THE ALFEE 不動のメンバーで42年間走り続ける理由、そして思い描く未来
THE ALFEE
デビュー42年を迎えた今年の春も、THE ALFEEは日本中を旅して、精力的に活動を続けている。もはや当たり前すぎる風物詩だが、42年間不動のメンバーで、毎年欠かさずツアーを続けることがどれほどの偉業であるかは、いくら強調してもしすぎることはない。音楽的なモチベーションも非常に高く、昨年末にリリースしたアルバム『三位一体』は、若々しいエネルギーと人生の重みや日々の喜びをストレートに描く歌詞が絶妙のバランスを保つ力作だった。そして、ツアー中に届いたニューシングル「今日のつづきが未来になる」は、バンドの原点に戻り、ルーツである洋楽ロックのコーラスとアコースティックサウンドを取り入れた、爽やかで、やがてせつない美しい曲。新曲とバンドの現状について、走り続ける理由について、そして未来について。この機会に聞きたかった質問をすべて、3人にぶつけてみた。
新しいものは、あっという間に古くなるけど、僕らみたいな骨董品は、これ以上古くならない(笑) 。
――THE ALFEEは、3月から6月にかけて、恒例の春ツアー真っ最中です。調子はどうですか。
高見沢俊彦:今回のツアータイトルが『Best Hit Alfee 2016春フェス』で、全国を回っているところです。去年の12月に出た『三位一体』というニューアルバムをメインにして、珍しく新しい曲が多いツアーですね。最初は大変でしたけど、だんだんこなれてきて、一本一本進化している途中ですかね。新曲をこんなにやるツアーは久々で、しかもシングルがまだ出てないのにやっているという。
――ニューシングル「今日のつづきが未来になる」も?
高見沢:やってます。そういう意味でも新しい曲だらけの、ベストヒットな感じでやってますね。
坂崎幸之助:なかなか面白いですね。新曲をこんなにやるのって、初めてじゃない?
桜井賢:初めてだよ。絶対初めて。
高見沢:いつもは新曲は1、2曲だからな。
坂崎:新曲をこんなにやるのは、THE ALFEE史上初めてじゃないかな。しかもシングルは、ツアーが始まった当初はまだ誰も聴いたことがない曲でしたから。新鮮だったと思いますよ。こっちも新鮮だったし。
高見沢:ミスしてもわかんないしね(笑)。
坂崎:わかんない。歌詞を間違えても、まだ誰もしらない(笑)。
桜井:演じ手も聴き手も、非常に緊張感がありますね。しかも『三位一体』は、難易度の高い曲が多いんですよ。聴いてると「ああ~、いいね」と思えるんですけど、演奏すると大変なんです。しかもスイッチボーカルじゃないですか。「うわ、次俺だ!」みたいな。初日は普通、違った意味で「どうなるかな?」という気持ちが前面に出て、見る方も緊張感があるんですけど、今回のツアーはそんな緊張感以前に、自分が忙しくて。
坂崎:でもまあ、うまいこと再現できてるよね。今のところ。
――このところ、THE ALFEEはアニバーサリー続きの印象があって。おととしがデビュー40周年、去年が通算ライヴ2500回。今年は、何かありましたっけ?
高見沢:一番中途半端な時期ですね(笑)。
坂崎:嵐山光三郎さんは「厄年だな」って言ってましたよ。
高見沢:ああ、42年だから。
坂崎:「本厄だな」って言ってました(笑)。ただ嵐山さんいわく、落としていい厄と、落とさないほうがいい厄があるんだって。今まで人生うまくいってる場合は、厄払いをしないほうがいい。いい厄も落としちゃうから。
――ああ~。なるほど。
坂崎:今まであんまり良くないことがある人は、厄払いしたほうがいい。うちらの場合は42年やってるけど……。
高見沢:何もしなくていいんじゃない?
