新人シマザキ、ついに「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」に潜入
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渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催中の美術展「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」。
世界有数の浮世絵コレクションを誇るボストン美術館より、1万4千枚を超える作品の中から選りすぐりの歌川国芳、歌川国貞の作品170件・約350枚が出展されており、早くも話題のスポットとなっている。
SPICEでは前回、特集「展覧会の魅力に迫る」としてアートに疎い新人シマザキを派遣し、本展の監修を務める東京国立博物館 研究員の松嶋雅人さんにインタビューを決行。本展及び作品の魅力を伝えることができるようになるために、お話を伺ってきた。そしていよいよ今回、満を持してプレス内覧会に潜入!果たしてシマザキの反応やいかに―――!?
■「今まで浮世絵やアートに触れたことのない人にこそ来てほしい」
そう語るは、冒頭でも紹介した本展の監修者・松嶋雅人さん。まさに筆者にぴったりの展覧会となっているようですね。お任せください、ここからは”浮世絵やアートに触れたことのない人”代表として偏見・ヤラセなし・ノンフィクションのレポートをお届け致します!
【初心者に優しいアクセス解説】Bunkamuraザ・ミュージアムへ行ってみた を参考に入場すると、お出迎えはたくさんの猫たち。崩れた壁の向こう現れた江戸の世界から飛び出してきたようです。そんな空間演出の説明には「猫、猫、猫猫猫、、猫、猫、猫(ぴょん、ぴょん、ぴょんぴょんぴょん、、ぴょん、ぴょん、ぴょーん)」とあります。おお、なんと斬新な!これだけで筆者の掴みはOK。「美術館ってシーンとしてる?なんだか敷居が高くない?」なんて心配はどこかへ去ってゆきました。
肩の力も抜けたところでいざ足を進めてみると、まず目に入るのはカラフルな壁とポップなキャッチコピー!テーマごとに分けられた展示は、「なんかスゴいのは分かるけどみんなどこを見てるの」というTHE・”アートに触れたことのない人”の道を照らす光となってくれることでしょう。「この作品はこんなところがスゴいよ!こんな風に見るとたのしいよ!」と感覚的に導かれながら、気が付けば熱中してしまいます。
目の凝らしすぎによるドライアイ必至のため目薬の持参を強くおすすめします
■「自由な発想で、自分なりの視点を見つける楽しさ」
突然ですが、筆者は何故アートに疎いのか?それは、正解が分からないからでした。美術館や展覧会に訪れるということ―それは、「アートとは」という問いが解ける者だけが、その正解を知るものだけが楽しめる世界だと思っていたのです。しかしながら今、それは間違いであったと心から言うことが出来ます。
テーマやキャッチコピーに導かれながら作品に触れていくと、段々と「自分なりの視点」が生まれます。
なぜなら、数多ある作品をただ並べられただけでは立ち尽くしてしまうところを、ある程度の括りが存在することによって観比べていくことができ、作品ごとの特性や魅力がより濃く味わえるから。「国芳はこうだったのに、同じテーマでも国貞はこう描くのか」「この表現はあのテーマでも使ってたな、得意なのかな、確かに上手いな」。こんな具合にどんどん深みにハマってゆき、ついには自分なりの視点を見つけていくことの楽しさに気が付きました。
ちなみに筆者はこんな視点で楽しんでいました。
M-1グランプリ(もふ-わんぐらんぷり)
事前に浮世絵とはこんな風に非常に繊細な作業を経て作られていることを知り、いざ実物を見るとそれはもう信じられないくらい、超・繊細。本当にこれ手作業で彫ったの?と目を疑う精密さなのです。
歌川国芳「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」嘉永4,5(1851,52)年頃 ボストン美術館
歌川国芳「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」(部分) 1枚1枚の鱗だけでなく、鱗の表面まで描かれている
そして何よりその精密さを感じ取ることが出来たポイント。それが、「毛」でした。
そう、M-1グランプリとは、その「もふもふ感」に注目していたのです。
まずはご覧ください。
歌川国芳「義勇八犬伝 犬山道節」嘉永3~5年(1850~52) ボストン美術館
歌川国貞「見立三十六歌撰之内在原業平朝臣 清玄」八代目市川團十郎 嘉永5年(1852)10月 ボストン美術館
同じ「毛」でも国芳と国貞では雰囲気ももふもふ感も違って見えませんか?
こんな風に、ただ淡々と作品が並べられているのではなく、作者やテーマによって分けられた入りやすい入口があることで、その先にどんどん進んでいくことが出来るのが本展の魅力。「どこに注目したらいいか分からない…」という人もきっと自由な発想で視点を見つけて楽しめるハズ。
■「ダサかわ」でも「ゆるカワ」でもない…注目度高!なグッズたち
展示を楽しんだあとは更なるお楽しみも。
時を越え、海を越え愛され続けてきた浮世絵たちをモチーフに
「コップのフチ子」でおなじみ奇譚クラブのガチャガチャからBEAMSのスケートボードまで、ラインナップ多数!
浮世絵とグッズの何ともいえぬ違和感が生み出す魅力はクセになりそう!
アート編集長も迷わずガチャを回していました。
※数量限定のため、売り切れの場合はご了承ください
実物はこんな感じ!カワイイ!
左・歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」より刀に付いている下駄“骸骨下駄”。中・「見立東海道五拾三次岡部 猫石の由来」の化猫“踊る猫又”、右・歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」より着物に描かかれている猫の寄せ絵の髑髏“猫骸骨”
筆者は”骸骨下駄”をGETし、
帰社後「木目までしっかり再現されている」素晴らしさを隣の上司に熱弁しました。
■遥か昔の「本気」に、現代の私たちは何を学ぶのか
あらゆる文明が発達した今も海を越え、時を越え、何百年後も人の心を動かし続ける浮世絵たち。その理由はさまざまですが、「ああ、まだまだ自分も頑張れるなあ…」と感じると同時に、そこには確実に「明日を生きるヒント」が存在していました。尊敬するもよし。ライバル心を抱くもよし。
「美術展なんて観るだけでしょう」と考えていた筆者にとっては、「今まで浮世絵やアートに触れたことのない人にこそ来てほしい」という松嶋雅人さんの言葉通り、「アートに触れる意味」を見出すことの出来た本展。
これまでに1歩踏み出す機会を伺ってきたすべての”アートに疎い人”には特に、おすすめします。
あなたの知られざる、アートへの扉が開くかもしれません。
会期:2016年3月19日(土)~6月5日(日)※会期中無休
開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)※毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)
主催:Bunkamura / ボストン美術館 / 日本テレビ放送網 / 読売新聞社 / BS日テレ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/kunikuni/