『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』演出家 金谷かほり独占インタビュー「高速フライングを実現させたい」
金谷かほり (撮影=原地達浩)
目前に迫ってきた『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』、この巨大ショーの内容に言及した特別番組「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー開催!日本初!超大型ショー誕生SP」の収録が先日行われた。その収録後に演出の金谷かほりに独占インタビューを敢行、勇者オーディションの選考のポイント、世界初であろう演出や、今回のショーにかける思いをうかがった。
――まず最初に、勇者のオーディションが話題になっていたと思うんですけれども、オーディションの内容や、松浦司さんを選んだ理由をお聞かせください。
オーディションは例えば今回なら“勇者”を選ぶためにやっているわけですが、同時に選ばれなかった人々のことも考えなければなりません。つまり、あるハードルを越えられなかった「なぜ自分が選ばれなかったのか」という納得材料もなければならないと思うんです。
――ああ、確かにそれはそうですね。
プラスこの勇者には様々な要求があるわけです。「こういうことができる方でなければ困る」っていうものがね。
――勇者自体が「選ばれし者」ですが、何か決め手になった部分っていうのはあるんでしょうか?
大切なのはお客様が一目惚れできる人かどうか。シンパシーを直感で感じられる人かどうか、自分を投影できる人かどうかというところにおいて、スターかスターじゃないかの大切さはあると思うんです。やっぱり人はスターと感じたときに、認めてくれるんですよね。ジワジワ認めるんじゃなくて、一発で認めることがすごく大事で、それは容姿だけでもなければ技術だけでもないと思います。
――衣裳を着た勇者を見たら、僕がずっとプレイしてきたドラゴンクエストの勇者が三次元に現れたみたいでした。
本当ですか、良かったー!TVとは違って舞台は生じゃないですか。そうなったときにやはり本人から出てくる魅力が、空間を支配していくと思うんです。勇者は、完全な大人に見えてはダメ、幼さもあわせ持っていなくてはいけないと思いました。冒険によっていろいろなことを経験している途中であるように見えなければならないと。
――なるほど。
オーディションにはすごく若い方にも応募いただきました。その方々はそういう「道の途中」の魅力はありましたが、実際にこのステージを務められるのか?と考えたとき、とても難しいことだと感じました。ある程度大人で経験値がありつつも、この勇者のまだ冒険の途中にいるような雰囲気を持っている魅力ある人物かどうかというところを見ました。
――1本のストーリーの中で、冒険の始まりから終わりまでを表現するわけですもんね。そして今回、国民的RPGである「ドラゴンクエスト」を扱うことに関して意識されているところをお聞かせ願えれば。
お客様がプレイヤーであるということをすごく意識しています。私はゲームをやらないで育った人間で、今回このショーをやるということが決まってからこのゲームを勉強したので、実際のゲームプレイヤーの人たちの気持ちを自分がどこまで分かっているのか。そこが自分の中で一番気にしている部分ですね。
――先日、中川翔子さんにもインタビューしたんですが、お父様との思い出の中にも「ドラゴンクエスト」があった、というお話を語っていただいて。松浦さんも「ドラゴンクエストⅢと僕が同い年なので、運命だと思っています」とおっしゃっていました。ショーを観に来る方々もきっとそれぞれ思い入れがある作品だと思うので、それをひとつのストーリーとして纏めるのはとても大変なことではないでしょうか?
