ウィーン国立歌劇場 総裁ドミニク・マイヤー、指揮マレク・ヤノフスキが記者会見
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(左から)マレク・ヤノフスキ、ドミニク・マイヤー
秋のウィーン国立歌劇場日本公演についての記者会見が3月30日に都内のホテルにて開催された。ウィーン国立歌劇場総裁のドミニク・マイヤーと『ナクソス島のアリアドネ』を指揮するマレク・ヤノフスキが登壇。ウィーン国立歌劇場が今秋、日本に持ってくるのは3演目。R.シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』、ワーグナーの『ワルキューレ』、モーツァルトの『フィガロの結婚』である。マイヤー総裁はそれぞれについて説明を行った。
ドミニク・マイヤー
マイヤー総裁:『ナクソス島のアリアドネ』は、1912年にシュトゥットガルトで初演された初版と、1916年にウィーンで初演された改訂版があり、今回上演する改訂版は初演からちょうど100周年にあたります。『ナクソス島のアリアドネ』は、ウィーン国立歌劇場管弦楽団から三十数名のベスト・メンバーを選び、小編成でのオーケストラ演奏となります。また、ウィーン国立歌劇場で10本もの演出を手掛けるベヒトルフは、非常に美しく優雅に公演を彩ってくれます。『ニーベルングの指環』(今回の『ワルキューレ』)も彼の演出したものです。
『ナクソス島のアリアドネ』は4年前の日本公演でサロメを演じたグン=ブリット・バークミンが歌います。ツェルビネッタを歌うダニエラ・ファリーはウィーンっ子でウィーンの聴衆から愛されています。作曲家役はヴェッセリーナ・カサロヴァです。
私が総裁に就任してから6シーズン目になりますが、ウィーン国立歌劇場では毎シーズン、『ニーベルングの指環』を上演しています。『指環』での我々のオーケストラ演奏は非常に高く評価されており、今回の『ワルキューレ』を指揮するアダム・フィッシャーは、現代最高のワーグナー指揮者です。情熱的で、作品の隅々まで熟知しています。
ジークリンデは、メゾソプラノからソプラノに転向したペトラ・ラング。ブリュンヒルデのニーナ・シュテンメは現代最高のワーグナー=シュトラウス歌手。ヴォータン役のトマス・コニエチュニーは長くウィーン国立歌劇場の専属歌手でした。
『フィガロの結婚』では、ムーティが東京に帰ってきます。マエストロは、8年前に『コジ・ファン・トゥッテ』を振っていますが、今回は『フィガロの結婚』を是非指揮したいとおっしゃるので、4年前の我々の日本公演でも『フィガロの結婚』がありましたが、また持ってくることにしました。ムーティから「イタリアの若手でやりたい」という希望があり、ケルビーノのグリシュコヴァ以外はイタリア人でキャストを組みました。マエストロはリハーサルから自らピアノを弾いて歌手に向かいます。
『ナクソス島のアリアドネ』を指揮するヤノフスキは、東京・春・音楽祭の『ジークフリート』(演奏会形式)を指揮するために来日中であった。近年、オペラは演奏会形式に限定し、オーケストラ・ピットでの指揮から遠ざかっていたが、2016年と17年のバイロイト音楽祭の『ニーベルングの指環』と今回のウィーン国立歌劇場日本公演で久々にピットに入る。
マレク・ヤノフスキ
ヤノフスキ:マイヤー総裁からウィーン国立歌劇場日本公演の指揮のお話を受け、たいへんうれしく、光栄に思いました。個人的には、この20~30年、ドイツの歌劇場の演出のやり方を間違っていると思い続けてきました。16、7年前にドイツの音楽都市での『ナクソス島のアリアドネ』の演出を見て、オーケストラ・ピットでの指揮をやめようと思いました。オペラは演奏会形式でやることにし、2010年から13年まで、ベルリン放送交響楽団とベルリンのフィルハーモニーですべてのワーグナーのオペラを演奏しました。そして、そのツィクルスを終えて、オペラへの気持ちが強くなってきたところ、バイロイト音楽祭から2016年、17年の『ニーベルングの指環』の指揮のオファーが来ました。ちょうどその後、ウィーンのマイヤー総裁からもオファーが来たので、ピットで指揮してみることにしました。『ナクソス島のアリアドネ』は、最後にピットで指揮した演目でもあり、運命的なものを感じます。
『ナクソス島のアリアドネ』は、シュトラウスのオペラのなかでも最高傑作だと思います。喜劇と悲劇の2つの要素が1つのオペラの中に完璧に入っています。モリエールの『町人貴族』のテーマをもとに、ホフマンスタールとシュトラウスが協力し合って作り上げました。この作品は見る側にもとても知性を要求されるオペラです。前半のプロローグは皮肉に満ちています。後半のオペラは、オペラ・セリア的に悲劇と喜劇をうまくとりいれています。オーケストラは室内楽のような小編成で、シュトラウスの天才的な作曲により素晴らしい音楽になっています。
