ロックで、ピュアで、青春の『RENT』9月に開幕! 村井良大・堂珍嘉邦・ユナク[超新星]インタビュー
1996年にニューヨークの小劇場で誕生し、ピューリッツアー賞、トニー賞をはじめ数々の偉大な賞を受賞。今なお世界中で上演されているミュージカル『RENT』が3年ぶりに帰ってくる。(シアタークリエにて9月8日~10月9日まで)
貧しい暮らしの中で家賃(レント)も滞納しながら、夢を信じて生きる若者たちの1年間を描く物語で、貧困、HIV、ドラッグ、同性愛と言った生々しい問題に直面しつつ、夢に向かって生き続けようとする若者たちを、多彩なミュージカルナンバーによって描き出す珠玉の作品だ。
その舞台で主人公であり映像作家志望のマークを演じる村井良大、その友人で元人気ロックバンドのミュージシャンでHIV感染者でもあるロジャーを、ダブルキャストで演じる堂珍嘉邦とユナク。
青春群像劇とも言える舞台の中心を彩る彼ら3人に、互いの印象、役柄への思い、そして、作品に賭ける熱い思いをたっぷりと語ってもらった演劇ぶっく8月号のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介。
青春群像劇とも言える舞台の中心を彩る彼ら3人に、互いの印象、役柄への思い、そして、作品に賭ける熱い思いをたっぷりと語ってもらった演劇ぶっく8月号のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介。
ユナク・堂珍嘉邦・村井良大
三人がそれぞれ抱いていた印象とは?
──お互いの印象を教えてください。まず村井さんから、ロジャーを演じる堂珍さんとユナクさんについていかがですか?
村井 ユナクさんはこれまでテレビで拝見することが多くて、優しい方なんだろうなぁという雰囲気はずっと感じていたのですが、ポスター撮影で初めてお会いしてそれは挨拶程度でしたし、その後、製作発表の為の歌の稽古と会見でお会いした、というところで、思ったよりもシャイな方なのかな? と。結構人見知りします?
ユナク シャイなんです、はじめは。仲良くなったら「うるさい」と言われるんですが(笑)。
村井 じゃあ、うるさくなったら良い感じですね(笑)。
堂珍 その点、村井ちゃんは最初からうるさかったよね(笑)。
村井 え、製作発表ではおとなしかったでしょう?
堂珍 どうかなぁ(笑)。
村井 真面目にやってたじゃない(笑)。で、堂珍さんとは何度か共演させて頂いているのですが、最初は「あの堂珍嘉邦さんだ!」という感じでいたのですが、いつしか「この方面白い方なんだなぁ」と(笑)。とてもフランクな方で、僕がどんどん話しかけに行っても、なんでも答えてくれて、こんなにもフレンドリーな方なんだと感じました。今では一緒にご飯にも行かせて頂いているんですが、今回初めてミュージカルでの共演ということで、一緒に歌うということは僕の中ではまだ信じられません。でも歌の先輩としていてくださるのが、心強い兄貴のようです。(堂珍を見て)あ、スカシてる(笑)。
堂珍 スカシてない!(笑)
──ではお二人から見た村井さんは?
堂珍 これまで共演していても、あまり絡みはなかったのですが、やはり役者さんとして舞台の上での切り替えの早さとか、圧倒するお芝居とか、僕は今もまだまだ俳優としての経験は少ないですが、今よりもっと経験のない、ほぼ初めての頃にそういう姿を目の当たりにしていますから、自分の中では衝撃的なものがありました。ですから、僕から役作りの方法を相談したこともありましたし、その役作りの徹底ぶりはすごいなと思っています。例えば笑わないと決めたら、1ヵ月ぐらい本当に笑わないんです。僕がどんなにちょっかいをかけても笑いませんでした(笑)。
村井 そういう役だったから、頑張ってやっているのにちょっかいかけて来ましたよね(笑)。
堂珍 ストイックさが素晴らしいと思うし、ある意味馬鹿だなぁとも思うんですが(笑)、その考え方はすごいので、今回も芝居でわからないところがあったら教えてと言っていますし、歌でわからないことがあったら教えるし、そんな関係ですね。
村井 よろしくお願いします!