そうなんですよ。ストーリーにもフォーカスをあてなければならないけれど、アリーナという大きな会場でのショーだからステージでどんなことが繰り広げられているのかをしっかり伝えなければいけないし、そしていろいろなバラエティに富んだ仕掛けを見せていかなければならない。でも、本当に大事なのは、ゲームプレイヤーの人たち、いわゆる“勇者”本人ですよね。一人一人にそれぞれの物語を感じてもらい、自分が勇者としてこのゲームをやっていた時の気持ちが、最終的にお客様の胸によみがえってきてくれたら嬉しいです。
撮影=原地達浩
――今お話にも出ましたが、アリーナショーということで、日本ではあまり馴染みが無いものだと思うんですね。「アリーナショーってどういうものなんだろう」っていう意見も見られますし。
日本でアリーナというとコンサート会場というイメージだと思うのですが、そこでショーを見せるとなると、壮大であるべきだと思います。だから、一番気にしているのは、空間の広さを、どう自分の味方につけていくのかということです。
――空間を味方につける、というのは演出家ならではのコメントですね。
コンサートで一番後ろの席だと、アーティストと同じ空間にいるだけで、映像をずっと見ていることが多くなると思うんです。後ろの席の人まで出演者を間近に感じてもらうのはなかなか実現していません。でも、それを今回は実現させたいです。後ろの席であっても「私の席は特別な席だった」と思ってもらいたい。
――ああ、確かに大きなコンサートだと映像を見ている時間の方が長いというのはよくありますね。
プラスの点とマイナスの点がアリーナ会場にはあって、プラスはとてつもなくスケールの大きいことができる、マイナスはそれを遠く感じる席もある。でも今回は、絶対マイナスな部分を感じてほしくないので、いろいろな工夫をしています。映像を映すスクリーン、それからブリッジ、リフト、全部をプログラムするんですよ。それが全部総合的に上手くいったうえで、そこに人をシンクロさせていく。出演者も大変だと思いますよ。言われたところに行かなければいけないから(笑)。
――そうすると、かなり演出家の腕にかかっていくような気がしますね。
今回いろんな人に「プレッシャーですか?」と聞かれますが、「ワクワクを優先させるって自分の中で決めているんです」と答えています。プレッシャーを感じるとワクワクが減ってしまうので、そうなった時にワクワクの要素を自分の中で意識して盛り上げようとしていくわけ。
――ゲームというものも、この先何が起こるんだろうというワクワクで構成されていると思うので、それとシンクロしていくところがありそうですね。
「これ成功したら凄いよ!」「これ世界で誰もやってないよ」とかね。ものすごい勢いでやってくる不安の要素を、ワクワクで解消するようにしている感じかな。
――金谷さんはいままでも大規模なステージングだったり、演出をずっとやられていると思うんですけれど、今回は全然違いますか?
観客が360度囲むって言うのはいろんな所でやったことがあるので、大きさというところは問題に思ってないですね、セット自体がすごい優れているので。
――提供するものに対してのリアクションだったりがどうなるか、ってところですね。
すごく広い会場で、「ドラゴンクエストⅢ」のストーリーをどう見せていくか。コンサートやテーマパークではドーンと派手に演出することが多いですが、このショーは“父と子の物語”なので、そのストーリーの中で生まれる間をどうするかが難しいですね。今のところうまくいくつもりなんですけど(笑)。
――ある意味演劇的な落とし所ではありますよね。
そうなんですよ。
撮影=原地達浩
――今回、実はまだ謎に包まれているところが多いと思うんです、せっかくなので「こんなことを考えている」っていうもので、もし話せることがあれば是非。
今回ステージが十字になっているんですが、長いほうが60メートルくらいあるんですよ。そこで60メートルの高速フライングをやろうと思っています。
――高速フライングですか?どういうものでしょうか?
フライングってフワーって空に浮かび上がるようなイメージがあると思いますが、私は低い位置でものすごい勢いで突っ込んでいくようなフライングをしたいな、と思っています。遠く離れた位置から、一気に高速で近づいて接近戦になる、みたいなスピード感溢れる戦いの場面を創りたいです。
――それは実現可能なんでしょうか…?(笑)
技術的には問題ない!今、構想しているセットだったら可能です。ただ、問題はどのくらいの稽古でそれができるのか。
――やるのは人ですもんね。
そうそう。それだけじゃなくて、フライングで上がったり下がったりするのはもちろん、上昇したブリッジから飛び降りたり、ブリッジに飛び乗ったりと、縦の動きをたくさん取り入れようと思っています。そこに「人間はこのスピードでは走れない」っていうくらいの高速移動で、シャーと突っ込む!みたいなことができたらと考えています。
――まさに漫画やアニメの世界ですね!それを聞いただけで早く観たくなってきました!
お客様に“あのゲーム内での技や呪文をライブで目撃したんだ、信じられない!”という体験を持って帰ってもらいたいです。そうすると、私すごいものを見た!とお友達に伝えたくなる、「あのショーとんでもなかったよ」って。
――それは、語りたくなりますよね、実際今、お話を聞いただけで早く記事を公開したくなっていますし(笑)。
高い所へのフライングはいろんなショーで演出に取り入れてきました。でも、ワイヤーが長くて、ちょっとしたことですごく揺れるし、フワーっとした感じで飛ぶフライングが多いんです。スピード感には限界があって。でも、今回はいままでにないスピード感のフライングにチャレンジしたいと思っています。
――早く観たいですね!
