『其礼成心中』三谷幸喜の文楽人形が始球式に!
(左から)吉田一輔、みたに君、吉田簑悠、吉田簑之 [撮影:吉永美和子]
阪神ファンもビックリ?! 甲子園初となった試みの裏側に密着!
三谷幸喜作・演出の文楽作品『其礼成心中』が、7月に文楽の本場・大阪で初めて上演されるのを前に、三谷幸喜を模した文楽人形「みたに君」が、何と5月7日(土)の甲子園・阪神×ヤクルト戦のファーストピッチセレモニーに登場! この模様は各スポーツ紙などでもすでに報じられているけど、せっかくなのでその裏側をもう少し詳しく紹介する。
「みたに君」は『其礼成心中』の公演で前説を務める人形。普段は着物姿だが、この日は特注の阪神のユニフォームで登場した。背中には「三谷文楽」の文字と、背番号「三」(“3”でないのがポイント!)が輝いている。
セレモニー待機中のみたに君。心なしかいつもより顔立ちが凛々しい? [撮影:吉永美和子]
セレモニーの1時間ほど前には、みたに君と人形遣いの吉田一輔(主遣い/首と右手担当)、吉田簑之(左遣い/左手担当)、吉田簑悠(足遣い/両足担当)の4人(?)は屋内練習場に向かい、投球練習を行った。球は右手を操る一輔が握り、みたに君が腕を振り下ろすタイミングに合わせて投球する…という要領だ。
投球練習中のみたに君。足を上げるフォームもバッチリ決まってる。 [撮影:吉永美和子]
一輔いわく、ここに来る前は「人形を使ってあまり練習ができないので、今朝40分ぐらい練習しただけ」だったが、それでも想像よりもはるかに球が伸びていることに、立ち会った関係者たちから感嘆の声が上がる。今回の目標は「きれいなフォームで、(キャッチャーまで)ノーバウンドで投げること」(一輔)だそうだ。
15分ほど練習した後は、本番まで関係者用の待合室で待機していたが、通りがかりの球団職員たちやTVの解説者などが、みんな興味深そうにみたに君を覗き込んでいく。阪神タイガースのマスコットのトラッキー&ラッキーや、元ヤクルトのエースだった石井一久氏と記念撮影をする一幕もあった。
(上)トラッキー&ラッキーとセレモニー前に記念撮影。(下)石井一久氏(左)と談笑。もしかして投球のアドバイスを受けている?
そしていよいよセレモニーの時が。みたに君と人形遣いたちがマウンドに上がると、球場中が「人形がどないして投げるねん?」という疑問と期待に満ちた空気になっているのがわかる。まさに衆人環視の雰囲気の中で放たれた球は、残念ながらキャッチャーミットに収まる前にワンバウンドしてしまったが、甲子園では初となる文楽人形の登板に、温かい拍手が送られた。
甲子園の観客、トラッキーやラッキーたちが見守る中、みたに君の豪腕(?)がうなる! [撮影:吉永美和子]
その後行われた囲み取材で、一輔は「バウンドしてしまったのが残念。練習では半分がノーバウンドだったんですが…(人形の腕は)人間と稼働域が違うので、距離を出すのが大変でしたね」と反省しきり。とはいえ「マウンドは最高でした。次があるならストライクにしたい」と、早くも再登板に意欲を見せていた。ちなみに本日の人形遣いは、3人とも阪神ファンということで「今は3連勝中ですよね? 頑張って4連勝していただき、優勝に向かって頑張ってほしい」とエールを送っていた(残念ながら試合は6-10で敗戦)。
無事大役を終え、マウンドを後にするみたに君&人形遣いの皆さん。 [撮影:吉永美和子]
そして『其礼成心中』の方も「大阪の文楽ファンにずっと待っていただいたので楽しんでほしい。回を重ねるごとに、古典作品になっていけばいいと思います」とアピールを忘れなかった。この日球場を訪れた野球ファンが一人でも、このファーストピッチセレモニーをきっかけに文楽に興味を持ち、実際に訪れてもらえたらと願っている。そして阪神ユニ姿のみたに君は「三谷さんが気に入ったら、大阪公演にも登場するかもしれない」(一輔)とのことなので、動いている所を生で観たい! と思われたなら、劇場に行けばもしかしたら目撃できるかも?
パルコ・プロデュース公演 三谷文楽in大阪『其礼成心中』
■日時:7月1日(金)~11日(月) 14:00~ ※1・7日=19:00~、9・10日=11:00~/15:30~、2~4日=休演
■場所:森ノ宮ピロティホール
■料金:一般8,000円 25歳以下5,000円
■作・演出:三谷幸喜
■作曲・出演:鶴澤清介
■出演:竹本千歳太夫、豊竹呂勢太夫、豊竹睦太夫、豊竹靖太夫、ほか
■公式サイト:http://www.parco-play.com/web/play/sorenarishinju/