風煉ダンスが伝説の野外劇『スカラベ』を22年ぶりに再演
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「風煉ダンス」の“名花”みぞぐちあすみとワークショップ参加者たち
演劇集団「風煉ダンス」が、2016年9月、立川市の立川子ども未来センター芝生広場で野外劇『スカラベ』を上演する。1994年に福岡の特設野外ステージで上演された同作品の初演以来、22年ぶりの再演となる。
去る4月16日(土)17日(日)には、この公演の実施に向けて、出演者と美術スタッフの募集を兼ねたワークショップが、たちかわ創造舎で実施された。「参加者の皆さんがとても熱心で、楽しく濃厚なワークショップをおこなうことができました」とは劇団関係者の弁。
「風煉ダンス」とワークショップ参加者たち
「風煉ダンス」は元々、演出家の笠原真志と、座付き戯作者の林周一が1990年に結成した劇団である。素朴な手作り感のある猥雑な美術と生演奏の音楽を空間に溢れさせ、祝祭的なスペクタクルロマンを繰り広げることで定評がある。
『スカラベ』は、法政大学学生会館大ホールで上演した『犬姫』(1993年)で高い評価を浴び自信をつけた「風煉ダンス」が翌年に初めて本格的な野外劇に挑んだ記念すべき作品だ。作は林周一、演出は笠原真志、そして音楽を渋さ知らズオーケストラの不破大輔が担当した。野外劇好きの筆者も、当然その公演は「目撃しなければならない」と、東京から彼の地まで飛んだ。
そこでまず目にしたものは、福岡市の天神・警固公園いっぱいに広がる“街”の美術装置だった。スケールの大きさに度肝を抜かれた。その舞台上で原初的パワーに充ちた歌と踊りと活劇が、奔放に駈け巡る。やがてそれが芸術的なカオスの渦となり、“とんこつスープ”の匂い立ち込める福岡の夜空へと上昇・炸裂した時、観客たちはこぞって野外劇の法悦に浸ったものだ。これほどの野外劇はそうそうお目にかかれるものではない! …しかし、上演場所が福岡だったこともあり、いまやその事実は、幻めいた“伝説”として演劇史周辺の波間を浮遊している感がある。
『スカラベ』(1994年 福岡天神特設野外ステージ)
『スカラベ』(1994年 福岡天神特設野外ステージ)
その後「風煉ダンス」は、横浜MM21特設大野外舞台で『悪漢(A-KKAN)』(1999年)を上演して以来、井の頭恩賜公園での『泥リア』再演版(2015年)まで野外劇は行なわなかった。調布市のせんがわ劇場を活動拠点としていたことも理由のひとつだ。しかし、ここに来て『スカラベ』を再演するに踏み切ったのは何故か。この作品を書いた林周一に問うてみると、次の回答が寄せられた。
「2015年に野外劇として『泥リア』を再演しました(※『泥リア』初演はせんがわ劇場での公演)。とても大変ではあったけれども、やはり野外劇は風煉ダンスらしさが発揮できると考え、ぜひ2016年も野外劇を上演したいと考えました。そこで今年から本拠地とした立川で是非上演したいと考え、地域に協力を求めたところ、とんとんと話が進みました。また1994年の野外劇「スカラベ」はある意味、あの時代の若かった私達の勢いで走り切った芝居でした。『まつろわぬ民』(2014年)、『泥リア』(2011年、2014年)は東日本大震災などをベースにして現代とリンクさせた重いテーマを抱え込んだ作品でしたが、『スカラベ』は完全な寓話です。そんな物語に様々な魅力的な設定がありましたが、当時はそれをきちんと描き切れなかった。というか自分でも深く考えずに書いたことが年を経た今、もっと掘り下げて描いてみたいという部分もある。そういった様々な理由で今回、野外劇『スカラベ』の再演に踏み切りました」
『スカラベ』(1994年 福岡天神特設野外ステージ)
『スカラベ』(1994年 福岡天神特設野外ステージ)
「スカラベ」ワークショップより
なお、公演開催概要は以下を参照のこと。
■作:林周一
■演出:風煉ダンス(予定/検討中)
■音楽:関根真理(dr)、辰巳光秀(tp)、ファン・テイル(g)
■出演:伊藤ヨタロウ、リアルマッスル泉、河内哲二郎、反町鬼郎、吉成淳一、堀井政宏、春田奨、御所園幸枝、山内一生、飯塚克之、林周一、みぞぐちあすみ、吉田佳世、佐々木潤子、内田晴子、横山展子、塚田次実、外波山流太、荒牧大道、他/ワークショップオーディション合格メンバー
■会場:立川子ども未来センター芝生広場
■公式サイト:http://furen-dance.info/