人生に深く関わる「哲学」を作品に潜ませる 注目の劇団・楽劇座へインタビュー

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楽劇座

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ポップでキュート、でも蓋を開けてみたらブラックユーモアの宝庫劇?! 「楽劇座」は女性座員だけで構成され、男役も女性により演じられる珍しいスタイルの劇団だ。可愛らしいメルヘンなものから、シュールなもの、新劇調の文学作品まで、毎月書き下ろし新作上演を行っている。そんな楽劇座の劇作・作曲・演出家の関口純に次回公演についてのことから、楽劇座の今までとこれからについてまで、たっぷり伺った。

 

--楽劇座さん結成までの経緯を教えてください。

もともと曾祖父や両親が演劇の仕事に携わっておりましたので、子供の頃から演劇関係者が出入りする環境で育ちました。先日も、ちょうど私の親世代の樹木希林さんと寺田農さんがテレビでお話されていましたが、新劇がテレビよりステイタスがあった時代です。今でも有名な俳優さんが亡くなるニュースがテレビから流れると母が「あんた可愛がってもらったわねえ。よく膝の上に乗っけてもらって…」などと言います。私は覚えて無いことの方が多いのですが。サラリーマンの子が何となくサラリーマンくらいにはなれそうな気がするのと同じ様に、根拠も無いくせに自分には演劇なんて簡単なことだと思っていました。このおじさんやおばさん達よりは俺の方が才能有るだろと(笑) でも、いわゆる小劇場なんかに比べればレベルの高い人が多いと思っていました。プロの仕事だなあと。ですがこれも根拠はありません。まあ、いずれにしろ「そんなことやってられない!」と音楽に夢中になります。今や歴史上の人物になりつつありますが、晩年のカラヤンやバーンスタイン、クライバーの実演に接し、音楽への愛は揺るぎないものとなりました。周りの友人はポップスやヘビメタなんかに夢中になっている中で、クラシック(笑) 現代音楽の世界的作曲家、武満徹さんに握手してもらって大喜びしている様な子でした。そんなわけで十代の頃より音大教授のもとでクラシックの作曲を勉強していました。ただ、演劇と縁がなかった訳ではなく、親の友達、まあ、知り合いのおじさんやおばさんが出演する舞台はよく観ていました。新劇だと主に文学座、民藝等、マスコミ系だと、両親の同級生だった北大路欣也さんの舞台なんかを観に行って楽屋にもお邪魔したり…。ただ、やはり興味は持たなかった。


では何故、自分で演劇をやる様になったか?ですが、青年作曲家としてスタートし始めた20代中頃、劇作・演出家として前進座や、いわゆる大劇場系の商業演劇でご活躍された津上忠先生とお話しする機会がありまして、最初は音楽家として音楽劇の作曲の仕事がしたいと思っていましたものですから、脚本書ける人が必要だなと。で、「誰か若くて良い劇作家はいませんか?」と。そうしたら「音楽劇の詩は音楽分かってる人じゃないとダメ。演劇畑の人じゃダメなんだよ」と仰り、ご自身が劇作家を志す以前に作曲家になりたいと思った事があり、モーツアルトのスコアなんかを勉強していたお話をして下さいました。で、劇作を始めた際に、人物をフルート、クラリネット等、楽器のパートに当てはめて戯曲を書かれたと。「だから、あんた、オーケストラのスコア読めるんだから、脚本書ける筈だよ」と。「じゃあ、勉強させて下さい!」と。そうしたらある時「今度、演出するから来なさい」と言って下さって。こちらとしてはもちろん「ありがとうございます!」なんですが、その頃、ちょうど仕事が忙しい時で、スケジュール的に無理かなあと思ったのでそれをお伝えしたら「出来そうだったらやればいいし、無理ならそれでもいいし。まあ、とりあえず来てみて。」と仰って頂き、呼ばれた先が前進座さん。まだ前進座劇場があった頃で劇場内の稽古場に行きました。着いた途端に舞台監督さんとのセットの打ち合わせ。で、いろんな方にご挨拶され、気がつけば演出助手(笑) で、音楽も担当させてもらいました。いろんな意味で大変でしたが、今はとても感謝しています。で、このまま演劇の世界に行くか?というと、また離れることになります。