ユナク 僕はツイッターをやっているんですけど。
村井 あぁ、そうなんですね。
ユナク 村井さんにお会いする前に、村井さんのファンの方達が、資料をたくさん送ってくださって。その資料を拝見して、すごく素敵な方だなとわかりましたし、とても売れっ子でいらっしゃることも知りました(笑)。共演させて頂くことになって、こういう方だから頑張ってとか、ファンの方からコンタクトを取ってもらったことは初めてだったので、頑張らなければ!と思っていました。それでポスター撮影で初めてお会いして、イケメンだなぁと。
村井 いやいや(笑)。
ユナク そして歌稽古で、堂珍さんと会話されているのを見たら、明るい方なんだなと。だからこれからの稽古がとても楽しみです。
──同じロジャー役を演じるお二人はお互いにいかがですか?
ユナク 僕はあまり緊張しない方なんです。でも初めて堂珍さんにお会いした日は起きた時から緊張していました。昔からCHEMISTRYさんのファンで、ずっと歌を聞いて自分が歌う練習もしていたし、名古屋でボーカルスクールに通っていた時も、僕が堂珍さんのパートを歌ったりしていて。
堂珍 え、そうだったんだ。
ユナク その頃ゲームセンターに行くと、自分の歌のミニCDが作れるっていうシステムが流行っていて。
堂珍 あぁ、あったね。
ユナク そこでCDを作って韓国のオーディションに送ったりもしていたんですが、それもみんなCHEMISTRYさんの曲だったんです。本当に憧れていました。その方に会えるんだと。同じ役のダブルキャストですから一緒の舞台には立てないけれど、一緒に稽古はできる。もう僕にとっては自分の歴史に残るすごいことです。しかも初めて会った時からとても優しくて、色々と教えてくれたりもして、本当に心強いです。
堂珍 僕がユナクに感じた第一印象は、一言で言うとミステリアス。だから早く本当の姿が知りたいなと思います。CHEMISTRYをずっと聞いてくれていたと言ってくれましたけど、僕も02年の日韓ワールドカップの時に、韓国のグループと組んでワールドカップを盛り上げるテーマソングをやった経験があります。そこから韓国のアーティストがたくさん日本に来るようになって、「超新星」という名前も存在ももちろん知っていました。そのリーダーのユナク君ってどんな人なんだろう? と思っていたんだけど、ミステリアスだね(笑)。
ユナク 僕、ちょっと無表情なところがあって、ボーッとしていると、冷たそうに、冷静に見えるとよく言われるんですが、実際には全然そんなことはない普通の男です(笑)。
マーク、そしてロジャーという役柄への思い
──演じる役について今の時点でどう感じていますか?
村井 マークという役は、この『RENT』というミュージカルを観るうえで、スポットが当たっているようで当たっていない役だなと。どちらかと言うと、中心になっているのはロジャーとミミの話だと僕は思っていて。
ユナク 確かに、そうも見えますね。
村井 そういう面もある中で、マークを主人公として見た時に、意外と道筋が書きこまれているようで書き込まれていないのだけれど、マークは一人だけHIVに罹かっていない、一人だけ健康な身体を持っている。でも周りにはHIVに罹かっている人がいっぱいいるという中で、いつかなくしてしまうかも知れない友達と一緒に夢を追いかけたり、大切な時間を過ごしたりする。ロジャーとはウマがあって一緒に暮らしてもいますし、辛い環境なんだけれど、最高の仲間たちに囲まれている。「僕はまだ生きていられるから」と歌の中でも言うのですが、この人たちと共に一日一日を生きる使命感があると思うので、それを大切にしたいです。
堂珍 周りが死ぬところまで見届けようという覚悟があるよね。
村井 そうですね。ただ、実際にそういうシーンは描かれていないから、それはこれから台本を読み込んで感じていくことかなと。製作発表でも皆の個性が強くて、正直びっくりしたけれど、一人一人が一本の木のようにきちんと立って、それが森になっている。複雑にからみ合ってではなく、一人ずつ立っているのが面白いし、全員が、『RENT』という作品も曲も好きなんだということを感じるので、これからたくさん交感をして、このメンバーだからこそできる『RENT』を作っていきたいです。
