新日本フィルがロゴ、定期演奏会を刷新、2016/17シーズンラインナップを発表

レポート
クラシック
2016.2.13
左より)横山利夫(新日本フィルハーモニー交響楽団専務理事)、崔文洙(同団ソロ・コンサートマスター)、宮内義彦(同団理事長)、上岡敏之(同団次期音楽監督)、山本亨(墨田区長)、久保孝之(すみだトリフォニーホール理事長)、加治原郁(同ホール事務局次長)

左より)横山利夫(新日本フィルハーモニー交響楽団専務理事)、崔文洙(同団ソロ・コンサートマスター)、宮内義彦(同団理事長)、上岡敏之(同団次期音楽監督)、山本亨(墨田区長)、久保孝之(すみだトリフォニーホール理事長)、加治原郁(同ホール事務局次長)

 新日本フィルハーモニー交響楽団(新日本フィル)がロゴと定期演奏会をリニューアルする。2月12日、すみだトリフォニーホールで行われた会見で明らかにした。あわせて、2016/17シーズンラインナップも発表した。
(2016.2.12 すみだトリフォニーホール Photo:M.Terashi/TokyoMDE)


 新日本フィルは、2016年9月から上岡敏之を次期音楽監督として迎える。今回のリニューアルはそれにともなうもので、創立時から培ってきた同団のアイデンティティを尊重しつつも、新たな試みに果敢にチャレンジしていく表明としている。 

こちらも新機軸を打ち出してか、会見は、同団初の試みとして、すみだトリフォニーホール内の通常は客席部分、オペラ上演の際にはオーケストラピットとなる部分を客席がある状態でステージと同じ高さにして行われた

こちらも新機軸を打ち出してか、会見は、同団初の試みとして、すみだトリフォニーホール内の通常は客席部分、オペラ上演の際にはオーケストラピットとなる部分を客席がある状態でステージと同じ高さにして行われた

 冒頭挨拶に立った宮内義彦・新日本フィルハーモニー交響楽団理事長は「楽団が動く、画期的な年となる。上岡次期音楽監督には就任に際し、創設来44年を迎えたこの楽団に新たな個性を吹き込んでいただきたい」と期待を述べた。

中央)宮内義彦・新日本フィルハーモニー交響楽団理事長

中央)宮内義彦・新日本フィルハーモニー交響楽団理事長

 次期音楽監督の上岡敏之は就任について「ドイツの歌劇場で指揮をしてきたが、いつかは母国日本で活動したいと考えていた。このように日本で記者会見を行い、地域に密着したオーケストラで仕事ができる。音楽監督として幸せなスタートを切れることをたいへん嬉しく思う。期待に応えていきたい」と喜びともに決意を口にし、「ドイツでも身近に感じている地域密着型のオーケストラを理想に掲げ、なんでもこなせるオーケストラではなく、個性があり、聴衆を感動させられる楽団を作っていきたい」との意気込みを語った。

上岡敏之・新日本フィルハーモニー交響楽団次期音楽監督

上岡敏之・新日本フィルハーモニー交響楽団次期音楽監督

 ソロ・コンサートマスターの崔文洙は「やっとこの日が来たという想い。これまでの3年間は音楽監督が不在で、オーケストラのなかに責任の所在がなく、とても不健康な、不安定な状況だった。これから大変な道のりになると思うが、このシーズンを新たな出発点として、一緒にいい音楽を作っていきたい。上岡さんの音楽監督就任は9月からだが、来月にはマーラー、7月にはフランス作品での演奏会があるので、いまからワクワクしている」と期待をのぞかせた。

 新たなロゴは、グラフィックデザイナー/アートディレクターの大黒大悟がデザイン。同団では「できるだけシンプルに、ただ、そこに深い意味を持つものを」と要望、指揮棒をイメージした線をあしらい、「指揮に導かれ奏でられる音楽」に関わる多くの意味を込めた。

 定期演奏会はこれまでの<トリフォニー・シリーズ><サントリーホール・シリーズ>に加え、これまで『新・クラシックへの扉』として親しまれてきたシリーズを新たに<アフタヌーン コンサート・シリーズ>と名称変更し、3つのシリーズとする。それぞれ個性豊かな宝石をイメージし、トパーズ、ジェイド、ルビーの名称をつけた。

