広崎うらんのダンスパフォーマンスREVO2016『SSESION 情熱と生活』レビュー
広崎うらんが制作するダンス公演、REVO2016『SSESION 情熱と生活』が、4月28日から新国立劇場 小劇場で上演中だ。(5月1日まで)
コンセプトに「生活」という意匠を打ち出しながら、踊る人たちの磨かれ削ぎ落とされた肉体と精神の美しさを表現する世界となっている。
さまざまなジャンルから集まった18人のダンサーたちは個性豊かで、いい意味でデコボコ感があり、それが「人間社会」をモチーフにしたこの作品のリアルさに重なる。そして、それぞれが単体として表現力を発揮しながら、同時に1つの共同体を形づくっている様は、まさにこの世の中、世界の縮図を描き出していると言えるだろう。
今回のテーマは副題にあるように「情熱と生活」ということで、登場する人々は「生活者」としての顔を持っている。たとえばアームカバーをした公務員のおじさんだったり、元男性(?)のたくましいCAだったり、冴えないリケジョ、工場の作業員、新人歌手とマネージャー、介護される母親と介護する主婦などなど…みんな生活の垢にまみれながら日常を生きている。そんな日常を表現するダンスは、カリカチュアされた振りもあって、ユーモラスであり、同時に苦しげだったり切なかったりと表情豊かに迫ってくる。
だが、そんな人々の日常にも、いのちが熱を帯びて輝く瞬間が訪れる。ふとしたきっかけで日常から解放されて、ひととき情熱の中で浮遊する人々。いつしかそれぞれの人生は連なり、繋がって…やがてまた離れていく。
音楽は生演奏でピアノとコントラバス、そこにフィリップ・エマールの「歌」、和太鼓の小島功義のプリミティブな「響き」、声だけの出演という中川晃教の「VOICE」などが加わって、作品の世界観をより深めている。
舞台美術は上から下げられた薄い布だけ、だがそこに浮かび上がる模様は水面から宇宙へと広がり、布と床を彩る照明の美しさは圧倒的だ。
25年になるという広崎うらんのREVOシリーズ、その作品作りの情熱が見事に結実した公演となっている。
REVO2016『SSESION 情熱と生活』
【文/榊原和子 写真提供/アトラス】