【blur映画公開記念】アルバム「ザ・マジック・ウィップ」収録曲全曲解説+インタビュー特集 第2弾

インタビュー
音楽
2016.5.5

ブラーの最新ドキュメンタリー映画『ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ』の日本公開を記念して、メンバー4人によるアルバム収録曲全曲解説とオフィシャルインタビューをご紹介するブラー特集の第二弾をお届け。

第一弾はこちら

歌詞はどのように書いた?アルバムタイトル「ザ・マジック・ウィップ」に含まれた意味とは

セッションなどを経てできあがった曲に、歌詞を乗せていくのはデーモンの役割である。
脱退を経てふたたび共に作品を作ることとなったグレアムとデーモンの間には、言葉にし尽くせない関係性があるわけだが、どうやら今作には今までかたちに出来なかった”それら”が散りばめられているようだ。

デーモン:
何について書いていいのかわからなかった。というのも、ちゃんとできた曲にデモ・ヴォーカルを乗っけたのがたくさんあったんだよね。香港でレコーディングしたものには、明らかにグレアムとの関係を歌ったものがたくさんあって、だから、思い出のある場所を一年半後にもう一度訪れてみることにしたんだ。そうすることで、そこに対して興味深い見方ができるようになった。
香港に戻ったときに一番心にあったのは、最近香港で起きた抗議デモ(注:2014年9月の事件)のことで、テレビで観て知ってたんだけど、それが起きたのがハッピー・バレーっていうところで、その響きがこう、歌詞としておもしろいと思った。
そこで実際に起きていたことと、場所の名前とがすごく矛盾してるんだけど、それが俺達が泊まっていたホテルのすぐ隣で起きていたわけで、情景を思い浮かべることができた。それでもう一度後になって香港を訪れたとき、空港でタクシーに乗って最初に口から出たのが『ハッピー・バレーに連れてってくれる?』だったんだ。
で、ちょうどその日、グラフィティとか、あの巨大なデモで残されたものすべてが当局によって消されていたんだ。

▲The Magic Whip Made In Hong Kong (Behind the Scenes)

デーモン:
まあそんなわけで、『ザ・マジック・ウィップ』自体、すごくいろんな意味を含んだタイトルなんだよね。
英語でもいくつか意味があるけど、“ウィップ”は中国語だと英語とはまたちょっと違う意味があるんだ。北京語だと、アイスクリームのネオンがあって、“ザ・マジック・ウィップ”ってあると、魔法のようで、暴力的で、支配的な意味を帯びてくる。あの辺りでは避けられないものがあって、俺は中国に行くようになってから15年になるけど、15年前には特別な許可が必要で、常に政府の人と一緒に行動しなくちゃならなかった。北朝鮮でも同じような感じで、あそこでは誰にでもふたり政府関係者が付いてきた。一緒に酒を飲める人がひとりいて、ひとりが酔っぱらうのを監視する人がもうひとりいるっていう。でも中国は、俺は中国が大好きなんだよ、ものすごく偉大な歴史があって、すごく豊かで生き生きした見事なユーモアのセンスがあって。中国には大好きなところがたくさんあるけど、やっぱり避けることはできないというか、あの……規制がいろいろとあるから――それはずっと変わらない。
表面的にはどんなに西洋化されていても、水面下ではかなり深い規制が張られているわけで……つまり、ここは共産主義の国であって、物事のやり方がすごくはっきりしてることはわかってたけど、文化革命についていろいろと読んでいくうちに考えさせられることがあって、それを口に出しはしないけど、批判してるわけじゃなくて、“マジック・ウィップ”って言葉を俺が使うとき、それはひとつの見解であって、その言葉の曖昧さが気に入ってるわけで、中国語での意味は偶然であって、もっと偏った意味になるけど、それはできないというか、そういう遊びはないわけで、言ってる意味わかるかな?
英語はあまりに支配的な言語だから俺達は忘れてしまうもので、それに英語では二重の意味の言葉遊びをするし、それでほかの言語での意味に驚くというか、その微妙なニュアンスを理解してなくて、翻訳の過程で失われるものがたくさんあるんだ。それがときにはかなり重大な問題になる。