会見では、『フィガロの結婚』を指揮するムーティからのメッセージも紹介された。
ムーティ:日本公演では若いながらもすでに国際的に活躍しているイタリア人の歌手を起用しています。モーツァルトがイタリアに学び、ナポリ派の作曲家たちの影響を受けたからこそ、ダ・ポンテ作の三部作が生まれたという話もありますし、この作品を歌い演じるには、ただ単に言葉の意味が分かり、正しい発音であること以外にも、言葉のニュアンスやその裏側にある深い意味を心底理解することが必要であると思うからです。
(左から)マレク・ヤノフスキ、ドミニク・マイヤー
文=山田治生
『ナクソス島のアリアドネ』 プロローグ付き1幕
『ナクソス島のアリアドネ』 (Photo:Wiener Staatoper/Michael Poen)
10月25日(火) 19:00~
10月28日(金) 15:00~
10月30日(日) 15:00~
■会場:東京文化会館
■演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
■指揮:マレク・ヤノフスキ
■演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
■出演予定:
プリマドンナ/アリアドネ:グン=ブリット・バークミン
ツェルビネッタ:ダニエラ・ファリー
作曲家:ヴェッセリーナ・カサロヴァ
テノール/バッカス:ステファン・グールド
ウィーン国立歌劇場2016年日本公演『ナクソス島のアリアドネ』に“テノール/バッカス”役で出演予定だったヨハン・ボータが急逝し、ウィーン国立歌劇場は代わりの歌手の調整を急いでおりました。このたびその代役にステファン・グールドが決定いたしましたのでお知らせいたします。
また、同公演で“作曲家”の役を歌う予定だったヴェッセリーナ・カサロヴァが、近親者の死去を理由にウィーン国立歌劇場に本公演への不参加を申し出、歌劇場が了承しました。カサロヴァに代わりまして、ステファニー・ハウツィールが『ナクソス島のアリアドネ』の“作曲家”を歌います
※表記の出演者は2016年9月30日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても、代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更に伴う
≪二―ベルングの指輪≫第1夜 『ワルキューレ』 全3幕
『ワルキューレ』 (Photo:Wiener Staatoper/Michael Poen)
11月6日(日) 15:00~
11月9日(水) 15:00~
11月12日(土) 15:00~
■会場:東京文化会館
■演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
■指揮:アダム・フィッシャー
■演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
■出演予定
フリッカ:ミヒャエラ・シュースター
ブリュンヒルデ:ニーナ・シュテンメ
ジークリンデ:ペトラ・ラング
フンディング:アイン・アンガー
ヴォータン:トマス・コニエチュニー
ジークムント:クリストファー・ヴェントリス
※表記の出演者は2016年3月12日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても、代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更に伴う
『フィガロの結婚』 全4幕
『フィガロの結婚』 (photo:Wiener Staatsoper/Axel Zeininger)
11月10日(木) 17:00~
11月13日(日) 15:00~
11月15日(火) 15:00~
■会場:神奈川県民ホール(横浜)
■指揮:リッカルド・ムーティ
■演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
■出演予定
伯爵夫人:エレオノーラ・ブラット
スザンナ:ローザ・フェオーラ
ケルビーノ:マルガリータ・グリシュコヴァ
アルマヴィーヴァ伯爵:イルデブランド・ダルカンジェロ
フィガロ:アレッサンドロ・ルオンゴ
※表記の出演者は2016年3月12日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても、代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更に伴う
※3公演それぞれの