この直後、日本テレビの役員の方から、ご自身が系列会社の社長に就任するにあたり、お声をかけて頂き、日本テレビ音楽(株)さんで顧問のサウンドプロデューサーに就任しました。作曲・編曲・プロデュースはもちろん、オーディションの企画や審査員なんかもやっていました。ほぼ時を同じくして、その頃人気のあったゴールデンタイムのドラマに出ているアイドル女優さんのプロデュースをする事になりまして、演技指導なんかもやることに・・・。ちなみに、某テレビガイドのインタビュー記事、そのタレントさんの顔写真で話しているのは実は僕なんてこともありました(笑) そんな縁で芸能プロダクションのアトリエ公演なんかを中心に毎年演出する事になり、気がつけば演劇の人に。ただ、ある時、自分にとってはエンタテインメントじゃなくてアートの方が自然だなと、漠然とだけど強烈に思い出しまして…。そんな時にピナ・バウシュの世界(ヴッパタール舞踊団来日公演)に触れて、自分の中の何かが大きく動き出しました。同時にコムデギャルソンの川久保玲さんのクリエイションに触れたことで、それまで自分の中で観念的だった部分が具体的な「モノづくり」に昇華された様な気がします。面白いことに影響を受けたのは他分野、かつ、私の親世代のクリエーターの方々だったりするのですが。まあ、兎も角そんな訳で、よりによって、それまで頑に拒否してきた筈の劇団を立ち上げる事になりました。2010年の事です。で、一般には情報公開せず、芸能プロダクションに所属している人間の中からオーディションをしました。ですから、最初から宿命的にプロの劇団としてスタートした訳です。良く考えてみると、僕にはアマチュア演劇の経験が一切ありません(笑) まあ、そもそも今やっている事が「いわゆる演劇」だと思われると「ちょっと違うな」とも思いますが…。「アンチテーゼとしての演劇」、これならぐっと近くなった様な気がします。

 

--楽劇座さんの作品の特徴や雰囲気、作風を教えてください。

作品ごとに雰囲気も形態(ストレートやミュージカル等)も、かなり異なるスタイルで創られていますので、なかなか説明するのが大変なのですが。楽劇座独自の上演形態と全ての作品を貫く精神的な支柱みたいなものはお話し出来ると思います。

まず上演形態としては、2012年に新宿に楽劇座専用劇場THEATER Rrose Sélavyをオープンしてからは、新作を中心に毎月公演しています。今年の4月(2016年)で50本目の上演となります。オープン当初は、僕と20代の女性作家の2人で脚本を担当していましたが、ここ1年半くらいは全て私が書いています。オリジナル曲の作・編曲と演出も劇団立ち上げ以来、全て私が担当しています。同一メンバーにおける作・演出、出演の連続上演としてはギネス級かと思われます。上演期間は1週間程度ですが、毎月、かつ新作中心の公演ですから、脚本は1〜2日程度で書き上げ、作曲は稽古の休憩中や移動中に五線紙に書く感じで、一曲3分〜15分で作曲します。編曲も数曲同時進行で1〜3日くらいで仕上げます。役者は2〜3日で膨大な台詞を覚え、3〜10日程度の稽古で上演します。毎月公演するとはこういうことです。第一回公演に出演した人間で今も在籍しているのは五條なつきと赤羽みどりの2人だけです。厳しい世界だと思います。中途半端な人には出来ません。一年ほど前、齋藤蓉子入座しました。なかなか優秀です。楽劇座立ち上げ以来、初めて開催したオーディションの合格者です。楽劇座は、私が書いた脚本、別の言い方をすれば問題提起に対し、各俳優がまず自分の方法で答える様な形で演じます。既にこの時点で作品が私も想像していなかった様な拡がりを見せるのです。だから演じる俳優によって作品が、そう、例えるなら異なる響きを持ちだすのです。ですから俳優の感性は作品そのものにとっても大切な一要素となるのです。そしてそれがまた私にフィードバックされる。もちろん、作品の本質がぶれてはいないか?違う方向に行ってはいないか?をチェックします。これが演出における解釈の部分です。もちろん技術的な問題も正してアンサンブルを整えて行きます。それもまた演出の仕事だと思っています。もしかすると私の場合、一般的な演劇の演出よりもオーケストラの指揮に近いかもしれません。現在、昨年末から3人ほど研究生が所属していますが、うまく育ってくれるといいなあと思っています。ただ、教えれば必ず上手くなるという単純な世界でもありませんからねえ。感性の問題もありますし・・・。現在も2016年度の新人を募集していますが、まあ、こういうのは出会いですからねえ。縁と言うか…。