坂崎:ほっとけばいい。
高見沢:なるほどね。そういう考え方もあるな。
坂崎:まあ、都合のいいように考えるのが、日本人らしいところで。
桜井:それでいいんじゃない? 神社は困るだろうけど(笑)。
高見沢:いちいち気にしたら、大変だしね。
THE ALFEE 高見沢俊彦
――では、本厄を吹き飛ばす新曲の話をじっくりと(笑)。「今日のつづきが未来になる」は、日本テレビ系『ぶらり途中下車の旅』エンディングテーマとして書き下ろしたものですか。
高見沢:そうです。コーラスを生かしたアコースティックサウンドにしようと思ってました。そういう意味では、THE ALFEEの原点をうまく出せたかなと思います。シングルでは久々ですね、こういったサウンドは。
――確かに。近年はロックサウンドが多かったような。
高見沢:「英雄の詩」とか、けっこう激しい曲が多かったから。この感じは久々かな。でも一番の原点なので、やりやすいと言ったらおかしいけど、得意とする分野ではありますね。42年目のTHE ALFEEだから歌える内容を、ということで作った曲です。
――歌詞の中身で言うと、二つ前のシングル「GLORIOUS」あたりともつながる気がしたんですよね。人生という長い旅の途中で、もの思うことをストレートに歌詞にしていて。
高見沢:ああ、はい。僕ら、ずーっと休みなく活動してるじゃないですか、活動停止もせずに。そうすると、どんどん荷物が増えていくんですね。そうなってくると、やり続けることに対するステイタスももちろん大事なんですけど、この先どうするんだろう?ということも思うんですよ。20代や30代の時は、先が見えないからがむしゃらに走るだけだったけど、この歳になってくると、先は見えないにせよ、ある程度予想はつくというか。
桜井:あのへんまでだろうな、とか(笑)。。
高見沢:120歳までは無理だろうとか(笑)。そういう意味合いにおいて、一日一日が大事だなと思うし、コンサートで言えば一本一本が大事だし。そういう気持ちを込めて作った楽曲でもありますね。THE ALFEEの、今の等身大の曲です。だって、若い頃に戻りたいとは、絶対思わないですからね。あんな大変な時代、もう一回やり直したくない。
桜井:(笑)。
高見沢:そこは不思議だなと思うんだけど、歳を重ねたからこそわかる部分は、本当にあるんだなということが、この年になるとわかるね。20代にはわからなかったことも、今だったら「ああ、こうだったのか」と。そういう、等身大の楽曲ではあるかもしれないです。
THE ALFEE 坂崎幸之助
――坂崎さんが、この曲に思うことは?
坂崎:サウンドや技術面で言うと、僕らは当時、いろんなグループのコピーをしてきたんですよね。CSN&Yとか、アメリカとか、イーグルスとか、洋楽のハーモニーやアコースティックサウンドを。今回はそんなサウンドになっているので、やっててすごく気持ちいいいです。洋楽を歌ってるみたいな感じがする。
桜井:すごく耳に入りやすいメロディだし、詞の乗り方が完璧だと思います。聴いた瞬間に、イメージがわかりましたね。イントロを聴いただけで、「この曲いいな」と思ったんですよ。デモの段階で。
坂崎:イントロだけにしとけばよかったね。
桜井:インストになっちゃうだろ(笑)。非常に覚えやすいと思いますし、歌詞はまったく着飾ってなくて、すごくストレート。それは今の我々だから、ストレートに歌えるんだと思いますね。もうちょっと着飾らないと、若い人にはわからない部分もあるかもしれないけど。
――いや、これは絶対伝わりますよ。難しい言葉は一つもないし、メッセージがはっきりしている。
桜井:僕もそう思います。ストレートな歌詞で、メロディも心地よいし、非常にいい曲だなと思って歌っております。
坂崎:ぶらり途中下車したくなる。
桜井:したくなるね~。
――それ、聞きたかったんですよ。ちなみに、ぶらり途中下車するなら何線がいいですかね。
坂崎:ああ~。この間、地下鉄の路線図を見たんだけど、すごいね今の地下鉄。全然わかんない!
桜井:ぼーっと乗ってると、どこに行くかわかんないよね。ニューヨークみたいになっちゃってる。
高見沢:おまえ、ニューヨーク知ってるのかよ!
桜井:……という話を聞いたことがある(笑)。だって明学(*明治学院大学。3人の母校)の、八芳園の曲がるところの手前にも駅があるじゃない(*南北線白金台駅)。いまの学生たちは楽だよな。俺たちは目黒から歩いたんだから。
坂崎:それか高輪台か。
高見沢:高校の頃も、高輪台か目黒からしか、なかったからな。
坂崎:変わったよな。だから、途中下車でどこで降りたらいいかわからない。何線に乗っても(笑)。
桜井:あ、そういう話か。なんで地下鉄の話をしてるんだろうと思ったんだけど(笑)。
――結論は、途中下車したい路線そのものがわからない(笑)。
桜井:パスモの使い方はわかるよ。でもこの間、チャージの仕方がわからなくて、駅員を呼んだもん。
坂崎:困ったねえ。改札で切符を買えないお年寄りのことを、何も言えないね(笑)。
桜井:俺がパスモに変えたのも、切符の買い方がわからなくてまごまごしてたら、後ろで「チェッ」て舌打ちされたからだもん。しょうがないから「わしゃあ、田舎から来たけんね」とか言って。
高見沢:嘘をつくな(笑)。どこの生まれだよ!
