『エリザベート』城田優&井上芳雄にインタビュー!「福岡公演くらいからみんなと飲みに行きたい!」
城田優、井上芳雄
1996年に日本で初演されて以降、何度となく再演を繰り返してきた大人気ミュージカル『エリザベート』。2015年の再演では、演出、舞台美術、衣装等が一新され、「死」のイメージであるトート役を城田優と井上芳雄がWキャストで演じ、大きな話題を呼んだ。2016年は、東京・帝国劇場に加え、福岡・博多座、大阪・梅田芸術劇場、名古屋・中日劇場で上演される。
東京初日に向けて稽古真っ最中の城田と井上に、昨年そして今年の『エリザベート』について話を伺ってきた。
城田優、井上芳雄
――今年、またトートを演じられると聞いたときのお気持ちは?
井上:僕は昨年の「エリザベート」で初めてトート役をやらせていただきました。去年は東京だけでしたが、今年は東京、福岡など4都市でできると聞いて嬉しいですね。トート役をできる限り深めていきたかったので。
城田:僕は泣きましたね、毎回の本番が怖くて。自分自身がどこまでできるか、という点ではありがたいチャンスでした。でも、僕にとって今後どんな役をやったとしても「トートがいちばんしんどかったです」って答える自信があります(笑)こんなに難しい役をやったことはなかったですね。
――城田さん、具体的にどういう点が難しかったのですか?
城田:トートという役が「死」という、定義のない概念であること。だからこそ自由にできるという考えもあるけれど、細かい動作や声など、すべての事が気になっちゃって。基本的に僕は、気にしぃのネガティブ思考の男なので、自分が作っているトートのちょっとした動きも「これでよかったのか? 今、人間ぽく見えてなかったか?」ちょっとでも声がひっくり返ったりすると「ああ、もう今日のお客様に見せる顔がない」と、すぐ落ち込んでしまうんです。作品の持つエネルギーやプレッシャーに「城田優」として打ち勝てなかったんです。そこを「楽しい」と思えるようになるにはあまりに未熟だったと思いました。
城田優
井上:トートは人間ではないので、どうやってもいいとは思うんですが、ただ観ている人に「死だな」と思ってもらえないと意味がない。誰も死神を見たことがないし、お客様それぞれの中に「死」というイメージがあると思うので。それを物語の中で成立させるのは難しいと思いましたね。
僕は城田くんとは真逆で、稽古中は苦しんだのですが、本番になってから「楽しいなー!」って思うようになって。自分が1をやったらお客様が10で受け止めてくれる感覚があったんです。もちろんそれは怖いことでもありますが、そういう役って他にはないので、その喜びがありました。…本当に城田くんと真逆だよね。
井上芳雄
城田:僕、稽古中は本当に楽しくて!
井上:俺、稽古なんて早く終わってしまえと思ってた(笑)もうやらなくていいと思ってしまうタイプなんです。
城田:去年の公演は東京で3か月あったじゃないですか。2か月目くらいかな?久しぶりに楽屋に芳雄くんが入る姿を観たんですが、稽古場のときと全然違って、すごく進化していたんです。稽古場で観た芳雄くんのトート像と本番でのトート像が全然違っていて。全然違うエネルギーがぶわーっと出てて。それを観て稽古場ではそうとうもがき苦しんでいたんだろうなあ、とわかりましたね。
――お互いのトートは本番でご覧になったり、影響を受けたりしましたか?
城田:同じ歌を歌うし、同じセリフをしゃべるし、同じような衣装を着ているので無意識に真似してしまったり、取り入れてしまったりすることがあると思うんです。決して真似をしたくない、ということじゃないんですが、僕は、そういうことをなるべく少なくしてお互いのオリジナルを多くしたいと思うタイプなんで、あまり観ないようにしていました。一度観ちゃうと耳にも頭にも残るし。気にしていなくても「あれ?これ芳雄くんみたいな歌い方になってる?」と思うことがあったりして。…そういうことってありますよね?
