Shiggy Jr.が初の対バンツアー・ファイナルで見せたあらゆる壁を壊せるワケ
Shiggy Jr. Photo by Yosuke Torii
Shiggy Jr. presents 「“対バン”スかこれ。Vol.1」 2016.6.29 恵比寿LIQUIDROOM
Shiggy Jr.は今、もっとも自由度が高いバンドの一つだと思う。去年は髭とDALLJAB STEP CLUBを迎えたある種ディープな対バンを実施。今回は初の“対バン”ツアーで、福岡にはWienners、名古屋は東京カランコロン、大阪は藤井隆を迎え、ファイナルとなる東京ではShiggy Jr.が楽曲提供した経緯もあってNegiccoとの共演だ。逆にNegiccoが主催する昨年の『NEGiFES』にShiggy Jr.が出演していたりと、ポップバンド、アイドルの壁を痛快にぶっ壊す2組の対バンに惹かれたファンが詰めかけ、見事にソールドアウト!
AORやポップソウルの名曲が開場BGMに流れ、この日の顔合わせを良い感じに彩る中、先手に登場したNegicco。ニューアルバム『ティー・フォー・スリー』からのナンバーを中心に、難易度高めのメロディを3人で見事に歌いまわし、時にコーラスで聴かせながらNegiccoの真骨頂であるアイドル+オルタナティヴなレアグルーヴやシティポップを立て続けに披露していく。いやぁ、まったくもって曲がいい。変な話、これが単に熱唱系のヴォーカリストなら、ここまで曲の構成力やアレンジにいちいち感心しないんじゃないか?というぐらい、3人の普通の女の子がポップスを歌うスタイルが妙にクセになる。曲調は大人のお客さんが横ノリするようなムードの中、ネギ色のサイリウムが揺れるというシュールでキュートな光景は(死語だが)クールジャパン!としか言いようががない。中盤にはShiggy Jr.の池田智子(Vo)も加わり、4人で「ねぇバーディア」を歌い、踊る場面もあり早くもピークタイムが到来。両者のマッチングの良さを堪能できた。
Shiggy Jr. Photo by Yosuke Torii
転換BGMがまたまた「Move On Up」と気が利いていて、ポップな対バンの底に彼らなりのソウルをピリっと効かせている印象だ。音量が上がると、池田以外のメンバー、そしてサポートキーボードの植木晴彦を含む楽器隊が登場。ソロを回してのセッションという意表を突くオープニングだ。池田が登場するとさらに歓声と拍手が大きくなり、「oh yeah!!」でさっそくサビのシンガロングが起こる。立て続けに森夏彦(Ba)がシンセベースを操り、諸石和馬(Dr)のタイトなビートがハウス・フレーバーの「summer time」で、生音のバンドサウンドとシンセの組み合わせで生まれる心地よいグルーヴに早くも浸ってしまう。
最初のMCではNegiccoファンで「普通にライヴにも来て握手会にも参加してくれる」森が、「こんばんネギネギー!」と、念願のコール&レスポンスでご満悦。Negiccoファンに「Shiggyのお客さん、あったかいんですよ」と言われることにも心底感謝してるようだった。
Shiggy Jr. Photo by Yosuke Torii
原田茂幸(Gt)がアコギに持ち替えた「day trip」のモータウンソウルっぽいビートに合わせて起こるハンドクラップ、ぐっとファンク色が濃くなる「dance floor」では、女性ダンサーも登場して池田のダンスもヴォーカルもグルーヴを増してく。BPM110~120台のぶっとい腰のあるミディアムテンポは、バンドの演奏がタフでなければ成立しないものだが、Shiggy Jr.のそれは暑苦しさを感じさせずに腰で踊らせてくれるボトムの強さがあるのが今っぽい。下手すると、巧いけど巧さを押し出す若年寄というか、演奏を探求するサークル風にになりがちなところだが、彼らにはそれが全くない。このブロックで確信したが、それはやはり池田がただポップでキュートなヴォーカリストじゃないからだろう。彼女の歌メロが曲のキラキラした世界観を牽引しているだけでなく、それに、歌が映えるようにアレンジされた16ビートの乾いたギターカッティングの存在も大きい。ソウルフルじゃないヴォーカルで聴く・観るダンス・ミュージックの参加感の高いライヴ、それもShiggy Jr.ならではの魅力だと実感する。
両者のつながりを知るフロアの盛り上がりがさらに増したところで、森は諸石と共に高校時代にリキッドルームのコンテスト・ライブに出演した思い出を語り、池田はNegiccoが『NEGiFES』に誘ってくれたことへの感謝を述べる。Negiccoと彼女たちの楽曲がつなぐジャンル越えのパワーは、今再びじわじわ効力を増しているに違いない。
Shiggy Jr. Photo by Yosuke Torii