 全シリーズのコンセプトについて上岡は「石の名前をつけたのは、基盤を盤石なものとしたいとの想いもあり。シリーズ全体では、その内容の垣根を取り払った。どれが名曲でどれが初心者向け、などという区別はせず、過激なプログラムと名曲を織り交ぜて聴けるような方向性を探ったが、オーケストラにとっては、どれをとってもたやすいものとは言えない。内容的には軽いプログラムはなく、オーケストラをトレーニングするという意味で、未共演の指揮者やソリストも選んだ」と説明、次次シーズン以降には新作などのプログラムも加えていきたい意向だ。

 上岡は、実質的な音楽監督就任披露演奏会となるサントリーホール・シリーズ#561(9/9)でR.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」「英雄の生涯」の交響詩2作品を披露、続いて、トリフォニー・シリーズ#562(9/16、9/17)でブラームス/シェーンベルク編のピアノ四重奏曲第1番(管弦楽版)を、アフタヌーン コンサート・シリーズ#1(10/14、10/15)でベートーヴェン交響曲第5番「運命」ほかを披露、選曲については「2009年、初めて指揮させていただいた作品もR.シュトラウスだった。いつかはピットに入ってオペラを披露したい気持ちもあり、最初の演奏会にシュトラウスを選んだ。近しい人には何でも言えるように、トリフォニーのお客さんには、自分の言いたい気持ちをぶつけた。ちょっと難しいと思われるかもしれないが、シェーンベルクなどと、それにコントラストをつける意味でモーツァルトを演奏する」とその意図を示した。

 聴衆からリクエストを募集、その中から選ばれた曲を上岡が指揮する『リクエスト・コンサート』(<アフタヌーン コンサート・シリーズ>#8(2017.7/21、7/22)も行う。同団では昨年、「あなたが選ぶ『年末に聴きたい交響曲』は?」と題し、リクエストの多かった作品を演奏し、注目を集めたが、こちらも期待がかかる。

 定期演奏会はこれまで、平日の開演時間を19:15としていたが、すべて19:00開演に統一、<アフタヌーン コンサート・シリーズ>は金・土曜日ともに14:00開演とした。これについて同団では「試みとして開演時間を変えてみたが、あまり定着しなかった。平日マチネ公演が年配者に人気で、それにともない、土曜日の公演に対するニーズも変わってきている。他の楽団も同じような動きをみせている。また若年層にもより親しみやすい時間帯を考えた。今後はニーズを見据えて進めたい」とニーズの変化を強調した。

 なお、サントリーホール・シリーズの2017年3月〜7月公演は、2017年2月から8月にかけて行われるサントリーホールの改修に伴い、会場をBunkamuraオーチャードホール、東京オペラシティコンサートホールに移し行う。横浜みなとみらいホール特別演奏会も行う。

 前シーズンまでと同様、教育事業としてアウトリーチその他も行うが、新たな試みとして『NJP オーケストラ・アカデミー』を設ける。職業人として将来オーケストラの団員を目指す、音楽大学の学生や卒業生をオーケストラと結びつける、その架け橋となりたい考えだ。

 山本亨・墨田区長は、新日本フィルとフランチャイズ契約を交わしている区として、『地域とのつながりを大切にする』ことを掲げる上岡の音楽監督就任を喜び、「文化溢れる街にしていくため、更なる発展を祈念する」と期待を寄せた。

 このほか、公募していたインテンダント(楽団運営や資金調達を担う経営幹部)については「すでに選出済みだが、現在、民間企業の役員を務めている方のため、時期をみて公表」、上岡の公演をオクタヴィア・レコードが録音、CD化も前向きに検討してされていることも明らかにされた。

  各シリーズの連続券は5月22日に発売される。


◆新日本フィル2016/2017シーズンラインナップ
http://www.njp.or.jp/2016-2017season/index.html
◆新日本フィルハーモニー交響楽団 2016/2017 コンセプト/シーズンプログラム(その1/PDFダウンロード)
http://www.njp.or.jp/pdf/NJP_conceptbook_p1-23.pdf
◆新日本フィルハーモニー交響楽団 2016/2017 コンセプト/シーズンプログラム(その2/PDFダウンロード)
http://www.njp.or.jp/pdf/NJP_conceptbook_p24-48.pdf
◆新日本フィル
http://www.njp.or.jp/
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