トリコロールケーキが「コーヒーブレイク」音源を公開
トリコロールケーキ 今田健太郎
4月12日~17日、劇団のトリコロールケーキが、トリコロールケーキ・アニマル#4『モグララ』という公演を行ったことは、過日SPICEでもお知らせしたとおりである。
上演中に役者が急病となり公演続行不可能のアクシデントに見舞われた回もあったが、SPICEでも予告したとおりの、ナンセンスに徹した作品作りは概ね好評であった。とりわけ今回は或る劇中音楽に注目が集まった。
登場人物たちが何度か唐突にコーヒーブレイク(コーヒー休憩)に入る。この間、登場人物たちは、ただ黙々とコーヒーを飲むだけである(モグラだけは1人踊るのだが)。その時にかかる爽快でファンキーな音楽がとても印象的だった。「コーヒーブレイク!」と発せられる女性ヴォイスも耳奥に心地良く響く。劇進行において、さほど重要な意味があるわけでもないのに、何度も、そしてけっこう延々とかかるので、筆者を含め中毒に陥る観客は少なくなかったようだ。筆者は、観劇後、いまなお頭の中をそのメロディが止むことなく鳴り続けている。
劇団にも問合せが多かったようだ。その曲は、脚本・演出・出演を務める今田健太郎が作ったオリジナル・ナンバーだった。今田健太郎といえば見た目が“三頭身”という、そのインパクトばかりが巷で喧伝されているけれど、音楽の才能も実はなかなかどうして、なのである。そして、このほど件の音源「A Coffee Break (from "mogurara")」がネット上で一般公開された。
https://soundcloud.com/torico-roll-cake/a-coffee-break-from-mogurara
演劇のオリジナル劇中歌は、日本では1914年、島村抱月率いる芸術座の『復活』で松井須磨子が「カチューシャの唄」(作曲:中山晋平)を歌って以来、実は名曲が数多く存在する。「カチューシャの唄」はレコードとして売り出され、日本初の大ヒットを飛ばした。昨今は、上演でしか聴くことのできない一期一会のオリジナル曲も多いが、そのように文化芸術が“消費”されてしまうことには些かの疑問もある。
今回の「コーヒーブレイク」のように後で聴けるような配慮がなされると、たった一回の観劇を、スルメのように、後々何度も噛みしめ味わうことができるようになるし、芝居を観なかった人も舞台に触れたような気持ちになる。そのようにして、拡がりが生まれてくる。
いろいろなオリジナル劇中歌を持っている劇団は、たやすくネットに音源を公開できる現代において、自分たちの優れた音楽的実績を積極的にアピールして欲しいものである。
とある過疎地域の動物園に新設されたモグラふれあいゾーン。
一見すると土ゾーン。見渡す限りの土ゾーン。
果たして、そこにモグラらは本当に存在するのだろうか?
我先にと殺到したモグラファンと土ファンの小競り合いは次第に活気を帯び、
いつしか、町おこしめいた状態へと陥っていく……
■会場:千本桜ホール(学芸大学)
■出演
鳥原 弓里江
今田 健太郎
香西 佳耶
(以上、トリコロールケーキ)
川口 雅子
川﨑 麻里子(ナカゴー)
高澤 聡美
畑中 実(ミラクルパッションズ)
矢野 昌幸