後半のブロックでは、ニューEP「恋したらベイベー」のアートワークを巨大化したパネルを設置。カップルに扮したダンサーも混ざって、ポップでアッパーなファンキーダンスチューンをカラフルに彩っていく。一転して高速シンセポップナンバー「oyasumi」に突入すると、そこはかとなくShiggy Jr.のロックバンドとしてのソリッドさも顔を出す。何度もお立ち台に登ってはフロアを煽る池田。立て続けに人気曲「サマータイムラブ」、Passion Pitあたりにも通じるインディー感あふれるシンセポップ「LISTEN TO THE MUSIC」と曲を重ねていくほどに「もっと聴きたい」と思わせる曲の良さと多彩さに引き込まれていく。「LITSEN TO THE MUSIC」終わりで、池田がNegiccoを呼び込み、「Saturday night to Sunday morning」。“サタデーナイト”をステージ上、“サンデーモーニング”をフロアが歌い、そのヴォリュームがどんどん大きくなっていく事実に、誰しもを理屈抜きに笑顔にしてしまうShiggy Jr.の演奏力の高さと、池田のフロントを張る覚悟を見た。Negiccoの3人が歌う箇所にも気を配りながら、同時に盛り上げる彼女を見ていたら、そんな思いが沸き起こってきたのだ。ハッピーでキラキラしたシティポップ・バンド、それも間違ってはいないけれど、“いけもこちゃん”はかなりソウルフルな女だ。間違いない。
Shiggy Jr. Photo by Yosuke Torii
アンコールでも再びNegiccoのメンバーを招き入れ、彼女たちのレパートリー「1000%の片想い」をShiggy Jr.と共演したことも、この対バンシリーズならではのレアな場面だったが、何よりモータウン調のこの曲、Shiggy Jr.のバンドサウンドによく似合うのだ。選曲もバッチリでコラボした意味を音楽でしっかり示してくれた両者。ラスト前には池田が今回の対バンツアーに感謝の言葉を述べ、
「福岡・名古屋・大阪でも“みんなが少しでもハッピーになってくれたら”とは言ってたけど、一つ言い忘れてたことがあって。みんなの笑顔のおかげでここにいることができます」
と、その気持ちを最大限に共有する<辛いとき、笑えばいいのさ>という歌詞をオーディエンスに何度も歌わせる池田の姿に何か熱いものがこみ上げてきた。
Shiggy Jr.は、クレバーで面白くて中毒性のある曲の作り方をも知っているバンドだと思う。そして池田智子もパワフルな熱唱で圧倒するヴォーカリストではないけれど、彼女の中にある本気で人を笑顔にしたい気持ちと、そのエモーションは相当熱い。これからもきっとShiggy Jr.らしいステップアップを遂げてくれるんじゃないだろうか。秋にはなんと六本木EX THEATERでのワンマンも開催するそうだ。その頃にはさらなるポップ・イズムとエモーションの融合が見られることだろう。
Photo by Yosuke Torii レポート・文=石角友香
Wienners「姫君バンケット」にShiggy Jr.から池田智子(Vo)が参加
Shiggy Jr.「Saturday night to Sunday morning」にWiennersからアサミサエ(Vo/Key/Sampler)が参加
Shiggy Jr. / Wienners
東京カランコロン「×ゲーム」にShiggy Jr.から池田智子(Vo)が参加
Shiggy Jr.「Saturday night to Sunday morning」に東京カランコロンからせんせい(Vo/Key)が参加
Shiggy Jr. / 東京カランコロン
藤井隆「ディスコの神様」にShiggy Jr.から池田智子(Vo)が参加
Shiggy Jr.「Saturday night to Sunday morning」に藤井隆(Vo)が参加
Shiggy Jr. / 藤井隆
Negicco「ねぇバーディア」にShiggy Jr.から池田智子(Vo)が参加
Shiggy Jr.「Saturday night to Sunday morning」にNegiccoが参加
Shiggy Jr.「1000%の片想い」にNegiccoが参加
Shiggy Jr. Photo by Yosuke Torii
■Negicco
2016年8月24日(水)発売
【初回盤】[CD+DVD] UMCK-9858 ¥1,600(+tax)
【通常盤】[CDのみ] UMCK-5608 ¥1,200(+tax)
※収録内容は決定次第発表
“対バン”スかこれ。vol.2
10月27日(木)
金沢・vanvan V4
18:30 / 19:00
w/Awesome City Club
11月2日(水)
仙台・MACANA
18:30 / 19:00
11月5日(土)
札幌・cube garden
18:00 / 18:30
11月9日(水)
名古屋・ell.FITS ALL
18:30 / 19:00
11月10日(木)
高松・MONSTER
18:30 / 19:00
11月12日(土)
福岡・DRUM SON
18:00 / 18:30
料金:前売¥3,500(税込・1ドリンク代別)
*オールスタンディング・整理番号付
*未就学児入場不可
大阪・心斎橋BIGCAT
18:00 / 19:00
11月27日(日)
東京・六本木EX THEATER
17:00 / 18:00
料金:前売¥3,800(税込・1ドリンク代別)
*1Fスタンディング・整理番号付
*東京公演のみ2F/3F指定席あり
*未就学児入場不可
【ツアー特設サイト】
http://www.shiggyjrspecial.com/tour2016au/