桜井:パスモは便利だね。でも高見沢は、その恰好じゃ電車に乗れないだろ。
坂崎:パスモ以前の話だ(笑)。
高見沢:乗せてくんないの? ドレスコードがあるの? 髪の長い人はダメとか。
――ええと、話を戻させていただきます(笑)。もう1曲、カップリングは「風の翼」。これはもう恒例ですね。1987年から毎年担当している、大阪国際女子マラソンの、今年のイメージソング。
坂崎:来年で30年目なんですよ。
高見沢:毎年大会のテーマがあるんですけど、もうここまでやってきたので、自由にお任せですね。マラソンにたとえると、42.195キロの人生というものがあって、それはもうドラマじゃないですか。マラソンにこんなに関わる前は、マラソンって何が面白いの?とか思ってたんですよ、正直。でも実際見てみると、本当にいろんなことがあって、人生に通じるものがあるなと思いましたね。僕らも、長い長いマラソンを走ってるようなもんじゃないですか。そういうこともオーバーラップできるような、「今日のつづきが未来になる」とリンクしてる部分もありますよね。
――ですね。
高見沢:これからも走っていかなきゃいけないし、先頭ではないにしろ、「こういうグループがいるんだ」という証にもなりますから。そういうバンドとしての矜持を、この楽曲で表したいなとは思ってました。あとはやっぱり、選手のみなさんが聴いて、速く走れるように。あんまりゆっくりだと遅くなっちゃうんで。
――先頭じゃないと言いましたけど、40年間、ノンストップで走り続けているバンドは、ほかにいないですよ。
高見沢:確かに、ずーっとやりっぱなしですからね。決めてるわけじゃないけど、1年1年を区切っていくと、先にツアーが決まっていくから、「ああ今年もやるんだな」と思う。
坂崎:一つ終わると、次が決まってる。
高見沢:そうやってると、休むという発想がなかったんですよね。なぜかと言われても、わからないですけど。まあ楽しいからやってるんだろうけどね。嫌なことはやらないしね。
THE ALFEE 桜井賢
――よく聞かれると思うんですが。長く続けていく秘訣とは、何なんでしょう。
桜井:誰かが頑張らないと続けられないとかだったら、無理だったと思うんですよ。逆に言うと、俺は、3人じゃないと困る。一人じゃやりたくない。
高見沢:これが自然なんだよ。学生時代から一緒にいるし、その延長線上にあるのは間違いない。うまが合うということもあるだろうし。
桜井:仲がいいからって、もし3人が同じ会社に入っても、誰か一人が出世したりとか、いろいろあるよね。でもグループは3人で作ってるから、そういうことを考えなくてもいい。そりゃあ、みんなそれぞれ、努力はしてるんですよ。してるけども、3人で作っているというのが前提にあるから、逆に自分が責任を持たなきゃいけないところも出てくるし。
高見沢:持ち場持ち場で、責任を分担してるところはありますね。それはバンドとしての一つのシステムですから。このシステムがほかのバンドに当てはまるかといったら、それはわからない。僕らは僕らなりのシステムがあって、それを遵守しているというのはあるかもしれない。正しいか正しくないかはわからないけど。
桜井:長くやるからすごいということでもないんだし。積み重ねでここまで来ただけだから。
坂崎:たまたま、ですよ。運がよかった。
桜井:運と、健康と。
坂崎:あとは、3人の性格もありますけどね。「俺が俺が」というタイプが誰もいない。サッカーで言うと、ペナルティーキックを蹴る人がいない。「どうぞ」「いやいや、どうぞ」って。ボールを持って「俺が蹴る」という、本田圭佑タイプがいない。
高見沢:で、仕方なく俺が蹴って外したら、「おまえのせいだ」って言われる(笑)。
坂崎:だいたいバンドって、そんなことでは成立しないんですよ。本田がいないと。でもうちらは最初からそうだった。
高見沢:アホンダラはいるけどね。
坂崎:アホンダラだらけ。アホンダラ行進曲。
桜井:……すいませんでした!(笑)
――ためになります(笑)。あと、せっかくなので高見沢さんに、一つ質問を。今の若いバンド、ロックシーンについて思うことは?
