開館から50年、山種美術館3代目館長 山崎妙子にインタビュー
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山種美術館3代目館長 山崎妙子さん
東京・広尾にある山種美術館。年間約15万人の方が訪れる東京を代表する美術館の一つです。そんな山種美術館は、今年めでたく50周年を迎えます。まだ訪れたことがないという方は、是非記念イヤーである今年に、山種美術館デビューをしてみてはいかがでしょう?今回は、3代目の館長を務める山崎妙子さんに、インタビューを敢行してまいりました。(聞き手:アートテラー・とに~)
山崎美術館応接室にて ※聞き手:アートテラー・とに~(右)
――本日はよろしくお願いいたします。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
――まずは、山種美術館について、簡単に教えてください。
山種美術館は、1966年に日本初の日本画専門の美術館として開館しました。私の祖父、山崎種二(山種証券/現 SMBC フレンド証券 創業者)が、個人で収集した日本画コレクションを、一人でも多くの方に観て頂きたいと創立した美術館です。
山種美術館(外観)
――もしかして、山種美術館の「山種」って、山崎種二という名前に由来するのですか?
そうです。山崎種二を略して、山種。キムタクみたいな感じです。
――なるほど(笑)。日本画は敷居が高い。そんな印象がありますが、館長はどう考えていますか?
そんなことはないと思いますよ。多くの方にとっては、ただ日本画を目にするきっかけが、これまでになかったというだけで。最近、浮世絵や刀剣が若い女性たちにも人気ですが、それも実際に目にするきっかけがあったからこそ。金箔や銀箔のきらきらとした質感や、日本画特有の絵の具のざらざらとした質感など、日本画の繊細なニュアンスは、実際に目にしてみないと伝わらないので。
――ということは、日本画を目にするきっかけが増えれば、次は日本画ブームが起こるのかもしれませんね。質感以外で、館長が考える日本美術の魅力を教えてください。
やはり、日本画には「花鳥風月」があるということでしょうか。画家たちは、「花鳥風月」という題材を通して、日本ならではの四季や、さらにその奥に日本人のアイデンティティや心といったものを表現しています。そういった日本画特有の深い精神性は、西洋の絵画にはあまり見られません。
――なんだか演歌に通ずるところもありそうですね。
そうかもしれません(笑)。正直に言えば、私も学生の頃は、「花鳥風月」を古くて定番のものくらいにしか感じていませんでした。「花鳥風月」の良さを実感するようになったのは、最近になってようやくです。
――他に、日本画ならではの魅力ってありますか?
2014年に「Kawaii」というキーワードで展覧会(Kawaii日本美術展)を開催したことがあるのですが、可愛い作品が多いのも日本画の特徴の一つです。
――可愛い日本画・・・。あまりイメージがわきません。例えば、どんなのがありますか?
今、展覧会に出ている作品だと、伊藤若冲の《伏見人形》や奥村土牛の《寅》なんかが可愛いですよ。
伊藤若冲 《伏見人形図》 山種美術館
――ゆるキャラみたいで、可愛いですね!
竹内栖鳳の《みみずく》や西山翠嶂の《狗子》も、ほのぼのとしていて可愛くないですか?
