狂気と愉悦、耽美と奇怪、『乱歩奇譚』はアナタに向いているのか?

コラム
アニメ/ゲーム
2015.8.7
 ©乱歩奇譚倶楽部

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現代を舞台に展開する「江戸川乱歩」を楽しめる資質とは

推理小説家として名を馳せる江戸川乱歩の没後50周年作品である本作は、推理小説として名を馳せた江戸川乱歩ではなく、「人間椅子」「芋虫」「パノラマ島奇談」などエロ、グロを主体とした作品群も多くリリースしていた彼の狂気に満ち溢れた世界観を現代社会を舞台に再構築、猟奇的なエッセンスと推理モノのテイストを一匙加えたものが、本作『乱歩奇譚』となっている。原作タイトルを使っているだけの完全オリジナルアニメーションなのだが、これが実に味わい深いのだ。結論から言うと「非日常に飢えている人向けの幻想的人間ドラマ」になっている。

ポイントはアケチ探偵もコバヤシ少年も、狂った世界で生きていくことを良しとしている点だろう。コバヤシ少年にいたっては第一話で殺人事件に巻き込まれたときに、「退屈から開放された」と断じている。もちろん登場する犯人たちや、他のキャラクターも何らかの狂気を秘めており、一般人サイドである警察や司法はそれを断罪しきれないでいるジレンマが描かれており、狂気こそ勝者の資質であるかのように描かれている。

コバヤシ少年の友人、ハシバ君はごくまともな人間なのだが、『乱歩奇譚』の世界では人畜無害故に味気なさを感じてしまう。そういうキャラクターが存在することで、狂気側にいるキャラクターたちが引き立っていく様が面白い。

昨夜放送された最新話「地獄絵図」では非日常の中の日常といったコミカルな回が挟まれたが、これはこれで味わい深く楽しめた。この後に来るより深い狂気への息継ぎ、と考えるとワクワク感も増してくるはず。
 

 


なお本作でのヒロインは黒蜥蜴ではなく、コバヤシ少年であることを強く訴えかけておきたい。もともと非常に中性的、というよりも女性的な雰囲気を持つキャラクターな上に、とてもかわいい。女装シーンが入るなど、スタッフの中でもおそらくヒロイン的ポジションで決定づけられているのだろう。その倒錯さ、まさに愉悦。ちなみに黒蜥蜴はどちらかと言うとお色気よりお笑い要員になっている。

万人にお勧めするタイトルではないかもしれないが、深い狂気と魅力を秘めたキャラクターとドラマが楽しめる一作になっているので、8月8日23:30から上映される「ニコニコ生放送」での一挙振り返り放送を見てみてはいかがだろうか。お口にあうかどうかはアナタ次第だが、味わって損のない作品になっている。

OPを歌うamazarashiの『スピードと摩擦』は作品の狂気をはらんだようなスピード感あふれるナンバーになっているので、こちらもyoutubeでチェックしてみてはいかがだろうか。


アナタもぜひ、夏の狂気に身を浸してみてほしい。

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