め、2025年には『The Brutalist』のスコアでアカデミー賞およびBAFTAを受賞。日本では2026年初夏に上映予定のゴールデングローブ賞受賞作品『アン・リー/はじまりの物語』でも劇伴を手がけている。
Blumbergにとって灰野は重要な存在のひとりであり、ロンドンのライブベニュー Cafe OTOで初めて目撃した灰野の演奏は、彼に強い印象を残したという。翌日再び会場を訪れると、その演奏は前日とはまったく異なるものだった。この体験を通じてBlumbergは音楽を固定されたものではなく、常に変化し続けるものとして捉えるようになる。「同じライブを繰り返さない」という現在の姿勢にも表れている。
こうした背景のもと、「MODE」の委嘱により、両者のコラボレーションが実現。本プログラムにて世界初披露される。
■Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensembleについて
Ellen Arkbro(Photography by Victoria Loeb)、Reigakusha Gagaku Ensemble
Ellen Arkbroはストックホルム出身、現在はベルリンを拠点とする作曲家/ミュージシャン/サウンド・アーティスト。パイプオルガンやリードオルガンの持続音を基盤に、純正律や倍音、共鳴を探求する作品で知られ、アコースティック楽器、電子音、あるいはその両者を組み合わせた作品やインスタレーションを制作している。La Monte Young(ラ・モンテ・ヤング)に師事し、スウェーデンのエレクトリック・ハープシコード奏者Catherine Christer Hennix(キャサリン・クリスター・ヘニックス)率いるKamigaku Ensembleでも活動するなど、幅広い実践を展開してきた。
伶楽舎は、雅楽の合奏研究を目的に、雅楽の伝承・普及に第一線で尽くし続けた芝祐靖(Sukeyasu Shiba)が1985年に創立し、発足した雅楽演奏グループ。現行の雅楽古典曲の演奏にとどまらず、現代作品の上演にも積極的に取り組み、これまでに湯浅譲二(Joji Yuasa)、一柳慧(Toshi Ichiyanagi)、池辺晋一郎(Shinichiro Ikebe)、猿谷紀郎(Toshio Saruya)、伊左治直(Sunao Isaji)、桑原ゆう(Yu Kuwabara)など多くの作曲家に新作を委嘱してきた。日本を代表する現代音楽家、武満徹作曲の雅楽作品『秋庭歌一具』の演奏でも複数の賞を受賞している。
<作品紹介>
本プログラムでArkbroは、リードオルガンと篳篥(ひちりき)のための新たな作品を伶楽舎の篳篥奏者たちとともに発表する。篳篥は、日本の伝統的なダブルリード楽器であり、雅楽において中心的な役割を担う音色を持つ楽器。本作は、これらの楽器に固有の音色、豊かな倍音構造と共鳴が生み出す音の響きに着目し、7リミットの純正律に基づく精緻に調整された音程や和音を通じて、リードオルガンと篳篥の音の融合を探る。
その過程で、音の繊細で生々しいテクスチャー、そしてハーモニーを質感を伴う音の重なりとして立ち上がらせ、聴き手の意識をひらいていく。演奏者たちは各和音のチューニングに深く関与し、響きの明晰さを追求しながら、ひとつの音として鳴り、ひとつの響きとして聴き合うことを目指す。
Arkbroがリードオルガンを担当。篳篥は伶楽舎所属の中村仁美、國本淑恵、鈴木絵理、田渕勝彦が演奏。こちらも世界初演として披露される。
6月30日開催のプログラムについて
6月30日(火)に開催するプログラムでは、約14年ぶりの来日となるCharlemagne Palestine(シャルルマーニュ・パレスタイン)が出演。Charlemagne Palestineは、反復、持続、倍音、空間の響きを用いた独自の実践を築いてきた音楽家であり、ニューヨーク・アンダーグラウンドを起点に半世紀以上にわたり活動を続けてきた。La Monte Young(ラ・モンテ・ヤング)、Terry Riley(テリー・ライリー)、Steve Reich(スティーブ・ライヒ)らと並び語られてきた巨匠の一人。ぬいぐるみを用いたマルチメディア彫刻や空間作品を手がける現代美術作家としても活動し、ドクメンタ8への参加をはじめ、現在も世界各地の美術館やギャラリーで音響作品やインスタレーションを発表し続けている。
客演には、Jim O’Rourke(ジム・オルーク)と 石橋英子(Eiko Ishibashi)のデュオが出演。Jim O’Rourkeは、シカゴの即興音楽シーンを支えてきた重要人物であり、実験音楽、映画音楽、プロデュースワークを横断しながら独自の活動を続けてきた。Gastr del Sol(ガスター・デル・ソル)での活動や、Sonic Youth(ソニック・ユース)の元メンバーとしても知られるほか、小杉武久(Takehisa Kosugi)とともにMerce Cunningham(マース・カニンガム)舞踏団の音楽を手がけ、Tony Conrad(トニー・コンラッド)、Arnold Dreyblatt(アーノルド・ドレイブラット)、Christian Wolff(クリスチャン・ウォルフ)らとの仕事を通じて、現代音楽とポストロックのあいだを横断してきた存在でもある。石橋英子は、『ドライブ・マイ・カー』(2021年)や『悪は存在しない』(2023年)などの映画音楽も手がけ、2025年には最新アルバム『Antigone』を発表している。両者はデュオとして、2025年に5作目となるアルバム『Pareidolia』をリリース。