【アルバム全曲解説】3.ゴー・アウト

デーモン:
たしか香港での3日目にレコーディングした曲で、その日はもう終わりにしようかってときで、たしか俺はそのときビールを飲んでて、これから出かけようかなって考えてたんだと思う。それだけのことだよ。
でもほかにも触れてることがあって……贅沢を売り歩く行商人、一番上のボタンを開けた西洋人、夜中の極悪なスカイ・バーに入り浸る連中、ナイトクラブと女性とか。
何だろう、あの曲にはたくさん……かなりダークなレファレンスがあるんだけど、どれも香港にいた当時の俺の頭にあったことで、俺が歌ってるのはたぶん、夜中にバーに行くこと、もしくはそういうところに出掛けようとしてるってことだと思う。ざっくり言えばね。

【アルバム全曲解説】4.アイスクリーム・マン

グレアム:
“アイスクリーム・マン”のもとになったのは、それほど真剣に捉えてなくて放ってあったもので……『アイスクリーム売りがやってくる』なんて、ちょっとこう、『ああ、わかったよ』って感じで、ふざけたような曲だったというか、ちょっと、あの、小人の歌とかそういう奇妙で一風変わった曲というか、頭がぼんやりしたときに思い付くような曲で。でもよく聴いたらコード進行がおもしろいと思うようになって、スウィングみたいな感覚もあるし、音楽的なジョークもあると思って、それで僕なりの音楽的ジョークをやってみたんだ。
わかった人なんていないと思うけど、別のギアに移行するところがあって、ベース・ソロみたいなのもある。すごくきれいな感じの、クリアな鐘の音のようなギターがあって、僕はそれが大好きなんだけど、ソウルっぽいサウンドに似たギター・サウンドでありながら、ちょっと別の働きをしてるっていう。クラシック・ギターみたいなチューニングで、AC30とかそれくらいで、このジョークをわかる人もいると思ったけど、誰にもわかってもらえなかった。
もしかしたらみんなわかってるのかもしれないね。ただ僕がバカみたいにこれは難しすぎるとか思ってるだけで、実際はそうじゃないとか。

作品情報
ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ


出演:デーモン・アルバーン/グレアム・コクソン/アレックス・ジェームス/デイヴ・ロウントゥリー
監督:サム・レンチ 撮影:ブレット・ターンブル、バド・ガリモア 編集:ハミッシュ・リヨン/ベン・ウェイン
ライト-ピアース/レグ・レンチ 製作:ニーヴ・バーン/レジーヌ・モイレット/ビル・ロード
2015年/イギリス/カラー/93分/原題:BLUR: NEW WORLD TOWERS
配給:松竹メディア事業部 宣伝:ビーズインターナショナル
協力:S-O-C-K-S INC./フレッドペリー/British Music in Japan/ワーナーミュージック・ジャパン
(c)Blink TV 2015 
blur-movie.jp

 

作品情報
Blur / ブラー
The Magic Whip / ザ・マジック・ウィップ


発売日:2015年04月29日
価格:¥2,457(本体)+税 / 規格番号:WPCR-16444
収録曲:
1. Lonesome Street / ロンサム・ストリート
2. New World Towers / ニュー・ワールド・タワーズ
3. Go Out / ゴー・アウト
4. Ice Cream Man / アイスクリーム・マン
5. Thought I Was A Spaceman / ソート・アイ・ワズ・ア・スペースマン
6. I Broadcast / アイ・ブロードキャスト
7. My Terracotta Heart / マイ・テラコッタ・ハート
8. There are Too Many of Us / ゼア・アー・トゥー・メニー・オブ・アス
9. Ghost Ship / ゴースト・シップ
10. Phyongyang / ピョンヤン
11. Ong Ong / オン・オン
12. Mirror Ball / ミラー・ボール
13. Y'All Doomed / ヤオール・ドゥームド (*日本盤ボーナス・トラック)
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