堂珍 ロジャー役は後世に残るような曲を作りたいと願っているアーティストで、同じアーティストとして共感しますか?と製作発表でも訊かれたけれど、あまり意識していないです。もちろん演りやすいか?演りにくいか?と言われれば気持ちがわかる部分はあります。もしも自分の死期がわかったとしたら、音楽をやっていようがいまいが、何かを残したいという気持ちになるのは一緒だと思うんですね。この世界に生きてきた自分が、何をモットーとして生きるかをたぶん決断するだろうし、逆にその時に何もしないという勇気を持ったとしたら、それも決断だし。音楽をやっているのだったら、やはり曲を書いて自分を表現しようとするかな。あとは、クールな役柄だと思うので、それを演じているうちにはっちゃけたくなってくるかなと。どれくらいしんどくなるかは、今はわからないですが、ミュージカルってやはり歌なので、歌を本職にしている自分にとっては、アプローチしやすい面もありますが、役柄として表現方法を変えてほしいと言われる面も出てくると思います。いずれにせよ、まずは自分のロジャーのイメージにトライして行こうかなと思っています。自分の出来ることから始めます。
ユナク 僕がロジャーに対して感じたのは、とても淋しがり屋なんだけど、でもそういうところは見せたくない、ある意味プライドの高い人で、情熱的なものも持っているのに、表には出せない。そして何かを残したいと思っているものの、そこに邁進もできない。色々な理由があってそうなっているんでしょうが、そういう人ではないかなと。そもそもこの『RENT』という作品に出てくるキャラクターが経験していることは、僕がこれまでの人生で一回も経験していないことで、ロジャーについてもそうなので、とにかくまずそれを理解しないといけないなと。ロジャーを演じてきた人たちにも「どういう気持ちで演じたの?」と訊いたりして、今、すごく研究しているところです。堂珍さんがおっしゃったように、きっとクールで、でもたぶんちょっと弱いところもあると思うので、そのギャップをきちんと見せたいです。ミミに対してはとてもクールだけど、いざ去られると寂しい思いをしていると感じるので。
言葉では説明できないほど大きな作品のパワー
──『RENT』という作品の魅力をどう感じますか?
村井 僕の中ではその魅力がまだ解明できてなくて、なんでこんなに感動するのかな?と。もちろん曲の力もあると思いますが、僕は生の舞台でなくて、DVDを観たのですが、これまでDVDで泣くという経験がなかったのに、この作品だけはすごく泣いて。尋常じゃない感動で、まるで魔法がかかっているみたいだなと。オカルト的なパワーというか(笑)、「ここが面白いですから観てください」と言うような、軽い言葉ではとても説明できない力があるので、これから稽古を重ねる中で更に深く感じて行くと思います。
堂珍 そうだね。この力はなんなのだろう?と思うね。
村井 僕の中ではその魅力がまだ解明できてなくて、なんでこんなに感動するのかな?と。もちろん曲の力もあると思いますが、僕は生の舞台でなくて、DVDを観たのですが、これまでDVDで泣くという経験がなかったのに、この作品だけはすごく泣いて。尋常じゃない感動で、まるで魔法がかかっているみたいだなと。オカルト的なパワーというか(笑)、「ここが面白いですから観てください」と言うような、軽い言葉ではとても説明できない力があるので、これから稽古を重ねる中で更に深く感じて行くと思います。
堂珍 そうだね。この力はなんなのだろう?と思うね。
村井 登場人物全員が主人公とも言えるし、だから脚本的にはまとまりがないとも言えるんだよね。でも心から感動するパワーがある。
堂珍 さっきオカルト的って言ったでしょう? 音楽の雰囲気もあるのかも知れないけれど、ロックだからじゃん? という気がしなくもない。上手く説明できないけど。全員が「ロックだぜ!」っていう感じで、ピュアでひたむきで。イヤな奴ってほとんど出てこないじゃない。
村井 意外といないよね。ホームレスの人たちもロックな精神を持っているし。
堂珍 単純にワクワクする。だから、自分が演じることで『RENT』を魅力的なものにしたいなと思う。他の人と比べても仕方がないし、自分がここにいる意味、どうしたいからここにいるのかを考えて、自分の役にリスペクトを持ちつつ、「舞台の中で自分がちゃんと生きていたな」と舞台が終わった時にそう感じられたら成功なんだと思う。この作品は青春の匂いもする。俺は36歳だけど、音楽やっている時のピュアなものとか、反骨心とかを燃料にして爆発させてみたい。それってすごい青春だから。10代の頃に戻ろうとか言うつもりはないけど、嘘のない純粋なものをすべてぶつけて臨みたいと思う。
