姉妹の息の合ったさわやかな演奏、林そよか&はるか がサンデーブランチクラシックに登場!

2016.5.18
レポート
クラシック

林そよか(ピアノ)、林はるか(チェロ) (撮影=原地達浩)

画像を全て表示(9件)

演奏に作曲に編曲に・・・。多彩な才能をみせた林そよか 
サンデー・ブランチ・クラシック 2016.4.10レポート

春の暖かさを感じる4月10日の日曜日、渋谷にあるLIVING ROOM CAFÉ(リビングルームカフェ)by eplus にて毎週日曜日恒例の「サンデー・ブランチ・クラシック」が開催された。「ライブ音楽」と「飲食」と「アート」の融合をコンセプトにしたこのイベントでは、今を輝く若手アーティストの迫力ある生演奏を、食事をしながら気軽に楽しむことができる。

今回は東京藝術大学を卒業、同大学院を修了し、現在は作曲家及びピアニストとして活躍する林そよかが登場した。彼女は他の演奏家への楽曲提供や、楽曲編曲を積極的に行う他、映像・アニメーション作品の音楽も手がけるなど幅広く活躍する実力派だ。また日本コロムビアからは、自作自演曲を含む多数のCDもリリースしている。

またゲストにはチェリストで彼女の姉でもある林はるかも登場。2人は現在Aura Veris(アウラ ヴェーリス)というユニットを組んでの活動もしており、ラテン語で「春のそよ風」という意味のユニット名にぴったりな、姉妹ならではの息の合ったさわやかな演奏を聴かせてくれた。
 

林そよか(ピアノ) (撮影=原地達浩)

時刻は午後1時、定刻になるとステージに林そよかが女性らしいピンクの花柄のワンピースで颯爽と登場。一礼するとすぐに1曲目のエルガー作曲『愛の挨拶』(林そよか編)を弾き始めた。JAZZ風にアレンジされた名曲を軽快なリズムで紡いでゆく。そよかの女性らしい繊細でキラキラした音色が一気に会場を包み込んでいった。曲の終盤、今までとは一転して拍子が変わり、ワルツ調に変化する部分など、聴く側を飽きさせない、そよかの編曲能力の高さが伺えた。

1曲目を弾き終え、マイクを手に取るそよか。客席へと軽く挨拶を済ませると続く2曲目、3曲目を弾き始めた。

2曲目はショパン作曲『エオリアンハープ』で、この曲は本来練習曲として作曲された作品とのことだ。それを同時代の作曲家であるシューマンが「まるでハープのようだ」と語ったことからこの愛称が付けられたとのことである。ここでもそよかの美しい音色が際立つ。ペダルも巧みに使いピアノを響かせ、幻想的な世界を作り上げていた。なるほど、シューマンがハープと言ったのも頷ける。

などと思っていると3曲目、シベリウス作曲の『ロマンス』が始まった。シベリウスはフィンランドの作曲家である。北欧独特のどこか懐かしさを感じる響きが客席を満たしていった。フィンランドの広大な大地を思わせる様な骨太な音色も聴かれ、そよかの想像力の高さを物語る演奏だった。

ここまで3曲をソロで演奏したそよかだが、ソロでの演奏は久しぶりだったという。普段はアンサンブルが多いらしく、「今回のソロ演奏では自分のやりたい事、曲を詰め込みました(笑)」と話していた。
 

林はるか(チェロ) (撮影=原地達浩)

と、ここで妹の呼びかけに応えるように、姉のはるかが黒のドレス姿で登場した。はるか曰く、「今日の主役は妹なので、控えめの黒です(笑)」とのこと。美しい姉妹の共演に客席のおじさま達は釘付けだったに違いない。

そよか作曲の『そよ風にのって』という爽やかな作品で2人の共演はスタート。まさにそよ風の様な流れる前奏にのって、姉のチェロが旋律を奏で始める。チェロを意識した、息の長い旋律が耳に心地よい作品であった。ちなみに第2部ではこの曲の代わりに、これまたそよか自作の『空へ』という作品が演奏された。こちらも2人の掛け合いの妙が魅力的な作品であった。

林そよか(ピアノ)、林はるか(チェロ) (撮影=原地達浩)

姉妹共演の2曲目はカプースチン作曲の『ブルレスク』という曲だ。「こっけい」や「おどける」という意味のこの曲は次々と変わるテンポやリズムが非常に楽しい。姉はるかの情熱的な独奏から始まり、そよかも加わって徐々に高揚していく演奏は、客席の興奮をさぞ煽ったことだろう。2人も楽しそうに演奏していたのが印象的だった。

