中村恵理(ソプラノ) 「私は燃焼型です!」

2016.5.16
インタビュー
クラシック

中村恵理(ソプラノ)

 「私は燃焼型です!」と話す中村恵理。いま、世界の歌劇場から最も注目される邦人歌手として、豊かな声量を駆使し大舞台で成功を収める新星ソプラノである。その素顔は少女のようにあどけないが、中身は冷静な判断力を有する大人の女性。「度胸と自制心」の塊として、国内コンサート・ツアーへの抱負を熱く語ってくれた。
「5月末から6月初めに、八ヶ岳、所沢、札幌、横浜でリサイタルを開きます。どのホールも初めて伺うので『お客さまはどの曲がお好みかな? どんな風に響くかしら?』と楽しみです。4会場の連携で素晴らしい機会を与えていただき、本当に感謝しています」

 プログラムも中村らしく考え抜かれたものに。「親しみやすさと新境地」が絶妙なバランスで共存する。
「前半はドイツ歌曲を。初夏にぴったりかなと思ってシューベルトの〈ます〉やR.シュトラウスの〈献呈〉を選び、大好きなクララ・シューマンの〈美しさゆえに愛するのなら〉も入れてみました。メロディがしっとりしてそれは美しいです。後半は中田喜直の〈霧とはなした〉やオペラ・アリアを歌います。〈私の大好きなお父さん〉は、いかにもプッチーニらしい名アリア。僅か2分間に見せ場がギュッと詰めこまれています。マスネの〈小さなテーブルよ〉は、美少女マノンが矛盾する心境を歌う一曲ですが、その矛盾が逆に人間らしくて共感します…。この《マノン》やグノーの《ファウスト》のマルグリートは舞台で一度やってみたい役なんです!」

 英国ロイヤル・オペラにおいて、アンナ・ネトレプコの代役で《カプレーティとモンテッキ》のジュリエッタを歌い、一躍時の人となった中村。現在はバイエルン国立歌劇場の専属歌手として活動しながら、欧米各地にゲスト歌手で招かれ、ロンドンでの《ウェルテル》のソフィーはライヴ音源が発売。《リゴレット》のジルダは英国のオペラ雑誌にも絶賛されている。
「《カプレーティ》や《カルメン》でエリナ・ガランチャさんと共演し、発声法のことで励ましの助言をいただけて嬉しかったです!《ウェルテル》では指揮のパッパーノさんのご指導が厳しく、コテンパンにやられたことも良い経験になりました(笑)。声って本当に不思議で、準備よく育つものでもなく、役のオファーが来て数年後にいざ本番となると、響きが想像以上に重くなっていることもあります。《リゴレット》もブーイング覚悟で出演しましたが、高い評価をもらうことができてほっとしました。今回の連続リサイタルでは『今の中村恵理』をどうぞお楽しみ下さい。毎回、燃え尽きます!」

取材・文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)


中村恵理(ソプラノ)
5/28(土)16:00 八ヶ岳高原音楽堂(0267-98-2131)
5/29(日)15:00 所沢ミューズ マーキーホール(04-2998-7777)
6/2(木)19:00 札幌コンサートホールKitara(小)(011-520-1234)
6/4(土)19:00 フィリアホール(045-982-9999)