Czecho No Republicが生み出した“フェス”・『ドリームシャワー』で夏開幕
Czecho No Republic 撮影=鈴木公平
Czecho No Republic Presents 《ドリームシャワー 2016》 2016.7.3 新木場STUDIO COAST
Czecho No Republicが結成当初より行っていた主催イベント『ドリームシャワー』。昨年は日比谷野音での単独ライブ、今年はゲストバンドを招いての対バン形式……いや、これは“フェス”だ。新木場STUDIO COASTを舞台に自身が主催するフェスを開催してみせたと言っていい。
Czecho No Republic 撮影=鈴木公平
メインステージの他に、下手(しもて)側にサブステージが設置されており、オーディエンスは左に90°向きを変えるだけで全てのアクトが観られるという親切設計。MCを務めた芦沢ムネトがライブの合間に登場してトークで繋ぐため、体感待ち時間もあまり無い。とはいえ長丁場であり、ときには休憩もしたくなる。そんなときは建物から出ればフェス飯やかき氷などのお店も出店している。立派にフェスの空間・空気が再現されているではないか。中には通常の対バンライブだと思ってきた人もいるらしい、ということを武井優心(Vo/B)がMCで話していたが、そういう人にとっては嬉しい誤算だろう。
Helsinki Lambda Club 撮影=半田安政(Showcase)
lovefilm 撮影=半田安政(Showcase)
Yogee New Waves 撮影=半田安政(Showcase)
そして肝心なメンツが絶妙だ。トリを務めるのは当然、主催のCzecho No Republicだが、それ以外にメインステージに登場したのはsumika、go!go!vanillas、パスピエ。サブステージにはHelsinki Lambda Club、lovefilm、Yogee New Wavesという顔ぶれだ。まさに「いま観ておきたい」と思わせてくれる勢いがあり注目を集める面々。しかも、ちゃんとCzecho No Republicとどこか通じる音楽性を持ったバンドばかり。出演者同士に共通項やつながりが見えるかどうか?というのは、フェスの場においてかなり重要な要素なのだが、その点でも『ドリームシャワー』は魅力的なイベントであったと思う。しかもそれぞれのバンドが自分の色をしっかりと打ち出し、アピールした上で、Czecho No Republicに対するリスペクトとライバル心をほどよくチラつかせるようなライブを展開してくれた。
sumika 撮影=鈴木公平
go!go!vanillas 撮影=鈴木公平
パスピエ 撮影=鈴木公平
大トリのCzecho No Republicがステージに登場したのは18:30頃。すでに開演から4時間半が経過しているが、オーディエンスのボルテージは非常に高い。一つ前のYogee New Wavesが音質、音響へのこだわりが随所に感じられるあたたかみのあるアンサンブルで普遍的なポップミュージックを鳴らした直後だけに、場内が余韻に浸るモードになるのでは?とも思ったが、そんな心配は杞憂であった。某有名・エレクトリカルなパレードナンバーをSEに、青と黄色の光線がぐるぐると回って夏の色を映すステージに登場した5人。冒頭からミラーボールが回る中、山崎正太郎(Dr)のあえて残響を排除した歯切れの良いビートがフロアを揺らし、冒頭から大合唱が起きる。タカハシマイ(Cho/Syn/Per/G)がぴょんぴょんと飛び跳ねてオーディエンスを誘なう。幕開けに相応しい「Amazing Parade」だ。
Czecho No Republic 撮影=鈴木公平
Czecho No Republic 撮影=半田安政(Showcase)
「No Way」では武井が「俺たちと一緒に“楽しいの向こう側”に行こう!」とアジテートし、みな一斉にクラップ、ジャンプで盛り上がる。武井とタカハシによるオクターブのハーモニーも心地良い。続く「Festival」では八木類(G/Syn)がスカ風の弾むギターが良いアクセントを生み出す一方、砂川一黄(G)はステージ上を動き回って視覚面でも楽しませたりと、ツインギターが良いコンビネーションをみせた。さらにイントロで大きく湧いた「MUSIC」へと繋ぎ、長く演奏されている人気曲たちで畳み掛けていく。
Czecho No Republic 撮影=半田安政(Showcase)
Czecho No Republic 撮影=半田安政(Showcase)
中盤以降は一転して、まもなくリリースされる最新アルバムからの新曲「Electric Girl」、最新シングル「Forever Dreaming」、前作からの「Firework」を披露。いずれもエレクトロなダンス要素が色濃く反映された楽曲で、山崎がパッドを叩いたり、タカハシや八木、武井がシンセのリフを重ねたりと、パートまでも入れ替わるという変幻自在っぷり。ときおり砂川が鋭いソロを差し込んでロックバンドの香りもしっかりと漂わせる。楽曲の構成のみならず、それをライブの場で再現することへの柔軟かつテクニカルなアプローチもやはりCzecho No Republicを語る上で外せない要素だ。それに機械的なサウンドに寄れば寄るほど、その上で優雅に伸びやかに歌われるタカハシの涼やかなボーカルが映える。ダンサブルなこのブロックで会場もより熱を帯びていき、コーラス部では大きなシンガロングが巻き起こっていた。トドメは「Oh Yeah!!!!!!!」。武井がハンドマイクを携えて軽やかにステップを踏み、満員の場内を踊らせ切って本編を終えた。
Czecho No Republic 撮影=半田安政(Showcase)
アンコールは新曲「Dream Beach Sunset」から。最新アー写でも印象的なフラミンゴをモチーフにしたハンドサインをタカハシがレクチャー。手を真上に伸ばし、手首から直角にクイっと曲げ左右に振る動きをフロアが一斉に行うと、2階席からは本当にフラミンゴの群れのようにも見える。ラテン×エレクトロで陽性な楽曲も相まって、ライブで楽しい一曲になっていきそうだ。
Czecho No Republic 撮影=鈴木公平
いよいよ『ドリームシャワー』も終わりが近づき、山崎の渾身のドラムからラストナンバーとして「ダイナソー」が放たれると、ゲストたちが次々にステージ上に現れる。バニラズの牧やlovefilmの石毛が歌う後ろでsumikaの片岡や黒田がワチャワチャと盛り上がっていたり、ノブ(lovefilm)がギターを掻き鳴らしたり、芦沢のメガネがプリティ(バニラズ)に掛けられたり。ハートフルなお祭り感に包まれながら、Czecho No Republicと彼らの誘いに応えて集ったバンドたちにより生み出された一足早い夏フェスは、その幕を下ろした。
Czecho No Republic 撮影=半田安政(Showcase)
すでに半分が過ぎた2016年。この日集ったバンドたちは今年のシーンを語る上で外せないアクトばかり。この日気になるバンドを見つけられたアナタ、またこのレポを読んで「行けばよかったなぁ」となっているアナタは、Czecho No Republicはもちろんのこと、各出演のバンドの動向にもぜひ注目してみてほしい。夏フェスシーズンはまだまだ始まったばかりだ。
撮影=半田安政(Showcase) / 鈴木公平 レポート・文=風間大洋
撮影=鈴木公平