追いかけ続けた先に見えた “僕の勇者と僕らの青春"『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』が開幕

2016.7.23
コラム
舞台
アニメ/ゲーム

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この夏限りの一大イベント『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』がついに開幕した。初日の昨日、さいたまスーパーアリーナは超満員。勇者たちは万雷の拍手の中、この日から全40ステージの旅に出た。SPICEでは企画段階からこの大型ショーを追って、各種取材・インタビューなどを行い続けてきた。初日を観劇したアニメ/ゲーム編集長の加東が、自ら見続けてきたこのショーの幕開きを見て、感じたことを此処に書き留める。

最初にこの壮大なイベントの企画を聞いたのは去年末だったと思う。

「ドラゴンクエスト30周年を記念して、アリーナショーが開催されるんだ。」
そう言われてもアリーナショーというものがなんなのか僕にはよくわからなかった。

とにかく国民的RPG、ドラゴンクエストの世界的なショーが行われる。それだけでも追うべき案件だった。以来、SPICEアニメ/ゲーム班はとにかくこの朧気に見え隠れする巨大なイベントを追い続けた。取材にも幾度となく通い、中川翔子さんに行ったロングインタビューでは「武闘家に転職するんですね」という話をしたら「凄く合点がいった」と言われ、話が弾んだのを覚えている。勇者役の松浦司さんには、オーディション合格後初インタビューをとらせてもらった。演出の金谷かほりさんから「こういうものを作りたい」という話を聞いた時は、それまでモヤのかかっていたイベントの全景が少し見えた気がして、とにかく興奮した。

“本当に日本で今までにない物を作ろうとしている”
ひとつ取材を終えるごとに見えてくるショーの姿。僕達の取材も段々と熱を帯びていった。

7月16日に静岡で行われた公開リハーサルに、別現場の取材のため行けなかった僕に代わって現場に入った編集部の田口が「凄いです、これは本当に凄いです、私何度も泣いちゃいそうでした」と伝えてきた時に、何か言葉に出来ない感動が胸に込み上げてきた。僕達の少年時代を彩った、そして今も魅了し続けるあの冒険が、目の前にやってくる。

そしてついに迎えた7月22日、初日である。本公演の前に数百人の関係者とマスコミを招いたプレビュー公演が行われた。客席にはドラクエを生み出した神様、堀井雄二氏。ゲーム最新作『ドラゴンクエストヒーローズⅡ 双子の王と予言の終わり』を制作した青海亮太プロデューサーと庄知彦ディレクターの姿もあった。舞台は社会現象にもなった『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ』をモチーフとし、そこに歴代の人気キャラクターであるアリーナ、テリー、ヤンガス、パノンが冒険の仲間として参加する。

トルネコが観客と会話し、和ませ、笑いを取ったかと思えばダンサーたちの素晴らしいダンス、エアリアルなどが繰り広げられ、勇者たちはモンスターたちと宙を飛びながらお馴染みの必殺技を決めていく。客席とも会話しながら進んでいく冒険の旅は、いつの間にか僕達もゲームの登場人物の一人になったようだった。

堀井雄二氏は常々「人生はRPG」と言っている。勇者と共に旅を体験しながら成長していく。その世界に生きている人々はそれぞれに悩み、喜び生きている。攻略に関係のない事を語る村人たちの会話だってそこに人が生きている証なのだ。だからドラゴンクエストには大人になってから気づける人生のペーソスがある。8bitの画面の向こうには想像を巡らせたくなる異世界が広がっている。それが今、さいたまスーパーアリーナの空間を借りて目の前に現れた。ワクワクしないわけがない。

ショーの冒頭、勇者の登場の時にドラゴンクエストお馴染みの「なまえをいれてください」の画面が出てくる。客席から歓声が起こった瞬間だったが、あの瞬間観客はそれぞれ自分の勇者の名前を入力したのではないだろうか、僕もそうだ。