そして肝心の作品そのものの特徴ですが、よく「まるで音楽を聴いている様だ」と言われるのですが、台詞の響かせ方やフレーズの作り方にはかなりシビアに気を使っています。これは私ならではの演出かな?と。まあ、自負しております(笑) よく、実際にはそれなりに上演時間の長い作品でも「あっという間だと思ったら、もうこんな時間!」と言われることが多いのですが、その辺りにも関係しているのではないかと思います。時間の芸術という性格上、演劇と音楽にはとても共通点が多いのです。もっと言ってしまえば、私にとって演劇と音楽は同じものと言っても過言では無いくらいです。まあ、いわばこれらは表面的な部分の特徴です、全ての作品に共通している内面的な特徴、いわば楽劇座を貫く作品の柱という意味では、先程もお話しましたが「アンチテーゼとしての演劇」ってのが今のところ一番ピンと来る感じです(楽劇座を語る場合、どうしてもイコール自分を語ることになってしまいます。それほど楽劇座の作品は私自身なのです)。既成の演劇に敬意は持っているつもりですが、自分は常に前衛でありたいと思っています。それは表面的な意味ではありません。白塗りしたくらいで私は前衛とは認めません(笑) 其の手のアンダーグラウンドには興味ありません。それは兎も角、既成の解りきったことを確認する為に観る様な演劇は、私には退屈以外のなにものでもありません。だから、まだ観たことが無いものを求めるのです。既成の演劇へのアンチテーゼとして演劇を創るという事は、既成の演劇には無いものを創るということですから。だからといって、既成の演劇に対してただ無闇矢鱈に否定するつもりはありません。むしろ人並み以上に敬意を持っているつもりです。アンチテーゼの為にはテーゼが必要ですからね。そうじゃないと僕の仕事も成り立たない。そもそも演劇は世界を映す鏡という側面がある様に思います。ということは、既成の演劇のアンチテーゼとしての演劇は、それまでの世界の変革を意味する訳です。要するに、まだ見たことが無い世界を見たいと。だから私にとっての「演劇」は、ただの「演劇」だけでは済まされない。自分自身が生きることと密接に結びついているのです。今後は、更にパラダイムの転換まで踏み込んでみたい。もうこうなると「他」ではなく、非常に高いレベルでの自分自身への挑戦ですね。
 

 

--次回公演『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』について、作品のあらすじを教えてください。

◆あらすじ

2.5次元メルヘン・ファンタジー「ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた」

そこは世界の中心にして世界の果て・・・。
緩(ゆる)やかな小さな村のこれまた小さなお家に住む、おかしな髪型をした2人の女の子。「前髪切り過ぎた訳じゃないの、サイドが伸びただけ」と言い張る2人は今日もお気に入りのソファーの上で地図を片手に世界を旅する。2人のもとには今日も世界を揺るがす?重大な問題が持ち込まれる。でもちょっと待って!朝食のタルティーヌをまだ食べてないから。

はたして2人は世界を救うことができるのか?!