井上:「エリザベート」の稽古中に、自分のコンサートで「最後のダンス」を歌ったんだけど、フェイクのところを自分なりにやったつもりだったのに「あれって、城田くんのフェイクですよね?」って言われて!「マジか!」って思いました。今日はちょっと違う風に歌ってみようかなとは思ったんですが、城田くんの歌い方になっていたみたいで。無意識に「その歌い方、いいなー」って思っているんでしょうね。別に悪くない話なんだけど。
城田優、井上芳雄
城田:ミックスされていいとも思うんだけどね。それこそお互いが「いい」と思ってないとできない話だから。
――では、役でなく、人としてのお互いの印象・評価は?
井上:城田くんはとても正直で、ある意味大胆で。「自分は苦しいんだ」って素直に言えるところもあるし、すごく繊細なところもある。大胆さと繊細さのバランスが魅力的だなって。
城田:アハハハ。
井上:身体は大きいけれど、考えることややろうとしていることはすごく繊細。人が望んだことの逆を行ったり、行きたくなかったのに行ってしまったり。ハタから見ていると予想外の動きに驚かされたり…人を惹きつける魅力があるんだと思います。
城田:芳雄くんはミュージカルで言うならテキストになる人。お手本ですね。僕ら世代のミュージカル俳優でいちばん前にいる人。山崎育三郎、田代万里生もいるけど、まず「井上芳雄」がいることで成り立っている。ミュージカル界のトップにいて、落ち着きもあるし、観察力や洞察力もある。経験値も対応力も抜群にある。王道のど真ん中、それが「プリンス」と呼ばれる所以かな。
城田優
――楽曲について。演じる側として、シルベスター・リーヴァイの楽曲の魅力は?
城田:ロックミュージカルなところ。「ザ・ミュージカル」というクラシカルなところやオーケストレーションも魅力的ですが、「最後のダンス」のように、聴いているほうも歌っている方もテンションがあがってくる、感情の流れを上に下に自由自在に持っていく楽曲が素晴らしいです。物語の中で音楽の役割が繊細で、美しくて、優しく…と思ったら時に強引で。「死」と「生きる」の両極端なものを非常によく表していると思います。聴くだけなら至福ですね。
ただ曲を聴くと「自分が演じる」というマインドコントロールが働いて心拍数が上がって緊張しちゃうんです。最初のストリングスのメロディを聴くとうわあああって怖くなります。
井上:いろいろな怖さがあるよね(笑)リーヴァイの楽曲は、一つの感情なり、シチュエーションを何倍にも膨らませるんです。この場面だとこんな曲がいいな、と思っているのをはるかに超えてくる楽曲で、その場面が音楽によってさらに大きくなる。激しかろうが優しかろうが、どの曲でもそうなんです。リーヴァイさんに限らず、作曲家ってある限られた期間にものすごくいい楽曲を生み出す時期があると思うんです。「エリザベート」「モーツァルト!」などの豊かな音楽はまさにそんな時期に生まれたんだと思う。そして、それらの作品をやらせていただけるありがたさを感じますね。
井上芳雄
――公私ともに順調な(!)井上さんですが、今回、地元・博多座での公演もありますね。そこに向けての意気込みをお聞かせください。
井上:これからのびのび生きていきたいなと思います(笑) 博多座で一か月やるのは久しぶりなので、とても楽しみにしています。よく言われるんです、「博多に帰るとリラックスしている」って。自分ではそんなに意識していないんですけど、ほどけていると。いい意味でほどけたいけれど、あんまりほどけるとトートとしては違いすぎるので、緊張感を保たないと。
去年の東京公演中は、なかなかみんなで飲みに行くということができなかったので、今回は博多くらいから交流をね…。
城田:行きましょう!飲みにいきましょう!
井上:飲み食べしすぎると、体型変わってマズイことになるけどね(笑)
【東京】
■2016年6月28日(火)~7月26日(火)
■会場:帝国劇場
http://www.tohostage.com/elisabeth/
【福岡】
■2016年8月6日(土)~9月4日(日)
■会場:博多座
http://www.hakataza.co.jp/sp/lineup/h28-8/index.php
【大阪】
■日時:2016年9月11日(日)~9月30日(金)
■会場:梅田芸術劇場メインホール
http://www.umegei.com/elisabeth2016/
【愛知】
■日時:2016年10月8日(土)~10月23日(日)
■会場:中日劇場
http://www.chunichi-theatre.com/presents/2016/10/10gatsu1.html