徳永二男(ヴァイオリン) 楽団生活50周年、ヴァイオリンの王道をさらに極める!

インタビュー
クラシック
2016.6.6
徳永二男(写真:武藤 章)

徳永二男(写真:武藤 章)


 日本ヴァイオリン界の第一人者、徳永二男は、今年楽壇生活50周年を迎えた。積極的なコンサート出演に加え、音楽大学での後進の指導、そして宮崎国際音楽祭の音楽監督など活動は多岐にわたる。
「1966年、19歳で東響のコンサートマスターに就任したのがスタート。10年後N響に移って18年間在籍しました。また早くから桐朋学園で教えていますので、教育の場も46年になります。この間、失敗は全て憶えていますし、素晴らしい経験も沢山しましたが、経ってみれば、あっという間の50年でしたね」

 最も印象的な出来事は、N響定期で急遽ブラームスの協奏曲を弾いたことだという。
「あるソリストの事情で公演前日に言われ、暗譜で弾くことにしたのですが、本番直前、あまりの緊張でクラクラしてきた。でも楽員一体の応援を感じて、何とか無事に弾き終えました。終演後のビールの味はもう最高でしたね」

 特に印象に残った音楽家としては、N響時代に接した3人の名が挙がった。
「指揮者ではマタチッチ。85歳で指揮の動きも不明瞭なのに、表現したい音楽が明確に伝わり、『この人のためなら』という気持ちにさせる。自分もこんな音楽家になりたいと思いましたよ。それからサヴァリッシュ。先生はむろん偉大な指揮者ですが、毎回ご一緒した室内楽で、多くのことを教えられました。もう一人はヴァイオリンのシェリング。自分の音楽を聴かせるといった力みが一切なく、淡々と弾く。このような心境で音楽ができる人は初めてでしたし、同じ場にいる幸せを感じました」

 7月の『50周年記念演奏会』は、メンデルスゾーンとチャイコフスキーの協奏曲にラヴェルの「ツィガーヌ」を挟んだ、魅力満載のプログラムだ。
「色々考えた末にこうなりました。チャイコフスキーはどうしても弾きたかったので最後に置き、1曲目は、シーンとした中、弱音でソロが出る冒頭部分を表現してみたいと思ってメンデルスゾーンを。さらに様々な超絶技巧が含まれた『ツィガーヌ』で技術的な表現を聴いていただきたいなと。このプログラムは心の緊張感を保つのが大変だと思いますし、チャイコフスキーは技術的に難しい。音符の数が物凄く多く、いかなる名手も失敗しがちな難所が数ヵ所あります」

 注意点もそれぞれに異なる。
「メンデルスゾーンは、“聴かせたい”と力まず、自然な心と透明感のある音色で弾かないといけません。『ツィガーヌ』は、ラヴェルのジプシー魂を表現するセンスが問われます。チャイコフスキーの曲には、雄大さ、甘さ、激しさなど全てのものが入っており、メンデルスゾーンと逆で、自分の心を激しく動かすことが求められます。この“自然体”と“豊かな動き”の対照も今回の見どころですね」

 共演は、広上淳一指揮のN響。
「広上さんとは最近ご一緒させていただく機会が多く、私も大好きな指揮者。それに彼がN響にデビューしたとき、私がコンマスだった縁もあります。N響とは、退団後にも私の35周年記念公演やツアーで何度か共演しています。もちろん演奏能力はずば抜けていますし、最近は楽員の入れ替えが本当に上手くいっているオーケストラですね」

 6月には鎌倉芸術館ゾリステンでの記念公演もある。これはソリストが居並ぶ豪華アンサンブルだ。
「もう22年間、毎年1月は弦楽合奏、6月は室内楽を行っています。凄い顔ぶれが揃っていますが、コアのメンバーはずっと変わりません。新たに鎌倉在住の小林美樹さん、礒絵里子さんなども加わりました。今回は、この公演の後にホールが改修工事に入りますから、区切りになるような名曲で、しかも多くのメンバーが参加できるように、メンデルスゾーンの八重奏曲やブラームスの六重奏曲を演奏します」

 さらに9月には、横浜みなとみらいホールで、仲道郁代と共にベートーヴェンのソナタ1、5、9番を弾く。
「王道のベートーヴェンの中でも人気の高い名作を、ソナタの初期、中期、後期から1曲ずつ選びました。仲道さんは、先日ご一緒したトリオが凄く楽しかったので、今回も期待しています」

 「日々工夫」が信条という彼は、今後も演奏活動に邁進する。
「三浦文彰君などトップにいる教え子たちの背中を見ながら、ついていけるよう努力したい。可能な限り現場で音楽に携わり、ヴァイオリニストとしてステージに立ち続けたいと思っています」

 我々はその年輪をとくと味わいたい。

取材・文:柴田克彦 写真:武藤 章
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)


徳永二男
楽壇生活50周年記念演奏会 魂の協奏曲

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 
ラヴェル:ツィガーヌ 
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
徳永二男(ヴァイオリン)
広上淳一(指揮) NHK交響楽団
7/7(木)19:00 サントリーホール
問合せ:AMATI 03-3560-3010 
http://www.amati-tokyo.com
 

鎌倉芸術館ゾリステン Vol.44
楽壇生活50周年記念 珠玉の室内楽シリーズ
6/19(日)15:00 鎌倉芸術館(小)
問合せ:鎌倉芸術館チケットセンター0120-1192-40 
http://www.kamakura-arts.jp


みなとみらいアフタヌーンコンサート
アニヴァーサリー・デュオ!
徳永二男(ヴァイオリン)&仲道郁代(ピアノ)
オール・ベートーヴェン・プログラム
9/14(水)13:30 横浜みなとみらいホール
問合せ:神奈川芸術協会045-453-5080 
http://www.kanagawa-geikyo.com

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