ユナク 10年前に韓国で初めて『RENT』を観た時には、話が重いなと思って、正直まだ理解できなかったんです。でも、すごく曲がいいなという印象はあってCDを買って聞いていました。で、今回『RENT』に出ることが決まって、映画や舞台を全て観ましたが、30代になって観ると理解できるところもたくさんあるし、こういう気持ちなのかなと思う部分もたくさんあったので、何回も観てもらいたいミュージカルです。曲も良いし、それぞれのキャラクターも多彩なので、観る度に今回はマークに集中しようとか、じゃあ次はロジャーにとか、色々な観方ができると思います。観る年代によっても感じ方が変わるので、それが魅力かなと思います。
村井 稽古も楽しみだよね。皆で集中して行きたいね。
堂珍 バンドのメンバーも含めて、やっぱりその日の調子、浮き沈みとかあるじゃない。だからそこを皆で高めて行きたいよね。
──では最後に、作品に賭ける意気込みと楽しみにされている方々にメッセージを。
村井 『RENT』という作品に出会えたこと、またこのメンバーに出会えたことが、宝物だと最後に言えるように、一日一日を大切に作品に向き合い、お客様に『RENT』の素晴らしさを伝えられるように頑張ります。
堂珍 『RENT』にはたくさんの見どころがあると思いますが、お客様にわかりやすく、聞き取りやすいお芝居をしていきたいと思います。なので、是非遊びにきてください。
ユナク 素晴らしいミュージカルに、素晴らしい共演者の方達と、しかも日本で舞台に立てることを光栄に思います。足を引っ張らないように日本語も歌も演技も頑張りますので、ぜひ観に来てください。よろしくお願いします。
ユナク・堂珍嘉邦・村井良大
むらいりょうた○東京都出身。2007年テレビドラマ『風魔の小次郎』でテレビ初主演。また『仮面ライダーディケイド』などでも活躍。舞台活動にも熱心で『テニスの王子様』『里見八犬伝』『真田十勇士』をはじめ舞台出演多数、『マホロバ』『カワイクなくちゃいけないリユウ』『シアワセでなくちゃいけないリュウ』では主演を務めた。近作に『殺意の衝動』があり、今大きな注目を集めている若手俳優の1人として活躍中。
どうちんよしくに○広島県出身。2001年にCHEMISTRYとしてデビュー。数々のヒットを飛ばし、12年からソロ活動を開始。全国ツアー、ブルーノートやビルボートライブなどでも精力的にライブ活動を行っている。11年『醒めながら見る夢』で舞台作品で初主演。同名映画でも主演。『ヴェローナの二紳士』でも鮮やかな存在感を示し、ミュージシャンとしてまた俳優としても期待を集めている。
ゆなく○韓国生まれ。愛知大学留学中にモデルとしてスカウトされデビュー。その映像が目に留まり、韓国の男性ヴォーカルダンスグループ「超新星」のリーダーに。精力的に活動を続けながら、俳優としても活躍。14年、15年と続けて上演されたミュージカル『ON AIR~夜間飛行』では主演のジェイ役を好演。更なる活躍が期待されている。
【文/橘涼香 撮影/岩村美佳】
【文/橘涼香 撮影/岩村美佳】
〈公演情報〉
ミュージカル『RENT』
脚本・作詞・音楽◇ジョナサン・ラーソン
演出◇マイケル・グライフ
演出◇マイケル・グライフ
日本版リステージ◇アンディ・セニョールJr.
出演◇村井良大、堂珍嘉邦・ユナク〈超新星〉(Wキャスト)、 ジェニファー・Sowelu(Wキャスト) 、加藤潤一・TAKE〈Skoop On Somebody〉(Wキャスト)、平間壮一・IVAN(Wキャスト)、上木彩矢・ソニン(Wキャスト)、宮本美季、 Spi 、新井俊一 、千葉直生 、小林由佳 、MARU、 奈良木浚赫 、岡本悠紀 、都乃(Swing)
●9/8~10/9◎シアタークリエ
〈料金〉S席¥11,300 A席¥8,000 エンジェルシート(当日抽選席)¥5,000(全席指定・税込)
〈料金〉S席¥11,300 A席¥8,000 エンジェルシート(当日抽選席)¥5,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ03-3201-7777(9:30~17:30)
●10/16~18◎森ノ宮ピロティホール
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション0570-200-888(10:00~18:00)
http://www.tohostage.com/rent2015/