――めちゃめちゃ可愛いです!ぬいぐるみにして欲しいくらいですよ。
ミュージアムショップと相談してみます(笑)。ミュージアムショップは、もう一つのミュージアムと考えているので、グッズはこだわっているんです。
――こだわっていると言えば、ミュージアムカフェにもこだわりの逸品があると伺いましたが。
「cafe 椿」で提供しているオリジナルの和菓子のことですね。展覧会ごとに、毎回展示作品を5点選んで、青山の老舗菓匠「菊家」さんに特別に制作して頂いています。
伊藤若冲《布袋図》をイメージしたオリジナル和菓子「招福」
――食べるのがもったいないくらいに、美しいですね。もはや芸術品です。
毎回、和菓子を楽しみにしてくださるお客さんも多いんですよ。インスタグラムで、この和菓子の写真を上げてくださる方もたくさんいらっしゃいます。ちなみに、意外と知られていないのですが、カフェだけの利用も可能です。もし広尾にいらっしゃる際は是非。過去の和菓子の画像は、こちらの公式Webサイト内の「Cafe椿 和菓子集」というページで閲覧可能です。
――『花より団子』な感じもしますが、和菓子を目当てに山種美術館を訪れてみるのも、一つのきっかけかもしれませんね。最後に、50周年を迎えた山種美術館の今年の展開を教えてください。
今年は、本当に記念すべき年なので、山種美術館コレクションの中でも特に名品とされるものを、出し惜しみなく公開したいと考えております。特に力を入れているのが、50周年を記念して開催する『Seed 山種美術館日本画アワード』です。
――『Seed 山種美術館日本画アワード』というのは?
山種美術館では、かつて1997年まで14回、2年に1度のペースで『山種美術館賞展 今日の日本画』という展覧会を開催していました。新人の登竜門といった位置づけで、山種美術館賞受賞された多くの方が、現在日本画界の第一線で活躍されていらっしゃいます。そんな『山種美術館賞』を、名前も新たに約20年ぶりに復活させるのが、『Seed 山種美術館日本画アワード』です。『山種美術館賞』の時には、有識者による推薦制を取っていましたが、『Seed 山種美術館日本画アワード』は、満45歳以下で日本国内に在住されている方なら誰でも応募できます。
Seed2016 山種美術館日本画アワード
――漫才で言うところの、『M-1グランプリ』みたいな感じですね!館長としては、どんな展開を望みますか?
これからの日本画を背負って立つような若手アーティストたちが、競い合ってくれると嬉しいですね。
――当然ですが、ガチの戦いですよね。若手でも大賞を取る可能性はありますか?
充分にあります。過去の「山種美術館賞」では、24歳の女性作家が受賞したのが最年少記録となっています。
――大賞に選ばれると、作品が山種美術館のコレクションに含まれるだけでなく、副賞200万円も送られるそうですね。この記事を読んでいる方で、「我こそは!」という方には、奮って応募頂きたいですね。
そうですね。ネットからも応募可能ですので、是非お待ちしています。もしくは、周囲に日本画を描いている人がいれば、『Seed 山種美術館日本画アワード』を薦めて頂ければ幸いです。
――山崎館長、本当にお忙しい中、お時間ありがとうございました!
インタビュー・文=アートテラー・とに~
【開館50周年記念特別展】
5月31日(火)~6月26日(日)『Seed 2016 山種美術館日本画アワード―未来をになう日本画新世代―』
7月2日(土)~8月21日(日)『山種コレクション名品選Ⅰ 江戸絵画への視線 ―岩佐又兵衛から江戸琳派へ―』
8月27日(土)~9月29日(木)『山種コレクション名品選Ⅱ 浮世絵 六大絵師の競演 ―春信、清長、歌麿、写楽、北斎、広重―』
10月8日(土)~12月4日(日)『速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造―』
12月10日(土)~2017年2月5日(日)『山種コレクション名品選Ⅲ 日本画の教科書 京都編 ―栖鳳、松園から平八郎、竹喬へ―』
2月16日(木)~4月16日(日)『山種コレクション名品選Ⅲ 日本画の教科書 東京編 ―大観、春草から土牛、魁夷へ―』
※展覧会名、スケジュール(会期)は変更になる場合もあります。なお、休館日は事前に公式ホームページにてご確認ください
2007年より財団法人山種美術財団理事長兼山種美術館館長。
2012年より公益財団法人山種美術財団理事長兼山種美術館館長。
※「崎」の本来の表記は「山」偏に「竒」ですが、パソコン、携帯電話等の画面の読みやすさを優先し「崎」を使用しています。
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