 

--次回公演『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』の見どころを教えてください。

一見、ファッション誌のグラビアみたいなビジュアル。まあ、実はある意味、遠からずで。内容的にはシニカルでコミカル。何らかの社会に属すことで生じる生きづらさ、人間として生きる上での根源的なストレスを、抜本的に見方、捉え方を変える事で自由な自分、まだ見ぬ本来自然の自分を取り戻そう、もしくはあらためて出逢うという試み。真面目腐った顔をしている人(ちょっと謙虚な振りをすれば、自戒の念も込めて)を笑ってしまおうといったところでしょうか。そういった意味では、ある種(見た目だけではなく、精神的な部分も含め、広い意味での)の「生活の提案」、即ちファッション誌のグラビア的というのもあながち間違いでは無いかなぁと。実際、ビジュアルはかなり可愛いです。今回はディテールにもこだわろうと思ってるので、ファッション誌のグラビアに見る様な意味でも理想の生活かと。かつ、もちろん精神的な意味でもね。

 

--楽劇座さんの今後の展望・野望があれば教えてください。

今後の展望としては、自分のやって来たこと、持っている能力を統合して、自分にしか出来ない作品を更に発展させて行きたい。今、楽劇座でやっていることも既成の演劇のカテゴリーには分類出来ないとよく言われますし、自分でも「そりゃそうだろう」と思いますが、私達が創って来た世界を更に外の世界にも拡げて行きたいなぁと。コラボレーションも一つの可能性です。座外でも、例えば既成の演劇に閉塞感を感じていたり、何か新しいものを探しているといった方との出会いがあれば、更に今とはまた別の何か新しいものが生まれる可能性もあるかと思います。まあ、いろんなやり方、行き方があるとは思いますが…その中の一つ、且つ予算、製作会社の理解という意味でそれなりに大きな規模の話にはなってしまいますが、パッと思い付くのは、日本から世界に輸出出来る様なオリジナルの音楽劇。まあ、ちょっと語弊がある様に感じなくもありませんが、分かり易さという意味で、ミュージカルと言った方が良いかも知れません。いずれ自分の脚本・作曲・オーケストレーション・指揮でやらなければいけないとは思っています。そもそもそこから始まっていますし。

 

--楽劇座さんに関心を持たれた方に、メッセージをお願いいたします!

散々、小難しい話をしておいてなんですが、「アート鑑賞」「演劇鑑賞」などとあまり難しく考えず、洋服を見るような感覚で、洋服を纏うのと同じように気分を纏おうといった感じで劇場に来てもらえたらと思います。

チラシなどで、ビジュアルが可愛いからなどの理由で楽劇座に興味を持って下さるのもありですし、日々の生活の中で何か満たされない部分と言うか、虚無感の様なものを感じている方がフラっと覗くのにも最適な作品かと。思索に耽ってもらうも良し、ただ笑って帰ってもらうも良しです。私たちの仕事は、自らの世界観を時代の空気の中で表現するという意味で、コレクションを発表するファッションデザイナーのそれに似ているかも知れません。お客様には「個性の強い作品(アイテム)ではありますが、お客様の好きな様にご自身の世界(コーディネート)に取り込んで頂きたい。」と申し上げたい。それはお客様の魅力を引き出すと共に、きっと作品の魅力をも引き出して下さる事になるでしょう!作品の世界観、テーマに関心を持って頂くも良し、気分を纏って頂くも良しです。お連れ様とご一緒はもちろん、お一人でもフラっと立ち寄れる空間(実際、男女問わずお一人様も多いです)ですので、どうぞお気軽に劇場まで足をお運び下さい!

 

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公演情報
楽劇座『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』

日時:2016年4月22日(金)~4月27日(水)
 
4月22日(金)20:00
4月23日(土)14:00
4月24日(日)14:00
4月25日(月)休演日
4月26日(火)20:00
4月27日(水)20:00

チケット代金:前売 3,000円/ペアチケット 5,800円(同日2枚組・劇団扱いのみ)/楽友会特別割引 2,700円/当日 3,500円

会場:THEATER Rrose Sélavy(シアターローズセラヴィ)/新宿御苑前徒歩4分

出演者:五條なつき/齋藤蓉子(他のキャストは後日発表)

スタッフ:脚本・演出・音楽:関口純

企画・制作:楽劇座

※5月・6月も同シリーズの新作を上演予定。詳細は楽劇座HP(http://www.gakugekiza.com)にて随時公開

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