でもこれはすごい稽古が必要。飛ばす側のスタッフと役者の。
――そうですね、テクニカルな稽古場になりそうですよね。演者さんたちも今体を鍛えたり、中川さんはバレエのトレーニングをされてるそうですし。
ワイヤーもあるし、稽古のペースはある程度、出来る人に合わせてやってかなければいけない。稽古に来るまでに、できるところまで身体を作ってもらいたいですね。
――全体で40ステージありますからね。
一日2回やるのキツイと思うよ!(一同爆笑)でもそれだけじゃないんだよね。
――名古屋が一日3公演の日がありますが…。
大変ですよ本当に(笑)。自分が出演者だったらこれ出来ないと思う。だからツアーに行っても遊ぶ余裕はないんじゃないかな。
――本当に冒険をし続けなければいけないという(笑)
勇者たちパーティは結構出ずっぱりなんです。たとえば、演出的に勇者たちがステージ上にいなくても良いシーンだとしても、お客さんは自分の近くに勇者たちがいたら嬉しいと思うんです。だから役者は大変だと思うけど、体力を見ながら、できるだけステージ上にいるような演出にしたいと思っています。
撮影=原地達浩
――今回金谷さんに初めてお会いしてお話を伺って、僕らが思っている以上にユーザー目線で今回のショーを造られているなって感じました。
そこを一番大事にしなければいけないことだと思っています。自分がゲームをしない環境で育って、ドラゴンクエストにあまり触れてこなかったので、だからこそ本当にプレイヤーの気持ちを真剣に考えています。
――ユーザーの目線を間違いなくとらえるにはどうすればいいか、と言うところですね。
スクウェア・エニックスさんとの打ち合わせでも、プレイヤーはどういう心理なんだと言うところから全部教えてもらっていますね、そこを裏切りたくない。
――今回に関して言うと、自分の経験をもちろん持ち込まれていらっしゃるけれど、1から学ばれている部分もあると。今回演者さんたちにインタビューしていて印象的だったのは中川さんも松浦さんも「転職して僕らレベル1なんです」っていうことをおっしゃってて。ここから本番までにどれだけレベルをあげられるかどうか、っていうのが僕らの勝負なんですってどちらも言われてたんです。金谷さんもそういう『ドラゴンクエスト』に対しては1から冒険しているんだなっていう印象があります。
ドラゴンクエストって、ファンやプレイした人にとってメチャメチャ大事なものなので、そこは丁寧に、雑にならないようにしたいですね。
――そして今回、「名前」がキーワードだとおっしゃってますが。
勇者は観客全員がそれぞれつけた名前を持っているっていうのを表現したいんです。
――みんながつけた名前があって、観た人それぞれの勇者であるという。
そうそう。だからご自分の名前をつけている人は、そう思って観てもらえたらいいなって。
――本当にユーザーの分身なんですね。
そう言ってもらえるようにしたいんです。
――大分見えてきましたね、謎に包まれた……
謎じゃなくて発表していなかっただけ!すごい考えてようやくまとまったアイデアもたくさんあるし!(一同笑)お客様が勇者なんだよ、ということを表現して、感動できるアイデアがショーの中に詰まっています。
――それでは最後に、記事を見ている方にメッセージをいただければ。
今、我々これを創っているチームは冒険の真っ最中なんですよ。この冒険がどうなるかは、皆さんに来ていただけるかどうかにかかっています。皆さんが来てくださって、勇者を応援してくだされば、この物語は完成します。是非伝説の一部になりに来てください!
撮影=原地達浩 インタビュー・文=加東岳史
◆放 送 日 4月30日(土)午前10時30分~11時20分
◆放送地域 関東ローカル
※開催地である大阪、名古屋、福岡地域でも順次放送予定。
◆出演 千秋、倉田真由美、白鳥久美子(たんぽぽ)、椿姫彩菜
金谷かほり、森圭介(日本テレビアナウンサー)
【公演日程/会場】
さいたま公演
2016年7 月22 日(金)~31 日(日) さいたまスーパーアリーナ ※7 月25~27 日休演
福岡公演
2016年8 月5 日(金)~7 日(日) マリンメッセ福岡
名古屋公演
2016年8 月12 日(金)~14 日(日) 名古屋 日本ガイシホール
大阪公演
2016年8 月18 日(木)~22 日(月) 大阪城ホール
横浜公演
2016年8 月26 日(金)~31 日(水) 横浜アリーナ ※8 月29 日休演
【料金】
S 席 大人9500 円(税込)/子ども7500 円(税込)
A 席 大人7500 円(税込)/子ども5500 円(税込)
好評発売中!
詳しくは公式WEBサイトをご覧下さい。
【公式サイト】
http://dragonquestlive.jp/