僕はドラゴンクエストシリーズでは一貫して「カムイ」という名前を使っていた。理由は無いが、4文字以内でなんとなくかっこいいと思ったからだ。以来ずっとシリーズでは僕の勇者は「カムイ」という名前だ。今回の勇者には決められた名前は無い。観客一人一人が勇者だと思って欲しいと言うことからなのだが、それならばあの勇者の名前は「カムイ」だ。少なくとも僕の中の勇者の名前はそれなのだから。

今回のストーリーでは名前が重要なキーワードになっている。人生において名前だけは自分で決めたり選択することが出来ない。自分を産み落としてくれた親からの愛のこもった贈り物。それを全編を通じて伝えてくる。

物語終盤、圧倒的な魔王の強さに挫けそうになる勇者。仲間は叫ぶ「貴方の名前を叫んで」そうだ、勇者はただ一人のものじゃない、この会場にいる1万人にはそれぞれに勇者がいる、名前をつけ、共に戦った1万人分の思いが彼には託されている。立ち上がれ、闇を払い、光を取り戻してくれ。既に世界の一部になっている僕たちはショーということも忘れてただ勇者を見つめていた、頑張れ、戦え、僕の勇者カムイ。

奇跡は起こる、物語に仕込まれていた演出だろうが関係ない。そこにいる人たちが信じることが出来たならそれは奇跡だ。人の力が呼び起こした奇跡が勇者に力をもたらす。戦いは終わり、大団円で締めくくられる物語、最後にトルネコは言う「私達の名前を呼んでくれたなら、また会えますよ、冒険は果てしなく続くのですから」

そうだ、いつだって僕らは冒険ができる、ゲームを立ち上げ「カムイ」と入力すればまた彼に出会える。思いを託し、受け継がれたものは決して色あせない。

ショー終演後の初日乾杯にも縁があって参加させてもらったが、本当に感動的だった。何よりも演者はことごとく嬉しそうに体力的に厳しいであろうこのショーを楽しんでいた。

「だってドラクエの登場人物を演じてるんですよ!最高に楽しいですよ!」 みんなが揃って口にする。総合プロデューサーの依田謙一さんが目に涙を浮かべながら熱っぽくマイクを持って場を仕切り、関係者と熱く抱きしめ合っている時にやっと僕は合点がいった。

ああそうなのか、このよくわからない衝動のように追いかけていた巨大なショーの中身は、青春なんだ。僕達とともにあり続けてくれたドラゴンクエスト。それを新しい形でなんとか見せたい、伝えたい、演じたい、あの時のソフトを買って、家に帰って起動させるまでの高揚感にも似たような気持ち。全てをひっくるめて青春なんだ。情熱が人を動かす、その現場に立ち会えた事を僕は少しだけ誇りに思う。

帰り道、アリーナを出る際に前を歩く親子連れがいた。小学校低学年くらいの男の子はお父さんとお母さんに向かってこう言った。

「ねえ!勇者って強いんだねぇ……!」

そうだよ、強いだろ僕の勇者カムイは? そしてキミの勇者も強いよな。でもその力を与えたのは君なんだよ。

ちょっとだけ泣きそうになりながら、僕は家路に向かう。きっと演出の金谷さんから見たらまだまだ改良点も気になるところもあるだろう、もっともっとこのショーのレベルは上がっていくと思う。

『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』この夏だけの勇者と、僕達の冒険は今、始まったばかりだ。


撮影=原地達浩 文=加東岳史

イベント情報
『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』

■公演日程/会場
さいたま公演
2016年7 月22 日(金)~31 日(日) さいたまスーパーアリーナ ※7 月25~27 日休演
福岡公演
2016年8 月5 日(金)~7 日(日) マリンメッセ福岡
名古屋公演
2016年8 月12 日(金)~14 日(日) 名古屋 日本ガイシホール
大阪公演
2016年8 月18 日(木)~22 日(月) 大阪城ホール
横浜公演
2016年8 月26 日(金)~31 日(水) 横浜アリーナ ※8 月29 日休演

料金
S 席 大人9500 円(税込)/子ども7500 円(税込)
A 席 大人7500 円(税込)/子ども5500 円(税込)

発売中
詳しくは公式WEBサイトをご覧下さい。

【公式サイト】
http://dragonquestlive.jp/

 
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