どこまでも深く、深く。ACIDMANがNHKホールで繰り広げた音世界

2016.2.26
レポート
音楽

ACIDMAN

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ACIDMAN LIVE TOUR “Second line & Acoustic collection ll 2016.2.21 NHKホール

「間違えてTシャツ一枚、首からタオルの方はいませんでしょうか? いたらそっと外してください(笑)」
大木伸夫(Vo/G)のMCにドッと沸く場内。普段のACIDMANのライヴでは大半のファンがそれに近い格好なのだが、この日はアコースティック形式で行われている『ACIDMAN LIVE TOUR “Second line & Acoustic collection ll』の東京公演である。さすがにそんな出で立ちのファンは皆無だ(少なくとも見える範囲には)。

ACIDMAN・大木伸夫

11月にリリースされた同名のアルバムを引っさげてのこのツアーも折り返しに近づいた2月21日、東京・NHKホール。そこに待っていたのは、ステージの中ほどにギュッとまとまって配置されたアンプやセットと照明以外には一切のギミックも派手な演出もない空間。ただただ3人の奏でるサウンドと歌声、ときには息遣いや弦の擦れる音までをも耳にできる、静謐にしてひたすら音と向き合って没入する、包み込まれるライヴであった。

ACIDMAN・佐藤雅俊

前述のアルバムが新旧さまざまな楽曲を打ち込みやアコースティックといった別アレンジでセルフカバーをした作品だけに、この日のセットリストも実に多彩であった。大木が「緊張するんだよ、これ」と言いながら、シーケンスを用いる代わりにルーパーエフェクターを駆使したり、佐藤雅俊(Ba)がエレキベース、アコべ、アップライトと楽曲によって巧みに音色を使い分けたり、浦山一悟(Dr)が細かな刻みや変則的なフレーズ、ときにはコンガのようなラテンパーカッションを用いて、人力でエレクトロ風味のドラムテクニックを魅せたりという風に、表現技法を駆使することで3人編成のアコースティックライヴという概念を覆すほどのパフォーマンスを展開していたことは特筆すべき点だが、テイスト面での引き出しの多さにも舌を巻く。アンビエント的アプローチにはじまり、ボサノヴァ、ジャズ、カントリー……それぞれの楽曲が内に秘めた表情を、最適解で再構築していくのである。

ACIDMAN・浦山一悟

なんといっても凄まじかったのは、壮大さと身近さ、息をするのも躊躇われるほどの静寂とインダストリアルで厚みのあるアンサンブル……といった相反する要素が次々と並列に、等価値に鳴らされていき、深く深く沈み込むような感覚を何度も味わえた点。この日もそうだったのだが、大木はよく「宇宙」の話を持ち出す。反響とループによる陶酔感とブレスの多めな柔らかい歌声で紡がれていく楽曲の数々は、未知にあふれ、果ても終わりもない宇宙という概念とどこか通じる部分がある気さえした。

ACIDMAN

ツアーはまだ続くので詳細なセットリストの記載は控えるが、ピアニストの板橋文夫氏がゲスト参加した「スロウレイン」などでみせた本域のジャズピアノとの融合や、レコーディングを終えて駆けつけたというホリエアツシ(ストレイテナー)とのハーモニーが秀逸だった「リピート」、「アイソトープ」や「赤橙」といった旧作からチョイスされた楽曲など、バリエーション豊かな構成で飽くことなく過ぎていった2時間強。存分な聴きごたえと満足感、興奮を味わうことができた。3人は椅子に座ったまま、会場を埋めたオーディエンスも誰一人立ち上がることも曲間とMC(特に浦山は色々と絶好調であった)以外は声を上げることもないライヴなのに、である。

ACIDMAN

しかもアンコールでは新曲まで披露されるという嬉しい展開。大木が「やっとこういうシンプルな歌詞を付けることができた」と語った新曲は「愛を両手に」と題され、喪失をテーマとしながら大きな愛に満ちたあたたかなバラードだ。テクニカルな面や表現力の奥行きが増した点もさることながら、楽曲そのものにもそれらがフィードバックされている現在のACIDMAN。次回作にも期待が膨らむところだが、まずはツアーの後半戦、そして4月には再びNHKホールで開催される追加公演が待っている。できるだけ多くのファンに目撃してほしいライヴであり、彼らの作り出す音世界に存分に浸りきれること請け合いだが、くれぐれも”Tシャツにタオル”での参加は控えておきたい。


レポート・文=風間大洋

ACIDMAN

ライヴ情報
ACIDMAN LIVE Extra Show “Second line & Acoustic & Rock”​
(ACIDMAN LIVE TOUR “Second line & Acoustic collection ll追加公演​)


2016/04/24(sun) 東京 : NHKホール
open / start : 16:45 / 17:30
ticket : 全席指定 ¥4,800-(tax in)
*入場制限6歳以上は有料(お席が必要な場合は6歳未満も有料となります)
 
一般発売
2016/03.05 10:00 am《各プレイガイド》
企画・制作 / FREE STAR ・ SOGO TOKYO
後援 / Virgin Records ・ UNIVERSAL MUSIC JAPAN
 
問合せ / SOGO TOKYO(03-3405-9999)