岩代太郎の生誕50周年記念コンサート 有名監督と対談
『あっっという間の生誕50周年記念コンサート』
サントリーホールにて開催予定の『あっっという間の生誕50周年記念コンサート 岩代太郎 と 「アルスラーン戦記」×「アジア映画音楽』に先駆け、映画監督であるジョン・ウー氏が岩代さんを激励するために緊急来日。海を越えて結んだ熱い友情から今回の対談が実現した。
2008~9年に公開され、中国・日本などアジア主要テリトリーで大ヒットを記録した『レッドクリフ』にてダイナミックな音楽を担当し、韓国映画の傑作『殺人の追憶』や『血と骨』など数多くの日本映画・人気TVアニメシリーズ『アルスラーン戦記』などの作曲家として個性的な活動を続ける岩代太郎。そんな岩代の生誕50周年を記念した『あっっという間の生誕50周年記念コンサート 岩代太郎 と 「アルスラーン戦記」×「アジア映画音楽』が3月27日(日)にサントリーホールで開催される。今回は有名映画監督であるジョン・ウー監督との対談をお届けする。
岩代太郎 ジョン・ウー
「最初に岩代さんの音楽を聞いたのは韓国映画『殺人の追憶』でした。とても抒情的でロマンティックで、この人の音楽が好きだと感じました」と出会いを語るジョン・ウー監督。「『レッドクリフ』では最初から日本人の作曲家を探そうと思っていたんです。日本の映画には憧れがありましたし、それまでの中国の時代劇は伝統的で新しい要素がなかったため、これまでとは違う他の文化を取り入れたかったのです」と岩代氏起用の理由を明かした。
ジョン・ウー監督
また、「岩代さんとお仕事をして、本物のアーティストとはどういうものなのか実感させられました。いろんな国で映画を撮りましたが、撮影現場に来て土に触り現場の雰囲気を感じようとする作曲家は初めてでした。早く作品の中に入りたいという岩代さんの姿に私もスタッフも感動しました」と現場での岩代氏の姿を絶賛。その言葉に続けて「過酷な現場もありますが、撮影現場の雰囲気というのは監督によって本当に違うんです。その空気感を1日でも2日でも味わっておくのは、音楽を熟成させる上でとても大事な事です。撮影現場ですから基本的に作曲家には仕事がなく、どうしても物見遊山的な感じになってしまうため、遠慮する作曲家の方もたくさんいらっしゃるのですが、それはまあ人それぞれですね」と岩代氏は照れくさそうに答えた。
岩代太郎
今回、初めて自分の作品の音楽をコンサートで聞くジョン・ウー監督は、「マスクをつけて行くことにしますね(笑)」と冗談を交えながらも「絵を見なくても音楽だけで感動する場合もよくあります。現場の生演奏を聴くと、岩代さんの顔が一生忘れられなくなりそうですね(笑)」とコメント。
本公演で演奏される予定の岩代氏が音楽を手がけた最新作『The Crossing』は日本公開が未定となっている。岩代氏は「日本での公開はまだ決まっていないので、早く決まって欲しいという願いも込めて今回のコンサートのメインプログラムに据えています。常識的に考えれば映画の公開が決まってからこういったコンサートを開くのが普通とは思いますが…、ちょっと堅苦しい言い方になりますが、昨年の安保法案や集団的自衛権など、人々がそれぞれ平和のために何ができるだろうと考えているようなこの時代だからこそ、是非観てもらいたいと思う作品でもあります」と胸中を露わに。
岩代太郎 ジョン・ウー
映画について、「戦争や内乱に翻弄される人々が描かれています。風になびくススキのシーンが印象的で、映画のテーマを表すイメージショットのように感じました。運命に翻弄されながらも必死に生きる人間のように、風に煽られるススキの姿をピアノの曲で表現してください、というのが私に最初に課されたオーダーでした」と話すとジョン・ウー監督は「ススキに関する描写はもともと台本にありました。とても詩的で、映画の中の女性たちを表しているように感じられました。愛やロマンスは乱世の中ではとても弱く脆くすぐに砕けてしまうように見えます。しかしススキは風に吹かれて倒れてもまた立ち上がる。決して消えることなく永遠に残る愛の象徴として、ススキは詩的で重要な描写だと思っています」と応じた。
また、ジョン・ウー監督の新作『マンハント(原題) / Manhunt』(故・高倉健の主演映画『君よ憤怒の河を渉れ』の原作小説を新たに映画化)にも参加することを明らかにした岩代氏。「まず日本で撮影するという点があります。ずっと日本で日本語を使う映画を撮りたいと思っていました。物語としては一人の日本人と一人の中国人が出会い、戦い、理解し合うという過程を描いています。映画としても面白いものになりますが、両国のチームが一緒に仕事をすることによってお互いの経験とノウハウを勉強し、本作に力を注いで欲しいと思っています」とジョン・ウー監督は明かし、「高倉健さんにはずっと憧れていて、チャンスがあれば是非一緒にお仕事をしたいと思っていました。ハリウッドにいた頃には、たびたび電話をくれました。他界されてとても悲しく、高倉健さんのために何か作品をリメイクしたいと考えました」と高倉健さんとの思い出を振り返りながら、加えて「今回の『Manhunt』以外にもいくつかリメイクの候補作がありまして、最初は『駅 STATION』をリメイクしようと思っていたんです。その企画を進めていると、ちょうど香港の会社から『君よ憤怒の河を渉れ』のリメイクのプランがあると聞きまして、それを私によこせ、と(笑)」と笑顔を見せた。
岩代太郎 ジョン・ウー
最後に、岩代氏が「まだ日本公開が決まっていない『The Crossing』。このコンサートが日本公開へのはずみになってくれたらいいな、ということです。順序は逆になってしまいますがまずは音楽をお楽しみいただいて、映画を観たいというお気持ちを全国に拡散していただきたいと思っています。私の作曲の仕事を始めた時のことを振り返って考えてみたんです。それはちょうど湾岸戦争が始まった時でした。そこからイラク戦争につながり、更に今のISにつながり、25年間ずっと武力による抑圧や支配が続いています。武力という抑止力を持つことで本当に平和を手にできているのか、ということを自問することが、私の音楽ではとても大きなファクターだったということに気付いたのです。今改めて何をもって世界の平和をなすべきか、ということがこのコンサートの裏テーマになっています。あとは『Manhunt』の重大発表が監督からあるかも、という点も踏まえて是非お越しいただければと思います」と意気込みを語り対談は終了。
ジョン・ウー 岩代太郎
『あっっという間の生誕50周年記念コンサート 岩代太郎 と アルスラーン戦記 × アジア映画音楽』は現在、絶賛発売中。アジア映画界の巨匠、ジョン・ウー監督も惚れた岩代太郎の音楽を是非、体感していただきたい。
日時:3月27日(日) 13:30開場/14:00 開演
会場:サントリーホール
出演者:作曲・指揮:岩代太郎
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ゲスト:三舩優子(ピアノ)、矢井田瞳(ヴォーカル)、ジョン・ウー監督(出演予定)
料金:S席:¥7,500 A席:¥6,500 B席:¥5,500 P席:¥4,500※未就学児入場不可
演目:第1部:「アルスラーン戦記」の世界
交響詩「Arslan/アルスラーン」 (「アルスラーン戦記」より)
第2部:アジア映画音楽の世界〜ジョン・ウーと共に〜
「レッドクリフ」「殺人の追憶」「蝉しぐれ」「太平輪」 ほか
ピアノ:三舩優子、ヴォーカル:矢井田瞳
公式HP:http://www.promax.co.jp/info/2016/032701/