■Charlemagne Palestineについて
Charlemagne Palestine Photography by Agnes Gania
1947年ブルックリン生まれのCharlemagne Palestineは、ニューヨーク大学、コロンビア大学、マネス音楽大学、カリフォルニア芸術大学で学び、カントール(聖歌の歌い手)やカリヨン奏者としての訓練を経て、1960年代よりニューヨークの前衛芸術シーンで活動を開始した。電子音源、鐘楼、パイプオルガン、ピアノ、声などを用いた儀式的な持続音楽を探究し、97鍵のピアノを用いた「Strumming」や、パイプオルガンのための「Schlingen Blängens」といった演奏技法を含む独自の実践を築いてきた作家。2時間に及ぶ声の作品『Karenina』や、身体の動きや映像を伴うパフォーマンスなども展開してきた。
1980年代初頭から1990年代半ばにかけてはパフォーマンス活動を休止し、ぬいぐるみを祭壇のように配したマルチメディア彫刻やインスタレーションの制作に専念したが、その後ステージに復帰し、Pansonic(パンソニック)、Tony Conrad(トニー・コンラッド)、Rhys Chatham(リース・チャタム)らとの共演を重ねた。パフォーマンス活動の傍ら、現在も現代美術作家としても、世界各地の美術館やギャラリーで音響作品やインスタレーションを発表してきた。
現在はブリュッセルを拠点に活動しており、近年も継続的に新作発表と公演を行っている。2024年には、アムステルダムのOude Kerkで開催されたSonic Acts Biennialにてオルガン公演を行い、その記録作品『The Organ is the Worlds Greatest Synthesizer』が2026年1月にリリースされた。
2012年には、東京・SuperDeluxeで行われた灰野敬二、Jim O’Rourke、Oren Ambarchi(オーレン・アンバーチ)の公演に、石橋英子とともにゲスト参加し、ワイングラスによる演奏で共演している。今回の来日公演は、約14年ぶりとなる。
■Jim O’Rourke & Eiko Ishibashiについて
Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi
Jim O’Rourkeと石橋英子は、日本を拠点に国際的な活動を展開するアーティスト。Jim O’Rourkeは、シカゴの即興音楽シーンを支えた中心人物のひとりであり、数多くの映画音楽や実験作品を手がけるほか、Gastr del SolやSonic Youthでの活動でも広く知られている。石橋英子は、マルチ奏者、シンガーソングライター、作曲家として活動し、2021年の『ドライブ・マイ・カー』、2023年の『悪は存在しない』の音楽を担当。2025年には、7年ぶりとなる歌のアルバム『Antigone』をリリースした。
二人は、即興演奏を基盤に独自の音響世界を築くデュオとして、2010年代から活動を続けている。2023年にはフランス、スイス、イタリア、アイルランドを巡るヨーロッパ・ツアーを行い、その録音を再構成したアルバム『Pareidolia』を2025年にDrag Cityからリリース。この作品は二人にとって5作目のコラボレーション作品であり、ライブ音源を編集しながら新たな対話として組み立てていく、彼らの方法がよく表れた作品となっている。
Jim O’Rourkeは、かねてよりCharlemagne Palestineの音楽に深い敬意を示しており、2015年作『Ssingggg Sschlllingg Sshpppingg』を「その年のお気に入りであり、彼の最高作かもしれない」と評している。
プログラム概要
開催日時:2026年6月29日(月)Doors 18:15 / Start 19:00
会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21)
プレイガイド:イープラス/ZAIKO
出演者:Keiji Haino & Daniel Blumberg / Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensemble
協力:ゲーテ・インスティトゥート 東京
開催日時:2026年6月30日(火)Doors 18:15 / Start 19:00
会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21)
プレイガイド:イープラス/ZAIKO
出演者:Charlemagne Palestine / Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi
公演の詳細はMODE公式インスタグラムをご確認ください。
https://www.instagram.com/mode.exchange/