京都で「アトリエ劇研スプリングフェス」開催

2016.3.31
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舞台

育成に焦点を当てた、京都舞台芸術の登竜門となる演劇祭。

30年以上に渡って、京都のアーティストたちの育成&支援の場として親しまれている小劇場[アトリエ劇研]。その劇場カラーそのままに、ただのお祭ではなく「育成」に焦点を当てた演劇フェスティバルが、昨年に引き続いて開催されることになった。

1週目は、劇場が全国から公募で集めた期待の若手枠「創造サポートカンパニー」に選ばれた10組の短編作品を一挙に上演する「創造サポートカンパニーショーケース」。コメディからコンテンポラリーダンス、北九州から東京と、ジャンルも拠点もバラエティに富んだ若手たちが、30分程度の短編を発表。この中には「第6回せんがわ劇場演劇コンクール」でグランプリを獲得した「ドキドキぼーいず」、「京都芸術センター舞台芸術賞2009」で大賞を受賞した小嶋一郎の劇団「250km圏内」、風刺コメディでむしろ政治関係者から注目されている「笑の内閣」など、すでに評価を固めつつある集団も出演している。

2週目は「第60回岸田國士戯曲賞」の最終候補初ノミネートを果たし、今年から劇場が推薦するアーティスト枠「アソシエイト・アーティスト」に加わった「烏丸ストロークロック」の柳沼昭徳の新作。1つの作品を、試演会やワークショップ(WS)を重ねながら数年がかりで作り上げていくという、長期的な視野に立った創作活動を行っている柳沼だが、今年から新たに「凪の砦」というシリーズに着手。柳沼が「この先の社会でとても重要になるのでは」と考える「コミュニティ」がテーマになるそうだ。今回は、柳沼のWSに参加したメンバーで結成された劇団「庭ヶ月」との合同公演となる。

「アトリエ劇研スプリングフェス」記者会見より

3週目は、アトリエ劇研が主催する「舞台技術ワークショップ」の発表公演。劇場付き技術スタッフの充実度に定評がある、劇研の特性を活かしたWSだ。その成果を見せる公演は、「第21回OMS戯曲賞」で佳作を受賞した「正直者の会」の田中遊の新作に挑戦。録音した声と人間の演技を巧妙に絡めた芝居など、シビアなスタッフワークが必要とされる世界を好んで作る作家だ。「プロが受講者の技術に合わせるのではなく、受講者がプロの要求に合わせてもらう」という趣旨なだけに、一般的なWS発表公演とは一味違うクオリティの舞台が期待できる。

4週目は、劇場ディレクターのあごうさとしが講師を務める俳優講座「劇研アクターズラボ」の発表公演。「役者0人の演劇」などの実験的な作風で知られるあごうが、20~40代の受講生たちに書き下ろすのは、演劇における俳優の役割を再考させるような不条理劇だ。焼肉を食べている「父」や「子ども」などの人々が、物語が進むに連れてどんどんとその役割を変えられていく…という作品を通して、俳優が物語やキャラクターの根拠を失ったら、一体どうやって「演技」をするのか? を考えていくという。こちらも田中と同じく、作・演出家の要求を容赦なく受講生にぶつけた、刺激的な世界になりそうだ。

演劇祭のテーマに掲げた「京都舞台芸術の登竜門」という言葉に相応しく、出演者たちに自由な挑戦と飛躍の場を設けて、ここからどこに向かうのか? と問いかけるような内容となった演劇祭。劇場支援会員(一般30,000円、26歳以下25,000円、学生20,000円)になったら、このフェスの全公演を含めた、劇場で上演される作品を1年間すべて自由に観ることができるので(しかも学生以外は[こまばアゴラ劇場][津あけぼの座][シアターねこ]にも適用。ただし1演目1回のみ)、これから足を運ぶ機会が増えそうな予感がするなら、今のうちに会員になることをオススメしておきたい。支援会員制度の詳細はコチラ

イベント情報
「アトリエ劇研スプリングフェス」
 
《創造サポートカンパニーショーケース》
■日時:4月8日(金)~14日(木) 8・13・14日=19:00~、9日=13:00~、10日=15:30~/19:00~、11・12日=休演
■出演:(Aプログラム)250km圏内Hauptbahnhofはなもとゆか×マツキモエブルーエゴナク/(Bプログラム)居留守努力クラブ笑の内閣、Hauptbahnhof/(Cプログラム)劇団しようよしたためドキドキぼーいず、笑の内閣
※8・9日はAプログラム、10日はBプログラム、13・14日はCプログラムで上演

 
《烏丸ストロークロック×庭ヶ月 共同連作「凪の砦」 凪の砦3『還る浜は凪がず』》
■日時:4月22日(金)~24日(日) 22日=19:30~、23日=14:00~/18:00~、24日=14:00~
■作・演出:柳沼昭徳(烏丸ストロークロック)
■出演:阪本麻紀、西村貴治、ほか

 
《舞台技術スタッフのためのワークショップ公演 田中遊『録音と生活』》
■日時:4月29日(金・祝)~5月1日(日) 29日=19:30~、30日=15:00~、1日=11:00~/15:00~、
■作・演出:田中遊(正直者の会)
■出演:岡嶋秀昭、浜田夏峰、ほか

 
《劇研アクターズラボ+あごうさとし ペルメッソ・メノモッソ『タレをかける』》
■日時:5月6日(金)~8日(日) 6日=19:30~、7日=15:00~/19:30~、8日=15:00~
■作・演出:あごうさとし
■出演:岡田凌太、柴田拳伍、白鳥達也、たかやまみお、西尾友希、宮路一枝、由田拓真、わたなべなおと

 
■場所:アトリエ劇研
■料金:(各公演)前売=一般2,000円 学生1,500円 当日=各300円増
※「創造サポートカンパニーショーケース」は前売=一般2,500円 学生2,000円 当日=各300円増
■公式サイト:http://gekken.net/atelier/sf/2016.html