ここで姉はるかは一旦退場。ここからはもう一度妹、そよかのソロステージとなった。

森山直太朗『さくら』(林そよか編)では、J-POPの名曲にそよか風の味付けがされた、ムード漂う演奏であった。ちなみに第2部ではここは『千本桜』(林そよか編)が披露された。元はヴォーカロイドという機械のための楽曲だが、派手になりすぎない上品な編曲に、しばしの間会場が幻想的な雰囲気に包まれた。

プログラムの最後には日本古謡『さくら さくら』が現代風に編曲されて演奏された。曲の最初は、日本的な響きを効かせた寂しげなアレンジも、次第に現代的な響きに変わり、喜びへと変わっていく構成力はさすがの一言であった。「1万本のさくらをイメージして編曲しました」と本人が語った通り、満開の桜が目に浮かぶ演奏と編曲であっただろう。

林はるか(ピアノ)、林そよか(チェロ)、 (撮影=原地達浩)

林はるか(ピアノ)、林そよか(チェロ) (撮影=原地達浩)

客席の盛大な拍手に、再び姉のはるかが登場し、2人でのアンコールに応じてくれた。曲目は2人の十八番だという『美空ひばりメドレー』だ。演奏はもちろんだが、ここでサプライズな演出があった。曲の途中で姉のはるかが急に立ち上がったかと思うと、妹そよかが弾くピアノの方へ移動。妹は妹で、ピアノから姉のチェロへと移動するという楽器交代が行われたのだ(笑)!そのまままるで何事もなかったかのように演奏を続ける2人。あまりに自然すぎて、食事などで目を離していた人は、2人の楽器チェンジに気づかなかった人もいたのではないだろうか。そのまま最後まで演奏し、客席からは溢れんばかりの拍手が送られた。姉妹の素晴らしい演奏の数々に会場が魅了されたコンサートであった。
 

サイン会の様子 (撮影=原地達浩)

インタビューの模様 (撮影=原地達浩)

終演後楽屋にそよかを訪ねると「開放的で、お客様の反応もダイレクトに伝わってきて最高でした」と語ってくれた。今後はソロでも、作曲家としても活躍の幅を広げていきたいと話す。Aura Verisとしての姉妹の活動ももちろんだが、林そよかの今後のますますの活躍に注目したいところだ。

林はるか(チェロ)、林そよか(ピアノ) (撮影=原地達浩)

時間のある日曜日の午後、たまにはちょっと出掛けて、美味しい料理を食べながら素敵な音楽に耳を傾ける…なんて休日もありではないだろうか?

プロフィール
林そよか(Hayashi Soyoka) 作曲・ピアノ

東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院音楽音響創造分野修了。卒業時に同声会賞受賞、また大学院修了時に大学院アカンサス音楽賞受賞。第9回PIARAピアノコンクール全国大会にて最優秀賞及びグランプリ受賞。
大学在学中より自身のアレンジとピアノ演奏による「桜ピアノ」をはじめ、姉の林はるか(チェロ)とのユニット『アウラ・ヴェーリス』として、「イマジン~ピアノとチェロのためのジョン・レノン・クラシックス」「愛燦々~美空ひばり クラシックス」などこれまで多数のCDを日本コロムビアよりリリース。
またヴァイオリニスト花井悠希や1966カルテットに楽曲提供、「高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト」の楽曲編曲など、作・編曲家として活躍するほか、津軽三味線奏者の吉田兄弟と共に「弦奏」の全国ツアーに出演するなど様々なアーティストと共演、ピアニストとしても活躍中。 松田彰監督「異し日にて」、鉾井喬監督「福島桜紀行」の音楽を担当するなど映像• アニメーションの音楽なども手がける。平成27年度復興庁「新しい東北」先導モデル事業「風景と心の修景および創景事業」において作曲・演奏、また同事業にて上映された「よみがえる浪江町」の映像においても作曲・演奏を担当した。
 
林そよか・林はるか 公演情報
チェロとピアノで聴く名曲たち Aura Veris​(アウラ・ヴェーリス )
愛燦燦~美空ひばり イマジン~ジョン・レノン
 
日時:2016年6月11日(土)
会場:富士市文化会館ロゼシアター 小ホール (静岡 )
出演:林そよか 林はるか
<曲目>
【美空ひばりクラシックス】
♪真っ赤な太陽
♪愛燦燦
♪川の流れのように
【ジョン・レノン クラシックス】
♪イマジン
♪ウーマン 他
※曲目は変更になる場合がございます。

問合わせ:0545‐60‐2500
サイトURL:http://www.t-artists.com/artists/concert.asp?uid=16&mode=coming​
 
サンデーブランチクラシック情報
5月22日(日)
林そよかピアノ)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: 500円

6月5日(日)
曽根麻矢子(チェンバロ)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: 500円

公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html​
  • イープラス
  • LIVING ROOM CAFE
  • 姉妹の息の合ったさわやかな演奏、林そよか&はるか がサンデーブランチクラシックに登場!