高見沢:ラジオ番組をやっていて、若手のバンドを聴くことも多いですけど、技術的に言ったら、僕らの時よりすごくアップしてますよ。曲の作り方もシャープだし、アレンジメントもちゃんとしてる。ただ、何と言ったらいいのか、環境が違うんだよね。僕らは、すべてが洋楽だったんですよ、お手本になるものが。それをコピーして、同じようにやることがステイタスだったけど、今はほとんど洋楽を聴かないみたいで。それだけ日本の憧れのバンドがあって、それをコピーしてきてる。ということは、日本の音楽が熟成してきた証拠ですね。それはそれでいいと思うし、初めからオリジナル志向でしょう。「これ、すげえな」と思うものはけっこうありますよね。だから願わくば、長く続けてほしいと思いますね。ある程度は行くけど、その先にどうしようって、迷ってる人も多い気がする。
――ああ~。
高見沢:バンドは一人じゃなくて、いろんな人間の複合体ですから、その意思がどう動くかで、長く続くか続かないかが決まりますから。そこで迷ってるバンドは多いのかなと思ったりしますけど、楽曲はすごいなと思いますよ。新しいものは、そのぐらいすごくないとダメなんですよ。古いものは常に新しいものに凌駕されていくから、新しいバンドがどんどん出てくることが、活性化につながる。ただ新しいものは、あっという間に古くなるけど、僕らみたいな骨董品は、これ以上古くならない(笑) 。
――名言出ました。骨董品は古くならない。
坂崎:ヴィンテージだね。古くなるほど価値が上がる。
高見沢:そういう意味で、新しいものには、壁があるんですよね。でも技術に関しては、僕らの時より全然うまいと思いますよ。いい楽器を持ってますしね。楽器屋さんに聞いたら、高校生がいきなりレスポールを買っていくらしいし。「えー!?」ですよ。僕らにとってレスポールとかマーチンとかは、ガラスケースの向こうにあるものでしたから。それだけ社会的にも豊かになってきてる証拠だと思いますけど、音楽はやっぱり、長く続けてこそじゃないかな。だんだん味が出てくるしね。
――今日はありがとうございました。最後に、今後の夢を教えていただければ。
高見沢:それはもう、1本でも多くコンサートをやり続けたいということですかね。コンサートをやれば、また新しいことも思いつくし、曲も生まれる。コンサートをやってないと、自分の良さも、自分たちのモチベ―ションも、発揮できないでしょうね。何がほしいとか、そういうことではなく、やり続けるということがささやかな夢です。そこからすべてが始まるので。ツアーをやってなかったら、俺もこんなにギターを集めなかっただろうし、ほしいとも思わなかっただろうし。「もういらねえだろ」と言われてもほしくなるのが、ミュージシャンの欲求なんだろうなと思います。
坂崎:それでも多いよね(笑)。
――ツアー中、トラック1台全部高見沢さんのギターだという伝説を聞いたことあります。
高見沢:それに近いですよ。俺のギターが500本、坂崎が300本、桜井が3本。全部で803本ありますから。
桜井:失礼な。5本だよ!(笑)
インタビュー・文=宮本英夫
THE ALFEE「今日のつづきが未来になる」通常盤
THE ALFEE「今日のつづきが未来になる」初回盤A
THE ALFEE「今日のつづきが未来になる」初回盤B
THE ALFEE「今日のつづきが未来になる」初回盤C
※終了公演は割愛
5/21(土) 福岡サンパレスホテル&ホール
5/22(日) 福岡サンパレスホテル&ホール
5/28(土) NHKホール
5/29(日) NHKホール
6/03(金) 中標津町総合文化会館しるべっとホール
6/05(日) 札幌 ニトリ文化ホール
6/11(土) 大阪 フェスティバルホール
6/12(日) 大阪 フェスティバルホール
6/15(水) 大宮ソニックシティ
6/18(土) 金沢 本多の森ホール
6/19(日) 上田市交流文化芸術センター(サントミューゼ)
6/22(水) 神奈川県民ホール
6/25(土) 名古屋国際会議場センチュリーホール
6/26(日) 名古屋国際会議場センチュリーホール
【THE ALFEE 夏のイベント決定‼】
30th Summer! Best Hit Alfee 2016 夏フェス
7/30(土) 横浜アリーナ
7/31(日) 横浜アリーナ