「父・勘三郎がくれたプレゼント」鶴瓶の新作落語で勘九郎・七之助が歌舞伎に~『八月納涼歌舞伎』

2016.7.9
レポート
舞台

(左から)中村七之助、笑福亭鶴瓶、中村勘九郎


8月9日(火)から歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』にて、新作歌舞伎『廓噺山名屋浦里(さとのうわさやまなやうらざと)』が上演される。本作の製作発表が7月8日(金)都内にて開かれ、出演する中村勘九郎、中村七之助、そして本作の「ネタ」となった新作落語『山名屋浦里』を口演した笑福亭鶴瓶が登壇した。

『山名屋浦里』とは、吉原一の花魁・山名屋浦里と生真面目な田舎侍・酒井宗十郎の人情話。2015年に鶴瓶が高座で披露した本作を偶然聴いていた勘九郎が「この話を歌舞伎にしたい」と惚れ込んで今回の歌舞伎化が実現した。

会見では、司会から「上方落語協会副会長の~」と前置きされた鶴瓶が、気恥ずかしさからか「今、二人(勘九郎と七之助)がこっちをカッ! と見たで~」とさっそく笑いを誘い、またこの前日に浦里と酒井のイメージで急きょ撮影したという勘九郎と七之助のパネルを見て「なんやもう出来上がっとるやん」と突っ込んでいた。

笑福亭鶴瓶

この噺は、2012年に『笑っていいとも!』のメイク室でタモリが自身の番組『ブラタモリ』(NHK)で見知った花魁と武士の話を鶴瓶に話してくれたことから始まる。「その話に感動したんです。で、タモリさんが『これ、落語にしてよ』って。そんなことをいう人じゃないんだけど『わかった』と返事をして。その後、形になったので僕が高座でやったんです。2015年に『ALWAYSーお母ちゃんの笑顔』という噺とともにネタ下ろし的に『浦里』をやったらちょうど聴いていた勘九郎さんが『歌舞伎にしたい』といってきて。こんな早く実現するとは思わなかった」と驚いていた。

なお、今回の歌舞伎化の件を発案者のタモリに伝えたところ「すごく喜んでた。だから(歌舞伎にタモリの)名前を載せたら?って何度も言ったんですが、(タモリの事務所の)田辺社長が『歌舞伎にタモリは似合わねえよ』って。粋なこと言うなあ」と語っていた。公演が始まったら鶴瓶と二人で観に行く予定とも語っていた。

(左から)中村七之助、中村勘九郎

ちなみに歌舞伎版の台本を読んだら「すごくいい。最後の浦里のセリフもむちゃくちゃいい。俺、それに負けてられへんと思って自分の落語のホンを手直しした。歌舞伎を観に行ったあとで落語を見てもららい『大したことあらへん』と言われるのもシャクなので」と噺家としての意地を見せる鶴瓶。

中村勘九郎

会見中、勘三郎一家と鶴瓶の思い出話がたびたび出てきては会場を沸かせていたが、勘九郎も「(鶴瓶の『浦里』を聞きにいったのは)父と子のルーツを探す番組収録だったんです。これはきっと父親(勘三郎)が巡り合わせてくれたんだな」と語る。七之助も「鶴瓶さんと一緒に仕事できるのがすごくうれしいです。父がくれたプレゼントだと思っています」と意気込みを語った。子どもの頃から勘三郎を介して長く交流してきた鶴瓶相手だからこそ、ときには相手の腕に触れたりしながら距離感ゼロで語り合う三人だった。

中村七之助

「のりちゃん(勘三郎の本名)が死んでから、二人は競争するように急激に伸びてきた」と我が子のように嬉しそうに語る鶴瓶。この作品で改めて両家の絆が深まっていくことだろう。

(左から)中村七之助、笑福亭鶴瓶、中村勘九郎

公演情報
「八月納涼歌舞伎」

■日時:2016年8月9日(火)~28日(日)
■会場:歌舞伎座
■演目:
第一部
一、嫗山姥(こもちやまんば)
二、権三と助十(ごんざとすけじゅう)
第二部
一、東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)
二、艶紅曙接拙(いろもみじつぎきのふつつか)
第三部
一、新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)
二、廓噺山名屋浦里(くるわばなしやまなやうらざと)

■出演:中村扇雀/中村橋之助/坂東彌十郎/中村勘九郎/中村七之助/市川染五郎ほか
■一般発売:7月12日(火)
■公式サイト:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/492

 
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